夏と刀と無限の空   作:吉良/飛鳥

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クリスマスパーティってのはBy一夏     思い切り盛大にやるモノよね!By刀奈     派手に行こうじゃないか?Byロラン


Episode71『Freuen wir uns auf die Weihnachtsfeier』

一夏が平行世界から帰還した二日後、世間は間近に迫ったクリスマスに盛り上がりを見せていた――スーパーでは、普段は中々出る事のない丸鳥や骨付きのもも肉が売られ、おもちゃ屋では子供に人気の賞品が大特価となっているだけでなく、貴金属店やファッションショップなんかもクリスマスセールの真最中!

一年でも稼ぎ時なので、どの店も気合が入っているようだ。

 

そんな中、刀奈を除く一夏の嫁ズは祖国の家族へのクリスマスカードを作り上げてプレゼントと共にエアメールで送っていたのだが、グリフィンだけはクリスマスカードとプレゼントを送っていなかったりする。

正確に言うと家族へのクリスマスカードとプレゼントは送ったのだが、孤児院へのクリスマスカードとプレゼントは送って居なかった。

と言うのも、孤児院へのクリスマスカードは完成しているのだが、肝心のプレゼントが決まっていないのだ。なので、グリフィンは一夏と共に、近所のおもちゃ屋に孤児院の子供達へのプレゼントを買いに来ているのである。

 

 

「孤児院の子達へのプレゼント、何が良いかな一夏?」

 

「グリフィンからのプレゼントなら、何でも喜んでくれるんじゃないかな。」

 

「其れ言われたら元も子もなくない?あの子達が本当に喜んでくれるようなモノにしたいんだけど、手作りでおもちゃ作るのは難しいだろうし……あ~~、もう悩んじゃうよーーー!!」

 

「ならさ、孤児院にはテレビは有った訳だし、ゲーム機一台と、皆で遊べるゲームソフト何本かプレゼントするってのは如何?スマブラとかリングフィットネスとか。」

 

「あ~~、其の手があったか!確かに其れなら皆で楽しめるかも!其れに、あの子達テレビゲームとかやった事なかった筈だから。」

 

「其れから、新しいサッカーボールとかもアリかもな?夏休みに行った時に見たサッカーボール、大分使い込まれて年季が入ってたからな……ゲーム買った後は、スポーツ用品店だな。」

 

 

孤児院の子供達へのプレゼントについて悩んでいるグリフィンだったが、一夏のアドバイスを受けて任天堂のSwitchと、スマブラやリングフィットネス等の『大人数でプレイ出来るゲームソフト』を数本購入する事に。

金額的には結構な額になるのだが、『俺のアドバイスでこうなったし、グリフィンの弟や妹なら俺の妹や弟でもあるから半分だけ出させてくれ』と、一夏が半分だけ負担してくれた――満額負担ではグリフィンからのプレゼントにはならないので其処は考えているのだろう。

序に、半額だったらグリフィンもそんなに抵抗はなく受け取って貰えると思ったと言うのもあるだろうな――実際にグリフィンは『えっと、そう言う事なら。』と、割と素直に半額受け取ってくれたからね。……嫁に気を使わせ過ぎない話術も会得してるとか、ドンドン一夏が進化している気がしてならない。

 

ゲームをプレゼント用に包装して貰った後は、スポーツ用品店でサッカーボールを購入したのだが、スポーツのDVDも売っていたので、『サッカーの試合のDVDも一緒に送ってやったら喜ぶんじゃないか?』と一夏が提案すると、グリフィンは『あの子達ってサッカーよりも格闘技の方が好きなんだよねぇ。』と言ったので、去年の大晦日に放送された『RIZIN』のDVDと、今年の『1.4 新日本プロレス東京ドーム大会』のDVDをサッカーボールと一緒に購入して、此れもプレゼント用に包装して貰った。総合格闘技とプロレスの両方のDVDを購入する辺り、一夏もグリフィンも流石に格闘技の事を分かっていると言えるだろう。

リアルな格闘技を楽しめる総合格闘技と、派手で『魅せる』要素が満載のプロレスは夫々違った面白さがあると同時に、双方を知るからこそ夫々の技術の違いと凄さと言うモノが分かる訳だからね――特にプロレスは、難しい事考えずに頭を空にして楽しむ事が出来るので、子供には総合格闘技よりも楽しめるかも知れない。

 

無事に購入したプレゼントは、クリスマスカードと共にブラジルの孤児院宛に発送し、グリフィンも此れで故郷の家族へのクリスマスカードとプレゼントを全て送る事が出来た訳である。

 

 

