夏と刀と無限の空   作:吉良/飛鳥

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40話まで来たぜ!By一夏     マダマダ、これからよBy刀奈     ガンガン行きましょう!Byヴィシュヌ


Episode40『夏休み其の伍~夏の温泉も良い物だ~』

夏休みも後半戦に突入したが、一夏達が夏休みを満喫する日々は変わらず、遊園地で遊び倒し、プールで泳ぎまわり、夜の廃墟で肝試しをして、そして百物語よろしく怪談話にも興じた……怪談話では、簪なマニアックかつホラー感がハンパない話を披露して、コメット姉妹を卒倒させてたのだが、此れも夏休みの思い出と言えるだろうさ。そもそも怪談なんぞ、夏以外にする気は起きん。だから、稲川淳二さんは夏以外は仕事がないと言っても過言ではない。

まぁ、そんな感じで夏休みを満喫していたのだが……

 

 

「そう言えば、私達と一夏だけで出掛けた事ってなかったわよね?」

 

 

ある日の事、織斑家に集まった時に刀奈がそんな事を言って来た――確かに、この夏休みは所謂『一夏チーム』で出掛ける事はあっても、一夏と嫁ズだけと言う事はなかったのだ。

『皆と一緒に』と言うのは確かに楽しいし、良い思い出になるのだが、一夏と嫁ズだけの思い出も欲しいと言うのはある意味で当然だろう。『愛する人とだけの、ひと夏の思い出』と言うのは大事だからね。『ひと夏』は全部漢字で書くと『一夏』……微妙にややこしいな此れは。

 

 

「言われてみればそうだな……夏休みも残り少ないし、俺達だけで何処かに出掛けるってのもアリかも知れないぜ。」

 

「愛する人だけとの特別な思い出と言うのは、とても価値のあるモノだからね……嗚呼、此度はどのような思い出が作られると言うのか、其れを想像しただけでも私の心はときめいてしまうよ。」

 

「ですが、何処に行きましょうか?

 海に水族館、夏祭りにキャンプ、遊園地、映画館、プール、スポーツ観戦と大抵の事はやってしまった感があるのですが……出来れば未だ行って居ない場所に行って、していない事をしたいですよね?」

 

 

だが、そうなると何処に行って何をするのかが重要になってくる。

ヴィシュヌが言うように、既に『一夏チーム』で夏休みの定番は略やり尽くしてしまった感がある……『楽しい事は何度やっても楽しい』とは言っても、折角なのだから此れまでとは違う事をしたいと思ってしまうのは仕方のない事だろう。

 

 

「それじゃあ温泉旅行なんてどうかしら?」

 

「温泉旅行……そう言えば、キャンプ以外で泊りがけで出掛けた事ってなかったよね?人数が人数だったから宿が取れないってのも理由ではあったけどさ。」

 

「だが、この人数ならば宿の確保は難しくないだろう。私は良いと思うぞ、温泉旅行。」

 

 

其処で刀奈が提案して来たのは、『温泉旅行』だ。

グリフィンとクラリッサは乗り気であり、ロランとヴィシュヌも同意を示す様に頷いている――IS学園の入浴施設も天然水を使っており質は良いのだが、鉱泉水を沸かしてあるため、天然の温泉ではないので、天然の温泉を楽しみたいと思ったのだろう。特に刀奈以外の海外組は、臨海学校で入った温泉が気に入ったのだろう。

 

 

「其れじゃあ決まりね♪

 宿の方は私に任せてくれていいわ。更識が経営してる温泉旅館、一日貸し切りにして貰うから。」

 

「いやいやいや、ちょっと待て刀奈!いくら社長の娘だからって、温泉宿を丸々一日貸し切りにして貰うってのは無理がないか?宿の方に既に入ってる予約なんかだってあるだろうし!」

 

「大丈夫よ一夏、その温泉旅館って一度の予約は一組しか受け付けない所だから。だから、料理とかも予約分しか材料仕入れないから無駄もマッタク出なくて、逆に利益上げてたりするのよね。

 WEBサイトで予約状況確認したんだけど、次の水曜と木曜は予約入って無かったから一泊二日で予約入れといたわ♪」

 

「マジか……でもまぁ、そう言う事なら問題ないか。其れじゃ、行くか温泉旅行。」

 

 

こんな感じで次の水曜日と木曜日は一夏と嫁ズだけで一泊二日の温泉旅行が決定した。

それにしても、宿泊業までやっているとは、更識ワールドカンパニーは一体ドレだけの業種を扱っているのか今更ながらに謎である……現在分かって居るだけでもIS産業、貿易業、IS以外の機械産業、食品加工業、そして今回判明した宿泊業。

此れだけ手広く事業を展開してる企業ってのは、世界中探してもそうそうあるモノではないだろう……流石は、世界でもトップレベルの大企業と言う所だわな。

そして、社長の娘の立場をフル活用して、普通の高校生では先ず予約出来ない温泉旅館を最高級コースで予約してしまう辺り、刀奈も大概である……まぁ、其れこそ今更かもしれんけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏と刀と無限の空 Episode40

