夏と刀と無限の空   作:吉良/飛鳥

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外道が……俺は怒ったぞ、レッドチャイナ!!By一夏      貴方達は、絶対に許さないわ!By刀奈     最強コンビが点火した……もう誰も勝てないよBy簪


Episode6『中国の横暴!燃やせ、怒りの炎!』

学生寮の一室……唯一の個人部屋では、オレンジ色の髪をした女性が自分の武器の手入れをしていた――愛用の大口径のガバメントを改造したリボルバー、『ブラックローズ』は分解清掃を行い、近接戦闘用の折り畳み式コンバットナイフ『サーブルガッシュ』は砥石で切れ味を研ぎ澄ます。

そうして武器の手入れを終えた女性は、ブラックローズをスーツの中に隠したガンフォルダーに収納し、サーブルガッシュはスカート内に隠されたナイフフォルダーに収納する。

 

 

「おっし、準備完了だ。」

 

 

装備を完了した女性――一夏の護衛を任されたオータムは、寮の外に出ると、スーツの胸ポケットから煙草を取り出すと、其れに火を点けて紫煙を燻らす。

賛否はあるかもしれないが、煙草が似合う大人の女性ってのは何かカッコ良くないですかね?野郎の喫煙者は履いて捨てる程居るから、新しさってのはないんだけど、カッコいい女性喫煙者ってのは少ないからね!

オータムさんは、そんな数少ないカッコいい女性喫煙者だと思うんだわマジで。

 

 

「喫煙スペース以外でのタバコは感心せんぞオータム?」

 

「へ、固い事言うなよ千冬?

 大体にして、学園である以上喫煙スペースなんぞ有って無い様なもんだろうが……屋外なら、受動喫煙の危険性も低くなるんだから、寮の外なら吸っても大して問題はないだろ?お前も吸うか?」

 

「遠慮する。成人した時に『どんな物か』と思って吸ってみたのだが……これ程不味いモノが存在するとは思わなかったからな。」

 

 

其処に現れた千冬だが、如何にも煙草は苦手だったみたいだ……まぁ、喫煙者になるか否かは煙草の初体験に左右されるからね――煙草の煙を吸って、快感を感じたか、其れとも不快感を感じたかが分岐点だからな――如何やら千冬は後者だったらしい。

まぁ、非喫煙者であっても、酒豪って時点で可成りアレなんだけどね……今現在、千冬と飲み比べをして完全勝利を収めたのは、千冬の彼氏である沢稼津斗だけなのだ――うん、稼津斗はドンだけのアルコール耐性があるのか謎だね。

 

 

「其れは其れとして、愚弟の護衛、何時もご苦労様だな。」

 

「気にすんなよ、此れも仕事だからな。

 其れに、オレはアイツの事を気に入ってんだ……だから、アイツに降りかかる火の粉は全部払ってやる心算だぜ――アレだけの才能が下らねぇ火の粉で潰されたとか、あって良い事じゃないからな。」

 

「そうか……では引き続き、弟を頼む。」

 

「任せときな!」

 

 

千冬が右の拳を向ければ、オータムは右手で煙草を持ちながらも、左手を握りしめ、その拳を千冬の右拳に合わせる――何方も似たような黒いスーツ姿であったためか、何とも絵になる光景だ。……最強と最恐が気が合うとか、結構恐ろしい事なんですけどね。

ぶっちゃけ千冬とオータムって組んだら最強クラスのタッグになるじゃないかと思うんだが如何でしょうか?結構行けると思うんだよねうん。

 

尚、その後ランニングから戻って来た一夏の素振りを、二人して気配を消して見ていたのだが、通常の素振りだけでなく、突き、居合と言った技も行い、その全てが高水準だった事に改めて感心していた。

 

 

「アイツよぉ、そろそろ冗談抜きで木刀で木を切り倒せるんじゃねぇか?」

 

「何を馬鹿な、と言いたい所だが、マッタク可能性が無いとは言えんのが何とも……実際に私は、太さ30cm位の丸太ならば木刀で粉々に出来るしな。」

 

 

いや、出来るのかい!流石は世界最強、やる事が普通じゃねぇわ。

って言うか、普通は木刀で丸太を斬ろうとか思わないから!発想すらしないからねマジで!!良い子も悪い子も、やったら最悪手の方が怪我するから絶対にマネしちゃダメだからな?天の声とのお約束だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏と刀と無限の空 Episode6

