インフィニット・ストラトス2~人と機械の紡ぐ心~   作:サウス零

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お久しぶりです…


EP16 異国・俺達の再青春

ここはとある場所の片隅にあるビル……

 

そこにバスケットを持った一人の少女がエントランスから出てきて、いそいそと離れのドーム型研究室に向かっていると……

 

ボンッ!

 

ドーム内から破裂音が周囲を響かせた。

 

「またみたいね…」

 

少女にはこの状態を何度も知っている。

 

そのまま奥の扉を開けて入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

ドーム内では壮年の男性と少女と少年と三人が爆散した鉄の塊を片付けていた。

 

塊の正体はロボポンに使われているパーツたちである。

 

「うーむ……設計は問題なかっただがな~?」

 

「やっぱり、設備のパワー不足じゃないの?」

 

「ふむ、かと言って改装する資金が持ち合わせてないのよ」

 

「それは父さんが日頃から貯金しないからでしょ!」

 

「そうですよ、以前に僕の父からの援助しようとしたのになぜ拒否したのですか?」

 

「以前ならばな……」

 

そう言いながら少年は近くに設置されたテレビを見つめる。

 

テレビにはニュース番組が放送されており、ニュースを読み上げるアナウンサーの隣にあるウインドウに映る男……。

 

 

 

 

 

 

ドクターゼロが映っていた。

 

 

 

 

 

「今のルクーゼンブルクは鎖国状態。外部からの連絡が不可能で、応援要請もままならんのじゃ……」

 

「だから、まだ稼働している各研究所が全力で対抗できるロボポンの開発をしていたのに、ドクターゼロがロボポンの素材を奪われるなんて!」

 

「今はかろうじて被害にあっていないここと僅かに残っている研究所も護衛ロボポンの作るので精いっぱい……データが不足すぎるのよ」

 

「かと言って、新型機を三日前から始めたけれど一体も稼働出来ていないなんて……」

 

「父さん。どこかの「こんなこともあろうかと」みたいな感じでロボポン隠してないの!?」

 

「そんな都合よくあるわけがないだろ!」

 

「まあまあ、エレも博士も落ち着いて落ち着いて」

 

 

少女と壮年の男性がにらみ合って口喧嘩を始めてしまった。

 

置き去り状態の少年はあわあわと止めようとするが、二人には聞こえていない…。

 

 

「行き詰っているわね」

 

先ほどの少女が合流した。

 

「ロゼ…」

 

「もう日が暮れてるわよ、夕食の差し入れを持ってきたわ」

 

手に持っていたバスケットにはビーフシチューとパンの良い匂いがあふれていた。

 

匂いに気付いた男性と少女が喧騒を止めて、バスケットを持った少女の前に集まる。

 

「サンキュー、ロゼ!そうね、お腹がすいてちゃ、なんとやらね」

 

「すまないな、ロゼくん。家事を任せきりにして」

 

「いえ、いいんです。私は機械の技術はほとんどありません……代わりにこれなら出来ることがありますから」

 

そう言いながらバスケットから切り分けたパンを男性に渡す。

 

男性は受け取り、お皿に盛りつけられたシチューを食べる。

 

「はい、アルの分よ」

 

「ありがとう」

 

それぞれの呼称は少年は「アル」、少女は「エレ」、差し入れ持ってきた少女は「ロゼ」、「博士」と呼ぶ壮年の男性。

 

なお、エレと博士は親子である。

 

食事を終えて、再び開発を始めたかったが、このまま進めても成果が出ないため相談をすることになった。

 

因みにロゼは後片付けをする為にドームを出ていっている。

 

「あーあ、肝心なデータが無いのがこうも痛手になるなんてねぇ~」

 

「特に戦闘関係が最も不足している」

 

「今俺たちにできることはここまでなのか?」

 

三人が途方に暮れていると……

 

 

 

 

 

ドッカァァァァァァァン!!!

