インフィニット・ストラトス2~人と機械の紡ぐ心~   作:サウス零

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長らくお待たせしました……


EP11 進行・俺達のメカ愛

キャノンボール・ファストという大きなイベントも辛うじて終了し、

 

週の明けた月曜日の放課後…

 

少女が一人、校内を駆けてゆく、更識簪だ。

 

『廊下を走るな!』なんて校則も放課後となればほとんど無意味。

 

階段を下り、校舎を出て島の外側へと向かい、一つの小さな建物に到着する。

 

ドアの前に立ち、簪は手に持った赤いガラス細工のキーホルダーを見て笑みを浮かべた。

 

「やっと、ここまでこれた……私の専用機」

 

ドアを開け、中に入るとその先にはドアが二つ。

 

右側は階段になっており、もう一つは格納庫へとつながるエレベータである。

 

エレベータに入り、地下の格納庫階にボタンを押すとエレベータはゆっくりと降下してゆく…

 

着いた先に広がる格納庫では簪の愛機『打鉄弐式』がハンガーに格納されて、多数のパーツに分解されていた。

 

その周りにFR社のメカニックロボポン達が右へ左へと動き回っていた。

 

「おっ、おいお前ら!いったん作業中断!!集まれ!!」

 

簪の姿を見つけた金槌形の頭が特徴なロボポン『オヤカタ』が声を上げる。

 

オヤカタの声で全員集合し、簪を出迎えた。

 

「皆さん、今日から弐式の本組み立て工程です。よろしくお願いいたします!」

 

『おう!!』

 

 

 

ところ変わって、士音は会議室で生徒会新メンバーとの挨拶を行っていた。

 

室内には会議用の机に人数分の椅子が配置されており、真ん中には会議用のモニターが設置されている。

 

「以上のメンバーで本日より活動を開始いたします」

 

進行役として奥側の真ん中に座っているのが生徒会新会長に任命された二年生「ミント・ウィルゲイル」

 

左には副会長の二年生「サラ・ウェルキン」

 

その副会長の横に書記の二年生「リヴァル・シャインヴォルフ」と一年生「鷹月静音」

 

さらに会計の一年生「ティナ・ハミルトン」と生徒会メンバーが以上となる。

 

最後に会長の右隣には「布仏虚」

 

唯一の三年生ではあるが、生徒会のオブザーバーとして暫くはサポートに入っている。

 

入り口側の席には現在、士音、百合、千冬、真耶が座っていた。

 

「では、次回行う、全学年共同タッグマッチにてそれぞれの計画を詰めていく。山田先生、現在教師側で立てている内容の説明をお願いします」

 

「はい」

 

真耶が立ち上がり、モニターウインドウを数個展開して映された画像に基づいて説明していく…

 

大まかな内容は教師用のISの武装を拡張、警備配置も普段の二倍の人事を配置する予定となっている。

 

「……以上のプランとなっております」

 

「月彩社長、FR社のプランはどのように?」

 

千冬が手持ちの資料を見終えたであろう士音にそう問いかけた。

 

「うちからは防衛部隊所属ロボポン全員を派遣します」

 

「なっ、それって…?」

 

「ええ、うちの主要メンバーを除き、迎撃戦は防衛部隊が引き受けます」

 

まさかの内容にIS学園側は戸惑いの声が出てしまう

 

「その理由とは何でしょうか?」

 

ミントが代表してその真意と訊ねる。

 

「今後、襲撃する敵対組織の戦力は大半がロボポンになりえるからだ」

 

詳細を話す士音。

 

キャノンボール・ファストで戦闘した亡国機業、その組織にはISで仕掛ける小隊とは別の存在がいると…

 

確認できた内容から、協力者の名は『ドクター・ゼロ』と『ドクター・ゾロ』

 

ロボポンを純粋な兵器をして稼働させ、戦争を仕掛けて国を征服し己だけの国を作ろうと企む兄弟である。

 

「そいつらが表舞台に出てきたのなら、確実に襲撃は激しくなるのは必然になる」

 