『中国の横暴!燃やせ、怒りの炎!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

就任パーティの翌日、今日も今日とて日課を熟した一夏は、刀奈と一緒に食堂に向かっていた……普通に手を繋いでな。そして、其れが所謂『恋人繋ぎ』をしてるって事にはもう突っ込みは不要である。

一夏と刀奈のラブラブっぷりは、最早学園全土に知れ渡っている事であり、極一部の生徒を除いて『お似合いのラブラブカップル』として認知されているのだ。

『ラブラブカップルのいちかとかたながしょうぶをしかけてきた』とか、そんな感じのラブラブカップルなのか如何かは分からんけど、何にしても此の二人の絆を引き裂く事なんぞ、例え神であっても不可能だろう……って、一夏が割と神から溺愛されてる存在だからそもそも神が一夏と刀奈の仲を引き裂く事なんぞある筈がないか。

 

 

「一夏は、今日は朝ごはん何にするの?」

 

「そうだなぁ……昨日はバタートーストセットだったから今日は和定食かな?

 焼き魚はサバの一夜干しで、納豆には……今日はカレーパウダーと粉末ガーリックとチキンブイヨンで味付けして、シーチキンをトッピングしてみようと思ってる。」

 

「……其れ、美味しいのかしら?」

 

「インドには納豆によく似た食べ物があって、地元では青唐辛子をはじめとしたスパイスを加えて食べるってのをネットで見た事があるから、多分美味いんじゃないかと思うぜ?

 と言うか、この前のほほんさんがやった、『ご飯に納豆、漬物、味噌汁をぶっかけて混ぜてから食べる』のを見たら、もう何でもアリだと思ってな。」

 

「あ~……アレね。

 本音ってば食事に関してはちょっと独特の趣向の持ち主だからね……小学校の時は子供会のバーベキューで、皆が肉や野菜を焼いてる中で、一人だけバーベキューの鉄串にバナナ刺して焼いてたし。」

 

「其れ美味いの?」

 

「本人は『甘みが増して美味しいよ~』って言ってたけど、アレは流石に皆引いてたわね。」

 

 

会話も実に平和だ。でもって、焼きバナナは実はとっても美味しいし、家庭でもオーブントースターを使えば簡単に出来るのでお試しあれ。焼くだけじゃなくて油で揚げても中々美味しいけどね。

何時もならばこんな他愛のない話をしながら食堂に到着するのだが……

 

 

「ふざけるんじゃないわよ鈴!何でアタシがアンタに二組のクラス代表を譲らないといけないのよ!遅れて来たくせに図々しいわ!」

 

「なんでって、アンタじゃ役者不足だからに決まってるじゃない乱?

 其れに、アタシの事を愛称で呼び捨てにするとは、ずいぶんと偉くなったじゃないの……昔は『お姉ちゃん』って後を付いて来たってのに、随分と生意気になったモノね?」

 

「昔の事は関係ないでしょ!

 って言うか、クラス代表の変更なんて出来る訳ないでしょうが!アタシはクラスの皆に推薦されて代表になったし、アタシが代表になった事は学園も認めてるんだから!」

 

 

寮のエントランスで、二人の少女が言い争っていた。

一人は明るめの髪をサイドテールにした台湾の国家代表候補生である凰乱音で、もう一人は口元から覗く八重歯とツインテールが特徴的な、昨晩IS学園にやって来た中華風貧乳娘だ。

 

 

「誰が貧乳か!」

 

 

いや、お前だけど?其れとも『中華風まな板娘』の方が良いか?……此れは此れで悪くはないと思うけど、語感が今一良くないから、やっぱり中華風貧乳娘の方がシックリ来るでしょ。

そもそもにして乱が八十のBなのに対して、お前八十未満のAでしょ?……(胸部)戦闘力たったの五か、ゴミめ。

 

 

「兎に角、クラス代表は譲って貰うわよ乱?クラス代表は強い奴が務めた方が良いだろうからね。

 確かにアンタはアタシよりも先にISを動かして、台湾の序列第一位になったかも知れないけど、アタシはISを動かして一年で中国の序列第一位になって代表候補生になったのよ?其れが如何言う意味か分かるでしょ?」

 

「……中国は慢性的なIS操縦者不足って事か?」

 

「人口は多いけれど、IS適性がある人は少ないのね中国って……」

 

「そうなのよ~!