 

 

 

 

 

外から妙な爆発音が響いた。

 

ドームの外に出ると出入り口でロゼが待っており、彼女の口から研究所の上空に妙な物体が海辺に落下したのだ。

 

一同は早速、海辺に向かう……。

 

 

 

 

 

 

その頃、海辺にある砂浜に流れついたのは士音とロボまるにメイルギア二機であった。

 

「くっ、大丈夫かロボまる?」

 

「うん、僕は大丈夫だけど……」

 

ロボまるが向いた視線の先には、バハムート・チェイサーとグリフィード・ガルーダが大破していた。

 

「くっ、あんな攻撃に直撃していたからな……」

 

「急いで、研究所に連絡を……あれ?」

 

「どうした?」

 

「通信の反応がない……」

 

「何っ?………っ!?俺のも反応がない……」

 

士音も通信システムを展開するが、聞こえるのはノイズだけ……。

 

現在位置を確認するためにGPSナビを起動させると、示したのは全く心当たりがない場所である。

 

「ここはヨーロッパのどこかなのか?」

 

「う~ん……島みたいだね?」

 

そこへ、博士ら一同が合流する。

 

士音とロボまるを見て全員が固まった。

 

「なっ!?」

 

「何なの…あれ…?」

 

「人に……?」

 

「ロボポンだと……?」

 

だが、固まっていたのは、士音とロボまるも同じだった。

 

「ね、ねえ……あの人、誰かに似ていない?」

 

「ああっ、だが髪型とか…一言で言えば若い…」

 

状況は混乱する中、冷静に動いたのは年長者の博士である。

 

「君達はどこから来たのかね?」

 

「まさか、あんた達ドクターゼロの手先じゃないわよね!?」

 

「「えっ!?ドクターゼロ!?」」

 

思わぬ人物の名前を聞いて反応する士音とロボまる。

 

「その反応、やっぱりなのね!?」

 

「ま、待って!違う!!僕達は手先じゃない!」

 

「そうだ。俺はシオン。で、こっちはロボまる。むしろ敵対している!!」

 

「敵対…?良ければ詳しく話してくれないか?」

 

「わ、わかった…」

 

「ここではなんだ。私の研究所に行こう」

 

博士の仲介に士音とロボまるは研究所へ案内されたのだった。

 

 

 

 

研究所に案内された士音とロボまるは博士から今いる場所がルクーゼンブルクである事。

 

ドクターゼロの宣戦布告を島に宣言したため国は大混乱であることを知った。

 

「そんな事が…」

 

「ドクターゼロ……こんなところでもやってくれる!」

 

ドクターゼロの卑劣さに二人は激怒寸前となる。

 

すぐにでも立ち向かっていきたいが、要となるメイルギアが大破状態であることを思い出した。

 

海岸で回収した二機は、博士の格納庫に置かれ修復作業を始めている。

 

「機械の中枢部は無傷だったから、動かすのは出来そう。でも…」

 

「この機械を両方とも修理できるのは出来ません。」

 

先にメイルギアの状態を見てくれたエレとアルが内容を話してくれた。

 

「特に駆動軸や電気配線の回路……あの機械、どんな構造してるのよ…父さんわかる?」

 

「判らなくもないが、詳しく調べる必要があるな」

 

三人の調べて分かった情報を聞いて士音はビークルモードとしての機能は無事だが、可変機構が破損していることが分かった。

 

最も、二人にはこの可変機構の存在は知らない。

 

「わかった、どっちかを動ける所まででいい。動ければまだやり様がある」

 

「やりようって、あなた何か当てがあるのかしら?」

 

「今はない……だが進めば、何かある!」

 

「凄い自信ね……わかったわ、こっちの飛行機型の方がダメージが少ないし、一時間ちょうだい。それなら動かせるわ」

 

「頼む。俺も手伝う、これでも機械には強い方だからな」

 

「あら、それは頼もしいわ。これ使って」

 

そう言い、エレは士音に自分のそばに置いてあった予備のエプロンを渡した。

 

 

 

 

 

飛行機型=グリフィード・ガルーダの修理を始めて一時間前後……

 

ファンファンファンファン!!!

 

室内に警告音が響き渡る。

 

エレがグリフィードから飛び出して、机のトランシーバーを持つ、相手は社内にいるロゼだ。

 

「こちらエレ、ロゼどうしたの!?」

 

『大変よ、輸送中の食料品がドクターゼロのロボポン軍に襲われてるの!』

 

「何ですって!!」

 

『防衛のロボポンが何とか食い止めているけど、応援の要請が入っているわ…』

 

島の人々の危機に士音とロボまるは立ち上がる。

 

だが、グリフィード・ガルーダの修理はまだ完全じゃない。

 

飛行機としての機能は復活しただけ、戦闘機能は皆無に等しい。

 

だが、士音とロボまるは

 

