それではどうぞ
「で……できたあ!!!」
清水工場と呼ばれる複合施設で、何十人もの嬉しい叫び声が広がった。
「いやー、俺が設計したからか美しいな、やはり」
頬が少しこけているゲンジの言葉はナルシストとも取れる言葉であったが、事実として「
「にしてもターメリックですか……試作機と同じ白で良かったのでは?」
「でも、つまらないだろ?」
「黒の対比で白を使う。王道で悪かぁないが面白みに欠けるだろ?
一方の工場長はーー
「工場長、やりましたねえ!!」
「あ、あぁ……」
割とその場のノリで大役を任されてしまった清水はとんとん拍子で加速的に進んでいく文明に目がついて行かなかった。
文明レベルで言えば地球の方が遥かな高みにあるものの、産業革命に喧嘩を売っているとしか思えない『これ』には混乱せざるを得なかった。
「自信なさげにするなよ。お前はリーダーとして出来てるか心配なんだろ?」煤のついたツナギのリベールが話しかける。酒臭い口だと清水は思った。
「う……」
「アンタが俺らを引っ張ったのは紛れもない事実だぜ。小難しく考えなくたっていいんだよ!ガハハ!!」
酒が入って陽気な男は清水の肩をバシバシと叩く。
「……痛ぇな」
口元が少しだけ緩んでいたことに気づかないフリをした。
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大陸南部、アレクサンドリア
かつて居たアレクサンダーという男の手で一から作られたという街。現在ではトリックスターと呼ばれる者の手で統治されていた。魔人族の国は領邦のような形をとっており、自称とはいえ一応魔人族のトリックスターは幹部として領地を与えられていた。
「もしもーし、皆さん聞いておりますでーしょうか!」
この地の主たる者が珍しくアレクサンドリア防衛隊の前に現れる。明日は雪でも降るんじゃないかと一隊員が思うくらい珍しい出来事だ。
「これ、見たーよね?」
懐からバラバラと何か塊が出てくる。
「ブロンテって言うんだよー!みんな、外出ようかー」
言われたからには仕方ない。リーダーを先頭にぞろぞろと屋外の練習場へ行く。
トリックスターは訓練用マネキンを置くと、ブロンテをマネキンに向けた。
「失礼します。私はアレクサンドリア第一防衛隊隊長のアレクシオスです。トリックスター様はこれから何をなさるのですか?」
彼はキテレツすぎる行動の真意を知りたかった。言えば処刑される可能性もあるのに勇敢に対話を試みるアレクシオスは緊張の中、だが、トリックスターはそんな事に勿論気付きもしない。
「まーまー見てな!」
適当にはぐらかされ、彼は不満に思うがそれも吹き飛んだ。
ドン!ドン!
鈍い音が二発だけ鳴った。
「う、嘘だろ……」
マネキンには穴が空いている。そう簡単に壊れないはずなのに。
「どう?強いでしょ?こいつの訓練もしてよ。後で物は送るからおねげーしまーす」
全隊員一致でブロンテを使うこととした。
数日後に近くで工場が建ち、武器が量産されていく。
「おお、こいつが例の……」
3番隊隊長のクレメンスが独特なフォルムを撫で回す。引き金を引けば誰でも簡単に扱えるくせに、たやすく命を奪える武器は心強い隣人であり、気をつけるべき厄介者でもあった。
急遽作られた試射場。ブロンテのパワーダウンモードで使用していた。
「うおっ!こいつはびっくりするな!!」
銃の撃ち方は指南書を送り、目を通しているので皆知っているが、それでも経験したことのない衝撃は彼らをその魅力へ引き摺り込むのに時間はかからなかった。
現在のアレクサンドリアの街は活気付いていた。移住者が作った工場により、景気がかなり良くなったからだ。地形的な問題で閉鎖的な山岳環境であるのでどうしても貧しくならざるを得なかったが、工場は富をきちんと街に落としていた。
ここで賢明な読者は、環境汚染や労働について疑問を抱くだろう。
しかし、問題はほぼない。トータスには魔力という優れたエネルギーが存在している。割と何でも応用可能なエネルギーは汚染を浄化、工場の自動化など、地球では発生しない独自の進化を遂げていたのだ。
電池のように1日数回魔力をチャージしてやる事で動き続ける。騒音も消音魔法が全て打ち消していて、都合よく物事は進んでいく。
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崇高なる魔人族の一人、カトレアはイライラしていた。理由は簡単、確保した勇者が行方不明になってしまったからだ。おまけにあのトリックスターが何やら大事な話があるようである地点に来るか、連絡魔法で通信してほしいと言ってきた。
散々ウザ絡みされ、名前をカステラ・ライスと間違えられ、あれもこれもそれも、とにかくムカつくのだ、トリックスターは。
しかし、そんな彼?が珍しく真面目な話と言うのだから行ってみた。
「カトレア、ようやく来たか」
「あら、珍しい。でも、相変わらず反吐が出そう」
おちゃらけた態度がなりを潜め、真面目なトリックスターに気味の悪さを感じるが、トリックスターは相手の調子など関係なげに話を続ける。
「お前、勇者がどっか行ったんだってな」
「ええ、どうせ貴方辺りじゃないかしら?」
「そうだ」
場が凍りつく。身が震えそうなくらいの空気だが、どちらも平然としていた。
「……死にたいの?」
「これから時代が動く。それだけは言っておこう」
「……どういうことよ?」
「対価のようなモノだ。物には物を、敵には敵を。全ては等価、神でさえも」
「……ふうん、なら、私の邪魔だけはしないことね」
「了承した」
暫くの無言の後に続けて彼?は喋った。
「ところで、カトレア。メッセージを伝え終わったら自動的に爆発する。」
「は?」
「あの野郎……殺す!」
全身を黒こげに、あられもない格好になるが魔力で直ぐに直す。
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「では、これを」
トリックスターが設立した共同体、
「マスター、ようやく雷の完成だそうです」
コードネーム:雷。ブロンテと呼ばれる銃を最高機密として大量生産体制に入ったことをマスターは耳に入れた。工場もいくつか出来ていて、神に気をつけるべきだな。と一人考えこんだ。
「ちょっと揺らしてみるか」
ブロンテの性能を確かめるため、マスターはゆっくりと手を動かす。
「さあ、見せてもらおうか、新型の性能とやらを」
グラスの氷がカランと音を立てた。
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ハジメたち一行はウルの街にいる。トリックスターがようやくいなくなった事で束の間の平穏が生まれていた。癇癪玉を入れられると傷つきはしなくても凄まじい不快感を催すので、ストレスは大分減った。
幸か不幸か、髪は相変わらず真っ白である。
「げ、先生……」
魔物は倒され、ウルの街は平和が戻る。
「あ、そうだ!ハジメくん、これ」
木でできた小箱を渡された。
「何だ?」
「道中で会ったトリックスターという人がハジメくんに渡せーー」
「いらない」
「え?どうして……」
「いらない」
「え?彼はいい人ですよ?」
彼の行った悪事の数々を先生に洗いざらい話すと、流石に評価を改めて同情的な視線を誘った。背中に癇癪玉は、以前どんなに人よく当たったとしても事実を知ってしまった他人を刹那でドン引きさせられる事が出来た。
「なんだ、トリックスターとは懐かしい名前だなあご主人よ」
『!?』
余計な一言が余計な混乱を招いたのは必然だった。
ブロンテーはギリシア語で雷。
割とへんなノリで書いてるので、こうした方がいい等あれば是非感想欄もしくは評価お願いしますm(_ _)m