「そんじゃ、グリフィンの用事は済んだから、昼飯の材料買って帰るか。」

 

「今日のお昼ご飯何?」

 

「今日は丼物にしようかと思ってる。玉ネギが沢山あるから、牛丼か豚丼かカツ丼か親子丼って所だな……ドレになるかは、肉屋でどの肉がお買い得か次第だ。」

 

「ふと思ったんだけど、エビカツをカツ丼風に仕上げたら結構イケるんじゃないかな?」

 

「エビカツ丼……メンチカツ丼のメンチカツをエビカツに変えるって考えると意外とアリかもしれないな?……料理ってのは思い付きも大事だから、『此れはアリかも』って思ったら、やってみるのが良いってな。

 そんじゃ予定変更してむきエビとエビのすり身買って帰るぞ。」

 

 

そんでもって本日の昼食は、グリフィンの思い付きで『エビカツ丼』に決定した。そして、実際に作ってみたらフワフワの卵と玉ネギの甘味、エビカツのサクサク感とプリプリ感を醤油ベースの出汁が纏めて非常に美味な逸品に仕上がり、全員が満足したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏と刀と無限の空 Episode71

『Freuen wir uns auf die Weihnachtsfeier』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、十二月二十四日のクリスマスイブ、昼食を済ませた一夏達は家のリビングをパーティ用に飾り付けていた。

日本では割と勘違いされがちだが、クリスマスは二十四日のイブの夜を盛大に祝って、二十五日のクリスマス当日は教会で祈りを捧げるのが正しいやり方だ――従って、サンタクロースにプレゼントを入れて貰う靴下も、イブの夜にセットするのが正しいのだ。イブの夜にセットする事で、クリスマス当日にサンタからのプレゼントが届いていると言う訳である。

 

 

「にしても、まさか束さんからこんなに馬鹿デカいツリーが送られてくるとは思わなかったぜ……一番上の星を飾るのに、俺でも椅子に乗らないと届かないじゃないか此れ。つか、この家じゃなかったら絶対に飾れねぇからな此のツリー。」

 

「だからこそ束博士も送って来たのでしょうね……でも、確かに此処まで大きいと飾り付けをするのも一苦労だけど、若しかしたら、将来私達の間に子供が出来た時に、家族皆で飾り付けが出来るようにって考えてこんなに大きなツリーを送ってくれたのかも知れないわね。」

 

「その可能性はあるかも知れないけれど、其れは私達が一夏と結婚して子供が出来てからでも遅くはなかったのではないかな?」

 

「ロラン、束さんには言うだけ無駄だ。束さんは良い人だけど、世紀の天才である上に、自ら『正義のマッドサイエンティスト』って名乗っちまうような人だから、大凡一般人の理論なんぞ通じねぇって。

 其れでも、人間の言葉で会話が出来るから真面な部類だとは思うけどな。」

 

 

でもってリビングの飾り付けが一通り終わった一夏達は、束から送られて来た全高2.5mはあるであろう巨大なクリスマスツリーの飾り付けを行っていた……恐らく刀奈の予想は当たって居るだろうが、だからと言って此れだけ巨大なクリスマスツリーを送ってくるとは、流石は束と言った所か?此処で『普通のツリーを送れよ』と思ってしまうのは、凡人――とは言えないわな。一夏も嫁ズも凡人の域に収まる人間じゃない訳だからね。

結論として、『ぶっ飛び過ぎた天才の思考は、超人にも理解出来ない』って事になるのだろう……こんだけぶっ飛んだ思考形態をしていながら、一般人と普通に話が出来るのだから、此の世界の束は真面だと言えるだろう。

平行世界で、『頭のネジが数本吹っ飛んでる、IQは高いかも知れないけど思考形態が我儘で癇癪持ちのガキ』な束と出会った一夏からしたら、此の世界の束は、色々ぶっ飛んではいるモノの『人間の言葉が通じる』ので、安心出来る存在なのだろうね。

 

 

「兄さん、此の電飾、LEDなのは当然として、色が七色に変わるぞ!」

 

「其れ位の電飾は、最近じゃ珍しくもないんじゃないか?LEDも日々進化してるから、周期的に色が変わるLED電飾ってのもまだ多くはないけど、少なくない数があるみたいだからな。」

 

「雪を表現する為の綿、思い切り握っても潰れずに柔らかさを保っているぞ!」

 

「天然の綿じゃなくて、合成繊維を使えば潰れない綿を作る事は出来るだろ?束さんだったら、『百年使っても潰れない布団』を開発しても驚かないからな。」

 

「其れだけじゃないんだ兄さん、此の丸い飾りは顔が付いているだけじゃなくて喋るんだ!」

 

