「凄いな」
月日は流れ、今日。受験の日となった。
感慨深さを覚えながら雄英高校の門をくぐり中に入る。
見た目は良いが……やはり、どこにいても雑音が目立つ。どうしようもない、雑音ばかり。幾人か、雑音ではないものもいるが、受験者の大半は雑音と言えるだろう。
「えっと……あんたも受験者?」
「そうだ」
「あ、私は耳朗響香。あんたは?」
「アルフィア・テーネシア」
受験会場に向かっていると耳からイヤホンジャックが垂れた三白眼の少女が話しかけてきた。
何故、受験生以外の答えがあると思ったのだろうか。
「あー……あまりにも自然体でリラックスしていたから変装している在校生かなー、て」
「……リラックスしているのは自分に自信があるからだ。それ以上でも以下でもない」
今日まで、受験に受かれるよう様々な事を行った。なら、後はそれを全て出しきる。ただそれだけの事だ。緊張する要素なぞ、何処にもない。
「あんた、自信家なの?」
「自信家……そう受け取ってもらっても構わない」
この試験の内容はネットに多く出回っている。毎年大きく変わっている訳ではないため内容の予想は可能。どういうからくりさえ理解すれば、後はどうにでもなる。
これは純然な事実。私は受験勉強すらしていない。一度見ればだいたい覚え理解出来る以上、勉強しなくても問題ない。戦闘試験も学力試験も突破出来る条件を満たしている以上、それ相応に自信がつく。
「試験の内容が変わっていたら少し困るがな」
「あ、ネットに試験の情報が上がってるもんね。そこから逆算したの?」
「その通りだ。……私の席は向こうだから、ここでお別れだな」
「そうだね。それじゃあ、どっちも受かれると良いね」
「無論だ」
耳朗と拳をぶつけあってから別れて指定された席に座る。
さて、説明が開始されるまで本でも読んでいようか。
◇■◇■◇■
「バス移動とは……」
試験会場までバスで移動し、私はノースリーブのタンクトップに着替える。
戦うのに動きにくい服を着ている理由はない。それに、服装は動きやすかったら何でも良いらしいからな、文句は言われんだろう。
「す、すげぇおっぱいだ……!」
……文句は言われなかった。だが、変態がいた。
身長の小さな紫のボールの髪をした葡萄みたいな少年だが、その目には性欲が溜まっているとしか言えない。
……外に出れるギリギリの性欲だ。ヒーロー以前に性犯罪者にならなかっただけ奇跡と言えるか。何故、ヒーローを目指したか、はっきりとしているな。
「おい、葡萄」
「な、何だよ!?」
「羽虫のように踏み潰されたくなければその視線を止めろ。私は実害が無ければそこまで多くは言わんが、害が出るのなら……私は問答無用で潰せるぞ」
「は、はいぃ!」
葡萄に濃密な殺気を出しながら注意すると葡萄は気をつけの体勢をして頭を頷き首肯する。
あれだけ脅しておいたらもう問題な
「ぐへへへへ……」
前言撤回。この葡萄は全く学習しない。……気持ち悪い、邪な雑音だ。
「……葡萄。名前は」
「え!?み、峰田。峰田実」
「峰田。一つ言っておこう」
私は峰田の方を向き直すと目を見開く。
「……次、邪な雑音を奏でてみろ。その耳障りな雑音ごと消すぞ」
「―――――」
本気の殺気を浴びた峰田は言葉を発する事なく白眼を向いて気絶してしまう。
……仕方ないか。
「がぼべぼべ!?」
「起きろ。試験の時間になるぞ」
顔面にペットボトルの水を流し強制的に起こすと手を開閉させながら試験開始まで待つ。
さて……そろそろか。
『それじゃあ、スタート』
放送が流れた瞬間地面を蹴り高速で試験会場内を移動する。
さて、敵はどこにいるかな。
『ブッコロス!!』
「……耳障りだ」
煩い音を奏でるロボットに肉薄しその中枢に手刀を刺し一撃で破壊する。
この試験は四種のロボットにポイントを付与しそのポイントを奪いあう試験。一つずつ着実に潰していけば良い。
「さあ、始めるか。【
手を向けた方向にいたロボットに魔法が当たり吹き飛ばされ一撃で粉砕する。
試験会場に一番最初に入ったのは私だ。ならばより多くのロボットがいる場所でより多くのロボットを狩る。ポイント奪取である以上、そのポイントは有限。早い者勝ちだ。
「実に、私好みだ」
横に払った手刀なロボットの頭を切り魔法がロボットを粉々に粉砕する。
早い者勝ち。それなら私は少々の全力を出せる。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「……煩い雑音を出すな、峰田。【
複数ロボットに取り囲まれた峰田に当たらないように魔法を放ち吹き飛ばす。
近くにあるロボットが瓦礫にくっついている紫色のボールにくっついている事からこいつが無力化したのか。
拘束能力の高く汎用性の高い個性か。成る程、ヒーロー向きだな。
「大丈夫か、峰田」
「あ、ありがとよえっと……」
「アルフィア・テーネシアだ」
さて、壊されたり拘束されたロボットが多くなったな。となれば、そろそろ試験も佳境に入った頃合いか。
「うわあァァァァァァァァァァァァァァァ!?な、何だよあれ!?」
「……あれがお邪魔虫か」
多くの受験生が逃げてきた方向を向いた峰田が大声で叫び私向く。
お邪魔虫がいるとは聞いていた。だが……まさか、ビルと殆んど変わらない大きさとは誰が予想できる。
「に、逃げようぜテーネシア!あんなのに勝てるわけないよ!」
「泣き言を、耳障りな雑音を奏でるな。お前は自分の後ろに市民がいるのにおめおめと逃げ出すのか?」
「ッ―――!」
泣きわめき逃げ出そうとする峰田の胸ぐらを掴みあげる。
「ヒーローなら、限界を越えろ。当たり前の事だろ」
峰田を放り捨てると私は目の前に来たロボットの方を向く。が、興味を失う。
少しは他のロボットよりマシかと思ったが……このロボットもダメだ。耳障りな雑音しか奏でてない。
『ブッコロ!』
「煩い、喚くな、囀ずるな。だが、少し本気で相手してやる」
煩い雑音を奏でながら振るわれた機械の拳を当たり前のように避ける。
大きくなった反面、その動きはさっきまでのロボットよりも遅い。超人染みた身体能力がある以上、避けるのは容易い。
「ふん。たかだか機械仕掛けか」
避けながら左膝の関節を手刀で破壊し体勢を崩し跪くような体勢にさせる。
このロボットに使われている素材は同じ。ならば、装甲ごと手刀で切り落せるが……如何せん、中枢までの高さが高すぎた。二度、跳ばなければならなかった。だから一度で良いようにした。
「壊れろ」
跳躍し胸に当たる部分の装甲をバターのように手刀が刺さり中枢を破壊する。破壊した瞬間、ロボットから流れていた耳障りな音が途絶えた。
さて、これでお邪魔虫が消えたな。
『はい、しゅーりょー!!受験者は試験会場から出てねー!』
「出るぞ、峰田」
「あ、ああ……た、立つの手伝ってくんねぇか?」
「断る」
腰を抜かしていた峰田の首根っこ掴み引きずりながら出口に向かう。
試験結果は……多分問題ないだろう。