沙条愛歌に憑依物語   作:TYPE-HAMELN

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六話

契約。

 

花の魔術師。マーリン。ボクっ娘の女性であり、今はオレの「お友達」だ。

 

彼女はオレの「お友達になろう」という問いに肯定した。

 

干渉魔術。支配、魅了といった魔術を織り交ぜながらオレは彼女を誘導する。

 

言葉を連ねる。魔術を重ねる。体を重ねる。

 

どこまでも深く彼女と交わる。

 

オレの言葉に肯定するよう誘導する。それをわかっているのだろうか?

言うまでもない。わかっているに決まっている。

それでも彼女は、オレの思いのままになっていく。

 

それは「命令に従う」という問いに肯定する。

 

オレはどんどん自分に都合の良いような言葉を投げかける。

 

その全てに彼女は肯定していく。彼女の動きは辿々しくとてもまともな状態には見えない。

 

だがそれでも今の彼女であっても油断することはできない。

何故なら彼女は最高位の座に位置する冠位の魔術師であり、

その証たる“世界を見通す眼”――「千里眼」の保有者。

マーリンの千里眼は、何処に行かずともその時代の万象全てを把握し、

その顛末を読み取れるというもの。そして千里眼保有者は、

生まれながらにして魔術の最奥にして真理に到達している。けして侮ることはできない。

 

だがオレは知っている。どんな存在も完全無欠ではないと。

 

さらにオレは言葉を続ける。理解者の顔をして話しかける。

 

 

「あなたは異端者。そうして疎外感を感じている」

 

 

彼女はしかし、それゆえに、

人間として生まれながら人間の視点を得られなかった異端者としての疎外感を感じている。

 

 

「私なら理解できるわ♪」

 

 

マーリンの人間に対する冷酷とも言える見方も、この千里眼が大きく影響を及ぼしている。

 

 

「私ならいつまでも一緒にいてあげられる」

 

 

マーリンはとても優秀だ。彼女を襲ったあの一瞬でオレの存在も、その本質も理解したはずだ。

アヴァロンという特異な場所。そこに瞬時に顕れたオレという存在。

そして繰り出されるのは神代の魔術師すら超える力の数々。

普通じゃない。それは明らかだった。人間でありながら異端者である。

 

 

――そしてそれは花の魔術師マーリンにも同じことが言える。

 

 

―語りかけながら、彼女に合わせて作り上げていた「魔術刻印」を彼女になじませる。

その効果は死亡時に自動的に起動してその持ち主を蘇生しようとするもの。

それでもこんなものは本来、彼女にはまったくもって必要のないものだ。

生まれながらにして魔術の最奥にして真理に到達している存在であるのだから。

だからこれは呪いだ。

 

―彼女は「セルフギアス・スクロール」にサインする。

『自己強制証明』(セルフギアス・スクロール)

それは権謀術数の入り乱れる魔術師の世界において、

決して違約不可能な取り決めをする時にのみ使用される、最も容赦のない呪術契約の一つ。

自らの魔術刻印の機能を用いて術者本人に掛けられる強制の呪いは、

如何なる手段を用いても解除不可能であり、たとえ命を差し出したとしても、

次代に継承された魔術刻印がある限り、死後の魂すらも束縛される。

 

制約が破られるなどした場合は魔術刻印が自動的に反応し、違反した魔術師の体を内側から蝕む。

たとえ契約者本人に抵触する意思がなかったとしても、

「契約違反である」と見做された時点で問答無用で呪いは発動する。

その行為が中止されない限り呪いは持続し続け、

最終的には目や口から血を溢れさせた苦悶の表情で死に至る。

 

この証文を用いての交渉は魔術師にとって最大限の譲歩を意味し、

魔術師の間では滅多に見ることのできない代物である。

 

そんなこと彼女が知らないはずがないだろう。

 

 

「これで私たち、本当のお友達ね♪」

 

 

 

 

――それでも彼女はこの呪術契約を結んだ。

 

 

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