インフィニット・ストラトス2~人と機械の紡ぐ心~ 作:サウス零
「敢えて名乗るなら、機竜王…『ファルムート』!!!」
ファルシオンが身にまとった新たなの装甲は以前の漆黒の鎧から配色が赤白黄青と明るい色彩へと変化していた。
「ISだと……?ふんっ、機竜王など……とんだ茶番だな!!」
エムが先手で左手にナイフと展開、ファルムートに格闘戦を仕掛ける。
バチッと火花を散らし、鋭利な音を響かせた。
「くっ……」
エムの攻撃はファルムートのハンドビームソードで容易く弾かれ、先ほどの猛攻から一転鈍くなっている。
ナイフと銃剣の二刀で追撃するも、同じく二刀流となったファルムートのビームソードで受け止めている。
バチンッ!バチッ!バチッン!!
互いに格闘戦を続ける中、エムがあえて高度を下げる。
追随するファルムートの前に高速道路の立体交差ポイントにぶつかりそうになった。
「なんとーっ!!」
ショルダーアーマーに内蔵されているスラスターを用いての高速横回転機動で軌道をそらし、新たな武器を取り出した。
『ハンドソードカノン』
先程のビームソードが可変し、二刀流から二丁銃に切り替えたのだ。
ライフル、ガトリング、チャージショットと三種の砲撃を放った。
「ちいっ!!」
エムは咄嗟にシールドビットを二基発射、防御しきれずにそのまま爆発する。
「そんなもので!!」
爆発で煙が巻き上がる合間にエムはライフルを構え、先端に蒼い光が集まっていた。
「そこだっ!!」
煙が晴れた隙間からファルムートの姿を見つけたエムがエネルギー砲を発射、命中直前……
ファルムートの背部ユニットがスライド、キャノン砲のバレルが展開。
その銃口にはエネルギーが最大チャージを完了していた。
「セイグリッド・パニッシャー!!!」
発射された高エネルギー砲はサイレント・ゼフィルスのビームをかき消して、エムの元に向かう。
高速ロールで回避するがその先に……
ファルムートが右の拳にエネルギーが収束していた。
「なっ!?」
「竜神掌・
放たれた気弾が竜の頭部を模り、エムに噛みつくように命中した……
「うおおおぉぉぉー!!!」
エムの持っていたライフルがオーバーフローを起こし爆発、そのまま海岸へと移動させる。
大破したサイレント・ゼフィルスは強制解除となり、姿を現したのは15~6の少女だったが、顔に覚えがあったのだ。
「織斑千冬…?なぜ…?」
ファルムートはその衝撃に動きを止めてしまう…
その容姿は幼いが、よく見る織斑千冬その人の顔に瓜二つだ。
「まさか、クローン…か?」
「……違う!私は、私だ!!」
いつの間にか、エムは起き上がり、太ももに装備されているアーミーナイフを取り出した。
「まがい物はヤツだ……」
「ヤツ…?」
「決着を付けたその時、私は……ワタシになれる!!」
そんなことを言いながら、エムは勢いよく突っ込んでくるが……
ガキッン!!