「大丈夫、俺にはこれがある・・・」

 

左手に専用の変身ツール、「サモン・ガントレット」が装備されていた。

 

「これって…?」

 

エレから見れば、左腕だけのガントレット。

 

「戦う力ならこいつで十分、ロボまるもただのロボポンじゃないのさ」

 

エレ達はまだ知らない、士音とロボまるがこの島の救いの希望になることを…

 

 

 

 

 

島の海岸線を走る三台の大型トラック。

 

荷台には島の住民たちの命をつなぐ食料がぎっしり詰まっている。

 

だが、その背後には砂煙を巻き上げながら迫る影――。

 

ドクターゼロの量産型ロボポン軍団、約五十体。

 

その先頭で指揮を執るのは、海賊帽をかぶり、片目にスコープを装着した海賊型ロボポン。

 

名は――スカルビーク

 

「撃て撃てぇ! 人間どもが抱えてる食い物を叩き潰せぇ!!」

 

スカルビークの号令とともに、ロボポン軍団が一斉に砲撃を開始。

 

砂浜に爆炎が走り、トラックは左右に揺さぶられながら必死に逃げる。

 

だが、追いつかれるのは時間の問題だった。

 

「くそっ、このままじゃ……!」

 

運転手の叫びが虚しく響くその時――

 

上空から、鋭い光が降り注いだ。

 

ズガァァァァァン!!

 

前方を走っていたロボポンの集団にビームが直撃。

砂煙が舞い上がり、数十体が一瞬で戦闘不能となる。

 

「な、なんだと!?」

 

異変に気づいたスカルビークが空を見上げる。

 

そこに影を落としながら着地したのは――

 

修理を終えたばかりのグリフィード・ガルーダ。

 

コックピットハッチが開き、士音とロボまるが飛び降りる。

 

「何だ? お前らは……?」

 

スカルビークがスコープ越しに二人を睨む。

 

士音は一歩前に出て、砂浜に足を踏みしめた。

 

「これ以上、あのトラックには追わせないよ」

 

「ほう……俺達を誰だか知ってて邪魔するのか?」

 

「知ってるさ。そして――」

 

士音はスカルビークを真っ直ぐに指差す。

 

「白黒オセロ野郎にケンカを売る!」

 

「……お前ら、なにもんだ?」

 

士音は左腕を掲げ、サモン・ガントレットを見せつける。

 

「俺たちは……ドクターゼロの野望を阻止しに来た――」

 

ロボまるが胸を張って叫ぶ。

 

「レスキュー隊だ!!」

 

その瞬間、士音は『チェンジ・カードチップ』をガントレットに装填。

 

両手をクロスし、円を描くように動かして右手を左手に添える。

 

「サモンコード――フェイタル!!」

 

ガントレットのレバーを引き、左手を前へ突き出す。

 

光の壁が展開し、士音の身体を包み込む。

アーム、ボディ、フット、ヘッド――

四つのパーツが次々と装着されていく。

 

光が収束し、砂浜に立つのは――

 

アーマノイド・ヒューマン

《ファルシオン・エデンシス》

 

スカルビークが思わず後ずさる。

 

「な、なんだその姿は……!?」

 

士音――いや、ファルシオンは静かに構えを取る。

 

「ロボまる、行くぞ!」

 

「うん、シオン!」

 

ロボまるも戦闘態勢に入り、二人は砂浜を蹴って飛び出した。

 

スカルビークが叫ぶ。

 

「全軍、迎撃しろぉ!! あの二人を沈めろ!!」

 

ロボポン軍団が一斉に動き出し、

砂浜での激しい戦闘が幕を開けた――。

 

 

 

砂浜に響く爆音。

スカルビークの号令とともに、残ったロボポン軍団が一斉に突撃してくる。

 

「来るぞロボまる!」

 

「任せてシオン!」

 

ファルシオンは砂を蹴り、ロボまるはその横を並走する。

 

二人の影が夕日に伸び、迫り来るロボポン軍団とぶつかり合う。

 

最初に飛び込んだのはロボまるだった。

 

「いっくよーっ!!」

 

ロボまるの拳が赤く光り、ソフトが起動する。

 

「ファイア・ナックル!」

 

拳に炎がまとい、ロボポンを殴り飛ばすたびに爆ぜる火花が散る。

 

ドゴォッ! バギィッ!