『はいドーモ。スマイリーでーす。』

 

「こう来るとは思ってなかったぜうん。束さん、スマイリーさんに許可取ってんのか此れ?」

 

『取ってないとおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……オリジナルメロン!』

 

「そんな所まで忠実に再現すんなって。つか、無許可とか大問題だろ流石に。」

 

 

其処からも割と突っ込みどころが満載の飾りが出て来たのだが、白い玉形の飾りが、まさかの仕様であった事には一夏も電飾や雪を表現する綿とは違って、普通に突っ込みを入れてしまった……まさか、大人気ユーチューバーをぶち込んで来るとは思わなかったみたいだ。

まぁ、こんな事がありはしたが、クリスマスツリーも無事に飾り付けが終わり、リビングは完全にパーティ仕様になった訳である。

 

 

 

――ピンポーン!

 

 

 

此処でインターホンが鳴り、一夏が玄関のドアを開けると、其処には簪、乱、本音、夏姫、静寐の姿が――此のクッソ広い家でのクリスマスを、織斑兄妹と一夏の嫁ズだけで過ごすのは、少しばかり寂しいと言う事で、刀奈が簪を誘い、刀奈の誘いを受けた簪が夏姫を誘い、円夏が静寐を誘い、一夏が他のメンバーを誘っていたのだ。

一夏は、レインとフォルテ、虚や清香と癒子にも連絡を入れていたのだが、レインとフォルテは二人でイブを過ごす予定があるらしく、虚も予定があり、清香と癒子も夫々予定がある為、織斑家のクリスマスパーティには参加しない方向になったのだ。

清香と癒子の予定が何であるかは分からないが、虚の予定は間違いなく弾とのクリスマスデートだろうな……一夏の嫁ズが全員美人なのは言わずもがなだが、弾も、『眼鏡の超絶知的美人』を彼女に出来たのだから恋愛に関しては此の上ない勝ち組であると言っても過言ではあるまい。弾も完全にリア充になって居ると言う訳である――ま、弾と虚も恋人同士の甘いクリスマスイブを過ごして下さいだな。

 

そんでもって、一夏は千冬の事もクリスマスパーティに誘っていたのだが、千冬は千冬でクリスマスイブは稼津斗と過ごす事が決まっていたみたいなので、其方を優先して貰う事にした。

稼津斗以外に、千冬の相手が出来る男性は居ないと一夏は思っているので、稼津斗と共に過ごせる時間があるのならば、其方を優先すべきだと考えたのだ……実際には千冬が稼津斗に、『クリスマスくらいは一緒に居てくれるんだろうな?』と圧力を掛けたから、稼津斗と過ごせるようになった訳なんだけどね。

まぁ、恋人の事をほったらかしにして、世界中を放浪してる相手には此れ位の事を言っても罰は当たらんだろう――『世界最強』と持て囃されていると言っても、千冬も年頃の女性なので、クリスマス位は惚れた相手と一緒に居たいと思うのは至極当然の事であると言えるからね。

 

なので、千冬は只今、稼津斗とのクリスマスデートを絶賛満喫中なのだ――IS学園では『鬼教官』とも言われている千冬が稼津斗と恋人繋ぎをして、IS学園の生徒には絶対に見せる事はないであろう笑顔を浮かべていると言うのは、パパラッチやマスゴミからしたら特ダネなのかも知れないが、そう言った輩は、束製のアンドロイドの『T-はっぴゃっ君』が潰していたので問題はなかろう。

束は千冬にほの字であった百合なのだが、だからと言って千冬が選んだ相手に文句を付けるなどと言う無粋な事はせずに、束は心の底から千冬の幸せを願っているのだ。束さんマジで良い人ですわな。

 

 

「此れでメンバーは全員揃ったから、俺と嫁は買い出しに行って来るわ円夏。留守番宜しく!って言っても、仮に強盗が入ったとしても、此の面子なら強盗の方がこの世の終わりを体感するかもだけどな。」

 

「任されたよ兄さん……強盗が入ってきたその時は、ギッタンギタンの九割殺しにしてやるさ。」

 

「容赦ないね円夏……一割だけ生きてるって事が優しい、のかな?寧ろ九割殺しで苦しませるよりも、いっその事一撃で昇天させてあげるのが優しさなんじゃないかなって思うんだけど。」

 

「クズに優しさなど要らん。クズには、相応の苦しみを与えてこそだからな……ククク、私達に敵対の意思を示した者には、其れを後悔する程の苦しみを与えてやる。

 私は世界中の拷問を熟知しているからな!!」

 

