インフィニット・ストラトス2~人と機械の紡ぐ心~   作:サウス零

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ご無沙汰しております。はい…


EP14 幻影・俺達の電脳空間

 タッグトーナメントの事件から数日経過した。

 

 アリーナなどの学園施設はFR社のロボポン達のおかげで完全に修復が完了し穏やかな学園生活が再開したある日の放課後。

 

 場所は学食のカフェテラスエリア、その1か所の席で鈴が睨んでいるのは簪である。

 

 意味が分からず連れてこられてしまい、さらにこの仕打ち……。

 

 人見知りの性格故に簪はビクンと身をすくんでしまっていた。

 

 さらにこの場にいるのは鈴だけではなく、箒にセシリアとシャルロットにラウラといつもの面々も揃っている。

 

 ここに一夏が入れば一学年専用機持ち集合といった状況だ。

 

 傍から見れば、7人=7機のIS。

 

 この世界の有数な軍事力と対等、それ以上に戦える戦力が揃っていた。

 

 だが、彼女たちの本命はそんな内容とは程遠いが彼女達だからこそあり得る内容である。

 

 このメンバーの中で唯一の良心枠であるシャルロットも最初はジュースを差し出してくれたが、

 

 その微笑みの奥に隠れた威圧感を放っていた。

 

 結論から言うと……

 

「だ、だからだな! い、いいい一夏と!!」

 

「つつつつつっ、付きあっていますの!?」

 

 ドンとテーブルと叩いて箒とセシリアが立ち上がって聞いてくる。

 

 ようやく質問と意図が見えた……。

 

 と理解した簪は一呼吸して口を開く。

 

「織斑君とはタッグトーナメントのペアとして一時共闘しただけの知人という関係、あなた達が思うような内容じゃないから……」

 

「それ嘘じゃないわよね?」

 

「本当……それに織斑君は少し頼りにならないところがあるし」

 

 簪のはっきりとした答えに一同の沸点が、一瞬にして冷却されたが……。

 

「何よそれ!! まるで一夏がバカって言うつもりなの!?」

 

「そこまでは言ってない……」

 

「その言葉、今すぐに取り消せ!!」

 

 一夏に対する侮辱により、沸点が再度達した。

 

 そんな時である。

 

「こら、こら、こら、こら~!! 放課後のひと時になにドンパチ揉め事起こしてるのよ!?」

 

「百合……」

 

 一同の前に割り込んできたのは百合である。

 

 百合は現状を推測してひとまずは簪の横に移ると……。

 

「おうおうおう、うちのかわいい社員に専用機持ちがごぞってなにやらかそうとするつもりなの? ケンカだったら私が買ってやるわよ?」

 

 袖を巻いて、肩をグルグル回して言い寄ろうとする百合。

 

「違います、彼女が一夏を侮辱するような発言をして撤回を求めたんです!」

 

「侮辱?」

 

 先程までの会話を箒から聞いて、百合はふと考えてから一言。

 

「うん、彼って『バカ』だよね。ある意味!」

 

 なっ!! とまさかの簪と同じ意見であったことに簪を除くメンバーは衝撃を受けた。

 

「まず『お節介バカ』だね、そもそも彼がタッグに簪を選んだのはあのタテナッシーに頼まれたからなのよ」

 

「「「「「……」」」」」

 

「彼の言動を見ていたら、気付くでしょ。それに『バカ正直者』だから相手の約束を最優先にするから自分の身の安全を忘れちゃうのよね~」

 

「そういえば……」

 

「確かに……」

 

 一夏の行動で助けられた覚えがあるシャルロットとラウラは同意の頷きをしてしまう

 

「あとは『姉の世話焼きバカ』。前から思ってたけど彼の中にある女性の基準って織斑先生じゃないかと思うのだよ私は」

 

「「「「「……」」」」」

 

 百合の続く発言に一同は言い返せないのか苦笑している。特に心当たりのある幼馴染枠の鈴と箒は苦汁を舐めた表情になっている。

 

「彼のハートを射止めたいのなら、織斑先生には無い女の魅力を見せる必要があるわ、これは無理難題の高難易度ミッションだよね~」

 

(もっとも、今の彼には花より団子『恋よりIS』……それ以上の大きな存在感となれれば……だけどね)

 

 それじゃ、私はこれでと先にカフェテリアエリアを後にすると……

 

「私も機体の調整をしたいところがあるからこれで……」

 

