インフィニット・ストラトス2~人と機械の紡ぐ心~   作:サウス零

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EP17 大戦・俺達の帰還へのしるべ

将とロボまるが30年前の時代・ルクーゼンブルクに落ちてから、

すでに一週間が経っていた。

 

その間、島では小規模ながらも

ドクターゼロのロボポン軍団による襲撃が続いていた。

 

輸送隊の護衛、村の防衛、

迷子の子供の救助まで――

将とロボまるは研究所の仲間たちと共に

島のあちこちを駆け回った。

 

「将、右から来るよ!」

 

「任せろ!」

 

ロボまるの声に反応し、

将はファルシオンへと変身して敵を迎撃する。

 

ロボまるも技の切れが絶好調のようだ。

 

「よーしっ、今日も決めちゃおう、将!」

 

「おうよ、相棒!」

 

二人の連携は日を追うごとに冴え渡り、住民たちからは感謝の声が絶えなかった。

この短期間で活躍は多数の町に名声が伝わっている。

 

「ファルシオンさんだ!」

「ロボまる、ありがとう!」

「あなた達が来てくれて、本当に助かったよ!」

 

将は照れくさそうに笑い、ロボまるも笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

そんな日々が続き――

一週間後の朝が訪れた。

 

 

研究所の外では、

朝日が海を照らし、静かな波音が響いていた。

 

将はゲストルームのベッドから起き上がり、

伸びをしながら呟く。

 

「……一週間か。

 あっという間だったな」

 

ロボまるも隣で目をこすりながら起きる。

 

「だね、将。

 でも、まだまだやることは山積みだよ」

 

「そうだな。

 ガルーダの修復も、ドクターゼロの侵攻も……

 そして帰る方法も、まだ見つかってない」

 

ロボまるは真剣な顔で頷く。

 

「でもさ、将。僕たちなら絶対見つけられるよ。今までずっとそうだったじゃないか」

 

将は笑い、ロボまるの手を軽くハイタッチする。

 

「そうだな、お前が言う通り、きっと大丈夫だ」

 

二人は部屋を出て、研究所のメインフロアへ向かう。

 

 

 

「おはよー、将! ロボまる!」

 

エレが工具を抱えながら走ってくる。

 

「ガルーダの修復、今日で“動ける”ところまでいけるわよ!」

 

「本当か!?」

 

「ええ。」

 

エレからの朗報に喜びを浮かべる将。ロボまるも嬉しそうに頷く。

 

「おはようございます、将さん、ロボまるちゃんもおはよう~」

 

ロゼは朝食の準備をしながら微笑む。

 

「今日はミネストローネと焼きたてパンよ。

 いっぱい食べてね」

 

そこへ、アルは端末を抱えて興奮気味に近づく。

 

「将さん! 昨日の戦闘データ、すごかったんですよ!

 フェイタルアーマーのエネルギー波形が――」

 

「アル、朝から全力で語ると倒れるぞ」

 

「うっ……!」

 

割り込まれたエレが呆れたように肩をすくめる。

 

「ほら、また“いつものスイッチ”が入ってるわよ」

 

研究所に笑いが広がる。

 

だが――

その和やかな空気を切り裂くように、

警報が鳴り響いた。

 

ウウウウウウウ――!!

 

「な、何!?」

 

ロゼが驚いて顔を上げる。

 

博士――スポロが制御室から飛び出してきた。

 

「大変じゃ!

 王都方面に、ドクターゼロの軍勢が大規模展開を始めた!」

 

将の表情が一変する。

 

「王都……!」

 

ロボまるも緊張した声で言う。

 

「将、これ……本気のやつだよね」

 

「ああ。

 ついに動き出したか、ドクターゼロ……!」

 

将はロボまると目を合わせる。

 

「ロボまる、行くぞ」

 

「もちろんだよ、将!」

 

ロゼが心配そうに手を握る。

 

「将さん……気をつけて」

 

将は静かに頷いた。

 

「必ず戻る。

 そして――帰る方法も見つけないと」

 

博士が叫ぶ。

 

「将くん!