「いや、そんなモノ何処で覚えたの!?」

 

「YouTubeの『看守先輩と後輩君』と『伊集院茂夫』を見てな……いやぁ、特に伊集院茂夫が外道に裁きを下すのは実にスカッとする物がある。看守先輩の刑務所のメンバーのサイコパスっぷりも中々だがな!」

 

「彼女が結構ヤバめの漫画動画見てた!?」

 

 

メンバーが揃ったところで、一夏は嫁ズと買い出しに出掛けると言って、留守を円夏に任せたのだが……円夏の思考形態が中々にバイオレンスだった。

強盗と言うのは確かにヤバい存在かもしれないが、其れを半殺しを超えた九割殺しにするなんて事は円夏でなくては言う事は出来ないだろうな。

逆に言うなら、其れだけ家族の事が大事って事なのだけれどね――世界中の拷問を熟知していると言うのは、誇るべきモノであるのかと言う事に少しばかり疑問が無くはないが、円夏が得意げに言っているのと、静寐がキッチリ突っ込みを入れているのを見て、『自分が無粋な突っ込みはすべきではない』と一夏も考えて、詳細は聞かずに嫁ズと共に買い物に繰り出して行ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

やって来たのは毎度お馴染みの商店街。先ずはクリスマスパーティで使う追加食材の購入だ。

骨付きのラム肉は、冬休みに入ってスグに買って冷凍してあるのだが、今日のパーティの人数分には足りていないし、加えてグリフィンが沢山食べるであろうから追加での購入が必要になったのだ。

 

骨付きのラム肉ってのは、普段は中々売ってるモノでは無いのだが、クリスマスシーズンになるとスーパーの精肉コーナーだけでなく、食肉専門店でも扱っているので購入は容易いのである。

 

 

「一夏、二十本は流石に買い過ぎじゃない?冷凍してあるのと合わせると三十本越えてるわよ?」

 

「パーティの参加人数は十二人で、一人二本あてで二十四本になるんだけど、グリフィンが絶対に二本以上食べるだろうし、意外とのほほんさんが食べるんじゃないかとおもってな。」

 

「ラムチョップなら十本は軽く行けるよ私?」

 

「よし、追加でもう十本買っておくか。」

 

 

先ずは肉屋で、骨付きラム肉を最終的に三十本と、オードブル用の牛タンのスモークを購入した。買い物後に、肉屋のおばちゃんからコロッケをサービスして貰うってのも最早お馴染みの光景になりつつある。学園の長期休暇の時くらいにしか利用しない商店街ではあるが、一度の買い物の単位が割と大きいので、一夏はもとより刀奈達もスッカリ馴染みの客になって居ると言う訳だ。

 

肉屋で骨付きラム肉と牛タンのスモークを購入した後は、魚屋でカルパッチョの材料としてサーモン、寒ブリ、マグロの刺し身用のサクと、ピザ用のホタテとイカとエビを購入し、八百屋でケーキ用のフルーツとピザ用のマッシュルームを購入し、スーパーではケーキ用の生クリームと製菓用のチョコレート各種とクリームチーズ、ピザ用のオリーブの水煮缶とアンチョビの缶詰、オードブル用のカマンベールチーズ、そしてノンアルコールのシャンパンを購入。クラリッサは自腹で自分用のビールも買っていた。エビスである辺りに何やら拘りを感じるね。

因みに、スーパーではクリスマス企画として、今日と明日限定で『二千円以上お買い上げのレシート一枚で、クジ一回』と言うモノを行っており、一夏が此のクジに挑戦した所、特賞の『特選!北海道のブランド海鮮』を当て、期せずしてタラバガニの刺し身用脚肉、生食用のバフンウニ、刺し身用ホタテの貝柱、イクラの塩漬け、イカの耳だけを使ったイカの塩辛を入手する事に……イカの塩辛は千冬の酒の肴として渡せるだろうが、他は生物なので早めに消費した方が良いだろう。

なので、此れ等の食材を手に入れた一夏は、即座に今夜のクリスマスパーティのメニューを再構築していく……普通ならば、結構悩むであろう事も、一夏クラスの主夫になるとあっと言う間に解決出来るらしく、景品を手にした十秒後には、『よし、思い付いた』って言ったのだからマジでハンパないわ。一夏に『キング・オブ・主夫』の称号を与えてもきっと誰も文句は言わないだろう。……文句を言わないのではなく、文句を言えないと言うレベルだろうけどな。

 

 

そして買い物が終わった後は、家に戻ってクリスマスパーティの準備に取り掛かり、キッチンは一気に戦場と化した!