「でも、ISなら迎撃は可能では?」

 

「ただ戦うだけなら、ISで十分だ。しかし、量産性はロボポンが圧倒的に上、それが何を意味するか分かるだろ?」

 

そう、ISは「ISコア」という特殊パーツで作られたマルチスーツ、500も至らないコアを研究や試作機と全世界に分けられている。

 

現状、戦闘可能なISはさらに半減しているだろう。

 

それに対してロボポンはその気になれば1万以上も機体を作れるのでそれが一斉に攻められたらさすがのIS学園もひとたまりもない…

 

「た、確かに……」

 

「そういう事だ……」

 

それからしばらく、部隊展開の詳細を整理して行き、士音と百合は先に支社へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

「はぁ。妹さん……ですか?」

 

「そう、名前は更識簪。あ、これが顔写真ね」

 

自室で休んでいた一夏に楯無が要件があると強襲まがいにやってきた。

 

詳しく聞いてみると、日本の代表候補生である彼女に専用機が完成していないとの事。

 

間接的に一夏の白式を人員を引かれてしまい、完成が大幅に遅れていたのだった…

 

だが、この情報は大きくズレが生じている。

 

もう完成間近である事は楯無本人は全く知らない……

 

「それで妹を頼むというのはどういうことですか?」

 

「先週のキャノンボール・ファストでの襲撃事件を踏まえて、各専用機持ちのレベルアップを図るために今度全学年合同のタッグマッチを行うのよ」

 

「そうなんですか……ん?何で生徒会じゃない楯無さんがそんな予定を知っているんですか?」

 

「そ、それは……元々、年間予定に挙げていたのよ。今年度は専用機持ちが多いから、合同練習する機会を作っていたのがちょうど重なったの!」

 

彼女の話に違和感を感じていたが、指摘しても答えが返ってこないなと察しがついた一夏はそれ以上を問うのは止めた。

 

自分以上に追い込んでくれる人がいるので、その人に後を託そうと心の奥で願った。

 

「そのタッグマッチで俺はどうすればいいのですか?」

 

「ええ、そこで簪ちゃんと組んであげて欲しいの、お願い!」

 

手に持った扇子を横に置いて拝みながら頭を下げる楯無。

 

「ちょ、ちょっと楯無さん、そんなに拝まなくても大丈夫ですから!」

 

「え、その……引き受けてくれるの?」

 

先程までの態度が打って変わってしおらしくなった態度に一夏もその姿が小さく見えた。

 

「はい、その、簪さん? には俺から誘ってあげればいいんですよね?」

 

「うん、ただ極力私の名前は出さないでね?」

 

「え? それってどういう…」

 

「あの子……私に対して引け目があって…その…」

 

もごもごと口を濁らす楯無に姉妹の関係が良好でないことを悟る一夏。

 

「妹さんと仲良くない……とかですか?」

 

「う……うん」

 

しょんぼりとうなだれた姿に一夏は確信を得る。

 

姉妹間の不仲、色々と策を講じる姉に反発する妹……

 

その姿に一夏は自分の幼馴染を姉妹の姿を浮かべた。

 

(箒と束さんもそんな感じだったな…)

 

夏の臨海学校で、箒は姉から専用機を用意してもらった。

 

一夏と共に戦いに勝利を収めたものの態度はまだ硬く、

 

当の束本人も臨海学校以来から姿を見せておらずのまま…

 

そんな二人に重ねた一夏は楯無のお願いを引き受ける事にした。

 

そして、疲れ気味の楯無にマッサージを施した後、部屋を後にしようとする楯無が一言。

 

「今回の件はあの『キザ社長』にも内緒にしておいてね…」

 

「キザって……月彩さんの事ですか?」

 

「そうよ、あいつが絡むと絶対ややこしくなるから相談も駄目だからね!」

 

(月彩さんも楯無さんだけには言われたくないだろうな~……)

 

「何か言った?」

 

「いえ、何でもないです! それでは妹さんのこと任せてください!」

 

「うん、よろしくね」

 