『夏休み其の伍~夏の温泉も良い物だ~』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

温泉旅行出発日の水曜日の朝七時半、一行は駅の前で待ち合わせ、全員集合すると先ずは東京駅まで移動し、其処から新幹線に乗り換えて目的地を目指す。

朝七時半の集合と言うのは大分早い気もするが、午前中に目的地に着く為には此れ位早く出発しないといけない訳だ……もっとも此の面子の場合、IS学園で生活してる時は、毎日遅くとも六時には起きているので早起きが辛いなんて事は無いのだけどね。

因みに本日は、全員朝食抜きで出発したのだが、此れは寝坊して食べる暇がなかった訳でなく、駅弁を買って新幹線の中で朝食にしようと決めていたからである。

此れは、海外組が日本の駅弁に興味があり、一夏と刀奈も『東京駅なら日本中の色んな駅弁が揃ってるから良いかも』と思ったからこの朝食になったのだ――『朝から駅弁?』と思う人も居るかも知れないが、長旅をしてる人は朝食に駅弁って事もあるので、別にオカシクはないのだ。

 

 

「いやぁ、初めて乗ったけれど、新幹線と言うのは乗り心地が素晴らしいね?此れだけの速度で走行していると言うのに身体に揺れを殆ど感じないとは驚きだよ。」

 

「もしももっと揺れるモノでしたら、折角の駅弁も楽しめなかったかも知れませんね。」

 

「新幹線は世界一快適で安全な高速鉄道って言われてるからな。」

 

「誕生してから半世紀以上経ってるのに、地震なんかの外的要素での事故はあっても、新幹線自体が速度超過で脱線したと言った内的要素の事故は只の一度も起こしてないのよね。普通に凄いわ。」

 

 

なので一行は夫々が好みの弁当を買い、新幹線の三人掛けのシートを一つ反転させて六人のボックス席にして、車窓からの景色を眺めながら駅弁に舌鼓を打つと言う新幹線の旅を絶賛満喫中である。

購入した駅弁は、一夏が『東京鶏飯弁当』、刀奈が『崎陽軒のシューマイ弁当』、ロランが『海鮮釜飯弁当』、ヴィシュヌが『海の親子丼弁当』、グリフィンが『仙台牛タン弁当』と『帯広豚丼弁当』の二つでクラリッサが『ままかり寿司弁当』だ……グリフィンが弁当二つでしかもどっちも肉だってのは突っ込み不要だろう――一夏達が何も言わないのを見る限り、グリフィンが沢山食べるのはもうお約束なのだろう。

其れでも、グリフィンはどんな時でも美味しそうに食べるのだから、何かを言うのは無粋ってモノだろうな。

 

弁当を食べ終えた後は、目的地に着くまでトランプ等のアナログなゲームの他、オンライン対戦が出来るスマホゲームなんかを楽しんだ……対戦するだけじゃなく、六人で協力して期間限定配信の極強モンスターを討伐したりもしたけどな。

そして、そんな事をしている間にあっと言う間に目的の駅に到着し、一行は新幹線を降りると、今度は駅からバスに乗り換えて最終目的地の温泉地へと向かう。

流石に路線バスの中ではゲームは出来なかったが、偶然に、本当に偶然に旅番組のロケと出くわして旅人の芸能人達と話をした――その番組のロケハン的には今や世界的有名人となった一夏と、その婚約者達と出会えたってのは嬉しい誤算だったかもしれないわな。因みにその芸能人は、お笑いコンビのサンドウィッチマン、元レスリングのオリンピック金メダリストの吉田沙保里、そして稀代の天才プロレスラーと言われている武藤敬司だった……いや、全員ガタイが良すぎるわ!!

 

とまぁ、こんな感じでバスでの移動も実に有意義な時間だった……一夏とヴィシュヌが、武藤に『シャイニングウィザードのコツ』を聞いていたが、まさかISバトルで使用する心算なのか?ISバトルなら、『相手の膝を踏み台』にしなくてもシャイニングウィザード出来そうだけどね。

 

 

「おう、それじゃあ温泉旅行楽しめよナイスガイ&ナイスガール。Year!!」

 

「「「「「「プロレスLove!!」」」」」」

 

 

目的地の温泉街の停留所でテレビのロケハンとはお別れだ――一夏一行が持っていたIS学園の生徒手帳ケースにサインを入れてくれた武藤のファンサービス精神には見上げた物があるだろう。

 

目的地に着いた一行は、先ず予約していた旅館にチェックイン。

刀奈が予約していたのは六人が楽々寝る事の出来る大部屋だ――普通なら、女性五人と同じ部屋ってのは、たった一人の野郎としては緊張するモノなのだろうけど、一夏はマッタク持って緊張してなかった。

既に一夏は嫁達と一線を越えてるし、そもそもにして『愛する人と一緒の部屋でなんで緊張するんだ?』って考えてるので緊張する必要性が全く無いのだ。――まぁ、そう言う感覚がなければ一学期の期間中、刀奈と同室で過ごす事なんざ出来ねぇ訳ですけどね。