 

二体、三体とまとめて吹き飛ばされ、砂浜に転がる。

 

「まだまだぁっ!!」

 

ロボまるはさらにソフトを重ねる。

 

「『ファイア』と『ファイア』を合わせて――ナパーム・ナックル!」

 

両手の拳が灼熱の赤から、さらに濃い橙色へと変化。

振り下ろした瞬間、爆炎がロボポン数体をまとめて包み込んだ。

 

ドガァァァン!!

 

「す、すげぇ……ロボまるの火力、前より上がってないか……!」

 

「前のメンテナンスで新しいパーツとソフトを更新したからだよ」

 

ロボまるは笑顔で拳を構え直す。

 

 

 

 

ロボまるが前衛を押し返す間に、ファルシオンは右腰のホルダーから武器を抜く。

 

光学剣《ビームザンバー》

 

高出力の青白い刃が伸び、空気を震わせる。

 

「行くぞ……!」

 

ファルシオンが踏み込むと、残像を残すほどの速度でロボポンの間を駆け抜ける。

 

ザシュッ! ザンッ!

 

斬撃が閃光のように走り、ロボポンの装甲を切り裂く。

 

「な、なんだあのスピードは!?」

 

「避けられねぇ!!」

 

スカルビークの部下たちが次々と倒れていく。

 

 

 

「距離を取れ! 射撃で押し返せ!!」

 

スカルビークが怒号を飛ばす。

 

ロボポンたちが一斉に銃口を向ける。

 

ファルシオンは即座に武器を切り替えた。

 

小型銃《DDC》

 

「ビームモード!」

 

ピシュッ! ピシュッ!

 

青い光弾が連射され、敵の射撃を相殺しながら正確にロボポンの関節を撃ち抜く。

 

「バレットモード!」

 

ダダダダッ!

 

今度は重い反動とともに実弾が放たれ、装甲の厚いロボポンを貫通して倒す。

 

「シオン、後ろ!」

 

ロボまるの声に反応し、ファルシオンは振り返りざまにDDCを構える。

 

「接続――!」

 

DDCの後部にビームザンバーの柄を接続。

 

中型銃《ドラグーンバスター》へ変形

 

「その動き、見えているんだよ!」

 

ズガァァァァン!!

 

高出力のビーム弾が放たれ、十数体のロボポンがまとめて吹き飛ぶ。

 

砂浜に巨大なクレーターが刻まれ、煙が立ち上る。

 

 

スカルビークが前に出る。

 

「てめぇら……やりやがったなぁ!!」

 

海賊型ロボポン・スカルビークが前に躍り出る。

 

巨大なカトラスと腕部キャノンを構え、怒りで赤く光る片目を向けてきた。

 

「ヤロウどもは下がれ! ここからは俺の出番だ!!」

 

ファルシオンはドラグーンバスターを構え直し、ロボまるは拳を燃やす。

 

「ロボまる、行けるか?」

 

「もちろん!!」

 

砂浜に緊張が走る。

 

ファルシオン&ロボまる vs スカルビーク

 

決戦の火蓋が切って落とされようとしていた――。

 

 

 

砂浜に残ったのは三者のみ。

 

ファルシオン、ロボまる、そして――スカルビーク。

 

潮風が吹き抜け、スカルビークの片目スコープがギラリと光る。

 

「てめぇら……ここまで俺の部下を好き勝手にしやがって……!

 

ドクターゼロ海賊団の名折れだ……ここからは俺が直々に沈めてやる!!」

 

スカルビークが砂を蹴り、先手を取って突進する。

 

「うおおおおおっ!!」

 

巨大カトラスが唸りを上げ、ファルシオンへ振り下ろされる。

 

ガギィィィィン!!

 

ファルシオンは腕を交差して受け止めるが、衝撃が重い。

 

「ぐっ……!」

 

「どうしたぁ!? その程度かよ!!」

 

続けざまに腕部キャノンが至近距離で発射される。

 

ドガァァァン!!

 

爆炎がファルシオンを包み込む――が。

 

爆炎の中から、青白い光が弾けた。

 

「……効かないね」

 

ファルシオンの両腕に装備された《プラズマリング》が手元に展開し、

 

ピンポイントバリア『守護円形』が形成されていた。

 

「なっ……バリアだと!?」

 

「今度はこっちの番だ!」

 

ファルシオンはリングのモードを切り替え、左右のプラズマリングを投擲武器として放つ。

 

キィィィィン!!

