インフィニット・ストラトス Re-Boot   作:達田タツ

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第七話

▼▼▼

 

 

「ランク?」

 

 仕切り直しのIS実機訓練が行われる。

 

 一限目、昨日と似た冷えた空気を感じながら、一組は左腕に装飾形態のISを包ませて立つ。ただし、昨日と違うのは技研の人間がいない。いつもの先生と、用務員のみ。

 

 その用務員の不思議な動きに高城は首を傾げる。なんというか、よそよそしい。必要以上の生徒との接触を避けている、ような。明確にそうだと言える確証はない。ただ、あれだけ白式の起動に騒いでいた人間たちが、今日は遠巻きに静かにしているのだ。

 

 一晩過ぎて改めて白式を起動するであろう、織斑一夏とも会話はない。

 

「ISを扱うには適性がいる。その指標がランクだ」

 

 織斑先生の言葉に意識を改め授業に集中する。そもそも用務員は、元から生徒と関わりは少ない。昨日の方が、彼女らの興味が勝った故の異常と見るべきであった。

 

「アルファベットでAからF、個人毎に確定される。基準は、ISコアと使用者の肉体との親和性による。ISコアとはどんなものか、高城、言ってみろ」

 

 名指し。事前に意識を改めて正解であった。

 

「はい! ISコアは、量子サイズの自然な状態のインフィニット・ストラトス粒子(コーパスル)が圧縮されており、新規の粒子生成能力を帯びた、インフィニット・ストラトスを稼働させるエネルギー源としての核です。通常八面体で、大きさは確認済みのもので最大一センチ程度です」

 

「よろしい」

 

 頷いた先生は、手癖の、バインダーを片腕に当てながら全体を見渡す。

 

「コアとの親和性というと、随分とあやふやに聞こえるだろう。水と油のように化学的なものに見えないからな。もちろん明確な指標がある。それは、コアからの粒子抽出量だ。

 

 今、高城が述べたように、コアは多量のIS粒子を圧縮、つまり保存しているばかりか、新しい粒子を創り出してもいる。だが粒子が微粒子の状態から実体化するためには――ISに形を与えてやるためには、我々人間が必要だ」

 

 どんなマシンも使い手がいてこそ動き出せる、あるいは止められるものだ。

 

 頭上の空中モニターに輝く宝石が映し出される。コアだ。しかしこれは3DCG、現物を撮影したものではない。本物は、その明るさは晴天に太陽を直視するほどという。

 

 CGは次に、八面のあらゆる頂点から細かな光の点を吹き出した。無数の光は空中に分散するが、次第に集合し、その形を人型に移す。

 

「我々は、IS粒子に形を与える際、それに必要な総量を応じてコアから引き出している。即ち、ISを起動できる粒子をコアから抽出できなければならない」

 

 そして、

 

「確かに、コアは多数のIS粒子が籠もっている。もしこれを永続的に引き出し続けることができたならば、一つの町を作ることも可能だといわれている。だが、なぜそれをせず、自分の体を包むスーツしか形作らないのか。わかる者はいるか?」

 

 先生がこちらを見る。クラスメイトは考えを巡らす表情をしてみせる。

 

「はい!」

 

 手を挙げたのは布仏。

 

「お菓子作りと一緒で~、決まった分量じゃないと良い味にならないから、とか!」

 

 先生はあごに手を当て思案する。

「?」

 

 したが、結果的に首をひねった。恐らく意図を理解したのであろう山田先生が割って入る。

 

「そうですね! お菓子も、最終的に作りたいものを想像して分量や形を決めますよね。でも、それはお菓子が決めてくれるわけではなくて、皆さん自身で材料や、量、そしてクッキーであれば型などを決めるでしょう? お菓子を作り慣れない人がレシピなしで作ろうとすると、味も形も変になってしまいますねっ。ISも同じなんです」

 

 そこまで言って織斑先生が引き継ぐ。

 