最後に一礼をして去っていく楯無、それを見送った一夏は方向を変えて見たのは…

 

「さて……とりあえずは――――」

 

楯無の強襲で真っ二つにされたドアが倒れていた。

 

「代わりのドアを申請に行こう……」

 

 

 

 

 

「……」

 

明かりのない暗い部屋でエムことマドカは一人、パソコンを操作していた。

 

画面に映るのは、先日のキャノンボール・ファストにて接敵したファルムートの戦闘動画である。

 

方法はサイレント・ゼフィルスの予備ビットで撮影していた。

 

さらには一夏といた状況も残している。

 

「入るわよ、エム」

 

ノックも無しに入ってくるのは『亡国機業』の幹部であるスコール。

 

彼女は一夏との無断接触に対して説明を聞きにやってきた。

 

だが、マドカは一度視線をスコールに向けたが、すぐパソコンに視線を戻す。

 

彼女の勝手な行動をされては亡国機業として無軌道に動くことを咎めるスコール。

 

「わかっている…」

 

と生返事に答えられて癇に障ったのかスコールは自身のISの部分展開を行い、マドカの首を絞めつけた状態で壁に押し込む。

 

「ふふっ、さすがにいい反応ね?」

 

一見、スコールの行動が早かったが、マドカもサイレント・ゼフィルスのビット4基を背後に展開しており、

 

いつもでも反撃できる状態であった。

 

その対応にスコールは拘束を解き、マドカはベッドに降りる。スコールも隣に座りベッドに軋む音が響いた。

 

その後、『亡国機業のエム』として行動するよう諭すスコールに…

 

「……決着をつけるまではそのつもりだ」

 

返答から『織斑一夏』なのか?と問うが、『アレは敵ではない、いつでも叩ける』と続き…

 

ならば『織斑千冬』の名を挙げると、先程まで無表情だったマドカに笑みが浮かぶ。

 

だが、その笑みは邪悪で口元が歪んで見える。

 

「織斑千冬ねぇ……。今は機体を持っていないようだし、手こずるような相手ではないと思うけど…」

 

言った瞬間、マドカの掌底を受け止め、後ろに飛んで蹴り込みを避けた。

 

マドカの顔が一転、激しい怒りの表情になっている。

 

「侮るな……お前など、ねえさんの足元にも及ばない……」

 

「あら、相手は織斑千冬だけかしらね?……例えば、『ファルシオン・エデンシス』とか……かなりしてやられてたじゃない?『二度』もね」

 

「くっ!……お前こそ、油断して『白いヴァルキリー』に不意打ちを受けた報告は聞いているのだからな。『無理すんな、ババァ』と…」

 

「っ!」

 

互いに眉をひそめる。

 

マドカはシオン、スコールはサレナとそれぞれ油断大敵からの攻防に予定以上の機体はダメージを受けていた。

 

「はいはい、悪かったわよ、だからそのナイフをしましなさい。変えたばかりの壁紙に傷つけないで」

 

「ふん……」

 

互いの挑発で相打ちのような状態になったことに恥じらい、マドカはナイフをホルダーに戻した。

 

「それじゃあ、私はもうひと眠りさせてもらうわ、次の任務まで時間があるけど、エム。だからと言って勝手な行動は自重して頂戴よね?」

 

「わかった」

 

「素直な子は好きよ。それじゃ、おやすみなさい、エム」

 

要件を言い終えたスコールは、そのまま自分の部屋へと戻っていった。

 

ドアが閉まり、残されたマドカの部屋に静寂な闇が広がっていく……

 

マドカはパソコンの動画アプリを立ち上げ、シオンとの戦闘動画を見直した。

 

 

「ヤツが言っていた……ねえさんを打ち負かしたというならば、最初はお前から仕留める」

 

 

スッとナイフを取り出し、自分の頬になぞるように当てた。

 

皮膚が斬れ赤い血が刃の部分に沿って垂れ落ちる…

 

 

「お前を仕留めれば……私は確実にねえさんを…………」

 

 