 

光の輪がスカルビークの周囲を高速で飛び回り、チャクラムのように軌道を変えながら襲いかかる。

 

「うおっ!? なんだこの動きは!!」

 

スカルビークはカトラスで弾こうとするが――

 

ギャリィィィン!!

 

リングの衝撃でカトラスの刃が砕けた。

 

「なっ……俺のカトラスがぁ!?」

 

さらにリングは旋回し、腕部キャノンにも直撃。

 

バチィィィン!!

 

「ぐあっ!? 武器が……!」

 

スカルビークの武装が完全に破損した。

 

「ロボまる、合わせるぞ!」

 

「うん、準備できてるよ!」

 

ファルシオンは腰を落とし、右拳を引き絞る。

 

拳に青い気が集まり、竜の頭部へと成していく。

 

ロボまるは両拳に『ファイヤ』×2のソフトを起動。

 

拳が灼熱の橙色に輝き、爆炎が渦を巻く。

 

「シオン、行こう!!」

 

ファルシオンとロボまるが同時に踏み込む。

 

「「これで終わりだ――!!」」

 

《竜神掌・爆炎破》!!!

 

龍型の気功拳と爆炎の拳が合わさり、

巨大な龍炎となってスカルビークへ突き進む。

 

ドガァァァァァァァァン!!!

 

砂浜が揺れ、爆炎が空へと吹き上がる。

 

スカルビークの巨体が宙に浮き、

そのまま砂浜へ叩きつけられた。

 

 

「ぐっ……こ、こんな……ガキどもに……!」

 

スカルビークは震える腕で通信機を叩く。

 

「ぜ、全軍……撤退だ……!

これ以上は……持たねぇ……!!」

 

残った子分ロボポンたちが慌ててスカルビークを担ぎ、

砂浜から逃げ去っていく。

 

「覚えてろよぉ……!!

次は……こうはいかねぇ……!!」

 

その声を残し、海賊団は撤退した。

 

 

 

 

ファルシオンは変身を解除し、士音の姿に戻る。

ロボまると拳を付け合わせながら笑った。

 

「やったね、シオン!」

 

「ああ……これで食料は守れたな」

 

遠くで、救われたトラックの運転手たちが歓声を上げていた。

 

士音とロボまるは、この島にとって“希望”となる第一歩を確かに刻んだ。

 

 

 

 

 

食料輸送トラックを無事に街へ送り届けた士音とロボまるは、

博士たちの研究所へ戻ってきた。

 

ドーム型研究室の扉が開くと、

すでにエレ、アル、ロゼ、博士が待ち構えていた。

 

「シオン! ロボまる! 無事だったのね!」

 

真っ先に駆け寄ってきたのはエレだった。

彼女は士音の全身を上から下まで確認し、

怪我がないと分かると胸を撫で下ろす。

 

「よかった……本当に、よかった……」

 

「心配かけたな。でも、なんとかなったよ」

 

ロボまるも笑顔で手を振る。

 

「ただいまですっ!」

 

「それにしても…」

 

エレはグリフィード・ガルーダのカメラ映像を見ていたらしく、

興奮気味に士音へ詰め寄る。

 

「あなた達……あの連携、何なの!?

 まるで長年コンビを組んでるみたいだったわ!」

 

「まあ、長い付き合いだからな」

 

「それにしてもよ。ロボまるの動きに合わせて

 あなたがあんなに自然に動けるなんて……

 正直、鳥肌立ったわよ」

 

エレは腕を組みながらも、

その表情はどこか嬉しそうだった。

 

ロゼはロボまるの前にしゃがみ込み、

そっとその手を取って微笑んだ。

 

「ロボまるちゃん……あなた、本当にすごかったわ」

 

「えっ、そ、そうでしょうか?」

 

ロボまるは少し戸惑いながらも、

褒められたことが嬉しいのか、目をぱちぱちさせている。

 

「うん。あの爆炎のパンチ……

 あれを見た時、思わず声が出ちゃったもの。

 あなた、あんなに強かったのね」

 

ロボまるは一瞬だけ士音を見てから、

小さく、しかしはっきりと答えた。

 

「僕がこうして戦えるのは、シオンや仲間がいるからですよ」

 

ロゼはその言葉に、ふっと優しく目を細めた。

 

「……そうね。

 あなたは“誰かのために”戦える子なんだわ。

 だから、あんなに強くなれるのね」

 

ロボまるは照れくさそうに頬をかきながら、

それでも誇らしげに胸を張った。

 

アルは士音の左腕に装着されたサモン・ガントレットと、

戦闘映像に映っていた武器の動きを思い返しながら、興奮気味に前へ出た。

 

「シオンさん……あの武器、DDCって言ったよね?