 人口は多いのに、IS適性がある人って少なくて、ISを動かして一年のアタシが序列一位になって、代表候補になっちゃったのよ……人口が多いだけじゃ駄目よね……って違うわよ!

 たった一年で中国の序列第一位になる位、アタシは凄かったって事でしょうが!って言うか、アンタ等なんなのよ!」

 

 

乱に鈴と呼ばれた少女は、乱に対して自分の方が強いと言う事を主張していたが、その途中で一夏と刀奈からの横槍が入った……まぁ、たった一年で中国の序列一位になったとか聞けば、一夏と刀奈が言ったような事を想像するのも仕方ないがな。

 

 

「何だかんだと聞かれたら!」

 

「答えてあげるが世の情け!」

 

「世界の破壊を防ぐため!」

 

「世界の平和を守るため!」

 

「正義と真実の愛を貫く、ラブラブカップル主人公!」

 

「刀奈!」

 

「一夏!」

 

「宇宙を駆けるIS乗りの二人には!」

 

「バーニングサン、燃え盛る明日が待ってるぜ!」

 

 

でもって、アニポケのロケット団の初代口上キタコレ……如何やらどうあってもネタはぶっこむスタイルであるらしい。――って言うか決めポーズが、横に真っすぐ伸ばした一夏の右腕に刀奈が腰掛けるって凄くね?

刀奈は胸こそ豊満だがウェストは細いとは言え、其の体重は53㎏……其れを右腕一本で支えるとかマジハンパないが、其れだけのパワーを有していながら、ムキムキマッチョじゃなく、細マッチョな一夏に驚きだわ。一切の無駄もなく絞り込まれた身体は、一種の芸術品だわマジで。

 

 

「さて、何やら言い争ってみたいだが何があったんだ乱?」

 

「何があったって、こいつがアタシに二組のクラス代表を代われって言って来たのよ!遅れて来たくせに!

 そもそも、アタシは二組の皆が推薦してくれたからクラス代表になったのよ?……其れを後からやって来た奴に譲れる筈ないじゃない!アタシは二組の皆の想いを背負ってるんだから!」

 

「……成程、其れはお前の言う通りだな乱。って言うか、誰だよこの、え~と……中華風貧乳娘は?」

 

「貧乳と言うよりはひんにゅーって感じよね。」

 

「貧乳って言うな!」

 

 

その言い争いに一夏と刀奈が参戦した訳だが、乱と言い争っていた少女――凰鈴音(以下鈴と表記)は、貧乳と言われた事に突っ込みを入れつつも、其の視線は一夏と刀奈に向けられていた。

特に一夏の方は、何か値踏みをするような感じだ。

 

 

「って言うか、織斑一夏って……へぇ、アンタがあの織斑千冬の弟にして世界初の男性IS操縦者の織斑一夏か。

 中々良い男みたいだけど、陽彩と比べたらマダマダね?」

 

 

と思ったら、何か言い出しやがりましたよこの中華娘は。

いやまぁ、確かに陽彩は顔だけは一夏よりもイケメンだし、この中華娘からしたら自分が惚れてる相手でもあるからフィルター掛かって余計にイケメンに見えるのかも知れないが、幾ら何でも初対面の相手に失礼じゃね?

 

 

「あらあら、一夏の事をあんな顔が良いだけの勘違い野郎と一緒しないでくれるかしらね貧乳ちゃん?って言うか、結局貴女誰なの?」

 

 

そんな事を言われたら、一夏以上に刀奈が黙っている筈もなく、強烈な毒舌カウンターを扇子の『このまな板娘』の文字と共に炸裂させる……いやガチで此の扇子ってどうなってんだか知りたいわ。

 

 

「貧乳って言うな!まな板って言うな!アタシは凰鈴音、中国の代表候補生よ。

 専用機の調整のせいで少し遅れちゃったけど、この度目出度くIS学園にやって来たのよ――そして、アタシが此処に来た以上、乱はアタシにクラス代表の座を譲るべきだわ。だってアタシは乱より強いからね。

 それに何より……台湾は中国からの技術協力を得て第三世代機の開発に漕ぎ付けたんだから、台湾は中国には逆らえない……アンタがクラス代表の座をアタシに譲らなかったら、如何なるか分かってるわよね乱?」

 

 

刀奈の毒舌に微ギレしながらも適当に自己紹介をしつつ、鈴は乱へのマウントを開始!