「レシピか。良い例えだ。ISコアには、例えば二式打鉄というレシピであり型が記憶されている。既にレシピが用意されているなら、それに従い相応のIS粒子をコアから引き出す必要がある。または、引き出せなければならない。そしてレシピに頼らず粒子を引き出したとして、正しいものができることはない」

 

「せんせ~、レシピ通りの材料を用意できてお菓子作りは終わりじゃないよ~?」

「例え話はもういい。……山田先生」

 

 昨日と同じように2の数字がある打鉄を装備した山田先生が、生徒の視線の集まる先に立った。

 

「み」と一言どもり、「見ていてくださいね」と続けて深緑の籠手を指でなぞった。

「2番さん、展開お願いします」

 

 籠手を構成するプレートの隙間から光が散乱する。だがしかし、散乱した光は昨日の箒のように人型には形を変えず、波間が陽光を照り返すようにして山田先生の周囲を漂った。

 

「よく見ろ」と織斑先生が注意する。

 

 速度を緩め散逸する光たちは、瞬く間にその輝きを弱め、高城たちが見入るよりも早く消えていった。

 

 沈黙。

 

「え!? 消えちゃった?」

 

 遅れて驚きの声を出したのは深井だった。

 

「山田先生、次を」

「はい」

 

 咳払いをしてみせ、再び先生は左腕に唱える。「2番さん、お願いします」

 

 再び籠手から光が吹き上がり、山田を中心に楕円状に広がった。一拍の休止のなかで光たちは先ほどと同じように速度を緩めるが、急に自ら動き出し、中心の人間を包みあげ巨大な人型のシルエットと成る。

 

 光が、陽炎か幻覚か揺らぎを見せ始め、桜が舞い散るようにその残滓が崩れた向こう側から、深緑の打鉄とそれに乗る山田が現れた。

 

 おお、と小さな歓声が漏れる中、高城はあごに手をあて思案する。

 

 つまりは、一度目と二度目を比べろと言われている。何が違ったのか、未だISを満足に起動もしていない自分らにそれを答えさせようという。

 

 明確な違いはもちろん、粒子がISになれたかどうか、である。それは答えではなく結果。つまり答えは経過に隠れているはずである。

 

「やっぱり直視するとけっこう眩しいね」

 

 と、近くのクラスメイトが呟いた。

 

 眩しい……単純に光っていると言っても、粒子の光は照明や太陽とは異なる。粒子が持つエネルギーや、量子化された機体データが光として見えているという研究がある、とは授業で学んだこと。

 

 眩しさは問題ではない。となると、先ほどの例え話を思い返す。そうして至った答えに幾分か自信を持って手を挙げた。

 

「先生、引き出した粒子が少なかったから、一度目は消えてしまったのでしょうか」

 

 一度目はプレート状に、水上に粉を振りまいたように広がったが、二度目は包み込むように大きく広がっていた。粒子量の差というものは、レシピ通りのデータを用意できるかどうかに関わってくるのではなかろうか。

 

「その通りだ。座学の授業で教わった筈だな。現在の研究では、ISに形を与えるためのデータは粒子が保持しているとなっている。だが、量子サイズの粒子ひとつで全ての情報を記憶しているかというとそうではなく、複数の粒子が互いに情報をやり取りすることでデータを維持している。片腕のみ展開するにしても、片腕を形成するのに足るデータを確保できて始めて粒子群の実体化が可能となる」

 

 曖昧な説明だが、教科書の記載を諳んじられても困る内容でもある。中学卒業程度の数学では量子力学なぞ即座に理解できないし、ましてや口頭では耳にも入らない。

 

「故に、満足に粒子を引き出せないFランク相当の者は、IS側から拒否される、つまり起動しない。Eになってようやく自身のISを起動させ、動かし、飛行させることが可能なのだ。ただしAランクでもコアから引き出せる粒子量は氷山の一角と言われている。今の技術ではIS程度の大きさを作るための粒子抽出でやっとだ。町を作るなど遙か未来の話だな」

 