 あれ、ロボポンの“ソフト”に近い仕組みを感じたんだ」

 

「ソフトに?」

 

「うん。攻撃の属性や挙動を切り替える感じが、

 ロボポンのソフトシステムに似てる。

 でも――」

 

アルは指を立て、さらに身を乗り出す。

 

「一番驚いたのは、あの“プラズマリング”だよ!」

 

「プラズマリング?」

 

「そう! あれは完全に未知の技術だよ!

 リング状のエネルギー体を武器にも防御にも使えるなんて……

 僕の知ってるロボポン技術には存在しない!」

 

アルは目を輝かせ、まるで宝物を見つけた子供のように続ける。

 

「しかも、あの軌道制御……!

 投げた後に方向を変えたり、敵の武器を破壊したり……

 どういう制御プログラムを使ってるのか、全然想像がつかないよ!」

 

士音は少し照れながら頭をかく。

 

「まあ……俺の世界の技術だからな。

 説明すると長くなるけど」

 

「ぜひ聞かせてほしい!

 あれを解析できれば、ロボポン技術は一段階進化するよ!」

 

アルは完全に技術者の目になっていた。

 

博士は士音とロボまるの姿を見つめ、

ゆっくりと深く頷いた。

 

「……シオンくん、ロボまるくん。

 君たちは、この島にとって“希望”じゃよ」

 

その声は震えてはいない。

しかし、長年研究者として積み重ねてきた経験からくる“確信”があった。

 

「ドクター・ゼロの脅威に立ち向かえる存在……

 わしらがどれほど求めていたか。

 今日の戦いで、それがはっきりした」

 

博士はそう言いながら、

横で興奮しすぎているアルの肩に手を置いた。

 

「アル、落ち着きなさい。

 君の気持ちは分かるが、まずは二人を休ませてやらんと」

 

「で、でも博士! あのプラズマリングの制御は――」

 

「後でじっくり聞けばよい。

 今は興奮しすぎて話がまとまらんじゃろう?」

 

「うっ……そ、それは……」

 

博士にたしなめられ、アルはしゅんと肩を落とす。

 

その様子を見て、エレがため息をついた。

 

「はぁ……また“いつものスイッチ”が入ったわね、アルの」

 

「えっ!? い、いつものって……!」

 

「新しい技術を見るとすぐこれなんだから。

 まあ、悪いことじゃないけどね」

 

エレは呆れながらも、どこか楽しそうに笑った。

 

博士も続けて微笑む。

 

 

研究所の空気がようやく落ち着きを取り戻した頃――

 

将はふと、あることに気づいた。

 

「……そういえば、まだ君たちの名前を聞いてなかったな」

 

その言葉に、エレが「あっ」と声を上げる。

 

「そういえばそうだったわね!

 じゃあ改めて――」

 

エレは胸を張り、どこか誇らしげに名乗った。

 

「私は エレノア・ブラウン! ピッチピチ15歳よ!」

 

「ピッチピチって……」

 

士音は思わず苦笑する。

 

その横で、ロボまるが小さく首をかしげた。

 

「ブラウン……? あれ……どこかで聞いたような……?」

 

ロボまるの呟きに、エレは「ん?」と首を傾げたが、特に気にせず続けた。

 

続いてロゼが一歩前に出る。

 

「私は ロゼンダ・ド・ラ・ヴァリエール。

 よろしくね、シオンさん」

 

「おお……なんか貴族っぽい名前だな」

 

「まあ、家系はそうだけど……

 っていうかエレ、さっきの“ピッチピチ”って何よ?」

 

「えっ? 事実じゃない?」

 

「そういう問題じゃないわよ!」

 

ロゼのツッコミに、エレはケラケラ笑う。

 

アルは少し照れながらも、丁寧に頭を下げた。

 

「僕は アルベール・デュノア。

 エレとロゼとは同じ学園の同級生なんだ」

 

「デュノア……?」

 

士音はその名前に、どこか引っかかるものを感じた。

 

(……どこかで聞いたような……?