台湾が中国からの技術協力を得て第三世代機を開発したと言うのは有名な話だが、其れが故に台湾は中国に対し、外交その他諸々で強い姿勢を執る事が出来ないのも有名な話である。

 

そして、其れは乱もだ。

此処で鈴に反抗してクラス代表の変更を突っぱねる事は簡単だが、其れをやったら鈴が中国政府にある事ない事彼是吹き込んで、其れを聞いた中国政府によって台湾に何をしてくるか分からない以上、乱には選択肢は残されていなかった。

 

 

「く……卑怯よ鈴!」

 

「お前、幾ら何でも其れはやりすぎと言うか、乱の言う様に卑怯じゃないのか?」

 

「自分の目的の為なら、平気で他人を脅す……其れも、一個人では如何にもならないレベルでの脅しとか、最低にも程があるわよ?」

 

「知らないわね?勝てば官軍よ。さて、よく考えて選択しなさい乱――二組のクラス代表をアタシに譲る気になった?」

 

 

乱だけでなく、一夏と刀奈に言われても、鈴は全く意に介さず、乱に選択を迫る……選択肢のない選択を。

 

 

「……分かった、クラス代表は譲るわ鈴。」

 

 

結局乱が選んだのは、クラス代表の椅子を鈴に渡す事だった……鈴が行った事は卑怯極まりないモノであり、IS操縦者どころか人の風上にも置けない最低下劣な行為なのだが、『嘘も百回言えば真実になる』って教育をされた中国人である鈴にとっては、良心の呵責なんぞ有ったモノではないのだろう。

 

 

「大人しく最初からそう言えばいいのよ乱……ま、アンタはアタシの活躍を確りと目に焼き付けておきなさい?」

 

 

そうして乱から二組のクラス代表の座を奪い去った鈴は、意気揚々と食堂に向かって行った……全く悪びれる様子もなく、此れだけの事を至極普通にしてしまうと言うのは本当に同じ人間なのかと疑うレベルだ。

此れだけの事をしておきながら、鈴には此れが当然のようだったのだ……否、実際に鈴にとっては此れが当然の事なのだろう。

全く別の国であるにも拘らず、中国は台湾の事を自国の属国と見ている部分があるからね。――属国に対しては何をしていいとか、マジ最悪だ。

 

その最悪の事をされた乱は、怒りと悔しさで拳を握り締めるが……

 

 

「乱、その怒りと悔しさ、俺に預けろ。」

 

「一夏?」

 

 

その肩に一夏が手を置き、鈴が去って行った方を睨みつけている……その顔に浮かんでいるのは紛れもない『怒り』だ。

鈴の『卑劣な手段で有名な蟲野郎もドン引きする』であろう、下劣で悪辣で卑劣で卑怯なやり方に怒りが限界を超えて『怒り爆発状態』……一夏だってISを動かせる男性であると言う事以外は、至って普通の人間なのだから怒る事だってあるだろうが、顔にその感情が現れるほどに怒った一夏は、家族である千冬や円夏、恋人である刀奈ですら見た事が無かった。

分かり易く言うのなら、今の一夏は『俺は怒ったぞ、フリーザー!!』ってなレベルで怒ってる訳だ……まぁ、乱は一夏達の仲間の一人な訳だから、プッツン行っても仕方ないとは思う。

 

 

「たった一年で中国の序列一位になって代表候補生にまでなったアイツは確かに才能はあるし、其処に辿り着くために並々ならぬ努力はしたんだろうさ。

 だが、だからと言って乱の事を見下して良い理由にはならねぇ……百歩譲ってアイツがお前よりも強いってビッグマウス叩くのは許容してやるにしても、中国と台湾のパワーバランスを盾にした脅迫紛いの行為ってのは絶対に許さない。

 幸いにして俺は四組のクラス代表だからな……今度のクラス対抗戦で、お前の怒りと悔しさを四千倍にして返してやるぜ……!」

 

「四千倍じゃ温いわ、どうせやるなら一万倍返しよ一夏……あの中華風貧乳娘に、地獄を見せてあげなさいな。『絶望がお前のゴールだ』って感じにね。」

 

 

で、その一夏の怒りの炎に刀奈は油を注ぐどころか、盛大にガソリンをぶっ掛けてくれやがりましたよ!?しかもレギュラーじゃなくて、ハイオクを!!

