【静寂】のヒーローアカデミア   作:丑こく参り

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【静寂】と試験結果

「……きたか」

 

試験から数日後、一人暮らしをしていたアパートの郵便受けに雄英から合否の手紙が届いたのだろう。

 

……存外、緊張しているな。だが、この体の本人なら、この時もまだ自然体なのだろう。私も、まだまだ甘いか。

 

「さて……」

 

自費で買った高級な肘掛け付き椅子に座り手紙を開けるとオールマイトが投影され、試験結果を言い渡される。

 

端的に言えば合格。戦闘以外にも救護や圧倒的なヴィランに立ち向かった事を考慮し89ポイント。文句無しの一位となった。ポイントの振り分けは戦闘のポイントが67ポイント、救助(レスキュー)のポイントが22ポイントである。

 

私としては、そこまで救助(レスキュー)のポイントを重要視していなかった。『誰かが助けるのではなく、自分が助ける』。それを実行するのがヒーローなのだ。それ以上でもそれ以下でもない。

 

それを実行する事に、躊躇いはない。それがヒーローなのだから。

 

「両親には……伝えておこうか」

 

ズボンのポケットからスマホを取り出し海外にいる両親にメールを送る。

 

両親と会うことも、喋る事も億劫。あの耳障りな雑音を耳元で聞くなど不愉快でしかない。

 

「……返ってきたか」

 

メールを送ってすぐ、超長文の英文の答えが返ってきたため読み込む。

 

英文的には祝福しているのだろう、両親の暖かさが伝わってくる。ここは素直に喜ぶべきだろうが、ひねくれて神経質な私は素直に喜べない。

 

「む……?」

 

朝のシャワーを浴び終えてソファに座りニュースを見ていると電話に着信する。

 

一体誰が……この電話番号は、緑谷か。そう言えば、10ヶ月程前に電話番号を交換していたな。あまり電話をかけてこなかったから忘れていた。

 

「何だ、緑谷。私は電話はあまり好きではない。用件を簡潔に述べろ」

『ご、ごめん……テーネシアさんは雄英合格しましたか?』

「一位で合格した。緑谷はどうだ」

『僕も合格できたよ……!!』

「……ほう」

 

涙声の緑谷からの報告を受け、少し興味を持つ。

 

無個性の緑谷が合格できたか。ならば褒めなければな。それを行うには、並外れた努力が必要だっただろうからな。

 

……そう言えば緑谷は試験までの10ヶ月の間、私がよくランニングする砂浜の不法投棄されていた場所で特訓していたな。そして、その近くにはオールマイトがよく現れていた。何かしらの関係性があるだろうか。

 

「それはおめでとう、緑谷」

『う、うん……』

「……どうかしたのか」

『テーネシアさんが誰かを褒めたの何て、初めてで……つい驚いちゃって』

「私とて、誰かを褒める事はある。機会は少ないがな。……そろそろ切るぞ」

『えっ!?あ、うん。分かった』

 

電話を切ると私はテレビの電源を切り質素な木のテーブルに置かれた私と(メーテリア)の写真を見る。

 

……メーテリア。私の愛しい妹。そして、私が母の胎内で才能を全て奪ってしまった搾りかすであり私の原罪(つみ)。個性もなく、私よりも病弱で、ベッドから外の世界を見たことがない奴だった。

 

だが、その優しさは誰からも好かれた。ヒステリックな老婆も、屁理屈をこねる老人も、死期の近い少女からも、人種性別年齢性格を問わず誰からも愛された。

 

そんなメーテリアの夢は『ヒーローになること』。両親や私から何度も無理だと言ったが、メーテリアは諦めなかった。

 

だが、手術の際にイレギュラーを越えれず、死んでしまった。……後から聞いたが、メーテリアは手術を受ける直前に「もし、どちらかを選ぶ状況になったらアルフィアを選んで」と医師に告げていたらしい。私は、メーテリアが生かされたのだ。

 

だから、私はヒーローになると誓った。メーテリアが果たせなかった、誰かを助けるヒーローになることを誓った。

 

(……だから、私は緑谷を気にしてしまったのか)

 

無論、恋愛感情ではない。そもそも、私は誰かを好きになった事は(メーテリア)以外に存在しない。

 

メーテリアと同じ無個性で、誰よりも優しい少年。そんな彼が、夢を諦める姿を見ることが……出来なかった。ただ、それだけだ。

 

「……ありがとう、メーテリア」

 

メーテリアに感謝の言葉を伝えると肘掛け付き椅子に再び座り本を読み始める。

 

明日から、授業に必要なものを買い出しに行かなければな。

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