インフィニット・ストラトス2~人と機械の紡ぐ心~ 作:サウス零
士音達が稼働テストしている頃……
ここはとある高層ビルの会議室。
今この場では、国際IS委員会の定例会議が行われていた。
「では、一週間後のタッグマッチが行われるIS学園の警備はFR社との連携を引き続き行う事とする」
進行役である男性がまとめの言葉を言おうとした時…
「はい、一つ…」
眼鏡をかけた女性が挙手し、指名されてその場から立ち上がった。
「倉持研究所所属の日本代表候補生『更識簪』の移籍についてですが、やはり反対です」
「ジルくん……その件は、倉持が放棄し、我々FR社が引き継ぐと互いに合意したはずじゃが?」
ジルと呼ばれた女性、フルネームは『ジリリウム・フェノメノン』彼女はIS委員会の主要メンバー。
特に専用機が多い第3世代を中心にデータの収集を行っていた。
科学者としての面を持っているのでISコアの解析は彼女が中心となって動いている。
「スポロ・ブラウン博士、貴方が作り上げたロボット・ポンコッツの実績は認めましょう……しかし、彼女の移籍によって機体の解析を許すわけにはいきません」
ジルと対話しているのはなんとスポロ。
スポロはロボット技術界ののレジェンドと呼ばれるほどの有名な技術者であり、ロボポンの『ハート』を作り上げた一人者なのである。
その戦果を評して国際IS委員会はISコア解析のメンバーに引き入れようとしたが、一度は完全拒否。
スポロ曰く「あのコアは未知なる技術が有り過ぎる。我々人類には手に負えない代物、今すぐ放棄するべきだ」と委員会に進言した。
だが、ISはスポーツ競技に対応できる兵器と世界に馴染んでしまい、スポロは自分の研究所を閉鎖して行方をくらました。
そんな時、士音と出会う。
率いていたロボポンの修理を引き受け、自分の研究が現実化できると確信しロボット・ポンコッツを完全に完成できたのだ。
嫌悪していた委員会に出向いているのは士音達の助けになるかと思い、ISの特別技術顧問として出向することとなった…。
「いい加減、ISが世界最強の存在ではないと認めてはどうじゃ? いまやロボポンは世間の事件解決や労働の助けとなっておる。ISにも不可能なことだってある」
「認めません、現にロボポンが人々に危害を加えている事件だって起きているのです」
ジルの背後から「そうだ、そうだ!」と女性議員が多数援護射撃を行っている。
「それは、ロボポンに不正なプログラムによって暴走していたり、そのように使う敵対組織が存在するからじゃ!」
「では、そのロボポンが人類に反旗を記し、戦争が起こる可能性がないと言い切れるのですね?」
「その為に、『ファルシオン・ロボテック社』が行動しておる!」
スポロの発言にジルの眼鏡がキラリと光った気がする。
「ほう、そのファルシオン・ロボテック社……聞けば貴方がかつて行っていた研究所から開業したそうですね? なのに修理施設はそちらが一手に行っているようですね?」
「何が言いたいのじゃ……?」
「例えばですが、その修理の際に暴走させるプログラムなど仕込むなどと……」
「ふざけるんじゃない!!そんな戯言を言うのであればワシも黙っていないぞ!!!」
「では、証明して下さいこのトーナメントで……」
「な、謀りおったな!?」
「それはひどい言いがかりですね、第一そのファルシオン・ロボテック社はIS学園内で目新しい成果が上がっておりません」
皆さんは何か情報がありますか?と周りに問いかけると、『ない』や『聞いたことない』と声が上がっている。
その様子に、スポロは奥歯を噛み締めてジルを睨む。
「証明する条件とは何じゃ……?」
それを聞いたジルはニヤリと笑みを浮かんだ。
「一週間後、専用機タッグマッチに特別枠として参加してもらい、優勝を取っていただきます」
「お主、それはフラグというモノじゃよ、そんな事をすればIS最強説が崩壊するぞ?」
「ええ、ただし出場者はファルシオン・エデンシスは絶対、パートナーにロボポンを……そして、更識簪のチームとワンツー・フィニッシュで決めてもらいます」
無論、更識簪が優勝、ロボポンが準優勝でもよろしいでしょうと付け加えると周りの委員会はざわざわと騒ぎだした。
「その暁には更識簪の正式移籍を認め、あなた方の会社に手を引きましょう………しかし、どちらかの条件を達成できなければ移籍は白紙、ロボポンを研究用サンプルに数体お譲りしてもらいましょう
「な、なんじゃと……」
スポロにとってはロボポンは大切な家族同然、それを売るような真似など頑固出来るはずがない……
だが、このままでは要らぬ条件を入れられては厄介になりかねない、そう考えたスポロは……