 その粒子抽出の個人差を、入試での実機試験で探ったのだ。今までの知識では、というより普段からISの起動云々について聞き知っていたことと食い違う。女であるならまず起動ができるが、使いこなすとなると適性が関わる、そういう認識だった。

 

 ということは、あの試験において起動すらできなかった者もいたのだろう。我々一組の人間は立ち上がり、銃か刀を手に取り、教師を相手に一瞬の立ち回りをしてみせたというのに、その裏では起動にもありつけずただ涙を飲み帰途に着いた者たちが大勢いるのだ。

 

 ISとは、いかに狭き門か。

 

「特に重要なことがある」と織斑先生が続ける。

 

「むしろ、IS粒子抽出量の問題は次にあると言っていい。Fランク、つまりISの起動が困難な適性の人間だが、絶対防御を維持できない」

 

 なるほど、と納得する。最初の『女であれば起動する』という認識は誤りではないが、生死に関わる問題があるというのだ。

 

「絶対防御は学んだな。これが無ければ、高空高速での低温に肉体は耐えきれない、地上への衝突時や鳥や木々との衝突時もそうだ。魅惑のマシンであるISが、自身に牙を剥くこととなる」

 

 自身の見解と正誤を合わせていた高城は、自身の後ろから鼻で笑うのが聞こえた。織斑先生の声に紛れた、ほんの小さな音。居たのは須藤だった。

 

 彼女もまた、昨日とは打って変わって傍観者だ。我々を英雄にすると啖呵切った者とは心がまるっきり変わってしまったかのようである。

 

 一体全体、どういうわけだろう。

 

 

▼▼▼

 

 

 深井は、間隔の空いた整列で体を震わせていた。単純に恐怖だ。

 

 つまり先生が今言った意味は、絶対防御は必ずしも絶対ではないということとなる。重工業用プレス機の圧力すら耐えた、これまでの歴史上で人体の保護をこれほどまで約束した機能、また機構は存在しない。高空の、だけでなく宇宙の過酷な環境で命を守るための重要なシステムであった。

 

 それが完全ではない?

 

 この絶対防御は、人類が安全にISを使用するためのよすがである。表面上をシールドが覆っているが、これらはIS同士の戦闘などで消失の可能性が比較的高い。が、絶対防御はその理論から外れた場にある、と授業で学んだ。

 

 何があろうと消失しない。

 

 だからこそ、自分たちは死という結末に対し過剰に不安を感じることなく、この学園に足を踏み入れられたのだ。

 

「心配するな。お前たちはAの最高クラスだ」

 

 と、安心させる言葉を述べるが、しかし絶対防御喪失のきらいがある以上、どう心配しなくてよいというのか。

 

 その気配を察したのであろう織斑先生は、ひとつ自信ありげに鼻息をならす。

 

「各位のIS適性詳細を、学園の持つISのコア・ネットワークにアップロードしてある。これは、個人データを用いIS側での調整を容易にするためだ。

 

 まず、自身の装飾形態を二本指で、手のひら側から一直線になぞってみろ。ミニパネルが出たか? その半透明のパネル、簡易モニターで自身のISの調整がいくつか可能だ、覚えておけ」

 

 各員が左腕を頭の高さまで上げ、眼前に表示された青く光る、葉書ほどの板に食い入る。みな、自身の適性を知りたくてたまらないといった風。

 

「ISの調整というのは、例えば昨日、篠ノ之が展開した打鉄は本来の打鉄ではない。あれは、篠ノ之自身で装甲や武装を変えたものだ。このように、専用機とまではいかないが、ベースの打鉄から逸脱しない範囲で、自分のランクによる粒子抽出量や得意な戦術を頼りに変更することが許されている。本来の姿を基本装備(プリセット)、追加変更の為に用意された装備を後付装備(イコライザ)、変換可能な範囲を拡張領域(バススロット)と呼んでいる」

 

 しかし、先生はそんな生徒たちの求めをよそに別の話を述べる。言い終えて、誰の視線も自分に向いていないことに苛立ったのかパンっ、とバインダーを叩く。深井はしっかり先生の話を聞く性質なので、逸る気持ちは抑えた。