一夏の言った四千倍も相当だけど、一万倍って最早デカすぎて想像すら出来ねぇわ……まぁ、其れでも超サイヤ人ブルー時の強化倍率に比べれば全然大した事ないのかもしれないけどね。

まぁ、こんな事を言ってしまう辺り、刀奈も相当に怒っているって事なんだろう――一夏とは違い、顔に出てないだけでな。

 

 

「……アタシの事で怒ってくれるのは嬉しいけど、一夏と刀奈の背後に『鬼』が見える気がする。」

 

 

一夏と刀奈の怒りは乱が背後に『鬼』の姿を幻視する程の物だったようだ……因みにこの時に乱が幻視した『鬼』は、白い髪に赤黒い肌をしてダークパープルの胴着を纏っていたとか。……カプエス2の神・豪鬼じゃん其れ!まぁ、確かにアレは鬼だけどね?鬼強いけどね!レベル1でも勝てませんから!!

まぁ、何にしてもクラス対抗戦で一夏が鈴に地獄を見せるのは間違い無いだろう――織斑一夏と言う少年は、仲間を傷つけた相手は絶対に許さない苛烈な一面を持って居るのだから。

その後は一緒に朝食を摂ったのだが、この話を聞いた円夏と簪もブチ切れて、『あの中華娘、闇討ちして腕の一本でも折ってやるか?』とか、『専用機にウィルスぶち込んで使えなくしようか?』と言った、割とヤバい事を言っていた……まぁ、其れだけ乱は仲間だと思われてるって事だろう。そうじゃなかったら、割とマジで円夏と簪がヤッベー奴になっちゃうからね!

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、午前中は英語の授業で一夏と刀奈と担当教師が、スラムの荒くれ物もビックリなスラング満載の『お手本会話』を披露した事以外は特に何の問題もなく終わり(って言うか、如何してそうなった?)、本日の昼休みは屋上でのランチだ。

メンバーは一夏と刀奈、円夏と簪、本音と虚と言う何時ものメンバーに加えて、静寐、清香、癒子の三人も本日は一緒であり、結構な大所帯なのだが……

 

 

「一夏、アタシ達も一緒に良いかな?」

 

「いいぜ乱……って、なんか多いな?」

 

 

其処に乱が参加したのだが、来たのは乱だけではなかった。

乱と一緒に来たのはカナダの代表候補生であるオニールとファニールの双子姉妹、タイの代表候補であるヴィシュヌ・イサ・ギャラクシー、オランダ代表のロランツィーネ・ローランディフィルネィ、アメリカの代表候補生のレイン・ミューゼル、ブラジル代表のグリフィン・レッドラムだ。

 

 

「初めまして!カナダの代表候補生のオニール・コメットだよ。よろしくねお兄ちゃん♪」

 

 

でもって、行き成りオニールが爆弾投下!

一夏とオニールは初対面……まぁ、オニールは伝で一方的に一夏の事を知っており、IS稼働時間が三千時間を超えていると言う事に衝撃を受けて、一夏の事を凄いと思って一方的に慕って居るのだが、そんな事を知らない一夏達からしたら『お兄ちゃん』呼びは中々に衝撃的だろう。

 

 

「お兄ちゃん……?」

 

「一夏……此れは流石に如何かと思うわ。」

 

「兄さん……」

 

「一夏さん?」

 

「いや、俺は何もしてないからな?って言うか初対面だし!」

 

「イッチーのロリコン~~♪」

 

「のほほんさんがめっちゃ良い笑顔でトドメ刺しにキタコレ!!」

 

 

のほほんさんは笑顔でトドメを刺していくスタイルだったらしい……ある意味で毒吐かれるよりもキッツイな此れは。悪意ゼロのトドメの一撃ってのは、マッジで突き刺さるからね?……一夏が一撃死しなかったのが不思議な位だわマジで。

悪意が無いってのは、逆に怖いねうん。

 

 

「だからその呼び方は止めろって言ったのよ。……こほん、アタシはファニール・コメット。オニールとは双子の姉妹で、カナダの代表候補生よ。よろしくね。」

 

「ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーと言います。タイの代表候補生です……以後お見知りおきを、一夏さん。」

 

「ブラジル代表のグリフィン・レッドラムよ。宜しくね、織斑一夏君。」

 

「アメリカの代表候補のレイン・ミューゼルだ。因みに、お前等のクラスの担任のスコール・ミューゼルの姪だ。ま、宜しくな。」

 