 君たちが行くことが、この国の希望だ。頼むぞ!!」

 

将は振り返り、力強く答えた。

 

「任せてくれ。奴らの野望は……俺たちが砕くっ!!」

 

 

 

 

 

ルクーゼンブルク城――

かつては王家の威厳と歴史を象徴する荘厳な城だったが、今は煙と火花が立ちこめ、廊下のあちこちでロボポンたちが倒れていた。

 

将とロボまるは、崩れた柱を飛び越えながら奥へと進む。

 

「ひどい……ここまでやるなんて」

 

ロボまるが拳を握りしめる。

 

「急ぐぞ。王の部屋はこの先だ!」

 

将が駆け出すと、壁にもたれかかるようにして辛うじて意識を保っている警備ロボポンを見つけた。

 

「おい、大丈夫か!」

 

将が駆け寄ると、ロボポンはかすれた声で答えた。

 

「……ドクターゼロ……黒いロボポン……四体……王の部屋へ……」

 

「四体……!」

 

ロボまるの表情が強張る。

 

「ありがとう、もう喋らなくていい。後は任せてくれ!」

 

ロボポンは微かに頷き、静かに意識を失った。

 

 

重厚な扉を押し開けると、そこには王と王妃、そして数名の側近がいた。

皆、緊張と疲労の色を隠せない。

 

「よく来てくれた、将殿、ロボまる殿……」

 

王は深く息を吐き、状況を語り始めた。

 

「ドクターゼロは……“黒きロボポン”四体を操り、城のロボポンたちを全滅させた。

 奴の目的は、王家の山の地下へ続く“封印の鍵”だ」

 

将は眉をひそめる。

 

「封印の鍵……?」

 

王妃が震える声で続けた。

 

「断りました……当然です。あれは王家に代々伝わる、決して開けてはならぬ扉……。

 しかし……ゼロは……王子と王女を……!」

 

ロボまるが息を呑む。

 

「人質に……!」

 

王は悔しさに拳を震わせながら言った。

 

「我らは……鍵を渡すしかなかった。

 ゼロは鍵を奪い、王子と王女を連れて王家の山へ向かったのだ」

 

将は拳を握りしめた。

 

「……くそっ……!」

 

ロボまるも怒りを隠せない。

 

「将、急がないと……!」

 

王は二人に向き直り、深く頭を下げた。

 

「頼む……!

 我が子を……そしてこの国を……救ってほしい……!」

 

将は迷いなく答えた。

 

「もちろんです。

 王子と王女は必ず取り戻す。

 そして――ドクターゼロの企みも止めてみせる!」

 

ロボまるも胸を叩く。

 

「僕たちに任せてください、王様!」

 

王の瞳に、わずかな光が戻った。

 

「……感謝する。

 ゼロは“黒き四体”以外にもロボポンを従えておる。

 どうか……気をつけてくれ……」

 

将は頷き、ロボまると共に踵を返す。

 

「行くぞ、ロボまる。

 王家の山へ――!」

 

「うん、将!」

 

二人は走り出した。

その先に待つのは、ゼロの本格的な罠か、あるいは封印された“何か”か。

 

だが、迷いはない。

二人の足音は、戦場へ向かう決意そのものだった。

 

 

 

城下町を抜け、将とロボまるは北東の方角を見据えていた。

 

王子と王女が連れ去られた先――

それは王家が代々守り続けてきた聖域。

 

“ルナ・クレストの丘”。

 

月の加護を受けたと伝わる神秘の丘であり、

その地下には王家の封印が眠るという。

 

「ルナ・クレストの丘……あそこにゼロが向かったんだな」

 

将が呟くと、ロボまるも真剣な表情で頷いた。

 

「急がないと……!」

 

その時だった。

 

空を切り裂く影が降下してくる。

 

「あれは……ガルーダか!」

 

飛行形態のグリフィード・ガルーダが優雅に着地する。

 

コックピットが開き、エレとアルが姿を現した。

 

「将! ロボまる! 修復、完全に終わったわよ!」

 

エレが胸を張る。

アルも端末を抱えながら興奮気味に続けた。

 

「エネルギー出力も安定しています! 空路ならルナ・クレストの丘まで一直線ですよ!」

 

「よし、これで――」

 

将とロボまるがガルーダへ駆け寄った、その瞬間。

 

――ズガァァァァン!!