 

 

「其れじゃ、チェックインも済んだしお昼ご飯!……の前に、長旅の疲れを温泉で癒しましょうか?」

 

「そうですね、そうしましょう。退屈はしませんでしたが、流石に合計で四時間座りっぱなしと言うのは疲れました……」

 

 

旅館にチェックインした後、女性陣は速攻で温泉にレッツゴーだ。

如何にIS操縦者として日々鍛えてるとは言っても、四時間もの移動は身体に来たのだろう――なので、早速温泉でその疲れを癒す事にしたらしい。でもって、一夏もまた温泉に。まぁ、嫁さん達が出てくるのを待ってるだけだと暇だから、暇を持て余す位ならば一風呂浴びた方が良いわな。

 

 

さて、この温泉旅館には屋内と露天の二つの温泉があるのだが、先ず刀奈達が入る事にしたのは屋内の温泉だ。

露天は一つの源泉から引いているのだが、屋内の温泉は複数の源泉から湯を引いて、複数の温泉を楽しむ事が出来るのが特徴となっている――炭酸泉、硫黄泉にイオン泉、マグネシウム泉と多種多様な温泉が楽しめるのだ。

そして其れだけではなく、薬泉やサウナも楽しめるのも屋内温泉の特徴と言えるだろう。

刀奈達は、疲労回復の効果があるイオン泉で長旅の疲れを癒している様だ。(温泉の効能については諸説あるので、細かい突っ込みはなしの方向でオナシャス)

 

 

「臨海学校の時も思ったのだけれど、日本の温泉は最高だね?

 私の国では湯に浸かると言う習慣はないのだけれど、一度この気持ち良さを知ってしまったら、もうシャワーだけの入浴は出来そうにないな――日本に旅行に来た外国人が温泉を気に入るのも無理はないさ。」

 

「ん~~~~、孤児院の子達を招待したい気分だよ。この気持ち良さは、日本の温泉だからこそだよね。」

 

「だな。日本以外にも温泉は存在するが、基本的に水着着用だからな。」

 

「温泉の 水着に違和感 アジア人。」

 

「見事な五・七・五ねヴィシュヌ。」

 

 

そして、美女が温泉に浸かるって言うのは実に絵になるわ――刀奈、ロラン、ヴィシュヌ、グリフィン、クラリッサの五人が温泉を満喫してるその様は、この旅館の宣伝ポスターに使えそうなレベルだからね。

魅力が異なる五人の美女が裸体にバスタオルだけを巻いて温泉を堪能する姿は、もうそのままこの温泉旅館の宣伝ポスターに使えるんじゃないかってレベルのワンショットであり、ともすれば芸術品と言っても良いだろう。ゲームのイベントCGとかでも行けるかも知れないな。

惜しむべきは、今使用してるのが屋内の温泉だと言う事だろう……此れがもしも露天風呂だったら更にレベルの高いショットになっていたのは間違いないね。

 

 

「そう言えば刀奈、此処って露天風呂もあるんだよね?露天風呂は使わないの?」

 

「おほほ、露天風呂は夜のお楽しみよ♪」

 

 

でもって、刀奈は『露天風呂は夜のお楽しみ』と言う時限爆弾を設置してくれた――まぁ、露天風呂に関しては後にしよう。温泉で長旅の疲れを癒した一行は、着替えると温泉街へと繰り出して行った。――風呂上がりに全員で牛乳を堪能したのはお約束である。風呂上がりには牛乳なのだ。

季節は夏と言う事もあって、全員が暑さを回避する為のラフな格好だ――一夏はブルージーンズに黒の袖なしシャツ、刀奈はホットパンツにゆったりとした七分丈のシャツ、ロランは七分丈のチノパンに半袖のボタン付きシャツ、ヴィシュヌは黒いハーフパンツに白いTシャツを合わせ、グリフィンは黒ジーンズに七分丈の赤いTシャツ、クラリッサは軍服のズボンに、黒いタンクトップ……クラリッサは如何してそうなったし。此れはアレか、KOFのレオナか?レオナなのか!?コスプレっぽくなってないのが逆に凄いわ!まぁ、似合ってるからマッタク持ってなんの問題もないけどね。一夏達も何も言わんしな。

 

温泉街と言えば観光にも力を入れているので、温泉旅館だけでなく、食事処や土産物屋なんかも軒を連ねて居る事が多く、それ等を巡るだけでも結構楽しめるモノなのだが、温泉で長旅の疲れを癒した後は丁度昼時になっていたので先ずは昼食と言う流れになり、一行はどの店に入るか考えている様だ。色んな店があるだけに色々目移りしてしまうのだろう。――其れもまた旅の醍醐味とも言えるかも知れないが。(尚、旅館での宿泊プランに昼食は入れていない。)

 

 

「さてと、何処に入るか……この温泉街の名物って何だっけ?」

 