「この件はワシ一人の判断では応じることは出来ん。社長である月彩士音に話を通した上で返答させてもらいたい……」
「それぐらいはいいでしょう……当人に知らせずに余計な抵抗をさせてしまうのはこちらも不本意ですしね」
「それじゃ、追って連絡しよう……」
「はい、お待ちしておりますわ、博士……」
そして、会議はようやく終了し、スポロは急いで士音の元へと向かうのだった……。
「ええええええええええええ!!!」
時は夜、食事を終えた一同の前にスポロが会議室に呼ばれ、事の顛末を聞いた。
「タッグマッチの出場して優勝狙う上に簪とワンツー・フィニッシュで決めろですって!!!?なんて約束したのよ!!」
そんな無茶ぶりに百合はスポロにカンカンに怒っていた。
「大体、簪の移籍は決まったって言ってたじゃない!?」
「そ、それは思わぬ割り込みが入ってのう……売り言葉に買い言葉になってもうたのじゃ……」
「もう~こういう時に冷静に対処するのが博士の役目じゃないのよ…」
「まあまあ、百合ちゃん。私はスポロ博士の気持ちわかるよ……ロボまる達を売り飛ばすようなこと絶対やだよ……」
百合を宥めながら、スポロの意見に賛同するイオン。彼女もまた技術者として簡易的なロボットを作り上げた経験があるのだ。
「それは私も同じよ!私がムカつくのはそんなことをホザいた委員会の人間と翻弄されてそいつの条件を受けた博士の不甲斐なさなのよ!」
「アハハ………ごめんちゃい!」
平謝り状態のスポロ。
「それで、どう答えるの?」
と百合が問いかけたのは……
「無論、売られた喧嘩は大サービスで買い取ってやるさ…むしろ、やっと出てきてくれたな…」
「やっと…って、将はこの状況を予想していたの?」
「予想というより、今までのイベントにちょくちょく介入をしようとしたが、予定外のイレギュラーのおかげで全て頓挫していたんだ。これを見ろ」
手元のノートパソコンにウインドウが開き、一枚の画像がモニターに映った。
その内容は、IS用のメッセージアプリであり中には……
『各代表候補生と協力し、ファルシオン・ロボテック社からの出場機を最優先に撃破せよ』
とメッセージが掲載されていた。
「なにこれ……?」
百合が代表で問う様に呟く
「サラ・ウェルキン経由でセシリアから相談を受けた時に見せてもらったデータだ。」
モニターに映った文面に誰もが唖然としていた。
「しかも、キャノンボール・ファストのレース開始前に代表候補生全員に届いた話だそうだ……」
「そう言えば、レースが終わった時にセシリア達が神妙な顔をしていたけど、これが原因だったのね」
「まあ、レースは亡霊どものおかげで未遂に終わっている。委員会も遠回しに攻めるのを止めたようだ…」
「なるほど、なるほど………博士、そのジルって奴の連絡先知ってるの?」
「ああっ、返答の際に使ってくれと一つの番号があるぞい」
「では、出場との返答で皆は意見は同じだね?」
士音の問いに社員一同が同意の言葉や頷きが聞こえた。
そして、スポロの主導で連絡を行ってゆく……
最初には秘書らしき女性が応対し、スポロが話を進めてゆくと……
しばらくお待ちください。と一時チャンネルを切り替える。
それから数分後……
「お待たせしました。スポロ博士、まさかもうご連絡をいただけるとは思わなったのでお待たせして申し訳ございません。」
映されたモニターには褐色肌の金色のフレーム眼鏡をかけた女性がいた。
「構わん。これからの話はワシだけじゃなく、この子達が進めるのだからな。我がファルシオン・ロボテック社の社長、副社長、専務じゃ」
スポロ先導で士音、イオン、百合と紹介をして、対面を果たした時である……
「初めまして、私がIS委員会・第一技術所長の『ジリリウム・フェノメノン』です。」
「っ!?」
「えっ!?」
士音とイオンはジルと呼ばれた女性は覚えのある人物に瓜二つである事に気付いた。
『ジリリウム・リモナイト』
かつて、7次元先の世界で戦った因縁の相手……
「どうかなさいましたか?まるで百年越しの因縁の相手に出会ったような顔をなさって?」
「いや失礼。貴女が私の知っている人物に一瞬似ている様に見えただけですので……」
「そうですか、では内容の確認を始めましょう」
そして、ジルから今回のタッグトーナメントに対する条件を士音達に提示した。
「以上が私からの条件です。」
「一つ聞きたい、何故こんな条件を今更提示してきた?」
「決まっています、キャノンボール・ファストにて現れたロボット・ポンコッツ、つまりあなた方の使用する機体と同じ存在で人類に危害を与えたのですよ?」
「それはそうさせる存在がいるからでしょ、だから情報をアンタ達委員会の提出したのよ!!」