 

空からビームが降り注ぎ、大地が爆ぜた。

 

「なっ……!?」

 

将がロボまるを抱えて飛び退く。

砂煙の中から、重力を歪めるような黒い巨影が姿を現した。

 

禍々しい球体コアを背負い、黒鉄の装甲を纏ったメイルギア。

 

レクス・グラビタティオが砂煙の中から姿を現す。

 

そのコックピットから、低く響く声が漏れた。

 

「……見つけたぞ、ファルシオン・エデンシス」

 

ノワール・ドゥ・ム・ザーン。

その声は静かで、どこか底冷えするような響きを持っていた。

 

さらにもう一体、漆黒のアーマーに包まれたロボポン「デビクロウ」が着地し、地面を砕く。

 

「こんな所にいやがったのか、ロボまるァ!!」

 

将とロボまるは驚く。

 

「ノワール……デビクロウ……!?

 お前らが何故この時代にいる!?」

 

ノワールは淡々と答える。

 

「それを語る必要はない……

 ただ、お前たちがここで終わるという事実だけで十分だ」

 

しかし、デビクロウが口を滑らせる。

 

「お前と戦うために、ゼロ様の力を借りたのさ!!

 時代なんてどうでもいいんだよ!」

 

ノワールは小さく笑った。

 

「ちっ……余計なことを言うな、デビクロウ」

 

将は歯を食いしばる。

 

「ここで足止めする気か……!」

 

ノワールはレクス・グラビタティオを構え、静かに告げる。

 

「では、かかって来るといい……

 ファルシオン・エデンシス」

 

デビクロウもナックルパーツを広げ、吠える。

 

「ロボまるァァ!! てめぇは俺がぶっ潰す!!」

 

将は振り返り、エレとアルに叫ぶ。

 

「二人とも、ガルーダで下がれ! ここは俺たちが食い止める!」

 

エレが叫ぶ。

 

「将、絶対に無事で戻ってきなさいよ!」

 

アルも続く。

 

「データは後で必ず取りますからね!」

 

エレとアルがガルーダで後退していく。

 

将は深く息を吸い、アーマーを展開する。

 

「サモンコード・フェイタル!!」

 

光が走り、白銀の装甲が形成される。

 

ロボまるも構えを取り、デビクロウと向き合う。

 

「将、僕はこっちをやるよ!」

 

「任せた、ロボまる!」

 

ノワールは静かに笑った。

 

「クックックッ……

 貴様には私を倒せぬよ……終わりだ……」

 

そして――

 

ファルシオン・エデンシス VS ノワール・ドゥ・ム・ザーン

ロボまる VS デビクロウ

 

二つの宿命の戦いが、ついに幕を開けた。

 

 

 

シオンはビームザンバーを手に持ち、構えを取る。

 

対するレクス・グラビタティオは、黒い重力場をまといながら静かに剣を抜いた。

 

その剣の名は「グラビブレイド」。

 

ノワールの声が低く響く。

 

「では……かかって来るといい……ファルシオン・エデンシス」

 

シオンは地を蹴り、一気に間合いを詰めた。

 

「ザンバーッ!!」

 

ザンバーに青白い光刃が展開、唸りを上げる。

だがノワールは微動だにせず、グラビブレイドを軽く振るった。

 

――ギィンッ!!

衝突した瞬間、重力が爆発したような衝撃が走る。

 

「ぐっ……!?」

 

ファルシオンの足元が沈み込んでいる。重力場が局所的に増幅されているからだ……。

 

ノワールは淡々と呟く。

 

「それで終わりかね……?」

 

シオンは歯を食いしばり、左腰のDDCを抜いた。

 

「ビームモード!」

 

圧縮ビーム弾が連射される。

しかしノワールは手首を軽く返し、ワームグレイバーを放つ。

 

黒い閃光が空間を“くり抜く”ように軌道を描き、ビームを飲み込んだ。

 

「なっ……!? 消えた!?」

 

「重力の穴だ……貴様の攻撃は届かぬよ……」

 

ノワールの声は静かで、冷たい。

 

将はすぐに切り替え、DDCの後部にビームザンバーを接続。

 

「接続――ドラグーンバスター!!」

 

中型銃へと変形し、高出力ビームを放つ。

 

――ドォォォォン!!