「近くの川で獲れる天然のアユの塩焼きだけど、其れは多分旅館の晩御飯で出ると思うのよね。其れに、アユの塩焼きだけじゃ絶対に足りないと思うし。」

 

「ですが、折角温泉街に来たのにファーストフードと言うのは味気ないですよね?」

 

「出来れば此処でしか食べられない珍しいモノを食べたい所だけれど……」

 

「目移りしちゃうんだよねぇ、色々あって。」

 

「蕎麦、寿司、天婦羅……ドレも美味しそうだ。」

 

 

観光ガイド片手に色々悩むが、此処で一夏の目にある看板が映った……其れは『冷たいアンコウ鍋』と書かれた看板だった。

 

 

「冷たいアンコウ鍋……なぁ、アレにしないか?冷たいアンコウ鍋って珍しいだろ?」

 

「確かに、アンコウ鍋は聞いた事あるけれど、冷たいアンコウ鍋って言うのは初めて聞いたわね?ちょっと興味もあるし、あそこにしましょうか?皆も其れで良い?」

 

「冷たい鍋……どんなモノか興味はあるね。」

 

「夏場ですし、冷たいモノと言うのは良いかも知れません。」

 

「アンコウ……前に水族館で見たあの魚か。可成り見た目はグロテスクだったと記憶しているが、深海魚はグロテスクな見た目に反して味は美味と聞いているから興味はあるな。」

 

 

一夏の提案で、一行の本日の昼食は『冷たいアンコウ鍋』に決まった――其れと、クラリッサが言っている事はあながち間違いでもない。深海魚ってのは結構外見がグロテスクなのだが、実は食べると美味なのが多い。

食用として有名なのはアンコウだが、冷凍の白身魚のフライに使われているのも『ホキ』と言う名の深海魚……冷凍食品に限らず、ファーストフード店のフィッシュバーガーに使われてる魚も大抵ホキだったりするのだ。

クセがなく淡白なホキだが、その見た目は……何と言うか形容し難い。言葉で説明するよりも、実物や写真を見て貰った方が早い感じだ……確実にアンコウと互角のグロ容姿だって事だね。

 

さて、冷たいアンコウ鍋の店に入った一行は、昼時ではあるがそれ程待たずに席に案内された。

注文するのは勿論冷たいアンコウ鍋なのだが、この店は其れ以外にもアンコウを使ったメニューが豊富で、アンコウ料理以外のメニューも色々取り揃えられてたので、冷たいアンコウ鍋を六人前で注文し、その他に『あん肝のステーキ』、『アンコウの肝味噌焼き』、『アンコウの唐揚げ』を人数分注文した。

 

そして、先ずは鍋以外の料理が提供された。あくまでもメインは鍋で、その他の料理は前菜感覚で提供しているのかも知れない。

 

 

「あん肝……初めて食べるけれど、此れはアレだ、フォアグラに似ているね?だが、フォアグラよりももっと濃厚な旨味を感じるよ。」

 

「あん肝は海のフォアグラって言われてるからな。

 でも、フォアグラがガチョウに餌喰わせまくって脂肪肝にしたのに対して、あん肝は天然でこの濃厚さだからな。脂の臭いが気になるって人も居るけど、熱湯処理をちゃんとやれば臭いは消えるからな。」

 

「肝味噌焼きも美味しいです!あん肝のステーキとはまた違って、あん肝と味噌が混ざったタレと、アンコウの身がバッチリ合っています。一緒に焼かれた野菜も肝味噌で美味しさが増していますし。」

 

「アンコウの唐揚げも食感が凄い!

 外の衣はサクッとしてるけど、中のアンコウの身は食感がブリブリ!!」

 

「プリプリを通り越したブリブリ……確かに其れが的確かも知れないな?」

 

「其れだけじゃなく、アンコウは部位によって食感が可成り変わるから、サクサクブリブリだけじゃないわよ?」

 

 

あん肝のステーキ、アンコウの肝味噌焼き、アンコウの唐揚げは実に見事な味であり、此れでも充分に鬼柳京介(満足の意)なのだが、此れ等はあくまでも前菜扱いであり、真打のメインディッシュである冷たいアンコウ鍋は此処からだ。

そして提供された冷たいアンコウ鍋は、アンコウをはじめとした調理された具材は一度冷蔵庫で確り冷やし、そして冷たい出し汁の中に入れた料理だった――鍋なのに湯気が立ってないのは少し奇妙だが、夏場の鍋ならば此れも有りだろう。

この冷たいアンコウ鍋の特徴は、複数ある薬味から好きなモノを選んでトッピングして、更に好みのタレをかけて其れを出し汁で割ると言う所だろう――つまり、タレと薬味の組み合わせでその味は無限大に広がると言う訳だ。

用意されている薬味は、『紅葉おろし』、『柚子胡椒』、『ワサビのムース』、『アサツキとミョウガのみじん切り』で、タレは『ポン酢』、『柚子塩』、『ショウガ醤油』、『ニンニク味噌』……此れは可成り多様な味が楽しめそうだ。