 

まぁ、オニールによる一夏の『お兄ちゃん』呼びと言う衝撃はあったモノの、それを皮切りに次々と自己紹介をして行く……アメリカの代表候補生であるレイン・ミューゼルが、四組の担任であるスコールの姪だってのには驚いたが、それ以上にレインの服装に驚いたみたいだけどね。

制服の改造は認められてるとは言え、上はブラがチラ見して、下はスカートのスリットから下着が見えてるってのは流石に如何なんだ?見せパン穿いてるってんならまだしも、アンタはガチで下着だからね……しかも黒って、インリン様もビックリのエロテロリストかお前は!

 

 

「レイン先輩、下着見えてるっす。」

 

「気にすんな、見えてるじゃなくて見せてんだからよ。此れもファッションってな。」

 

 

其れは色々間違ってる気がするなぁ?

堂々としてれば、どんな格好でもファッションになると言われちゃいるけど、だからって胸元が大きく開いてるのとスカートにスリットが入ってるのは兎も角として、其処から下着が見えるってのはアウトでしょ?しかも見える下着が紫とか黒ってねぇ?

 

 

「そう言われたら何も言えねぇっすけど、もうちっと羞恥心とか持った方が良いと思いますよ俺は。」

 

「見えてんのが水着だと思えば大した事ねぇだろ?」

 

「……言うだけ無駄みたいっすね……んで、アンタは?」

 

「私はオランダ代表のロランツィーネ・ローランディフィルネィさ。」

 

「……すまん、よく聞き取れなかったから、もう一度言ってくれるか?」

 

 

レインのファッションは一先ず置いておくとして、この場に集まった最後の一人であるロランが自己紹介するも、一夏達はその名前を正確に聞き取る事が出来なかった……仕方ないよね、無駄に長いから。

付け加えて言うのなら『ローランディフィルネィ』って如何発音すれば言い訳?『ローランディフィルネ』なら分かるけど 『ローランディフィルネィ』だとマジで如何呼べば良いのか分からんて。『ネィ』が本気で分からん。誰か教えて?

 

 

「ロランツィーネ・ローランディフィルネィだが、呼びづらいだろうから私の事はロランで良いよ。」

 

「なら、俺も一夏で良いぜ。」

 

「私も刀奈で良いわ♪」

 

「私は円夏で良い。」

 

「私も、簪で。」

 

 

だが、其れも『ロラン』の愛称で良いと言った事で即座に解消!――まぁ、あのクッソ長いフルネームを一々口にする事を考えれば、こうした略称や愛称ってのは絶対必要になるからね。

取り敢えず自己紹介を終えた面々はランチタイムに突入したのだが、乱をはじめとした所謂アーキタイプブレイカーキャラは、一夏が作った弁当に見入る事になった――本日の弁当は皆大好き『唐揚げ弁当』なのだが、ご飯は刺激的な辛さが食欲をそそる刻みワサビを混ぜ込んだワサビ飯で、唐揚げ以外の副菜は、小松菜の胡麻和え、ポテトサラダ、ブロッコリーのマヨネーズソテーと栄養面でも非の打ちどころがなかったからね。

しかもワサビ飯には、海苔の佃煮で一夏のには『夏』、刀奈のには『刀』って書いてあるんだから相当だよ……てか、マジで一夏の主夫力ハンパないわ。

因みに本日は、もう一つ同じ弁当を作っており、其れは自身の護衛を務めてくれているオータムに何時ものお礼として渡してあり、其れのご飯には『秋』と入っている。

 

 

「まるで芸術品だね?此れは全部一夏が一人で作ったのかい?」

 

「まぁ、料理は趣味だから作るのも全然苦にならないし……と言うか、弁当に関してはキャラ弁とか色々考えると次から次へとアイディアが出てくるんだよ。」

 

「一夏のお弁当って本当に凝ってるからね。『彼氏作のお弁当』ってインスタに上げたらめっちゃバズッたわ。」

 

「え?其れって若しかして此れの事!?……此れって一夏が作った弁当だったんだ。」

 

 

そして、何やら刀奈が一夏お手製弁当の写真をSNSにアップして、大反響になっていたらしく、其れを『いいね』していたらしいグリフィンが驚いていた――アップされてた弁当はパエリヤ風炊き込みご飯の上に、薄焼き卵と海苔で刀奈の顔を描いた『似顔絵弁当』だった。否、マジで何者なの一夏。

まぁ、一夏作の弁当が切っ掛けで良い感じの雰囲気のランチタイムになるのは良かっただろう。

 

 

「処で一夏さんには何か将来の目標とかあるのでしょうか?