 

「まぁいい、お前たちには実践が重要だ。まずは右下の個人パネルを開け。指で触れればいい」

 

 少し説明が続いたが、観念したようだ。

 

 簡易モニターはシンプルなフラットデザインで項目分けされており、右下には円と二等辺三角形を組み合わせたよくある平易な人物シルエットがあった。触れてみれば、そこに抵抗感はなく指が突き抜けてしまうものの、モニターは次のように切り替わった。

 

『使用者:深井ゆかり』と細かな欄とグラフの組み合わさった個人情報の一覧。

 

 名前があるが、疑問に思うのは、この打鉄は保管庫から番号のみを指定したに過ぎず、ましてや個人情報の入力など行ってはおらず、しかも昨日とは違う機体である。なのにどうして個人を特定できたのだろう。

 

「昨日一度、装飾形態のISを装着した段階で、IS側は個々の判別ができるようになっています」と山田先生がやや高い位置から言う。

 

「最初の健康診断で、みなさんの身長や心電図、脈拍などを記録させていただいていますが、これを皆さんの情報に組ませた上で学園ISが持つ独自のネットワーク上に登録しています。IS側は、昨日の一度の装着でみなさんの身体情報を読み取り、ネット上からそれぞれの情報に紐付けしていたというわけですね。教師か本人しかアクセスできない情報ですので、心配しないでください」

 

 納得する。名前の隣には、その画面上で一番に大きくアルファベットが表示されていた。織斑先生の言った通りAだ。

 

「自分自身のランクは確認したな? お前たちの絶対防御はなんの問題もなく稼働するランクだ。重要なのはその下の数値だ。単にAといってもそれは総合的な結果であって、どのような具体があるかまではわからん。

 

 ひとつめは秒間粒子抽出量。瞬間粒子抽出量と呼ぶ者もいる。これはスラスターによる移動、つまり加速や速度維持、減速だが、ISの移動能力に関わる。また、実体弾を使用しない粗粒子(ビーム)兵装にも影響する値だ。

 

 ふたつめは初回起動時の粒子抽出量だ。つまり、ISをISとして形作るためにどれほどの粒子を使えるかどうかだ。この量が多いと、より巨大で、兵装を山ほど積んだ機体を使うことが可能となる。加えて、実体兵装は初回起動時に弾丸や刀身も形成するため、これも影響する。

 

 次はシールド形成値で……」

 

 と言いかけ、バインダーを二度鳴らした。

 

「おい、織斑、如月。話を聞いているのか?」

 

 一夏はしきりに首を傾げている。

 

「えっと、ちふ……織斑先生、俺たちはみんなAと言いましたよね?」

「みんなとは言っていない。お前はCだ」

「なんだか微妙だなぁ」

 

 不満げだ。

 

 如月も同様に首を捻っていた。あまりにおかしな話過ぎるので、ついぞ一八〇度回ってしまいそうなほど。

 

「あたしのも、おかしくないですか??」

 

 疑惑の声を盛大に込める。

 

 そして、まったくもって信じられないという風に、他人の間違いを指摘するかのように、仕掛けられたドッキリに気付いてしまったかの如く唱える。こんなものは学園側のミス以外の何でもない、と。

 

「あたし、Eなんですけど」

 

 

▼▼▼

 

 

 ISが世界中に拡散された時、その性質を知っていた者達には狂気にも思えた事態だった。まさしく、無作為に核兵器を配るに等しい行為だったから。故にISに対する規制は急を要するもので、拡散から八年を経た今も、条約や各国の法には矛盾点も見られる有様だ。

 

 しかしながらその渦中においても、必要な研究を重ねていた者達もいた。その成果のひとつがIS適性、ランクであるといわれる。

 

 核の威力をも防ぐ――それはまだ試されてはいない――ISは個人で操るものだ。純粋に兵器として突き詰めれば、世界征服もおとぎ話ではない。だがそうあってはならない。

 