千冬にそっくりな己の顔を傷付けて妙な快感に支配され、面妖な表情になるマドカであった。

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ~にぃ!?一夏の奴が専用機持ちタッグマッチのパートナーを申し込んで来ただ!?」

 

翌日の放課後、支社の格納庫で打鉄弐式を目下組み立て作業中。

 

休憩時間入り、一同が一息入れている時に、簪が相談したい事があるという…

 

その内容を聞いて士音がそう叫んだ。

 

「ねえ、簪。今日までイッチー君と会話したことある?」

 

「ない、今日初めて会話したよ」

 

百合の問いに首を振り答える簪に士音と百合は苦笑いを浮かべている。

 

「簪。君はこの件、どう考える?」

 

「二人の考えてる内容と同じだと思う」

 

「じゃ、せーので言ってみよ? せーの!」

 

 

 

 

「「「タテナッシー(お姉ちゃん)のしわざ」」」

 

 

 

 

言葉を発した後、同時に三人がため息をついた。

 

「今日の所は、中国の専用機持ちの子に連れていかれた」

 

「リンちゃん……相変わらずの強引さね」

 

百合はたははと頭を抱えて鈴の横暴さに呆れ果てた。

 

そこへシュインと自動ドアが開き、つなぎ姿の女性が入ってきた。

 

「お待たせ~データのまとめが終わったよ~」

 

手にはUSBメモりを持ったイオンが合流する。

 

「お疲れ~!はい、イオンのお茶」

 

「ありがとう~……ふぅ~やっぱりこのお茶は落ち着くよ~」

 

ほっこりと一息入れたイオンの笑みにしばし癒された気分になる一同。

 

「将兄ぃ、どう対応するの?」

 

「ひとまずはアンニャロウの企みに乗ってみる」

 

「えっ……?」

 

「アンニャロウは簪の打鉄弐式が完成間近をまだ知らない、俺の計画通りにな……」

 

不敵な笑みを浮かばせた士音はこれからの行動内容を説明する。

 

「こんな感じで、打倒!タテナッシーに殴り込みだ!!」

 

「だ、大丈夫なのかな……私、今までお姉ちゃんに対して何も勝ったことがないから」

 

「ダイジョブ、ダイジョブ。将兄ぃ直々の戦闘訓練にもこなせてたじゃない、自信持っていいよ、だよねイオン?」

 

「うんっ、私も百合ちゃんと同じだよ。そんな簪ちゃんが丹精込めて作った弐式にもすごい力があると思う」

 

百合とイオンが激励の言葉を挙げる。

 

簪も二人の励ましで、出来る所までやってみようと改めて訓練と製作に行動するのであった……。

 

 

 

 

 

一夏と簪が出会って一週間が経った。

 

士音からの指示でしばらく様子を見ているように頼まれた簪は一夏の誘いを断りを入れている。

 

毎日、そんなやり取りをするので一夏が簪に付きまとう噂はあっという間に広がった。

 

 

『織斑一夏は専用機持ちタッグマッチのパートナーに更識簪を選ぶ』

 

 

その噂のお陰でセシリア、鈴、シャルロット、ラウラは一夏から選ばれなかったことに対してかなり敵視を見せていた。

 

あと、箒も楯無とタッグを組むことになるのは後程分かった情報である。

 

そんな放課後の第二整備室にて一角のスペースに簪、士音、百合、ロボまる、イオンが集まっていた。

 

まわりには簪以外にの専用機持ちが整備に勤しんでいる。

 

その日は打鉄弐式の飛行テストを行う予定だ。

 

しかし、しょんぼりとした簪の表情を見て、一同は何事かと話を聞くが……

 

結論から言えば、一夏の誘いを受け、パートナーの手続きをしてしまったの事。

 

現実と幻想がごっちゃ混ぜになってしまい気がついたら職員室にいたとの話……

 

それを聞いた士音と百合は…

 

「お前さん、口説かれたな…」

 

「ええっ!?」

 

「うん、間違いなく口説かれたね…」

 