クリスマスディナーは、一夏と嫁ズが作る事になっており、夫々が調理を開始して行く――ロランは、ケーキ担当なので其方をメインに進めているのだが、其れ以外のメンバーは一夏の指示を受けて料理を作り上げているのだ。

 

 

「一夏、ラムチョップは塩釜焼にするけど、塩釜に香草を入れた方が良いよね?タイムって有ったっけか?羊料理にはタイムは必須の香草なんだけど。」

 

「上から三番目の引き出しに、乾燥タイムの粉末が入ってるから其れ使ってくれ。同じ所に、フライドガーリックの粉末とか、ミルに入ったブラックペッパーも入ってるから適当に使ってくれ!

 はい、サーモンと寒ブリとマグロの飾り切りの出来上がり!」

 

「其れを、スライスオニオンを敷いた皿に盛りつけて、ホタテの貝柱と生ウニとアボカド、タラバガニの脚肉を飾って、オリーブオイルと塩と胡椒で味付けをして、最後にミントの葉を沿えればカルパッチョの完成ね。」

 

「クラッカーの上に個別の具材を乗せる事で多種多様な味を生み出す事の出来るカナッペは、オードブルには最適だな……牛タンスモークとカマンベールチーズ、イクラとカマンベールチーズの組み合わせは間違いなく美味だろうが、スモーク牛タンとイクラの組み合わせと言うのは如何なのだろうか?」

 

「意外とイケるのかもしれませんよ?」

 

「……明太マヨネーズとキムチの組み合わせは如何だろうか?」

 

「美味しいとは思いますが、其れは何方かと言うとお酒のお摘みのような気がしますね……」

 

 

一夏と嫁ズの連携は見事と言う他なく、次々とクリスマスパーティの御馳走が仕上がって行く。

オードブルのカナッペとカルパッチョ、エビとイカとホタテとアンチョビのピザ、星形に抜いた野菜とベーコンのコンソメスープ、メインディッシュの骨付きラム肉の香草塩釜焼――だけでなく、刀奈がコンニャクと海藻の和風サラダと野菜スティックと三種のディップソース(味噌マヨネーズ、サウザンアイランドソース、明太マヨネーズ)を、ヴィシュヌがエビとパクチーのタイ風生春巻きを、ロランがケーキとは別に作っていたガーリックシュリンプを、グリフィンがコンソメで煮込んだロールキャベツを、クラリッサがパーティメニューの定番スナックとも言えるフライドチキンと三種のフライドポテト(塩、カレー、チーズ)を作ってディナーのメニューを更に豪華にする。

此れだけでも相当に豪華なのだが、ロランが作り上げたケーキは、オーソドックスなチョコレート味のブッシュ・ド・ノエルと、最近大流行のバスク風チーズケーキをレアチーズケーキ味のチーズクリームでデコレーションしたモノで、デザートも豪華極まりないモノだったのだ。ブッシュ・ド・ノエルの出来栄えも、チーズケーキのデコレーションも素晴らしく、ネットに上げたらバズる事間違いなしと言えるだろう。それ程までにロラン作のケーキは芸術性が高いのである。

一夏も嫁ズも、大勢でのクリスマスパーティと言う事で相当に気合が入ったのは間違いなかろうな。

 

こうして完成した御馳走をテーブルに並べ、グラスに飲み物を注いだら――

 

 

「「「「「「「「「「「「メリー・クリスマス!!」」」」」」」」」」」」

 

 

乾杯をしてからパーティスタート!

尚、今回のクリスマスパーティは人数が人数なので、立食式のパーティとなって居るのだが、其れが出来るのも、此の家の内部が外観の三倍以上と言う広さがあるからだろう……トンデモナイ魔改造ではあったが、束のやった事は間違いではなかった訳である。まぁ、家主の許可を取らずに勝手に改造すると言うのは、普通ならば余裕で犯罪なのだけれどね。

 

 

「此のピザ、耳の部分にチーズが仕込まれている!若しやピザ生地も手作りしたのか兄さん!」

 

「何を当たり前の事を……折角パーティやるってのに、ピザ生地を市販品で済ませると思うか俺が?生地も手作りした方が絶対に旨いんだって。耳の部分にチーズやソーセージを入れるってアレンジも出来るしな。」

 

「このサラダのコンニャク、何だか食感が違うのが入ってる?」

 

「正解よ静寐ちゃん。歯応えの良い少し硬めの刺し身コンニャクと、とろける様な食感のトロ刺し身コンニャクを使ってるの。コンニャクだけじゃなくて、海藻も複数使ってるから色んな食感が楽しめる筈よ♪」

 