 

 

「普通のアンコウ鍋は味噌味だけど、冷たいアンコウ鍋は紅葉おろしとポン酢の王道コンボもイケるな?アンコウはサッパリ味も合うんだな。」

 

「ワサビのムースと柚子塩も良い感じだわ。ワサビのツーンとした辛味と柚子の爽やかさが相性バッチリね。」

 

「柚子胡椒と柚子塩は、ダブル柚子で爽やかさが引き立って居るのを、柚子胡椒の青唐辛子がピリッと纏めていて意外とパンチの利いた味です。」

 

「紅葉おろしとショウガ醤油も中々イケるかな?紅葉おろしの唐辛子と、ショウガ醤油のショウガの異なる辛みが逆に具材の冷たさを強調してくれているからね。」

 

「アサツキとミョウガのみじん切りとニンニク味噌、此れはパワー湧きそう!」

 

「アサツキとミョウガのみじん切りにポン酢……この清涼感が素晴らしいな。」

 

 

当然の如く、一行は新たに鍋の中身を取る度に薬味とタレを変えて冷たいアンコウ鍋を堪能した――確りと冷やされたアンコウの身は食感も相まって抜群の美味しさだったが、一緒に鍋に入れられた野菜やキノコも絶品だった。

あまり知られてない事だが、野菜やキノコは一度火を通した後でキンキンに冷やされると、細胞が壊れ、壊れた細胞内部から旨味成分が溢れ出て来るので旨味が倍増するのだ。そう言う意味では、この冷たいアンコウ鍋は、野菜の旨味も120%味わえる逸品だったと言えるだろう。

で、当然鍋料理なのでシメの逸品があるのだが、其れは全会一致で『うどん』になった。

温かい鍋とは違って、冷たい鍋のシメなので冷たいうどんが提供されたのだが、冷たい鍋のシメもまた複数の薬味とタレをうどんに乗せ、そして鍋の冷たい出し汁をかけて食べるモノなのだ――そして、この冷たい出し汁はアンコウのアラから抜群の出汁を取ってあるので旨味は抜群なのである。

 

 

「「「「「「旨い!!」」」」」」

 

 

なので、一夏達はシメまで美味しく頂いた……会計は合計で三万円と決して安い値段ではなかったがしかし、一夏達は『此れだけの味で三万なら逆に安いな』と思っていた……そう考える事が出来るとは、思考形態が可也大人だわな。普通の高校生なら質よりも量と値段って感じだから、此れは高いと思う所だけどね。

まぁ、其れだけ『良いモノ』を見る目があるって事だろうな。

 

そんな訳で最高の昼食を済ませた一行はその後も温泉街を見て回り、温泉街ならではの『街中の足湯』を楽しんだり、おやつに甘めの味噌ダレを塗った焼き団子と渋めのお茶を満喫し、土産物店では、全国各地の土産物屋で売られている『漢字の入ったキーホルダー』の中からハートのプレートに『愛』が入ったモノを全員が購入した他、工芸品である染物のハンカチや、ご当地マスコットのイラストの入ったカップなんかを購入した。

 

 

「へ~~、簪なんて売ってるんだ?」

 

「「「「え?」」」」

 

「簪って言っても、私の妹じゃないからね?この二又になってる装飾品の事よ。髪に刺して使う物なのよ。」

 

 

一夏が『簪が売ってる』と言った事に、刀奈以外の四人が驚いたのはある意味当然と言えるだろう……だって知らなければ、刀奈の妹の簪だと思っても仕方ないと思うからね。……更識両親は何だって娘にあんな名前を付けたのかちょっと謎だわ。刀奈もあんまり女の子に付ける名前じゃないと思うし。

まぁ、其れを言い始めたら一夏だって『いちか』って音は何方かと言うと女の子の名前の響だし、其れ以上に布仏姉妹の本音と虚が謎過ぎる……一体如何してこんな名前にしたのか聞いてみたい感じだ。

まぁ、其処からロラン達が簪に興味を持ち、色んなデザインがあるのに驚きながら自分の髪に刺してみたりして、其れがまた中々似合ってたモノだから、一夏が『全員に一本ずつプレゼントするから好きなの選んでくれ』と言った。こう言う時でも、空気を読んで出来る男である。

今の時代、日常的に簪を使う事は無いだろうが、ちょっとしたオシャレ――特に、和装や和風テイストを取り入れた服と合わせて使う事は出来るし、何より一夏からのプレゼントなのだから嬉しくない筈がないだろう。

購入した簪は、刀奈が鼈甲色、ロランが薄紅色、ヴィシュヌが真珠色、グリフィンが若草色、クラリッサが山吹色で全てに珊瑚玉を模した装飾が付いているシンプルながらも中々オシャレな感じである。

土産物屋で良い買い物も出来たので、そろそろ店を出ようとしたのだが……

 

 

「クラリッサ、買うのかその木刀?」

 

「む……木刀は土産の定番ではないのか?前に見たアニメで『修学旅行に来たなら、木刀を買わずに何を買う!』と言っていたのでな……木刀は鉄板だろう?」

 

「大間違いと言う程間違ってねぇってのが困りもんだなオイ……微妙な答えに対して、丸にするか×にするか、其れとも三角にするか悩む先生の気持ちが少~~しだけ分かった気がするぜ。」

 

「貴女が買いたいのならば買えばいいわクラリッサ……だけど、今日の日付と買った店の焼き印は必ず入れて貰いなさいな。その焼き印は、一生の宝物になるでしょうからね。」

 

「一生の宝物……ならば、焼き印を入れない選択肢はないな。」

 

 

クラリッサが直前でまさかの木刀を購入!