「そんなことない!毎日、話しかけられたり、お昼を一緒に食べたりしたけど……そんなことない!!」

 

「それで思わず承諾したんだから口説かれたのよそれ…」

 

「そ、そんな……」

 

「「アハハ…」」

 

膝をついてショックを受けてしまう簪にロボまるとイオンは彼女を気の毒に思い、苦笑いを浮かべていた。

 

気を取り直して、一同は簪の打鉄弐式の最終調整を行う、そんな中一夏が合流する。

 

「あれ?月彩さん達がどうしてここに…?」

 

「説明は後だ。簪、機体を展開し、ラックに格納させてくれ」

 

「はい!おいで『打鉄弐式』」

 

簪が突き出した右手の中指にはまるクリスタルの指輪が輝く、それにより簪に装甲が身にまとわれて、浮遊する。

 

打鉄弐式は打鉄とは一転して高機動重視のパーツ構成となっている。

 

肩部のシールドも大型のウイングスラスターに小型のジェットブースターが前後に二基と一夏の白式と似たスタイルだ。

 

唯一名残があるとすればハイパーセンサーのデザインだろう…

 

「って、あれ?もしかして機体は完成している?」

 

弐式のデザインを見て違和感を感じた一夏はふとそう聞いてきた。

 

「うん……今日は全武装を取り付けて……、稼働テストをするの……」

 

「そうなのか。因みに武装って?」

 

「マルチ・ロックオン・システムによる高性能誘導ミサイルに……荷電粒子砲がそれぞれ二基に近接武器……あと、FR社からの改造武器がある…」

 

「その武器って?」

 

「まだ私も説明を受けていないから……詳細は不明……」

 

「あの月彩さ~ん!」

 

「聞こえている。そいつの詳細は今日の稼働テストで合格範囲に入った後の話だ。よし、武装の組み立てを始めてくれ!!」

 

士音の指示による作業開始の合図にFR社のロボポン達が機械の操作を始めた。

 

それにより、打鉄弐式の隣にコンテナが配置され中からミサイルの格納ユニットが出てきて装着作業に入っている。

 

「あれ、もしかして俺が手伝うことない?」

 

「だと思う……じゃ、私は火器管制の……」

 

「あっ、待ってくれ、白式にも荷電粒子砲が積んであってさ、うまく調整が出来なくてさ見てくれないか?」

 

そういい、一夏は白式のコンソールを呼び出し、データを展開した。

 

「ここ…なんだけど?」

 

空間投影ディスプレイが表示され、簪が恐る恐ると近づいて、内容を見ながら手を動かす…

 

「これ……出力が高すぎる……。燃費が悪い……」

 

「あー。やっぱりか、そうじゃないかって思っていたんだけど…」

 

「調整した方がいい……。これじゃ。無駄にエネルギーを使って、肝心な時に大技が使えなくなる……」

 

「おう。それじゃあ、俺はこっちで白式を見るから……」

 

「それなら、隣のメンテナンスラックを使うといい。調整するならこちらの方がやりやすいだろう、簪、使い方の手助けをしてあげてくれ」

 

「……いいのですか?」

 

「ああっ、それに武装の組み立てまで少し時間がある。そいつの使い方を教える時間ぐらいはね」

 

「……わかりました。それじゃこっちに……」

 

一夏をもう一つのメンテナンスラックの場所へ誘導しようとした時……

 

「おーりーむー。かーんちゃーん~」

 

ぱたぱたと足音がやってくる。こんな独特な呼び方をする人物は一人しかいない…

 

「本音…」

 

のほほんさんこと、布仏本音。姉の虚と同じく更識家に仕える使用人家系。簪とは幼馴染。

 

一夏のクラスメイトでいつも眠たそうな目をしており、行動するのがムチャクチャ遅い人物でクラスではマスコットに様な存在である。

 

(出やがったな……『堕天使・ノホホーン』……!)