「この骨付きラムも美味だね。肉は柔らかく仕上がっているし、香草の配分も申し分ないよ。」

 

「えへへ、肉料理には自信があるんだよね~~?……本音を言うなら、豚の丸焼きか羊の丸焼きをやりたかったんだけど、流石に家庭のオーブンじゃ無理だし、そもそも日本じゃ、豚や羊を丸ごと一頭売ってないしね。」

 

「自分で畜産農家やるか、あるいは農家から直買いだな。」

 

 

一夏達が作った料理は当然の如く大好評で、全員の胃袋を満たして行く。

刀奈の作った野菜スティック用のディップソースと、ヴィシュヌが作った生春巻き用のタレは、フライドポテトを付けても絶品であり、あっと言う間に無くなって追加で作った程である。

 

そして料理だけでなく飲み物も、ノンアルコールのシャンパンだけでなく、一夏が事前に購入していたトニックウォーターや炭酸水と各種フレーバーシロップを使って色とりどりノンアルコールのカクテルを幾つも作り上げてパーティのテンションを上げて行く……料理人だけでなく、バーテンダーとしても働けそうであるな一夏は。コイツの才能は無限大か?

 

 

「ビールの本場はドイツだが、味に関しては日本のビールの方が上であると認めねばならん様だな。」

 

 

パーティ参加者の中で唯一成人しているクラリッサは、自腹で買ったビールを飲み、既に500mlの缶が五本空いているのだが、クラリッサは全く酔った様子はないどころか、顔に赤みすら差していない素面と変わらない様子だ……まさかとは思うが、人工的に生み出された存在故にアルコール分解能力も常人の其れよりも強化されていると言うのだろうか?だとしたら若干ドイツは『技術の無駄遣い』な訳だが、酒は『楽しんで飲めるまでが酒』であり、酔い潰れたり、酔っ払って周囲に絡んだりするのは酒の飲み方としてNGであるので、幾ら飲んでも酔わないってのは、酒を楽しむ上では最強のスキルであると言えるだろう。――若しかしたら、クラリッサは既にドイツで飲み比べを挑んで来た軍人を酔い潰しているのかも知れん。

 

 

「追加のピザ焼けたぞ。

 今度はトマトソースを塗らない代わりに、生のトマトをトッピングしてみた。でもって、今度のは耳の部分にチーズじゃなくてソーセージを仕込んであるんだが……」

 

「ファイヤー!!?」

 

「そのソーセージは、ヴィシュヌが作ったキャロライナリーパーを使用した激辛チョリソーだから気を付けろよ……って、遅かったか。ヴィシュヌ、やっぱキャロライナリーパーはヤバ過ぎたって。ハバネロに抑えとけよ。」

 

「キャロライナリーパーの気絶しそうな辛さは、何と言うか止み付きになる中毒性があると言いますか……其れと、チーズとの相性がいいので、ピザには割とイケるのではないかと思いまして。」

 

「まぁ、確かに皆、『辛い!』と言いつつも二枚目に手を伸ばしてるけどさ……」

 

 

……料理の中には若干の劇物も混じっていたみたいだが、其れも味其の物は美味だったので直ぐに無くなった。……激辛ピザを食した事で、全員の体温が上昇して、真冬であるにも関わらず薄着になると言うハプニングがあったが。

 

結構な量があった料理も、一流のアスリートが揃っているパーティでは残る事なく完パケし、デザートのケーキ二種も美味しく頂いた――カットする前に、一夏がスマホで写真を撮って、Twitterに『嫁が作った芸術的なクリスマスケーキ』としてアップして、あっと言う間に五千件を超える『いいね』が付く事になった。世界的有名人である一夏の呟きには、反応も大きいのだろうな。

 

そして、食事が終わった後は、これまたクリスマスパーティの定番であるプレゼント交換なのだが、これも普通のプレゼント交換ではなく、夫々のプレゼントに番号を振ってからクジを引き、引いたクジの番号のプレゼントを手に入れると言うモノになった――この方法だと、自分で買ったプレゼントを自分でゲットする可能性もあるのだが、其れだけにドキドキ感が極めて高くなるのだ。

 

 

「俺は十一番……デカいな?中身は……『1/60スケールPGストライク・フリーダム・ガンダム』か。」

 

「あ、其れ私の。」

 

「簪のだったのか。

 PGを作るのは初めてだけど、折角だから拘って作らせて貰うぜ――取り敢えず内部フレームをメッキゴールドで塗装するのは当然として、全体にエクストラフィニッシュ加工をして、目の部分はクリアイエローで塗って頭部に電飾仕込んで光るようにするか。」

 

「アタシは……八番!