いや、今の時代中々木刀を土産物として購入する人は居ないと思うのだが、木刀の刀身に焼き印を入れて貰えば、其れだけで『世界に一つだけの土産』になる事を考えると、意外と悪いチョイスではないのかも知れない――日付と店名だけでなく、購入者の名前まで焼き印で入れてくれる訳だからね。

なのでクラリッサは、刀身に自分の名前も焼き印で入れて貰ったのだが、其れが『蔵理沙春芙御婦(クラリッサハルフォーフ)』だったのは、どこぞの『高層ビルの最上階から落下しても生きてる日本文化を間違いまくってるアメリカ人』の影響を受けてると言わざるを得ないだろう。

 

土産物屋を出た後は、娯楽施設へ。

レトロなビデオゲームや、純粋に点数を競う射的、ダーツやビリヤード、プリクラと言ったものがあって、クラリッサがインベーダーゲームでスコアをカンストしたり、一夏がダーツで五連続真ん中を達成したり、ロランがビリヤードで様々なトリックショットを披露したりして楽しみ、最後にこの温泉街限定フレームのプリクラを嫁ズ全員が一夏とのツーショットで撮って娯楽施設はお開きに。……尚、一行が去った後のビデオゲームのランキングは全て『C・H』が一位になっていた。ヲタの本気恐るべしである。

 

こうして温泉街を満喫した一行は、十八時半には旅館に戻り夕食の時間になるまで部屋でゲームをしたり、SNSに写真をアップしたりと自由に過ごしていた。

今更だが、一夏と嫁ズ同じ部屋と言う事は、当然寝るのも同じ部屋になる訳なのだが、別に一夏は緊張していたりはしない――女性と同じ部屋で寝ると言うのは既にIS学園の寮生活で慣れてるし、そもそもにして自分の嫁達と一緒の部屋で寝る事に何を緊張する必要があるのかだからな。

 

そんなこんなであっと言う間に時間は過ぎて十九時――夕食の時間だ。

旅館の仲居達によって運ばれて来た夕食は、最高級コースを予約しただけあって相当に豪華なモノだ。

今朝市場から買い付けた新鮮な魚介の刺身、近くの川で獲れる天然のアユの塩焼き、山菜と川魚(ハゼやナマズ)の天婦羅、旅館謹製の手作り豆腐、地元のブランド牛、ブランド豚、ブランド鶏の希少部位と旬のキノコの岩盤焼き、新じゃがの和風ヴィシソワーズ、そして山海の珍味をふんだんに使った竹の鍋まで!

 

 

「此れは、流石に凄いな?刺身の鮮度は抜群なのは当然として、まさかウニや今が旬の岩牡蠣まで出てくるとは思わなかったぜ。」

 

「天然モノのアユは香りが違うわよね~~♪塩も天然塩だから美味しさが際立つわ~~♪」

 

「ナマズは初めて食べましたが、あの見た目からは想像が出来ない上品で淡白な味わいですね?」

 

「あ、ヴィシュヌは初めてだったんだ?

 南米では普通にナマズ食べるから私的にはちょっと懐かしい味かな……まぁ、南米のナマズはアマゾンで捕れるバカでかいのばっかりだったから日本のナマズと比べると大味だったなって思うけど。」

 

「この豆腐は素晴らしいな。

 IS学園の学食でも豆腐を食べた事はあるが、此れは其れとは別次元の豆腐だ……まろやかでクリーミーな口溶けは、まるでクリームを食べているかの様だよ。

 このまろやかな口溶けと醤油の相性も素晴らしいね。」

 

「竹の鍋……まさか実在していたとは驚きだ。てっきり漫画の中だけだと思っていたが。

 だが、此れは確かに美味だな。竹の独特の香りが鍋の具材に染みて旨さを増大させているからな……夏場に熱い鍋と言うのも、此れは此れでアリだな。」

 

 

一行はその料理に舌鼓を打ち、豪華な夕食を楽しんだ――肉とキノコの岩盤焼きについて、塩派と醤油派とポン酢派に分かれて少しばかり議論になったりもしたが平和な議論だったので良しとしよう。

因みに僕は、肉は塩派でキノコは醤油派です。

 

そんな豪華な夕食を堪能した一行は食休みとして――

 

 

「ロン!大三元!!」

 