 いや、まさかな)

 

しかし、その違和感は胸の奥に残ったままだった。

 

最後に博士が、白衣を整えながら名乗る。

 

「私は スポロ・ブラウン。

 この研究所の所長だよ」

 

「ブラウン……!」

 

ロボまるが小さく声を上げる。

 

士音も同時に思った。

 

(やっぱり……博士だ!!)

 

二人は心の中で同時に叫んでいた。

 

だが、その事実を今ここで言うべきではないと判断し、一旦胸の内にしまい込んだ。

 

 

 

皆が名乗り終えたところで、士音は静かに息を吸い、姿勢を正した。

 

「……じゃあ、今度は俺の番だな」

 

全員の視線が集まる。

 

「これからはこう呼んでくれ。俺は――」

 

士音はゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

「綾月 将(あやつき・しょう)。またの名を――

 ファルシオン・エデンシス」

 

ロボまるも続いて名乗る。

 

「ロボまるです。よろしくお願いします」

 

ロボまるが名乗り終えた直後――

エレがすかさず身を乗り出してきた。

 

「ねえシオン! っていうか将!

 あなたって年いくつなの?」

 

将は少しだけ意地悪く笑う。

 

「じゃあ逆に聞くけど……

 いくつに見える?」

 

「う~ん……」

エレは腕を組んで、将の顔をじーっと見つめる。

 

「雰囲気は落ち着いてるけど、そんなに老けてもないし……

 同い年?」

 

将は肩をすくめて答えた。

 

「残念、25さ」

 

「…………え?」

 

エレの口がぱくぱくと金魚のように動く。

 

ロゼも目を丸くし、

アルは手に持っていたメモ帳を落としそうになった。

 

「に、25!?

 えっ、えっ、10歳も上なの!?」

エレが叫ぶ。

 

「そ、そんな大人だったなんて……」

ロゼも驚きを隠せない。

 

「僕たちよりずっと年上じゃないですか……!」

アルも完全に固まっていた。

 

将は苦笑しながら頭をかく。

 

「まあ、見た目が若いってことで許してくれ」

 

 

そこへ博士がのんびりと口を開く。

 

「ふむ、25歳か。

 私はまだまだ40代なんだよね~」

 

「父さんはもう50でしょ!!」

 

エレの鋭いツッコミが飛ぶ。

 

「なっ!? エレノア、お前なぁ~」

 

研究所に笑いが広がり、

緊張していた空気が一気に和らいだ。

 

 

「ともあれ、将くん、ロボまるくん。

 君たちが来てくれたこと……心から感謝しているよ。

 これから共に、この島を守っていこう」

 

将は静かに頷き、ロボまるも胸を張る。

 

「はい。俺たちにできることなら、何でもやります」

 

「僕も……皆さんの力になれるよう、頑張ります」

 

博士は満足げに目を細めた。

 

「うむ……頼もしい限りだ」

 

 

 

一息ついたところでロゼに簡単な食事をご馳走になり、エレとアルが修復作業を再開している間。

スポロ博士の案内で、将とロボまるは研究所の一角にあるゲストルームへ通された。

 

簡素だが清潔な部屋。

ベッドが二つ、机と椅子、そして窓からは夜の海が見える。

 

将は手荷物を下ろし、ロボまるはベッドの端にちょこんと座った。

 

「……ふぅ。ようやく落ち着いたな」

 

「うん。今日は本当に色々あったね」

 

二人はしばらく黙り込み、

ようやく“自分たちの置かれた状況”を冷静に考え始めた。

 

将は机に置かれたランプを点け、スポロ博士から聞いた情報を思い返す。

 

「ロボまる……分かったことは一つだ」

 

「うん…」

 

「俺たちがいた時代から、約30年前の世界に来てしまった」

 

ロボまるは目を丸くする。

 

「やっぱり……そうなんだね」

 

「GPSも通信も繋がらない。

 地形も違う。

 そして何より――博士の名前だ」

 

ロボまるは小さく頷く。

 

「スポロ・ブラウン……

 僕たちの時代で協力してくれた人、でも、どうしてこの島にいるのかな?」

 

「わからん。でも今のスポロ博士は、まだ若い。つまり……ここは“過去”の世界だって事だ」

 

二人は静かに息を呑んだ。

 

将はベッドに腰を下ろし、窓の外の海を見つめながら言った。

 

「戻る方法は……今は分からない。

 でも、やるべきことははっきりしてる」

 