 ISを動かせる男性と言う事で、そちらの方面の選択肢もあると思うのですが……」

 

 

そうした中で、ヴィシュヌは唐突に一夏に『何か目標はあるのか?』と聞いてきた――恐らく彼女に他意はない。只純粋に『ISを動かせる男性』である一夏の目標と言うモノに興味が出たと言うところだろう。

其れは、本日参戦(?)のメンバーも同じだったらしく、一気に一夏に視線が集まる――まぁ、一夏はレアケースだから気にもなるよね。

 

 

「そうだなぁ……得意な料理の腕活かして料理人や弁当作家ってのも良いけど、折角IS動かせるんだから宇宙開発の方面に進むのも良いよな?

 あぁ、でもどうせなら競技者の道に進んで、男でありながらモンド・グロッソに殴り込み掛けるってのも面白そうだぜ――その場合は、ブリュンヒルデの弟が参戦って事で話題性も充分だしな。

 つっても、それらはまだ可能性の話だからどうなるかは分からないって……だが、この学園内での最も近い目標は、中国代表候補の凰鈴音をぶっ倒す事だけどな。」

 

 

それに対し、一夏は自身のやりたい事を答えつつ、直近の目標は『凰鈴音を倒す事だ』と告げる――本日のランチタイムが屋上でなく食堂だったら、鈴が居るテーブルを鋭い眼光で睨みつけていた事だろう。

否、或いはもっと大変な事になっていた筈だ……同じ頃、鈴は陽彩、箒、セシリアと食堂でランチタイムだったのだが、その場で誇らしげに『二組のクラス代表を代わって貰った』と言っていたのだから、その光景を一夏が見ていたら『覚悟しろよこの蟲野郎』ってな具合に切れてただろうからね。

 

 

「凰鈴音って……確か、ホームルームの時にかっこつけて一組に宣戦布告しに来て、織斑先生に出席簿で殴られてなかったっけか?」

 

「あぁ、そう言えばそうだったわね……って言うか、アレはどう考えても紙で出来た出席簿で殴った音じゃないわ。

 ……アレ?あの人、『二組のクラス代表になった』とか言ってたけど、二組の代表って乱じゃなかった?何であの人が二組の代表名乗ってるのかしら?」

 

 

鈴の名を聞いたオニールとファニールは、朝のホームルームでの出来事を思い出していたが、其処でファニールが気付いた……二組のクラス代表は乱じゃなかったかと。

アキブレキャラが仲良くね?と思った人も居るだろうが、彼女達は各国の国家代表及び代表候補生が集う合同合宿で知り合った仲であり、それ以来交流を続けて居た仲なのである。――更識姉妹と円夏は、ちょうどその時期が学校の定期考査の時期だったので不参加だったが。

 

 

「えぇ、確かに二組の代表はアタシだったわ……だけど、無理やりその座を鈴に奪われたのよ!」

 

 

其処から今朝あった事を、一夏と刀奈と乱で説明すると、全員に怒りの感情が沸々と湧いてきたようだった……まぁ、其れも当然だろう。鈴の行為は理不尽極まりない事なのだから。

乱との直接対決を行い、其れに勝ったのならば未だしも、其れをせずに、ちょっと違うかもしれないが権力を盾に脅迫紛いの事をするとは絶対に許せる物ではない!どこぞの蟹みたいな髪型の主人公が『権力か……気に入らねぇな。オイ、デュエルしろよ。』ってな感じにキレる案件だろう。

だが、だからこそ、全員が一夏の直近の目標を理解した……確かにこんな腐れ外道はぶっ倒すに限る!まぁ、ぶっ倒しても、ぶっ倒しても、乱の悔しさは晴れないかも知れないが、それでも仲間を傷つけた落とし前だけは付けさせる必要があるのだ。

 

 

「其れは確かに許せる物ではない……嗚呼、許せないとも。

 まだ開いてはいないが、大輪の花を咲かせるであろう蕾を咲く前に手折る所業を見過ごす事は出来ないな……君の友人として、私もまた凰鈴音に鎮魂歌を送らねばならないようだ。」

 

「分かるかロラン?」

 

「勿論分かるよ一夏……今度のクラス対抗戦、凰鈴音だけには絶対に加藤!」

 

「誰?」

 

「加糖!」

 

「甘すぎ注意。」

 

「克とう。」

 

「惜しい、一文字違う。」

 

「勝とう!」

 

「はい、正解!

