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「血の時代は終わりだ。これからは鉄の時代である」
魔人族の国の領邦、パネブマで反乱が発生した。元々魔人族の内でそこまで強く無い者が集まりやすい地であり、強力な魔人族幹部により統治されていた。
だからこそ、治めていた領主カレンドラは被支配階級の者に対する疑問もなく、生まれながらの支配者として怠りなく支配していた。
この地域ではかなり厳しい税やアルヴ神への信仰のために使われる金属の採集や食料の生産などでかなりの不満が溜まっていた。
元々信仰心が強い者の集まりであるパネブマの住人たち。カレンドラが神の名を騙って崇高なるアルヴ神を貶めるような真似がどうして我慢出来なかったのである、というのが表向き。
だが、実際の所カレンドラは神を貶めていた訳ではないし、信仰心だってそれなりには存在していた。
ある男がやって来て、『カレンドラは神を貶める愚か者だ』『断罪する事は神の名に置いて許される。これは神戦だ!』などと囃したてて回った。
これに怒ったのは農民や商人の階級の者だ。カレンドラがアルヴ神を厚く信仰しているからこそ重荷に耐えられたのに、それを裏切るような真似をされたのではたまったものではない。
始めこそ「そんな事は無い」「貴様の虚言は神を侮辱しているに他ならない」と言う声も多少はあった。
男は用意周到な者で、カレンドラの行動や他の地域の現状を"懇切丁寧"に説明してあげた。『カレンドラが拝むのはアルヴ神ではなく、人間族が崇めるエヒトだ。』『お前たちの地域の資源なら貧しい暮らしをする事もなく、むしろ魔人族内でも随一の裕福さを得る事が出来る』
男の持ってきた農業革命と産業革命で徐々に憎悪は増えていく。
「なぜ、あんな奴に従わなければいけないのか」
「貧しい生活をしているのに、自分だけはお山の上でふんぞりかえるのか」
救いが欲しいからこそ神に縋るのに、神は助けてくれない。神の代理は自分たちをロクに見ず、苦もなく毎日を謳歌している。断じて許すわけにはいかない。
ひたすらに怒りと憎悪を掻き立てられるが、いまいち足並みは揃わない。
単純な話、カサンドラが強すぎる。
魔人族自体、人間族とそこまで力は変わらない。訓練などで一般人も強くなれるが、英雄と呼ばれるような者は一般人からほんの一握り以下しか出てこない。
だが、幹部と言われる者は基から違う。戦うためだけに交配を重ねられ、魔力の質と魔法の力を何千年と高めてきた彼らは最早別の生物にさえ思える。下層民とは言えバカでは無いのだ、明確すぎる実力差は遺伝子レベルで刻まれている。
だが、そこに男が現れてこう言った。
「これらが有れば幹部どもと戦える」
そう言って、とある場所でブロンテと呼ばれる銃を取り出した。
聞いていた皆が困惑した。鉄の塊を出したかと思えば「カサンドラと同等の力を手に出来る」と大真面目に言うのだ。
その場がザワザワとするが、リーダー格の男は「取り敢えず、話を聞こう」鶴の一声で、皆は此方を向いてくれる。
「耳を塞いでおくか、心構えをしておけ」
そう言ってそこら辺の大岩に銃を向け、引き金を引くというごく単純な動作を行った。
ドパァン!!
「へ……?」
一発の銃声に心を砕かれてしまったように全員が放心状態だ。
ダメ押しに彼はこう言った。
「誰でも使える、設備を整えれば誰でも作れる。既に魔人族の幹部を一撃で打ち倒した」
夜空には満月が昇っていて、彼らを満遍なく照らしている。
「お、教えてくれ……」
錬成師に軽く教えれば直ぐに作れた。密かに強力な銃の製造が開始され、あっという間に三百艇以上のさまざまな銃を反乱軍は所持してしまう。
二ヶ月後……
「決行は明日。我々は栄光の架橋を渡り、死しても神に祝福されるのだ!」
オオオオオオオオオオオオォォォォォォ!!!!
ついに、決行された。
献上する品や税があると言って事前に持ち込んだり、カサンドラの前に持っていく物の中にも隠してあった。
「死ね!カサンドラ!」
前に来た一人がクイックドロウで攻撃を仕掛ける。
だが、幹部なのだ。身の危険からガードして済ませようとするが、当たるべきでないと判断して右腕を犠牲に生き残った。
「どういう……つもりだ?」
彼女の顔には怒りよりも純粋な困惑があった。強者であるカレンドラには弱者が自分に歯向かってくる意味がまるで理解出来ない。
7時間の戦闘の後、ついにカサンドラは討ち取られた。
遺体に傷を受けていない箇所は無く、心臓にポッカリと大きな穴が空いていたという。
では、一体この町はどうなったか?
壊滅である。
通信なんてロクに発達していないトータス。反乱軍が伝令を見逃すはずもなく町の情報は誰にも漏れていない。
では、誰が反乱軍を皆殺しにしたか?