ロボまるも真剣な表情で続ける。

 

「うん、メイルギアの修復だね」

 

「ああ。そして――」

 

将は拳を握りしめた。

 

「ドクターゼロの侵攻を止めること。

 この島を守らなきゃならない」

 

ロボまるは力強く頷く。

 

「僕たちが来た意味は、きっとそこにあるかもしれないね?」

 

「そうだな。

 まずは明日……ガルーダの修復を手伝おう」

 

「うん!」

 

こうして――

綾月将とロボまるは、過去のルクーゼンブルクでの最初の夜を迎えた。

 

明日から始まる戦いを胸に抱きながら。

 

 

ルクーゼンブルクのどこか。

地図にも記されていない、海底に隠された巨大な秘密基地。

 

薄暗い制御室の中央で、

ドクターゼロは無数のモニターに囲まれながら椅子に座っていた。

 

そこへ、偵察型ロボポンが膝をつき、報告を始める。

 

「――以上が、スカルビーク部隊の戦闘記録です」

 

モニターには、

ファルシオン・エデンシスとロボまるが

スカルビークを圧倒する映像が映し出されていた。

 

しかし、ドクターゼロは眉一つ動かさない。

 

「……そうか。スカルビークは敗れたか」

 

偵察ロボポンは恐る恐る続ける。

 

「ど、どうなさいますか? 追加の部隊を――」

 

「必要ない。

 スカルビークは回収して修理を進めておけ」

 

「はっ!」

 

ドクターゼロは立ち上がり、

背を向けたままモニターを見つめ続ける。

 

その背中は、怒りも焦りも感じさせない。

むしろ――何かを待っていたような静けさがあった。

 

偵察ロボポンが退室し、

制御室にドクターゼロ一人だけが残る。

 

その瞬間――

 

「……出てこい。

 お前の言葉通りになったようだな?」

 

背後の影が揺れ、

そこから一人の男が静かに姿を現した。

 

黒いコート、銀の義手、

そして片目に埋め込まれた赤いサイバーアイ。

 

「――ノワール・ドゥ・ム・ザーン」

 

ドクターゼロが名を呼ぶと、

男は恭しく頭を下げた。

 

「ご機嫌麗しゅう、ドクターゼロ様」

 

ノワールは、

未来のドクターゼロが作り上げたサイボーグ戦士。

 

そして――

将とロボまるを“過去”へ飛ばした張本人。

 

ドクターゼロは腕を組み、

ノワールを鋭く見据える。

 

「最初は信じていなかった。

 未来から来たなどと、荒唐無稽な話だと思っていたが……」

 

モニターに映るファルシオンの姿を見て、

ドクターゼロは薄く笑った。

 

「どうやら本当だったようだな。

 わたしの野望を阻む者が現れる、と」

 

ノワールは静かに頷く。

 

「ええ。

 あの二人――綾月将とロボまるは、

 未来であなた様の計画を阻止した者たちです」

 

「……ふむ」

 

「ですが、ご安心を。

 あの二人は、わたしにお任せください」

 

ノワールの声は冷たく、

しかし確固たる自信に満ちていた。

 

ドクターゼロは背を向けたまま、

短く答える。

 

「――好きにしろ」

 

ノワールは静かに笑い、

影の中へと消えていった。

 

制御室に再び静寂が戻る。

 

ドクターゼロは王家の紋章が刻まれた古文書を手に取り、

低く呟いた。

 

「ルクーゼンブルク王家に伝わる“秘宝”……

 それさえ手に入れば、次元を越える力を得られる……」

 

モニターには、

王城の地図と軍の配置が映し出される。

 

「まずは――王家を掌握する。

 そこから全てが始まるのだ」

 

ドクターゼロの野望は、

静かに、しかし確実に動き始めていた。




NEXT…

30年前の世界に飛ばされた将とロボまるは過去のスポロと娘のエレノアに助けに受け、

大破したメイルギアの修理を急ぐ……。

しかし、暴走したロボポンの襲来を束ねていたのは過去のドクターゼロ。

さらには現代から送られたデビクロスとレクス・グラビタティオの参戦。

過去に起こった大戦の舞台となったルクーゼンブルク公国に眠る秘密とは……?

果たして、将とロボまるは大戦を乗り越えて現代へと帰還できるのだろうか!?


次回「大戦・俺達の帰還へのしるべ」
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