 故に、誰もが操れるような存在にしないことが重要視された。これを操るには技術と、知識、重い責任、そして適応能力が問われるのだ、という理由付けが行われる。女のみに反応するというのは周知の事実であったため、女性の中でも基準を設けたのだ。

 

 ISが撃ち合い斬り合いのスポーツとなったのは、突如現れた未来を担う新発明を世間に受け入れさせる意味があった。爆発音や剣戟を楽しむのはいかがなものか、野蛮であるという批判は未だに付随するが。

 

 絶対防御こそがそれを可能にする。しかしながらこの唯一無二の最強の盾を我が物にできるのは、選ばれた人間のみなのである。

 

 とはいえランクそのものは社会に知らされておらず、広範には適性の有無のみで、この道を目指したものが直面する現実となっている。

 

 Fランク以下に対する拒否は安全装置でもある。基準に達していなければ危うい存在に触れさせることはできないのだ。

 

 だが、と須藤は、それまでの自身の経験と照らし合わせて否定する。

 

「ランクなんてもんは所詮、研究者が考えた後付けの指標さ」

 

 それまで静観を決めていた須藤は、疑問を拭えないでいる一夏と如月に声を掛ける。注目を浴びる中言葉を続ける。

 

「その証拠に、ランクは変動するんだ」

「須藤先生、それは!」

 

 山田が制止を投げかけるが、虫を払いのけるようにして手を振った。

 

「なぁに、すぐ教科書に載ることだよ」

 

 変動の事実がありながら、自らの作り出した基準の崩壊を恐れて未だに教育の場に含めていないのは、ISの歴史において初期から携わった須藤にとっては腹立たしい。

 

「あの篠ノ之束が、人類を一律に評価なんてこと、すると思うか?」箒の隣まで歩を進め、「妹はそこらへんどう思うんだい?」

「私は関係ありません」

 

 須藤は肩をすくめ、悪ぃなと小声で返す。

 

「このIS適性ってのは、開発者の意図にないものだ。連続稼働時間が伸びる、単一のISコアを使用し続ける、絶対防御高負荷状態を継続する、色々方法はあるが、粒子抽出量は増加させられる。だから、心配なんてしなくていいよ」

 

 次に深井の肩に手をやった。集団の先では、やれやれといった風で二人の同僚が首を振っていた。

 

「お前たちはなんのためにここに来た? ISを使うためだろ? 日本の、ひいては人類の発展のためにここにいる。ええと、昨日あたしはなんて言ったっけ……そう、お前たちは一歩間違えば怪物になってしまう。だが、お前たちが目指すのは英雄だ! 臆する暇はないぞ」

 

 その言葉に何名かが頷いている。織斑一夏も少し自信が持てたようだ。しかしクラス最低の如月はまだ不満げである。

 

 次に如月の隣まで進んだ。

 

〝須藤先生〟

 

 何を言い出すか察した山田が視線と言葉を投げてくる。

 

〝言うべきではありません。混乱させてしまうだけです〟

 

 その声は頭に響いた。プライベート・チャネルだ。特定のIS間で、個人あるいは複数人のグループに言葉を飛ばせる、粒子を介した一種の通信システム。

 

〝この子は不安がってる。曖昧な言葉で払いのけてやれるのかい?〟

 

 山田はふいと視線を逸らした。まだまだ甘い先生だ。

 

「如月、お前さんは特別だ。なにせ、あらゆる数値が一定にない、変動型なんだ」

「変動型?」

「ある時は頼りないが、ある時は学園一の実力を発揮できるってことだよ。お前のやる気にISがしっかり応えてくれるんだ」

「あたしの……やる気、次第」

 

 その目が次第に光を取り戻すのを見た。

 

「如月」

 

 幼い子と話をするように屈み、彼女との視線を同じにする。

 

 その目は不安と希望が綯い交ぜになった、未来が白紙であることに喜びも恐れもある目。

 

「今まで存在した変動型のパイロットはかなり少ない。だが、先人達が揃って心に決めたことがある。それは『ISを空に連れていけ』だ」

 

 

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