間に何かが割り込んできた。
「そこまでだ……エムよ」
「お、お前は…『ロボオーロ』」
なんと、割り込んできたのは白銀のロボポン。
雰囲気はどこかロボマルスに通じたデザインであるがそのロボマルスより、大型かつ攻撃重視に見える姿をしていた。
ロボオーロと呼ばれたロボポンはエムのアームナイフを受け止め、ナイフを粉砕する。
「どういうつもりだ!!」
「ISを落とされた今、お前の勝機はもうない。速やかに撤退しろ」
「私に命令するな、まだ戦いは終わってなどいない!!」
「いや、終わってもらう、相手は一度織斑千冬に完封勝利している者だ。手札のない今のお前ではそのまま撃たれるだけだ」
「なっ!?ねえさんにだと…?」
ロボオーロからの情報に衝撃を受けるエム、そして、一同の前に一台のモーターボートが海岸に乗り込んでくる。
操縦席から現れたのは仮面をかぶった男が一人と複数のロボポンだ。
「ロボオーロ、彼女は?」
「はっ、ここに…」
「彼女は私が引き受けよう、ロボオーロはそこにいる彼の足止めを頼む」
「承知しました。ゾロ様」
エムはゾロと呼ばれた男にモーターボートの中に運ばれ、その場を後にする。
追いかけようとするファルムートだが、ロボオーロに邪魔をされてしまいエムを逃がしてしまった。
「時間稼ぎはこれぐらいでいいだろ……ゾロ様はああ言ったが私としては彼の新たなマスターの実力をご教授ねがおうか?」
「お前、ロボまるを知っているのか!?」
「ええ、彼だけじゃない、貴様の所にいるロボポン達は特にな!!」
突然、ロボオーロが光の粒子に包み込まれる。
そこから現れたのは……
「この『ロボヒュドーラ』でお相手願おう!!」
ロボオーロは蛇の鎧を身にまとうのだった。
「おおおりゃぁぁ!!」
「こんのぉぉぉぉ!!」
デビクロスとロボマルスの互いの攻撃をぶつかり合う、互いのパワーは互角である。
「へへっ、ようやく全力で戦えるぜ!!そして、オレが勝ぁぁつ!!!」
「くっ、まだ嫌な気配が消えない……シオン、大丈夫だといいけど…」
「おらっ!!ぼさっとしてるんじゃねぇ!!」
視線をわずかに逸らしたロボマルスに右腕のビームサーベルを振り込むデビクロス。
サーベルの軌道を逸らし対処するがビームの熱で装甲の表面が僅かに溶けている。
「これくらい!ファイアナックル!!」
放った火炎弾がデビクロスに向かうがサーベルで真っ二つに切り裂かれた。
「そんなヘッポコ玉、オレには効かねぇんだよ!!」
「くっ!?」
しかし、別方向から何かが突撃してきた。タンサンだ。
「させるかよ!!」
「んなっ!!邪魔すんじゃねぇ!!」
「タンサンさん!」
「いつまでも、お前に構っている時間はないんだよ!!」
「初期型ロボポンのくせにオレと対等に戦えるのかよ!!」
「戦うさ、こうやってな!!!」
手に取りだしたのは、エネ玉がひとつ。
しかし、通常のエネ玉より神々しく光を放っている。
「おれのさらなる進化を見せてやる!!」
それを口に咥えて飲み込んだ瞬間…。
タンサンのボディが巨大化、『シンイチ』へと進化した。
「いくぜっぇぇぇ!!」
両手の拳に電撃を纏い、それをデビクロス目掛けて叩き込む。
「んなろっ!!」
「スパーク・ボルト!!」
「ぐああああ!!?」
シンイチの拳連打から電撃が走り、デビクロスのボディ全体を通電させ駆動部にダメージを与える。
そこから、デビクロスをアリーナの外へと投げ飛ばした。
「このまま、追撃するぞ!!」
「はいっ!!」
投げ飛ばした方向へとシンイチとロボマルスがアリーナを飛び出した。
「はあっ!!」
「むっ!」
場所は再び海岸線の上空、ファルムートとロボヒュードラが爆撃合戦を炸裂中…
ロボヒュードラが放つスネークヘッドがブルーティアーズビットのように動き回り、ファルムートの動きを翻弄していた。
「やはりヤツの装備は『ヒュドラ』か…以前のよりかなりの強化が施されている」
以前……
最初にこの世界にやってきて戦った相手『ファング・ケルベルト』
その相手が使用していたメイルギア『ヒュドラ』と酷似した装備は目の前にいる相手『ロボヒュードラ』と姿を変えて立ちはだかる。
「まずは、周りの蛇退治だ!」