 

だが、今の士音にとっては楯無に繋がる要警戒な人物であった。

 

「えへへ、お手伝いにきたよ~」

 

ひょい、ひょいと垂れた袖を振り回す。そこへ歩いてきた二年生の顔にヒットして、キッと睨む。

 

しかし、本音は何も言わずのほほんとしている。

 

「かーんちゃん、機体調整手伝ってあげる~。えへへ~」

 

「や、やめて……そんな必要ないから……あっ、ちょっと……」

 

どうやら、簪はこの幼馴染が苦手のようだ…

 

「本音……どうせまた、姉さんから言われて……来たのでしょう?」

 

「え~? ちがうよ~わたしはっ、かんちゃんの専属メイドだからー、お手伝いするのは当たり前なんだよー」

 

と語尾に「先週までかんちゃん見つからなかったから出来てないけど……」呟くが誰も聞いていない…

 

「………」

 

「月曜から木曜まで、暮らしを見つめる布仏本音ですー」

 

何処かのCMで流れたキャッチフレーズみたいなことを言い出した。

 

「金曜と土曜と日曜は……?」

 

「えー、週末は休ませてよー」

 

「三日は休みすぎ……」

 

呆れる簪に、その通りだと一夏も頷く……

 

「なら、月から木も休みにしてメイド業を廃業にしてくれ……」

 

士音は割り込み、本音を睨みながら言う……

 

「あ、シャチョーさん……」

 

「本当に手伝いたいだけなら、その恰好で来るのはいただけないな、整備課志望ならすぐにわかる事だろ」

 

士音が指摘したのは本音の服装である。

 

学園の制服はある程度のカスタマイズが認められており、一部の生徒は思い切った格好にしている。

 

本音もなぜか袖を不必要に伸ばしたままあり、現に振り回した袖が通りかかった二年生に当たり迷惑をかけてる現実があった。

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「そう思うなら、速やかに着替えてこい。あと、手伝いは白式の調整作業だけだ弐式には一切触らないこと、守れるなら参加してもいい。いいね?」

 

「は、はい!!」

 

スタコラサッサーという感じで本音は慌ててその場を後にした。

 

「す、すごい……本音をあんなに早く行動させるなんて……」

 

「俺も…初めて見たぜ…」

 

 

それから、弐式の組み立てが進み、機体の調整作業を行っていく。

 

袖の短い動きやすい服装で戻ってきた本音も作業の輪に入れ、白式の調整を手伝う…

 

一夏はマニュアルを見ながら調整を進ませた。

 

簪が時折アドバイスを入れたおかげなのか、この上なく絶妙となり、一夏曰く『今日だけでエネルギー効率が15%近く向上した』とのこと。

 

微妙な調整は、直接パーツを操作する必要があった。

 

だが、そこはFR社のメンテナンスラックの機能でパーツの開閉は容易く出来る。もし、ISのデザイン上でアームが届かない場合は…

 

「うっす、開いたでごわす」

 

とフード族のロボポンが直接開閉を行う

 

「ロボポンってすごいパワーを持っているんだな……」

 

「ロボポンには『アーム』『フード』『ムーブ』と大きく三つの族種に分かれていて得意分野がそれぞれあるんだ。ちなみにぼくはアーム族」

 

「具体的にどんなのが得意なのー?」

 

ロボポンの作業姿に呆然としている一夏と本音にロボまるが説明をしてゆく。

 

そして、場所は第六アリーナに移り、飛行テストへと移った……

 

 

 

 

 

「スラスター出力……チェック……」

 

第六アリーナのピットで簪は専用機の打鉄弐式のコンソールを開いて、全ての数値をチェックする。

 

この日までFR社の協力により、百合からはソフトウェア、イオンからはハードウェア、士音やロボまるからは戦闘技術と

 

多くの事を学び、新たに組み上げた打鉄弐式のシステムが立ち上がってゆく…

 

途中、稼働データの一部が足りなくてどうしようかと思ったが一夏の白式のデータが役に立った。

 

元々、同じ開発元故か、妙に互換性が高い。

 

だが、百合がデータチェックに入り、それを使えたのはほんの一部である。

 