「あら、私には『危険』と言い切れる情報はあるの、その内容は首謀者の一人、『ドクター・ゼロ』は『スポロ・ブラウン』とかつての研究チームを組んでいた過去があるの」
「なっ!?」
ジルの発言にスポロは大いに動揺してしまう、その姿に士音は先に先手を打つ
「つまり、博士とドクター・ゼロは同じ技術を持ち、今でも情報交換をしていると疑っているわけですか?」
「ふざけるんじゃない、ゼロはもう20年以上から行方をくらまして、ワシは一度たりとも逢っておらん!!」
「今はその言葉を信じましょう。しかし、我々は貴方に対する警戒は緩めませんので……」
「なら、我々から一つ懸念がある」
「何でしょうか?」
「今年度のIS学園は何かと物騒な年でしてね、イベントが開催しても何らかのトラブルが起きている……どうしてかわかりますか?」
「それは当然、『織斑一夏』でしょうね。世界で唯一男性のIS操縦者、しかも、初代ブリュンヒルデ『織斑千冬』の弟。世界は彼に大注目ですからね」
「その通り……。けど、注目しているのは世界だけじゃない、噂の『亡国機業』に『天災ウサギ』この二つが大きく行動を見せている……」
「つまり、警戒するのはアナタ方だけではないと仰りたいのですね?」
「ええ、万が一の事態に至った場合はどうするか決めておきませんと……」
「でしたら、その万が一となる前に出場選手両者が『敗北』していなければ、アナタ方の『勝ち』としましょう」
「この言葉……しっかりと頂きましたよ」
そう言いながら、士音は首元に超小型のICレコーダーを添えて見せた。
「わざわざ用意しなくともお約束は違えませんよ。では、本番当日を楽しみにしておりますよ、これにて失礼」
通信か切られ、しばし社内の静寂の空気が流れる。
「さて、ようやくガチンコ勝負ができるな?」
ニヤッと笑みを浮かべた士音。
こういう時の士音は大抵何とかなった事をよく知る皆だからこそ、その笑みに心配することはなかった。
時間は流れ、本番前日の夜9時を過ぎた第二整備室で士音と簪が完成した打鉄弐式を眺めている。
「遂に完成だな?」
「うん、ようやくたどり着いた」
「火器管制システムはどうだ?確かマルチ・ロックオン・システムを組み込むだったはずだけど?」
「うん、百合と寧さんの協力でプログラムをミサイル四八基の独立稼働を完全に稼働できるようになったよ」
「そいつは重畳、それならこのトーナメント貰ったも同然だ」
「でも、士音はまだしも……私が準優勝なんて………それに……」
ジルと交わした大会の条件を聞いて、明日の本番に向けて不安を抱く簪。
更に不安を増している理由があった。
「どちらかが姉さんに勝たなければならない……」
出場者の中に楯無がいる事だ。
彼女は専用機持ちの中で唯一の『国家代表』と実力は一番という実績を持っている。
「本来なら、君が戦って勝つのが理想だけど、もしもの時に色々備えているから大丈夫」
「もしかして、例の追加装備の事?」
「そ、奴があの戦い方でいるのなら、それを使えば簪に勝機はある。無論、俺が戦ったとしてもね」
士音は軽いウインクをして見せると、簪は僅かに安心感を覚えた。
「でも、この事を織斑くんに話さなくてもいいのかな?」
「ああ、仕掛ける時までは一切話さない方がいい。あいつの人の好さが仇になって情報がバレてしまう、絶対にな。」
「そこまで言い切れるの?」
「例えばタテナッシーとかノホホンとか!タテナッシーとかノホホンとか!!」
「あ、うん……なんとなく想像できた」
整備室の後片付けが終わり、一同は支社に戻る。
軽い夜食を食べた後、簪がお手製で抹茶のカップケーキを一夏、士音、百合がご馳走になる。
そして、それぞれの自室に戻り、明日に向けて眠るのであった……。
その頃……
楯無は自室で瞑想をしていた。
「……」
課の部屋に送り込まれた手紙が机に置いてある。
その内容は…
タッグトーナメントの優勝、又はファルシオン・ロボテック社の選手を完膚なきまでに敗北させる事。
その功績で、更識簪の移籍を白紙化・打鉄弐式を上級企業で再開発を組み込む約束しよう…
といった文面である。
「あなたに簪ちゃんは渡さない、絶対に!!」
見開いた視線は士音に対する戦意に満ち溢れているのであった……
NEXT…
タッグマットトーナメント当日を迎えた。
ダークホースのとして参加するファルシオン・ロボテック社……
その試合相手とは……?
だが、そんな状況にお構いなしの如く迫る敵の気配。
果たして、士音は無事に大会の条件をクリアし簪の移籍を成立させることが出来るんだろうか……?
次回「条件・俺達の新たな切り札」
「シールドバリアが展開できない?そんなもの俺達には関係ない!!」
「こ、これって……!」