 此れは、包丁のセット?」

 

「あぁ、其れ俺のだ。京都の刀鍛冶が作り上げた一流の料理人御用達の包丁のセットだから、其れを使って絶品の料理を作ってくれ。序に、専用の砥石も入ってるから手入れは怠るなよ?」

 

「んな!この包丁セット、いったい幾らした訳!?」

 

「渋沢さんが軽く二十枚は羽ばたいて行ったぜ……だけど、クリスマスのプレゼントなんだから此れ位はやらないとだよな?折角のクリスマスプレゼントに、金をケチって二流品を送れるかぁ!」

 

「アンタ、金銭感覚ちょっとバグってない!?」

 

 

そのプレゼント交換会では、一夏がまさかの超高額品を用意していたのだが、『クリスマスプレゼントに二流品を送る事は出来ない』ってのが実に一夏らしいと言えるだろう。

プレゼント交換用のプレゼントとは別に、嫁ズへのプレゼントを用意している一夏だが、嫁ズへのプレゼントは勿論一流品であるのは言うまでもないが、プレゼント交換用のプレゼントであっても、一流品を用意するとは、これぞ一流の男と言えるだろう……まぁ、一般的な男子高校生とは比べ物にならない貯金があるからこそ出来る事ではあるんだけどね?

貯金額が六百万円を超えてる男子高校生なんぞ、世界広しと言えども一夏位なモノだろうな――其れを言ったら、刀奈と円夏と簪も貯金額が六百万を超えてる現役JKなんですけどね……取り敢えず、更識ワールドカンパニーに所属していると、結構いい額の給料が貰えるのは間違いないと見て良いだろうね。

 

プレゼント交換を終えた後は、カラオケマシーンを起動してカラオケ大会が開催された――住宅街での大音量でのカラオケってのは、普通は近所への迷惑になるのでNGなのだが、束が魔改造した此の家は防音性能100%なので、近所を気にせずにカラオケ大会が出来るのである!出来るのである!大事な事なので二度言いました。

 

そのカラオケ大会では夫々が自慢の美声を披露したのだが、そんな中でもぶっちぎりの得点を叩き出したのは、一夏と刀奈がデュエットした、『HIGH and MIGHTY COLOR』の『遠雷』だった――刀奈のメイン部分と一夏のラップ部分が良い感じにかみ合い、最高得点を叩き出したのだ。

と言うか、得点のトップ5は一夏&刀奈を筆頭にした一夏と嫁ズのデュエットが独占していると言うのだから、一夏と嫁ズはマジでハンパないわな……コイツ等は、バンドを結成してやって行けるのかも知れん。

 

でもって、その後もパーティは盛り上がり、日付が変わる辺りまでどんちゃん騒ぎが続き、そしてパーティ参加者は全員が織斑家に泊まる事になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「思った以上に盛り上がったけど、こう言うクリスマスも悪くないよな。」

 

 

パーティ後、嫁とのプレゼント交換をした後、一夏は風呂を浴びて寝室へと向かっていた。

一夏から嫁ズへのプレゼントは、既に指輪は送っているので、貴金属の類ではなく実用性のある腕時計だった――とは言っても、ベルトは本革製で、文字盤にはソーラーバッテリーが搭載されている高級品なんだけどね。

でもって、嫁ズが連名で選んだ一夏へのプレゼントも奇しくも腕時計だった――ベルトが本革製なのは言うに及ばずだが、電池交換不要のソーラーバッテリーを搭載している上に、絶対に狂う事のない電波式で、文字盤は一夏好みのアナログ式と言うモノで、一夏はとても喜んだのだった。

 

でもって、寝室のドアを開けると――

 

 

「「「「「メリークリスマース!」」」」」

 

 

其処には、獣耳を装備したミニスカサンタが五人も居ましたとさ……ビキニサンタでなかった辺りに、まだギリギリの常識が見て取れるが、獣耳を装備したミニスカサンタの破壊力ってのは、最上級特殊能力を発動したオベリスクの巨神兵と同等である!