「マジ!?」

 

 

旅館内にあった雀卓で麻雀を楽しんでいた……高校生がやるモノではないかも知れないが、別に金品を賭けたりはしてない純粋なゲームなので問題は無い。って言うか、旅館内の雀卓で賭博とか普通にアウトだからね。

 

 

「負けちゃったか……シャツでいいかしら?」

 

「刀奈、お前なんで脱ごうとしてるんだ?」

 

「え?だって麻雀で負けたら脱ぐんでしょ?」

 

「其れは違う!いや、違ってないけど違う!其れは、ゲーセンの脱衣麻雀の話だから!普通の麻雀では負けて脱ぐルールなんて無いから!其処間違えるな!?」

 

「そんなルールはなかったのか!私も麻雀では負けたら脱ぐものだと思っていた。」

 

「クラリッサ、お前もかーい!」

 

 

まぁ、麻雀では負けた刀奈が脱ごうとしていたが、其れは一夏が全力で阻止した――クラリッサも負けたら脱ぐものだと思っていたみたいだが、クラリッサとは違って刀奈は分かった上でやっているので少しばかり性質が悪いかもだ。……尤も、其れも一夏が相手だからこそやる事なんだろうけどね。

 

そんな感じで食休みした後は、矢張り温泉だ!温泉旅館に来て温泉に入らないと言う選択肢はあり得ない!温泉旅館に来て温泉に入らないってのは、ラーメン屋に来てラーメン頼まずに炒飯頼む様なもんだからな。

そんな訳で一夏は露天風呂に――刀奈から『露天風呂に行ってね』と念を押されて露天風呂に来たのだが、露天風呂からの眺めは中々に良かった。

温泉宿の灯りが夜を照らしているが、其れは決して強い光ではないので、夜空の星の瞬きを阻害せず、満月の輝きを逆に引き立ててくれているからな……満月の光が差し込む露天風呂とか、其れだけで最高だろう。

 

 

「贅沢だな。」

 

「そうね、この上ない贅沢だと思うわ。」

 

「……んで、何で居るんだ?って、聞くだけ野暮か。」

 

 

その露天風呂を満喫していた一夏だったが、其処に嫁ズが現れて混浴状態に――いや、露天風呂は元々混浴なので問題ないのだが、こうもアッサリ入って来るとは思わないだろう。

なので、普通ならこの状況に野郎の方がテンパる所なのだが、一夏は至って冷静だ……まぁ、嫁全員とやる事やってる訳だから、今更バスタオル姿に驚くって事もないのかも知れないけどね。

 

 

「あら、意外と反応が淡白ね?」

 

「やる事やってんだから、今更恥ずかしがる事もないだろ?其れに、此れなら本当の意味で皆と一緒に温泉を楽しめるからな。ゆっくり露天風呂を楽しもうぜ。」

 

「愛する人との入浴……此れ以上の幸福はないかも知れない。」

 

「確かに、この上ない幸福な瞬間かも知れません――こう言っては何ですが、気恥ずかしさが全く無いのが不思議です。」

 

「其れはきっと、私達が一夏を愛してるからでしょ?真の愛の前には羞恥心は消え去るモンなんだよきっと。」

 

「其れは、新説かも知れないがあながち間違っているとは言えないかも知れないな?私達と一夏は互いに愛し合っているからこそ、こんな状況であっても恥ずかしさはなく、同じ時間を共有出来る事に対する悦びの方が大きいからね。」

 

 

取り敢えず、真実の愛は無敵です。誰が何と言おうと無敵です。

真の愛があれば、こんな状況であっても野郎の方が暴発する事なんざないのだ……なので一夏も嫁ズと普通に露天風呂を楽しむ事が出来ているのだ。此れが陽彩だったら、バスタオル姿の嫁ズが入って来た瞬間に露天風呂は乱交パーティの会場とかしていただろう。……もういっそ、去勢しちまえだマジで。

 

 

「最高の温泉旅行だな。」

 

 

嫁ズと一緒に温泉を堪能した後は、浴衣に着替えて部屋で嫁ズの髪のブロータイム!

グリフィン以外は短髪なので楽だったが、グリフィンはポニーテールを解くと腰の辺りまでの長髪になるのでブローにも時間が掛かる……其れでもサラサラヘアーにブローする一夏の腕前は相当だろう。一夏はIS競技者、料理人の他に美容師の選択肢もあるかも知れないな。

温泉を満喫した後も、一行は部屋で遊びまくったのだが、二十二時を回った所で全員に睡魔が襲い掛かり、そして寝る事に。

畳に布団と言うのが何とも旅館らしいが、布団の配置は一夏の両隣の頭部分に刀奈とヴィシュヌ、腕から下の両脇をロランとグリフィン、一夏の頭上の位置にクラリッサと言う配置になった……まぁ、此れなら全員が一夏に触れる事が出来るフォーメーションなので不公平は無いだろう。

 

 