 簪もそう言いエリアを後にする。

 

 残された一同はしばし沈黙をしてそのまま流れるように解散するのであった……。

 

 

 

 

 

 翌日、一夏は体操服に着替えて一組の教室で待っていた。

 

 今日は身体測定が行われるのだ。

 

 ISスーツの新調する際、この測定データに基づかれ作られる。もしサイズが合わなければ大変なことになってしまうだろう……

 

 だが一夏はなぜか身体測定係に選ばれていた。

 

 しかも、『体位』測定。即ち『スリーサイズ』のことである……。

 

『うふふ』

 

 一夏の脳裏に魔性の元生徒会長の妖艶な笑みが浮かんだ。

 

 どうしよう、どうしよう、どうしよう、と頭を抱えている所に教室のドアが開いて真耶が入ってきた。

 

 その後ろにはFR社の白衣を着た看護師型ロボポン『ナース』が入り、さらに三人のナースが続いて入る。

 

 それぞれの手にはノートパソコンがあった。

 

「お待たせしました。織斑くん、ちょっと書類を集めるのに遅れちゃって……」

 

「全く、貴女がうっかりミスで書類をばら撒いたからでしょ……」

 

 ナースの呆れた表情で真耶はハウッと跳ね上がり「すみません」と言いながら萎んでしまう。

 

「あの、山田先生が測定係ですか!? よかったあ、やっぱり学園に良心はあったんですね」

 

「はいっ、私がばっちり記録します!」

 

「え?」

 

「え? 私は記録係と聞きましたけど……?」

 

「な、な、な」

 

 わなわなと手を震え上がらせるが大声をあげようとした瞬間、ナースがハリセンで一夏の頭を叩いた。

 

「落ち着きなさい。貴方も記録係をしてもらうつもりよ、誰が男性に女性の身体測定を直接させようするかしら?」

 

「そ、そうですよね……それじゃあ、ナースさんが測定係を?」

 

「ええ、私とこの場にいる子の4人で行うわ。三人とも自己紹介なさい」

 

 ナースが言葉に従い、それぞれノートパソコンを置いたナース三人が一夏の前に並ぶ。

 

「え、えと……えと、ナースの『ルビィ』といいます! よ、よろしくおねがいしまちゅ! ……はぅ~嚙んじゃったぁ~」

 

「マルはナースの『ハナマル』ずら、よろしくお願いするズラ♪」

 

「クックックッ……我が名は『ヨハネ」、天より舞い降りた罪深き堕天使、貴方に私のリトルデーモンとなる資格があるか試してあげるわ」

 

 はわあわと幼さが残る『ルビィ』

 

 ほんわかした方言が印象的な『ハナマル』

 

 ギランといかにも中二病な『ヨハネ』

 

 と個性的なナースが揃った。

 

 一夏もヨハネの行動にたじろいでしまい、「よ、よろしく」と答えるのだった。

 

「この子達は、最近コナースから進化をして『ナース』としては最初の仕事になるわ」

 

「コナースって、あのナースさん達と一緒にいる小さくて羽をもったロボポンですか?」

 

「そ。……それと」

 

 ナースキャップが外し、代わりにアンテナ付きのバイザーが装着された。いつもの雰囲気が違うのはこれが理由であった。

 

「私も今日から『ナース』から『ジョイナー』と改めるから呼ぶときはこれで宜しくね」

 

「わかりましたジョイナーさん。それで、記録係は具体的にどうすれば?」

 

「まずはスペーサーの用意をするからあの子達を手伝って、山田先生は私とこのパソコンを設営をお願いするわ」

 

「はい、わかりました」

 

 ジョイナーの指示により、一夏とナース・トリオがスペーサーの壁を教室内に設営。

 、

 真耶とジョイナーが記録用のパソコンをセットするのだった。

 

 一つ追記すると、ルビィがうっかりコケかけた所、一夏に支えてもらえたが、すごく涙ぐまれてしまった。

 

 ハナマルからルビィは性格的に人見知りが激しいだけだと、教えてもらう、結果的に終わった時にあたふたしていたが、

 

 一夏にお礼を言ったので、事なきを得た。

 

 

 

 

 

 

 数日後、百合は支社でその日に行われた1学年合同IS実習のレポートを整理していた。

 

 合同実習で使われたのは国連が開発中の災害救助、平和維持活動などに開発された『EOS(イオス)』と呼称されるアーマー。

 