なので、其れを見た一夏は、寝室の鍵を閉めると……

 

 

「実に見事なお手前で。」

 

 

柏手を打って拝んだ後に、夜のISバトルに突入し、聖夜は性夜になったのだった……まぁ、一夏と嫁ズの夜の営みは、愛を深くするモノであるから問題はマッタク持って何処にも無い!真の愛の下で行われるセックスは純愛の証と言っても過言ではないからね。

取り敢えず、一夏と嫁ズは実に満ち足りた聖夜を過ごしたと言うのは間違いないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏達がクリスマスパーティを楽しんでいた頃、千冬は稼津斗と共に、高級そうなレストランに足を運んでいた――クリスマスデートを堪能した後に、稼津斗が『クリスマスのディナーを予約している』と言ったので、このレストランにやって来たのだ。

でもって、此の店はドレスコードも必要になるので、稼津斗はスーツを、千冬は貸衣装のドレスを着用しているのである。

 

 

「まさか、此れほどの店を予約していたとはな。」

 

「千冬さんから連絡を貰ってから、直ぐに予約を入れたんだけど、気に入って貰えたかな?」

 

「あぁ、とても気に入ったよ稼津斗。

 眺めは良いし料理も旨い……何よりも、このワインが最高だ。此れは、ブルゴーニュの白か?メイン前の魚料理には相性抜群だな。」

 

「なら良かったよ。」

 

 

そのディナーも満喫し、その後はホテルで二次会を行った後に、思う存分ベッドで愛し合った……稼津斗と千冬も、順調に愛を育んでいるのは間違いなかろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏が嫁ズと仲間達と、千冬が稼津斗とのクリスマスイブを過ごしていた頃……

 

 

「シングルベール、シングルベール、今年も一人~~。ちーちゃんがカヅ君とラブラブの今、束さんの運命人は一体何処に居るのかな~~?兎さんは寂しいと死んじゃうから、束さんもそろそろパートナーが欲しい年頃だよ~~。」

 

 

更識ワールドカンパニーの『南風野吏』のラボでは、束が一人寂しくクリスマスを祝っていた……一本の蠟燭が立てられた、コンビニで購入したショートケーキと、スーパーで購入したローストチキンが哀愁を誘う。

『パートナーが欲しい』とは言っても、その理想がクッソ高いので、束のパートナーってのは未来永劫現われないかも知れないな……スペックが高過ぎると言うのは、思いのほか枷になるのかも知れないな。

 

 

「私は一人だけど、いっ君とちーちゃんの幸せそうなクリスマスを見れただけでも束さんは満足なんだけどね!」

 

 

前言撤回。この兎、一夏達のクリスマスパーティと、千冬のクリスマスディナーを盗撮して、其れを見て何やら満足していた……実害はないだろうが、如何に親しい間柄であるとは言っても、盗撮は普通に犯罪です。良い子も悪い子も真似しちゃダメです。真似したら逮捕されるから、絶対にやっちゃダメよ?

天の声とのお約束だ。この約束を破ったら、物理的に千本の針を飲ませるのでその心算で!

そんな中――

 

 

『束……貴様見ているな?』

 

「ちーちゃん、如何して分かったし!」

 

 

自身を盗撮しているカメラの存在に気付いた千冬が、束に最上級クラスの威嚇をかました上で、カメラを破壊し、モニターは砂嵐に……此れにより、千冬と稼津斗の彼是は此れ以上は観測出来ないだろう。

 

 

「ちーちゃんの方は無理か……なら、いっ君の方を見させてもろうかな。」

 

 

千冬がダメなら一夏でと言うのは中々に最低の思考であると言えるのだが、一夏の方を覗き見た束は、速攻で鼻血を噴出して気を失う事になった――まぁ、覗き見たその先で、一夏が嫁ズと愛が溢れる夜の営みを行ってるとなれば、其れも仕方あるまいな。

一夏が嫁ズと、千冬が稼津斗と最高のクリスマスイブを過ごす中、束は鼻血の海にその身を沈めると言う、何ともアレなクリスマスイブを過ごす事なったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日のクリスマス当日の朝――

 

 

「兄さん、サンタからのプレゼントが二個来ていた。」

 

「「「「「「!!」」」」」」

 

 

円夏が言った事に、一夏達はその身を震わせた。

円夏はこの歳になってもサンタ・クロースを信じている純真な心の持ち主であり、イブの夜には枕元に靴下を用意しているので、今年は一夏と嫁ズが金を出し合って買ったプレゼントを靴下に突っ込んだのだが、其れとは別にプレゼントが来ていたと言うのだ。

 

 

「まさか、サンタクロースは実在していたってのか?」

 

「その可能性は、否定出来ないわね。」

 

 

クリスマス当日に、まさかのサプライズが待っていたが、其れは円夏が喜んでいたので問題はないだろう――何よりも、聖夜に起きた奇跡ってモノを否定する理由は何処にも無いからな。

取り敢えず、今年のクリスマス・イブは此れまでのクリスマス・イブと比べても、全員が大いに楽しめた、其れだけは間違いないだろう。Happy MerryChristmas!

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued 

 

 

 

 

 

 

 


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