右手をハンドビームソード、左手をハンドソードカノンにそれぞれ可変。
スラスターを展開、バレルロールを交えて、スネークヘッドを誘導させた。
「下手な小細工は通じぬぞ!」
ロボヒュードラがスネークヘッドを操作し、ファルムートに攻撃を仕掛ける。
「こうするんだよ、ミラージュグレネード!!」
右腰から発射されたグレネード弾が爆散、周囲にガラスの欠片のようなものが舞い降りる。
そのまま、セイグリッド・パニッシャーを連続発射した。
発射された閃光は拡散、ビーム膜が出来上がる。
これで即席のビーム・コンヒューズ撃ちになる。
広がった膜はスネークヘッドを包み、ショートを起こして爆散するのだった。
「ぬっ、スネークヘッドを落とすとは……むっ!?」
爆発の光でファルムートを見失ったロボヒュードラに大きな隙が生まれる。
ロボヒュードラの真下から上昇気流が起こり、その流れに乗りかかりファルムートが急接近。
ソードカノンの連射で視覚を牽制、ビームソードがロボヒュードラの肩部を連続で斬り込み……
「桜花爆心!!はあぁぁぁぁ!!!」
左腕をナックルアームに切り替えて、炎熱の百裂拳を叩き込む。
「ぐっ、ぐおぉぉぉ!!!?」
飛行ユニットに多大なダメージを負い飛行維持が出来なくなり、ロボヒュードラは海岸に墜落した。
「ぐっ、改修したとはいえこの装備をここまで破壊するとはな……」
ヒュドラのパーツを切り外し、ロボオーロに戻る。
「ぐはっ!!」
別方向からデビクロスが転がり込んできた。
その奥にはシンイチとロボマルスがファルムートに合流する。
「この勝負、ぼく達の勝ちだ!」
「こんちくちょうが……オレはまだ負けてねぇ!!こうなったら!!」
そうデビクロスが叫んだ瞬間、沖からビームの乱射がファルムートをかく乱する。
「デビクロス、ロボオーロ。今回はここまでです」
乗り込んできたのは先ほどエムを連れて行ったゾロの船だった。
「ゾロ様……承知しました」
「ぐっ、了解しました……」
ロボオーロは素直に、デビクロスは渋々とゾロの船に乗り込んでいく……
「見事だったよ、SR社の諸君。今はFR社だったね?」
「お前は何者だ!?」
「私は『ドクター・ゾロ』以後お見知りおきを…そして、もう一人紹介しよう」
ゾロが掲げた手の先にモニターウインドウが表示され、顔に包帯を包まれた男が現れた。
「久しぶりだ……というべきかな?」
「やっぱり、あなたなんですね…ドクター・ゼロ!!」
「あいつがドクター・ゼロ?」
「ああ…あの二人は、世界の支配を企んだ悪党兄弟だ」
「まさか、お前達と再び対面できるとは驚いているよ。マスターは変わったようだがな…」
「まだ世界を手にする野望を諦めてないんですか!?」
「当然さ、今までのは違い、今回は様々な技術と素材を手に入れることが出来たのだからな……」
ファルムートに対して不敵な笑みを見せるゼロ。
「特にファルシオン・エデンシス、君の持つ技術は私の計画に箔をつけてくれた。礼をいわせてもらおう」
「まさか、メイルギアか!!」
「それもあるが、まあそれはこれからの勝負でお見せしよう……今日のところはここまでだ。SEE YOU AGAIN!」
モニターウインドウが消え、ゾロの船から煙幕が放たれてしまい、一行を逃がしてしまった……
時刻は午後7時頃……
大会の後始末を終え、FR社に帰投したロボポン一同はそれぞれメンテナンスを行い、一息入れている。
そんな中、士音は一人別行動をとり、この時間に帰宅していた。
「あれ、月彩さん?」
「ん?」
一夏から声を掛けられる。
「お疲れ様です。今、帰宅ですか?」
「まあな、ちょっと野暮用で別行動をとっていてこんな時間になってしまった」
「そう…ですか…」
「なんだ?今日の事、気になっているのか?」
「全く…と言えばウソになりますけど、聞いても話してくれませんよね?」
「そうだな……少なくとも俺の口からは話せないというより、話しようがないと言った所だ」
「といいますと?」
「俺にもわかっていない情報がチラホラしている……今回の件で亡霊どもの目的は不明だからな……今一度情報の整理をしないと」
しばらく、歩いて見つけた自動販売機で飲み物を買う