 呼称の由来はエクステンデッド・オペレーション・シーカーの頭文字からである。

 

 EOSは総重量ならISが重いが、ISにはPICという反重力システムにパワーアシストなどの補助駆動装置の恩恵でほとんど重量を感じなく動かせる。

 

 対してEOSは補助駆動装置はあるがそのレベルは遥かに低く、操作も駆動も差が大きい……

 

 更には背中に搭載しているポータブル・プラズマ・バッテリーが重量の大半を示している。

 

 単体で30㎏はあるとのこと……

 

 そんな重量をもってしてもEOSのフル稼働時間が数十分しか動かないとそんなガラクタな存在にFR社が新規開発の試作機を作成したのだ。

 

「今回の稼働実験データは明日、輸送隊に持って行かせるわね」

 

「ああ、お疲れ様」

 

 百合の通信相手はもちろん士音である。

 

 士音はタッグトーナメントの日から本社に一度帰還してEOSの改造をしていた。

 

 救助活動をしているFRレスキュー隊の技能を見込んだ国連がスポロ博士を頼り、依頼を送り込んできたのだ。

 

 その為、しばらく本社に缶詰め状態でスポロと開発を行っている。

 

 プロトタイプが完成し、稼働実験を行おうとしたがIS学園の上層部がIS学園で引き受けると連絡が入り輸送するのであった。

 

「因みに乗ったのは専用機持ちの子達だったよ、専用機が修理中って話だから」

 

「普段、ISに乗りなれているからかなり苦戦していたんじゃないか?」

 

「ご名答~! だから、後で私は乗り込んで動かしてあげたわ、みんな呆然としてた」

 

「そりゃあな、新型EOSは俺達のメイルギアやロボポンのフレームを応用して組み上げたんだ。経験が違って当然だ……」

 

 あんまり煽るようなことはするなよ? と士音に言い聞かされて「は~い」手を挙げて返事をする百合だった。

 

 

 

 

 

 

 更に数日後、織斑一夏が愛機の白式の開発元、倉持技研の研究所へと出向していた。

 

 この日は平日であるが、研究所でオールメンテナンスを行う為に特別外出許可が発行されている。

 

「はー。なんか、かったるいわねぇ」

 

 一夏がいない学園では鈴は廊下を歩きながら紙パックジュースを飲んでいた。

 

「ふふ。一夏がいないからでしょ?」

 

 隣で一緒に歩いているシャルロットがふとそう言いだすと、鈴はポロっとジュースを落としそうになった。

 

「ななっ!? 、違うわよ!! 誰があんな奴の事、別に居なくても、あたしには何の問題もないわよ!!」

 

「はいはい♪」

 

 珍しい組み合わせの二人は先の合同授業にて使われた資料の片づけを終えた帰り道であった。

 

 寄り道でジュースを飲みながら、自分の腕についている愛機のIS『甲龍』の待機状態を眺める。

 

 しかし今は本来のリングブレスではなく、1mmぐらいのスキンシールとなっているのだ。

 

 現在専用機持ちのISはメンテナンス中の為、手元から離れている。

 

 その防犯策としてパーソナルロックモードを設定することで、例え盗まれても使用することが不可能となっていた。

 

 いざとなれば、緊急作動を行えるが、装着時間に時間の隙が普段より加算されているのであった。

 

 その為、今の専用機持ちは二人で行動をすること義務付けられている。

 

 現在、一人で行動しているのは楯無と研究所に外出中の一夏であった。

 

「ったく、早く帰った来なさいよね……ハッ!?」

 

 自分の口を慌ててふさぐ鈴だが、こと遅し……。

 

 ニッコリ! と効果音は出そうな笑みをシャルロットは浮かばせている。

 

「ち、違うわよ。ただあたしはあいつが軍事訓練を受けてないから……」

 

「うんうん。心配なんだよね」

 

「ち、違うって!!?」

 

 更に声をあげようとした瞬間、突然廊下の電灯が一斉に消えた。

 

 消えたのは廊下だけじゃない、教室内、電光掲示板、全ての明かりが一斉に消えたのだ。

 

 だが、まだ時間帯はお昼。日光があるので、完全には暗くならないと思いきや……。

 

「防御シャッター!? 何で降りてるのよ!!?」

 

 ガラス窓を保護する頑丈な防壁が斜めにスライドして順番に閉まっていく。

 