まぁ、翌朝見事に一夏は嫁ズ全員に抱き付かれて身動きが取れなくなったんだけどね。

腕にヴィシュヌとロラン、足にグリフィンとクラリッサ、そして胸の上には刀奈……一体全体如何してこうなったなのだが、嫁ズは全員一夏と触れたいと思って、こうなってしまったのだろう、一夏を愛している証である。

だが、一夏が目を覚ました直後に嫁ズも目を覚ましたので問題なく拘束から一夏は解放された……身動きは出来なかったが、嫌な気分ではなかったので少しばかり残念そうだったが。

 

そんなこんなで起きた一行は、朝一番の温泉を堪能した後で朝食に。

朝食は昨晩の夕食の豪華さには流石に劣るが、地元米の白米、地元産のサバの日干し、納豆、味噌汁と言ったオーソドックスな旅館の朝食なので美味しく頂いた――納豆に添えられていた卵黄が、今朝生みたての卵だったのには驚いたがな。

更識ワールドカンパニーが運営するこの温泉旅館は、地元の漁師、農家と太いパイプがあるのだろう。そうじゃなかったら、こんな食事を提供する事は無理だと思うからな。

 

 

「其れじゃ、行くか。」

 

 

朝食を終えた一行は、旅館をチェックアウトし、土産物屋で『温泉玉子』、『温泉饅頭』と言った温泉旅行の定番の土産を買うと、そこからバスで駅に向かい、駅からは新幹線で帰路に。

時間的に新幹線での移動は昼時なのだが、帰りの昼食も行きの朝食同様に駅弁だ。

東京駅の様なバラエティに富んだラインナップではないが、此の温泉街だからこその弁当もあったので、其れを購入して帰りの新幹線も満喫して一行はこの夏最高の思い出を作ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、実は弾も虚と共に一夏達とは別の温泉街に温泉旅行に来ていたりしたのだが……

 

 

「ちょ、大丈夫ですか弾君!!」

 

「虚さんのバスタオル姿……我が人生に一片の悔いなし!」

 

 

露天風呂で虚と鉢合わせたその瞬間に弾は天に向かって拳を突き上げて燃え尽きた……まぁ、虚は中々のナイスバディなので、其れがバスタオル一枚で目の前に現れたとなればそうもなるわな。

だがしかし、其れが逆に弾と虚の距離を縮める事になったのか、その夜に弾は少年から漢になり、虚も少女から女になったのだった……取り敢えずおめでとうって言っておこう。

その翌日、虚が弾の顔を見れなかったってのも初々しくて可愛いわ……弾と虚の未来に幸あれだね。

 

 

何にしても夏休みも後半戦に入ったので、思い切り楽しんで沢山思い出を残さないとだ!!夏休みの思い出ってのは一生物の思い出になる事が少なくないのだかなら――夏の思い出ってのは、マジで大切だぜ。

 

夏休みの後半戦~終盤戦も、頑張って行きまっしょい!!

 

 

 

 

因みに、一夏と弾が最高の思い出を作っていた頃、陽彩達は千冬にコテンパンにされていたらしかった……千冬が稼津斗と温泉旅行に行ってる間にスコールからの精神攻撃を喰らいながらも折れてなかったのは大したモノだが、実技では矢張り千冬には勝てないようだ。

 

 

「俺達全員を一人で相手して呼吸一つ乱れてねぇとか、アンタバケモンかよ?」

 

「バケモノか……否定する気はない。

 だが、一夏と円夏は何れ私をも越える存在だ……いや、一夏の実力ならば、現役時代の私ならば兎も角として、引退して弱体化した今の私にだったら十回戦って五回勝つ事が出来るかもレベルになっているかも知れん。最早一夏の成長速度は、私の予想を超えているからな。

 だからな、今の私に勝てぬようでは、一夏に勝つ事など絶対に出来んぞ?」

 

「!!」

 

 

そんな陽彩に千冬はトドメとも言える一言を放つ――引退した今の千冬を越えて居ると言うのは相当だからね……現役時代と比べると劣っているとは言っても、今も千冬は最強クラスなのだから、其れを越えてるってのは相当だろう。

 

 

「(そんな馬鹿な……一夏の野郎が千冬を越えてるだと?嘘だ、そんな事ある筈がねぇ!二学期になったら、俺が其れを証明してやる!)」

 

 

其れを聞いた陽彩は、其れを心の中で否定するが、残念だけど千冬が言った事は真実なんだよね……全盛期の千冬ならば一夏を圧倒しただろうが、既に引退し、そんでもって必要最低限の鍛錬をしていただけの千冬と、己を追い込んでいた一夏では差が無くなっているのは当然の事なのだから。

陽彩は二学期で下克上を狙っているみたいだけど、其れは間違いなく成功する事は無いだろな……だって、見習い神の気紛れで転生した陽彩と、真の神から愛されまくった一夏と嫁ズではそもそも勝負にならんからね。

 

取り敢えず夏休みもそろそろ終盤戦、次は何が起きるか楽しみだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued 

 

 

 

 

 

 

 

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