「そう言えば、今日は誕生日だったな、おめでとう」
「はい、ありがとうございます…」
「しかし、今日の主役に買い出しをさせるとは難儀なもんだな君も…」
「いえ、さっきまでみんなにプレゼントやらご馳走を頂きましたから、自分で志願したんです」
「ほい、残りの分」
自販機で買った缶飲料を一夏に差し出した士音から受け取った一夏は持ってきたマイバッグへ入れる。
「家まで送っていこう」
「そんな、家は近いですしお疲れでしょう?」
「気にする事ない、それに君は唯一のISパイロットだ。何かあれば、どやされかねない。特に君のお姉さんにはね」
「ははは…それじゃ家に寄っていてください、食べるものもまだあると思いますし」
「ああっ、お邪魔させてもらおう………と、言いたいところだが」
士音は一夏の前に立ち、自販機の明かりから離れた場所を見つめる。
「さっきから待ち構えているのがまる分かりだぜ、出て来いよ!」
人影は自販機の明かりの中に入ってきた。
現れた姿は士音の予想通りだ…
「ち、千冬姉……?」
サイレント・ゼフィルスのパイロットであるエムがそこにいた。
「いや」
エムが口を開き、不敵な笑みを見せる。
その視線は士音を無視し一夏だけを見ていた。
「
「な、なに……?」
「今日は世話になったな……」
「きょう……まさか、お前がサイレント・ゼフィルスの!?」
「そうだ……そして、私の名は……」
一歩、一夏へと近づき…
「
囁くように、一夏に自分の本来の名前を伝える。
それを聞いた一夏は金縛りにあったかのように固まっていた。
「私が私たるために……お前の命を貰う」
すっと取り出したのはハンドガン…
「まずい、させるか!!」
士音が咄嗟に割り込むと同時に……
パアンッ!!
乾いた銃声が響く。
「危ない、危ない……まさか、直接延長戦とは驚いた…」
少し焦った表情で、士音が一夏とエムの間に立っている。
彼の手からは血ではなく、エムが放った弾丸がこぼれ落ちた。
「な……銃の弾丸を手で受け止めたのか?」
「月彩さん……?」
士音の行動に一夏とエムは驚愕していた。
「さて、どうする今日の続きをするかい?………
掲げた士音の右手から青いオーラが浮かび上がる。
そんな士音の姿にエムが何処かデジャブを感じていた。
「ぐっ、まさか……
「さあ、どうかな…?」
「ちい!」
士音の笑みから溢れる闘志にエムは隠し持っていた小さいボールを地面に叩きつける。
そこから煙幕が発生、エムはISを展開して夜の空へと消えた……。
「逃げたか、大丈夫かい少年?」
「は、はい!ありがとうございます!」
咄嗟にお辞儀をしてしまう一夏、その拍子にマイバッグに入れていた缶飲料が飛び出してしまった。
慌てて拾う一夏に士音も手伝い、すぐさまに戻した。
「それじゃ、行こうか?」
「はい……」
そして、士音と一夏は織斑家を目指し歩いていくのだった……。
二人が立ち去って数分後……
「……私としたことが、月彩士音の戦意に怖気づいてしまい嫁の危機に駆け付けられなかった、しかし…」
ラウラがこの場所に居合わせていた。
一夏が一人、買い物に向かうので二人きりなるチャンスだと思い追いかけていたが、
先程の襲撃に士音の対処で飛び出すタイミングを逃してしまったのだ。
「あの時の月彩士音に一瞬だけファルシオン・エデンシスに見えた……これは一体どういうことだ?」
一夏を助けるために、自らの左目に備えられた『ウォーダン・オージェ』の封印と解き、自分も参戦しようとした。
だが、士音が先に割り込み、エムの放った弾丸を右手でつかみ取るのが見えた。
その際の移動中に士音の姿が
しばらく、思考の海に浸かっていたが、二人がもう家についていることに気付き慌てて追いかけるラウラなのであった。
NEXT…
キャノンボール・ファストという大きなイベントも辛うじて終了した。
ようやく、新生徒会のメンバーが結集し、FR社と連携業務も本格的に進んで行く……
同時にFR社の臨時メンバーとなった簪は順調に自分の専用機を完成へと向かっていた。
そんな中、何も知らない楯無が一夏にある依頼をしてしまうのだった。
次回「進行・俺達のメカ愛」
「もう、私は無能じゃない!!」
「簪ちゃん!?」