 その状況にざわざわと騒ぐ中、防壁は全て閉ざされ、校舎内も真っ暗な闇の世界を作り出した。

 

 停電から数分後、学園に設営されている非常の電源システムが稼働するのだが、動く気配がない。

 

 不審に思った鈴とシャルロットはISをローエネルギーモードで起動させて、視界を対応した各センサーの機能をセットした。

 

 そこへラウラとセシリアからプライベートチャネルに通信が届く、それぞれに答えていると千冬からの割り込み通信が入る。

 

 内容は『専用機持ちは地下のオペレーションルームに集合せよ』との事、移動先に防壁があった場合は破壊してもいいと許可が下りる。

 

 千冬からの静かだが強い声は、これから始まるIS学園にまたしても事件が起きると克明に告げるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 場所はIS学園地下特別区間、オペレーションルーム。

 

 本来は生徒の誰一人も例外のなく知る事のない場所に専用機持ちが集まっていた。

 

 生徒は箒、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、簪、楯無の7人。

 

 一同の前には千冬と真耶、そして百合とジョイナーがいた。

 

 このオペレーションルームは完全に独立した電源が使われており、モニターも情報を表示している。

 

 ただし、空間投影型ではなく旧式のディスプレイにだが、稼働率は現役であった。

 

 モニターに表示された情報を説明する千冬と真耶。

 

 現状のIS学園はなにものからハッキング攻撃を受けてしまい、電源を停止し、防壁を動かしたのである。

 

 幸いなのが生徒達をはじめ人的な被害は報告されておらず、防壁によって閉じ込められているだけだ。

 

 だが、乗っ取られていない防壁が残っており、一部のみ降ろされたようだ。

 

 作戦内容は、箒、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラはアクセスルームで電脳空間へダイブしハッキングされた箇所を調査、システムの修理。

 

 簪はこの場でサポート及びバックアップをすることになった。

 

 後に残るは千冬と真耶。そして楯無と百合とジョイナーの5人。

 

「さて、お前には別の任務を与える」

 

「なんなりと……」

 

 普段のおちゃらけた表情ではなく、お仕事モードなった楯無が静かに答える。

 

「おそらく、このシステムダウンとは別の勢力が学園にやってくるだろう」

 

「敵──―、ですね」

 

 このような混乱に便乗して、介入を試みる存在は必ず現れる。千冬はそう睨んでいる。

 

 ISが中心となったこの世界では大いに起こりえる状況となっていた。

 

「そうだ。今はあいつらは戦えない。悪いが頼らせてもらう」

 

「任されましょう」

 

「お前のISも先日の一件で受けたダメージが完全に回復していないはずだ。防衛戦はFR社と共同で行う、いいな」

 

「はい、しかし戦いは何が起こるかわかりません。その時は独自の判断をさせていただきます」

 

 何か起こるかわからない……

 

 楯無は先に来る勢力とは別の勢力が来る可能性を考えている。

 

 今、この世界でISと戦えるのはISだけでは無くなっていたからだ。

 

 ロボポン……そして、ドクター・ゼロという未知なる敵対勢力の参戦に……

 

 生徒会長として、自身の組織する長としても、一歩も引かない強い決意が彼女の両目の奥に映している。

 

 その姿を見た千冬は一つため息をこぼして、楯無の目を真っすぐに見直し、一言告げるのであった。

 

「では、任せた」

 

 楯無はぺこりと一礼をし、オペレーションルームを出ていく。

 

 その姿を見送り、ドアが閉ざられて千冬と真耶が重い口を開いた。

 

「私たちは何をしているんだ……守るべき生徒たちを戦わせて、私たちは……」

 

「織斑先生……」

 

 仕方がない、とは言わない。いや言ってはならない。

 

 生徒を……子どもを戦場に立たせるなど、どんな事情であっても許されない。

 

 それは千冬と真耶にとって譲れない一線であった。

 

 だが……

 

 

 

 

 

「人は『戦い』を止めることは出来ても『闘い』そのものは辞めることなんて出来ない存在なのよ」

 

 

 

 

 

 

 二人の言葉に対して百合がそうつぶやく。

 

「「!?」」

 

「でも。大切な人や物、それを守りたい思いを持つのは大人とか子どもとかなんて関係ない……」

 

 確かに学園の教師であり、大人の立場である二人の考えは間違ってはいない。

 