あとは何か別物のデータに見えると百合が言うが、白式独自のデータじゃないかと一時的にそう結論付けてテストに移るのであった。

 

(FR社のみんなから教わった事、無駄にしない……お願い、打鉄弐式…私に勇気を……)

 

そう心に祈りを込めていると一夏からプライベート・チャネルが入る。

 

「どうだ? いけるか?」

 

「う……うん」

 

「じゃあ、俺が先に飛ぶから指定があったタワーの上に合流しよう」

 

「わ、わかった……」

 

簪は腰を落として、偏向重力カタパルトに両足をセットする。

 

空中投影ディスプレイにラインが入り『READY』の英文字が立体的に浮かび上がった。

 

まるでアクションゲームの開始合図のように見える。アイコンにちびロボまるが描かれているので士音達のオリジナルであった。

 

それを見て、簪は勇気をもらったような感じがした。

 

「もう、私は無能じゃない!!」

 

『GO!!』と文字に入れ替わり、簪は機体を加速、第六アリーナの空へと舞いあがった。

 

稼働テストは順調に進んで行く…

 

シールドバリアも異変無く展開、各ブースターの点火調整が入るが、簪が随時コンソールで調整。

 

螺旋のような曲がった形をしているIS学園の中央タワーをゆっくりと外周をスラスターの制御で加速して昇ってゆき、一夏の近くに到着した。

 

「よっ」

 

一夏がひょいと手を挙げた。

 

「どうだ?機体の状態は」

 

「大丈夫……、微調整が必要な個所があったけど……すぐに対応できたから、問題ない……」

 

「そうか、よかった」

 

にかっと笑う一夏の表情が眩しくて目をそらしてしまう簪、そこへ士音からの通信が入った。

 

『よし、稼働テストは合格だな、二人とも一度戻ってきてくれ、次の武装テストの説明をする』

 

「了解、更識簪。帰投します!」

 

「ああっ、ちょっと!?」

 

一夏の声を聞かずに簪は急降下でピットに戻ってゆくのであった。

 

「なんだか、俺と話してる時と随分雰囲気が違う気がするな……」

 

そう感じた一夏は自分も急いでピットに戻るのであった……

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そんな……」

 

警備の打ち合わせで生徒会室に呼ばれた楯無はある資料見て驚愕していた。

 

「簪ちゃん!?」

 

楯無が見ていたのは配属変更の知らせだった。

 

 

辞令:専用機タッグマッチイベント終了後『更識簪』氏を

   『倉持技研』より『ファルシオン・ロボテック』に正式赴任

   以後、同社のIS専属パイロットとして稼働せよ

 

 

辞令したのは何とIS委員会、どうしてこんな情報が来なかったのか楯無は呆然としている。

 

「悪いけど、詳細は機密事項になっているから話すつもりはないわよ」

 

楯無が理由を聞こうとする前にミントが先に答える。

 

「ど、どうして……?」

 

「知りたければ、直接ご本人に聞いてみてはいかがですか? 元会長様」

 

 

 

 

打ち合わせが終わり、生徒会室を後にする楯無は一人、タテナッシー課の部屋で考え込んでいた。

 

「簪ちゃん……」

 

その言葉に答える者は誰もいないはずだった……

 

ストンとなにかドアの隙間から封筒が一つ入ってきた。

 

拾った手紙を見ると、それを見た楯無は目を見開く。

 

「ふーん……まだ天は私の見捨ててなかったわ」

 

彼女が見た手紙の内容とは………

 

 

 

 

 




NEXT…

専用機タッグマッチまで一週間前、打鉄弐式の最終調整が順調に進んで行く中、

士音達、FR社にIS委員会から挑戦状が叩きつけられた。

それは簪の正式配属する条件に専用機タッグマッチの優勝を目指す事……

しかし、士音はその展開をすでに把握していた。

そんな士音が建てた対策とは……?

次回「采配・俺達の一心専心」


「さて、ようやくガチンコ勝負ができるな?」


「あなたに簪ちゃんは渡さない、絶対に!!」
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