 ま、言われるまでもないぜロラン――アイツは、あの中華風貧乳娘は完膚なきまでに叩きのめしてやる……アイツには『この世には絶対に怒らせちゃいけない相手が居る』って事を教えてやるぜ。」

 

 

なので三組のクラス代表であるロランも一夏同様に鈴を倒す事を心に誓い、一夏とがっしり手を組んだ……この時、一夏が発する白銀の闘気と、ロランが発する黄金の闘気がぶつかってスパークしてたように見えたのは気のせいではあるまい。

その後、ロランから『一緒に訓練しないか?』との提案を受けた一夏は、『クラス対抗戦前なのに手の内晒す事にならないか?』と言ったが、ロランは『クラス代表決定戦の時に私は君の戦いを見ているのに、君が私の戦いを見てないのは不公平でありフェアじゃない』と言い、問題は無いとの事なので一夏も承諾して一緒に訓練をする事になった。

……まぁ、その流れで本音と虚を除く本日のランチタイムの面子が一緒に訓練をする運びになったのだが、結果として濃い内容の訓練が出来たのだから文句はなかった。――模擬戦では、一夏と刀奈のタッグが、レインとグリフィンの上級生コンビを圧倒したけどね……流石は武闘派夫婦、ISバトルでも最強クラスだったらしいな。

まぁ、一夏と刀奈には、最高神ホルアクティによって設定された『主人公&ヒロイン補正』があるから、相手が『ゲーム攻略雑誌が匙投げた』レベルの絶対倒せない敵じゃない限り先ず負けないんだけどね。……神に溺愛されてるのは一夏だけじゃなくて刀奈もだったみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会室でランチを終えた夏姫の手元には幾つかの書類があった――其の中には鈴が提出した『クラス代表変更届』もあったが、其れとは別に、中国から学園に送られてきたモノもあった。

その内容は『凰鈴音代表候補生がそちらに行くから、編入クラスのクラス代表にするように。――既に代表が決まっていた場合であっても、それが台湾の代表候補生だった場合は問答無用で変更するように。そして凰鈴音代表候補生との試合はさせない様に』と言う無茶苦茶な物だった。

この無茶苦茶な要求に対して――

 

 

「凰鈴音……中国では我儘が通ったかも知れないが、此処で其れは通じない。例えバックに居る中国を盾にしてもだ――此処はあらゆる国の干渉を受けないIS学園なのだからね。

 だけど、こんな方法で二組のクラス代表を乱君から奪ったのだから、君には相応の責任を負って貰うぞ凰鈴音。

 今度行われるクラス対抗戦での君の結果は保存し、その後で乱君に同じ相手と戦って貰って、その結果を比較させてもらうわ――果たして、本当にクラス代表に相応しいのは、どっちだろうな。」

 

 

夏姫は確りと手を打っていた。

鈴のクラス代表の結果と、乱が同じ相手と戦った際の戦績を比較すれば、疑似的に乱と鈴の力量差を謀る事が出来るから、中国の『提案』の穴を抜ける事が出来るのだ。

 

 

「少しばかり、おいたが過ぎたようだな。」

 

 

そう言うと夏姫は何かを放り投げた後に、スカート内のナイフフォルダーから折り畳み式のナイフを取り出すと、其れを投擲して先程放った物に刺して壁に磔状態に。

磔にされたのは、鈴の写真だ……鈴と中国が行ったこの一件は、クールで冷静な夏姫の逆鱗にも触れたらしかった。――美人が怒ると怖いとは言うが、今の夏姫は正にそれだ。……若干般若面状態だったからね。

 

何にしても、クラス対抗戦が大荒れになるのは間違い無いだろう。世界初の男性IS操縦者である織斑一夏、二人目の男性操縦者の正義陽彩、オランダの国家代表のロラン、そして中国の代表候補生である鈴――肩書だけならば一流クラスがぶつかるのだから期待しない方が無理ってもんさ。

 

そんなこんなで、夫々の日常を過ごしながらも鍛錬を続け……そして遂に、クラス対抗戦の日がやって来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued 

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