「子どもだけじゃダメ……大人だけでもダメ……互いが互いを助けあい紡ぐ事ができれば、それは奇跡となり、未来へと繋がる……」

 

 

「それが人の可能性。『無限』の力……。私はそれを信じたい」

 

 

 それはかつての自分では知れなかった。この想い、士音やロボポン達と築いた日々を否定したくなかった。

 

 そんな感覚を感じて思わず呟く百合である。

 

「百合……あなた……」

 

「失礼。野暮なことを言ったわ、子ども達に戦場へ立たせる状況を早く終わらせること……」

 

 壁際に持たれた態勢を変え、二人の前に立つと……

 

「それが今の私たち大人の使命じゃないですか? 織斑先生、山田先生?」

 

「そうかもしれないな……」

 

「ええ。百合さんの言うとおりだと思います」

 

「まあ、元々は士音からの受け売りだけどね?」

 

「ちょ!? ネタバレ禁止!!」

 

 ジョイナーからのツッコミにせっかくのシリアスムードが崩れた。

 

 その姿に千冬と真耶は表情が少し明るさが戻り……

 

「では、我々も我々の仕事を始めよう」

 

「はい!」

 

 千冬と真耶は自分たちの仕事に取り掛かる。

 

 そして、百合とジョイナーもまた自分の仕事に向かうのだった……。

 

 

 それから時は進み……

 

 百合から連絡を受けた士音は本社からIS学園へとようやく到着した。

 

 一番移動距離が遠い為、道中受ける連絡を聞きながら戦況の変化を聞き進める。

 

 IS学園に侵入してきたのは米軍特殊部隊『アンネイムド』

 

 所属する人間は全員が国籍、民族、宗教、そして名前をも記録されていない『名もなき兵たち』。

 

 潜入用の特殊装備をまといし、ソルジャーが学園の四方八方出現している。

 

 千冬と真耶のコンビでアメリカ産のIS『ファング・クエイク』と装備した隊長らしき女兵士を捕縛。

 

 先に迎撃へ向かった楯無が別部隊を単身で戦っていたが、油断してしまい腹部の銃弾を受け逆に捕まってしまう……

 

 そのまま連れていかれる前に虫の知らせを聞いた一夏が救出。

 

 楯無の負傷を聞いて合流したジョイナーに治療を任せ学園の地下へと向かい千冬と真耶も合流できたが事態はまた解決していない。

 

 千冬から渡された情報を受けてIS学園のアクセスルームにたどり着く、設置されているベッドチェアで眠っている箒達と簪がいた。

 

 ISのネットワークを利用して学園のシステム復旧を試みた箒達からの連絡が途絶えてしまったようだ。

 

 救出のため、一夏も電脳世界へダイブするよう依頼する簪。

 

 電脳世界にダイブする方法を理解出来ていない一夏は簪にスタンガンで無理やり気絶させられ、電脳世界へと入る。

 

 そのまま、簪のナビゲートで箒たちの助けに向かうだった。

 

「こいつは妙な展開になってきたな、どうするか……」

 

 士音は数分後、アクセスルームに入り、電脳世界にダイブした一夏が救出作業を進めてゆくのを見守るが、妙な反応を掴む。

 

 掴んだデータ鈴の使うIS、甲龍に酷似していた。

 

「あっ、織斑くんが戻ってきた……けど、ISの反応が残っている?」

 

「よし、俺もダイブする。念の為に持ってきて正解だった」

 

 士音はS・ガントレットを左腕に装着し、さらにワイヤレスコネクターを追加装備した。

 

「それ何?」

 

「電脳世界用の専用装備だ」

 

「VRシステム、調整できていたのね?」

 

「まあな、まずは一夏達と合流する。百合はナビは頼んだ」

 

「おーけー」

 

 百合と簪がダイブの準備を進めていく……

 

「ミラージュドライブ・ドリーマー……起動!」

 

 士音は眠るように設置されたシートへ座った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 電脳世界へダイブし、光に包まれて飛び出した先は広大な森の中であった。

 

 辺りを見渡すと、少し先に一夏と鈴が向かい合い、森の茂みに半分隠れていた簪の姿を発見、向かうと……

 

 一夏と鈴何やら複雑な雰囲気を醸していて。簪もどうすればいいのか迷っていた。

 

「君たちはなにやってのかね?」

 

「「!?」」

 

「あ、よかった……」

 