そう、神の使徒だ。
解放後の街を発見し、このような危険集団がいたことに気付いた彼らの軍団がパネブマという街ごと消し去り、書類上からも抹消してしまった。
突然現れた白い者共に対抗はしたものの空を自由に駆け、異常な雰囲気を持つ天使たちには今の彼らでは敵わない。
一匹落とす間に味方は次々とやられていく。時間が経つにつれ、味方を攻撃する者さえ出てきた。
反乱軍は圧政に勝利をする事はできた。しかし、圧倒的な暴力には手も足も出なかった。
「うーん、対策しなきゃね」
扇動者、トリックスターは風のように誰にも気づかれず消えた。
街一つほどの穴と焦げ臭い臭いが全てを物語っていた。
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「お前の父親の親友が、あのトリックスターだと?」
ティオと名乗るこの駄龍は大概おかしな奴ではあるが、その表情は嘘を付いているようには思えない。ユエに聞いたところ、龍族の年齢は人間や魔人のそれを大きく上回るらしい。
「妾も顔くらいしか見たことは無いが、父上からは愉快な性格だと聞いていたのじゃ。恐らく彼なのだろうな」
ーー風が吹いた。
「ああ、俺だよ?」
『!?』
知らぬ間に背後に回り込んでいたトリックスター。
「お前……」
ハジメとそのおまけが此方に殺気を向ける。俺はそっちが目的じゃないんだけどなあ……と頭をポリポリと掻いている。
「いつもみたいに遊びたいんだけどねー、悪いがお前らに用なんてないよ。こっちも暇じゃあないのさ」
「確か……ティオだっけ。大きくなったなぁ……何百年ぶりだろうかな?」
「一体、貴方は何の用事なのじゃ?」
旧い知り合いの前では少し真面目にならざるを得ないみたいだ。
「奴らの動きが活発になったよーん。」
「奴ら……?」
「ほらほら、あれだよ。ハルおから聞いてねーの?」
「!!!」
何か思い出したらしく、非常に驚いている。
「まさか……」
「そうだよ。思ってるとーり。
呆然とするティオは置いておいて、しばらく燻っていた南雲ハジメを向きトリックスターはこう言った。
「魔力が勿体無いから後ろの圧をやめろください」
魔力の粒子がキラキラと舞い、もうじき臨界しそうな勢いだ。
「自業自得だな」
「「食らえ……!」」
無慈悲にも絶大な威力で攻撃が放たれる。鼻垂れ小僧のトリックスターはプルプル産まれたての小鹿みたい。
「うわー!!!」
ドカァン!!!
二人の怒りの一撃はトリックスターをまる焦げにしてしまった。
「いててててててててて……よっこいしょ、と」
真っ黒でボロボロなトリックスターは時間が逆戻りするみたいに元の色や形へと戻っていった。
「バカだね〜お前ら、あわあわ哀れだ。こっちがちゃんとせつめーしてやってるのにさ。耳クソか脳みそ、詰まってますかー?」
頭をコンコンと叩く様子がたいそう他人を腹立たしくするのは、もはや言うまでもない。
「「「……!!」」」
「だから無駄だって言ってるのに……」
この後も攻撃を加え続けたが、その度に修復されて何度か繰り返す内に彼女たちは諦めてしまった。
「もう帰るわ。ティオ、説明よろしくっ!!」
身体が煙の様に薄くなっていく。
「あ、そう言えば」
一瞬で元の形に戻った。何か思い出したらしいか、とても悪そうな笑みを浮かべている。
「そこの三人、ムカつくから鼻水が垂れやすくなる呪いかけたわ。鼻垂れ小僧と鼻垂れ娘になるがいい、はっはっは!!」
今度こそ消えたが、ハジメの鼻から少しだけドロリと垂れてきた。
「俺らガン無視だったな……」
近くに居たのに完全に蚊帳の外にされた
ーー翌日
「ティオ、トリックスターとは一体何者なんだ?」
ハジメが改めて聞いた。時々、暇なのか知らないがちょっかいをかけてくるアレがかなり前からいる事を知って、ただの魔人族では無いと悟ったからだ。
「父上の友人であり、長老であるお爺さまも認めておられたからのぉ。突然現れるという事は今も変わらないようじゃが、一度だけそのことについて聞いてもはぐらかされてしまったからな。秘密があるのは確かだろう」
「そう言えば、奴は魔人族の筈。どうして竜人族と交流があるの……?」
ユエがたいそう不思議がっているが、答えは簡単で複雑だった。
「ああ、それか。曰く、魔神族じゃと。父上たちが気にしておらんかったからすっかり忘れておったわ。ははは!!」
ハジメの額に青筋が立っている気がする。
「……ケツバットいっとくか」
宝物庫から偶々入ってたケツバットを取り出し、フルスイング。
アッーーーー!!!
ケツアカヒリヒリドラゴンの完成。どうしてこうなった?
兎にも角にも、ハジメ一行の旅はまだまだ続く……
最初のやつは時系列が結構違うよ。けど、本編中の時間内の出来事なのは確かだよ。
念のためですが、領邦制は完全にオリジナル設定。血の気が多い魔人族は、実質部下が治めているらしい。