「つ、月彩さん!? 簪まで!?」

 

「い、い、いたんなら、声をかけなさいよ!」

 

「そういう……雰囲気じゃなかったので……」

 

「俺は今さっき。到着した所だが?」

 

「「う……」」

 

 がさがさと音を立てながら茂みから出てくる簪と士音。

 

「とりあえず、一度、鈴さんは私とここを出ます。任務継続は……難しいから」

 

「あ、あたしはまだやれるわよ!」

 

「いえ、なんらかの攻撃でISのシステムが攻撃されている可能性があります……一度、帰還してチェックしましょう。それに……」

 

 そう言いながら、指差した方向には他の4つのドアとは異なる色のドアが現れた。

 

「どういうことなのよ!?」

 

「甲龍と同じコア反応があのドアの先にある。調査は俺が一人で行く」

 

「そんな!? 一人でなんて!!」

 

「心配は無用。こういう手の仕事は慣れていてね」

 

 士音が右手を横に掲げると光の粒子が集まり、一つの武器が出現する。

 

 そのままドアに向けてビームが発射された。

 

 ビームはドアを破壊し、残っているのは枠の部分だけとなり、その枠には薄い青色の霧のような空間が浮かんだ。

 

「こんな装備も持ってきてるし」

 

 得意げに手に持っている武器の正体は『MPBL(マルチ・プル・ビーム・ランチャー)・スライプナー』である。

 

「「……」」

 

「そ、それは!?」

 

「じゃ、後はよろしく!」

 

 呆然としている一夏と鈴に武器の存在に驚く簪をよそに士音は枠だけになった空間に突入したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空間を抜けた先は古代ローマの闘技場を思わせる場所に辿りついた士音。

 

 待ち構えたのは甲龍を装着した鈴の姿を模範した漆黒の機体だった。

 

「やはり、機体は乗っ取られていたか……」

 

 士音の姿を認識した漆黒の甲龍は手に大型の青龍刀『双天牙月』を持ち、刃を士音に向けた。

 

「遠慮は無しだな……」

 

 士音も手に持っていたスライプナーを頭上に掲げて……

 

「コードネーム……テムジン」

 

 右下に向けて円弧を描くように振り込んだ。

 

 

 

 

「ゲッドレディ!!」

 

 

 

GET READY!!

 

 

 

 士音の周辺に蒼い粒子が浮かび上がり、体全体を包み込む……

 

 そこから現れた青と白いアーマーと顔には大型のバイザーが装着された。

 

 本来装着するフェイタルアーマーとは趣旨が異なる姿、対電脳世界用に開発したアーマー……

 

 

 その名は「VRアーマー・テムジン」

 

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

 

 背中のブースターポッドが展開、ISのイグニッションブーストのような加速力を高め黒い甲龍に斬り込んでいく。

 

 士音の加速に反応した黒い甲龍が二刀と剣を受け止める。

 

 すぐさまに剣戟の打ち合いが始まり、攻撃しては防ぎ、防いでは攻撃を繰り返す。

 

 その状況を打破する為、黒い甲龍は背部ユニットの衝撃砲を展開、砲撃を放つと士音は空高く垂直飛びで黒い甲龍の背後に立つ。

 

 

「ニュートラルランチャー、Shot!!」

 

 

 ブーストダッシュを行い、黒い甲龍を周りを平行移動しながらスライプナーを腰だめ状態となり、

 

 左手を添えてビーム弾2発と砲撃ビームが1回発射する。

 

 ビームは黒い甲龍に炸裂、ほんの少し隙が生まれた。

 

 

「さて、ヤサグレクソガキ思考ISの説教と行きますか!」

 

 

 空いた左手から一つの球体が出現して、それを投げ込んだ。

 

 飛んだ球体は黒い甲龍のそばまで転がり、しばらくすると閃光が走る。

 

 発生したプラズマが球体のバリアのように包み込み、黒い甲龍は動きを完全に拘束させた。

 

 

「束縛機能を強化したパワーボムだ。そこからの!!」

 

 

 再びのブーストダッシュで背後の回り込みスライプナーをビームソード形態に転換。

 

 

 ザンッ! 

 

 斬り抜けの一撃

 

 ザンッ!! 

 

 振りかぶって突きの一撃

 

 

 ザンッ!!! ザンッ!!! 

 

 締めの二連斬撃を決めた。

 

 

 

 直撃を受けた黒い甲龍は火花を散らし、爆発した……

 

「ふっ!」

 

 スライプナーに搭載している吸着ワイヤーを放つと、そこから引っ張り出されたのは朱色に光った物質である。

 

 回収した物質を左手に握りしめて砕いた。

 

 

 

「指導、終了……ってな!!」

 

 

 

 

 元となった教導官の口癖を思わず言う士音であった。

 

 

 

 

 

 

 闘技場の世界が消滅して森の中に出た士音は辺りを見ると一夏が一人で残り4枚の扉と格闘していた。

 

 通信をしながら簪と百合が扉の解析を進めている。

 

「何をしているんだ?」

 

「わっ! って月彩さんですか?」

 

「当たり。それ状況は?」

 

『おそらく、鈴さんの件で何者かがロックをかけているかと』

 

「だとしたら、俺の存在も気付いているな……」

 

「そうだ。さっきみたいに月彩さんがその武器で!」

 

『それはダメ。下手にドアを強行突破して、二度と彼女達が目覚めなかったらどうするの?』

 

「あっ……そ、そうですね」

 

『ねえ、さっきのISの反応があったのは?』

 

「ISコアをコピーした夢の世界の番人って所、今は反応がないだろ?」

 

『本当だ……反応がなくなってる』

 

「そうなると中に彼女達と一緒に番人が待ち構えている。よし、ここからは俺も同行する」

 

「助かります、俺一人じゃ具体的な方法が分からなかったんで」

 

 心の奥から安堵の表情を浮かべる一夏、このような電脳世界を体験する人間は少ない、今の状況に心の余裕が失いかけていたのだろう……

 

『話を戻すと、この先にある世界は一夏が二人いる、という認識になるのは非常に危険』

 

「じゃあ、どうすれば入れる?」

 

『変装……』

 

「え?」

 

『変装すれば、入れる』

 

「…………」

 

 しばし、一夏と簪の間に寒風が吹きこんできたように見える。

 

「なるほど、相手が織斑一夏の存在を認識しなければドアの世界に潜入できるって事だな?」

 

『うん……』

 

 咄嗟にフォロー解説に回った士音に簪は嬉しそうな声で肯定した。

 

「よし、簪。すぐに一夏少年の服装データを書き換えてくれるか?」

 

『了解、ちょっと待ってて』

 

 カタカタカタとキーボードを叩く音が通信回線を通じて聞こえてゆく中、一夏の全身に光の粒子に包まれた。

 

「うおっ!?」

 

『データのインストール……完了』

 

 一夏の姿は全身黒ずくめの恰好となり、ガスマスクを装着している。

 

 さらに肩には自動小銃をぶら下げていた。

 

「って、これは何だ?」

 

『英国特殊部隊SASのミッション・ドレス』

 

「なんか映画みたいだな」

 

「いいなそれ、百合、俺の分はあるか?」

 

『あるわけないでしょ、ダイブシステムはこのルームとリンクしてないのだから……』

 

「ちぇ、残念。まあ『なりきり』を使えばなんとでもなるか」

 

『何それ? ……だったら、あの姿にもなれたり……』

 

「ん? なんか言ったか?」

 

『な、なんでもない』

 

 よしっと引き締めた一夏がブルーのドアノブに手をかける。

 

 ガチャと音が鳴り、ゆっくりと開いた。

 

「よし、開いた」

 

「じゃ、行ってくる」

 

『気を付けて。中にはニセ織斑君がいて襲ってくるから』

 

「なるほど……敵は二段構えか、一夏少年、実銃の経験は?」

 

「えっと、ゲームセンターのガンシューティングぐらいしか……」

 

「それで十分だ。電脳空間なら反動などの計算は図る必要はない」

 

『それば無茶苦茶な気が……』

 

『ま、士音ならなんとでもしてくれるわ』

 

『うん、そこは知ってる……』

 

「おーい、何なんだその不本意な信頼感は?」

 

「たはは……」

 

 そんな騒がしい言い合いを済ますと、士音と一夏は扉に向かった。

 




NEXT…

電脳世界にて偽りの世界に捕らわれたヒロイン達。

そして、それぞれの専用機を模範した黒き番人。

残りはセシリア、シャルロット、ラウラ、箒

この現象を起こした犯人の狙いは……?

しかし、士音の前に更なる刺客が迫っていた。


次回「超躍・俺達の居場所」
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