 

十数体の敵を吹き飛ばす威力の一撃が、レクス・グラビタティオへ直撃する。

 

爆煙が上がる。

 

「よしっ……!」

 

だが。

 

煙の中から、ノワールの声が響いた。

 

「クックックッ……貴様の攻撃は解析済み……私を倒せぬよ………こんどは私の番だ……。」

 

次の瞬間、重力の奔流が爆ぜた。

 

「うわっ……!!」

 

ファルシオンの身体が地面に叩きつけられる。さらに重力が何倍にも跳ね上がっていた。

 

ノワールはゆっくりとグラビブレイドを構え…。

 

 

重力拡散砲(グラビティ・ディスパージョン)――」

 

 

黒い光がレクス・グラビタティオの腕部から放たれ、周囲の地形ごと抉り取る。

 

シオンはプラズマリングを展開。

 

「守護円形!!」

 

リングが盾となり、重力弾を受け止めるが――

 

「ぐっ……重い……!!」

 

バリアが軋む。ノワールは淡々と歩み寄る。

 

「抗うだけ無駄だ。」

 

将は叫ぶ。

 

「まだだっ!!」

 

プラズマリングを二つ合わせ、広域バリアを展開。

 

「守護大円陣!!」

 

重力拡散砲を押し返し、将は跳び上がる。

 

「桜花――炸裂ッ!!」

 

電撃のステークを叩き込む。

だがノワールは胸部ハッチを開いた。

 

「遅い……」

 

内部の砲塔が展開し、黒いエネルギーが収束していく。

 

その形は――

 

『ブラックホール』

 

「ブラックホール・デストラクター!」

 

空間が歪み、光が吸い込まれていく。

 

「やばい……!!」

 

ファルシオンが引き寄せられる。

桜花炸裂の一撃も、重力に飲まれて消えた。

 

ノワールの声が静かに響く。

 

「終わりだ……ファルシオン・エデンシス」

 

将は必死に踏ん張るが、重力に抗えない。

 

「くっ……このままじゃ……!」

 

 

離れた場所で避難していたエレとアル。

二人はガルーダのコックピット内で必死に操作を試みていた。

 

「何とか……何とかできないの!?

 シオンが……!」

 

エレは焦りながらコントロールパネルに手を伸ばす。

 

「ダメだエレ!もう僕らにできることは――」

 

アルが止めようとした瞬間。

 

「できることはあるでしょ!!

 諦めるなんて……絶対にイヤ!!」

 

怒鳴られたアルは驚いてのけぞり――

 

――ガンッ!!

 

そのままガルーダの上面に頭を激突した。

 

「いったぁぁ……!」

 

エレは呆れたようにため息をつく。

 

「もう……何やってんのよ……」

 

その時。

 

コックピットの床に、小さな箱が転がってきた。

 

「……何これ?」

 

拾って開けると、中には――

 

野外ライブで使われるワイヤレスマイク。

 

エレは思わず手に取る。

 

「なんでこんなものが……?」

 

不思議と胸の奥がざわつく。

興味が沸き上がり、気づけばマイクを装備していた。

 

すると――

 

エレの動きが止まった。

 

目が見開かれ、何かに“同期”するように静止する。

 

アルは慌てて振り返る。

 

「エ、エレ……?

 どうしたんだ……?」

 

エレは答えない。

 

ただ、マイクを握ったまま――

ガルーダの奥から響く“何か”を感じ取っていた。

 

 

 

 

その頃、別の戦場。

 

ロボまるとデビクロウは何度も激突を繰り返し、

互いに限界を突破していた。

 

そして――

 

第二形態へ進化。

 

ロボまる → ロボマルス

デビクロウ → デビクロス

 

デビクロスはビーム剣を生成するクローで翻弄し、

ロボマルスはソフト技で対抗する。

 

「ファイヤ・ナックル!!」

 

「ウインド・スラッシュ!」

 

「ナパーム・ナックル!!」

 

「ソニック・クロー」

 

「アクア・ナックル!!」

 

「ひえん・クロー!!」

 

「スチームナックル!!」

 

「デス・ストーム!!」

 

炎と冷風が交錯し、地面が溶け、白煙が上がる。

 

デビクロスは笑う。

 

「ロボまるァァ!!

 もはや第二形態になっても俺の方が上だろォ!!」

 

ロボマルスは息を荒げながらも構え直す。

 

「そんなこと……ない!!

 僕は……将を助けるんだ!!」

 

その時――

 

デビクロスが叫んだ。

 

「だったら、見せてやるぜ!!俺の……!」

 

クローと盾を放り投げる。

 

「新たなる進化だ!!!」

 

デビクロスの身体に光が宿り、

装甲が黒く輝き、形状が大幅に変化する。

 

その姿は――

ロボまるが知る“デビクロア”とはまったく異なる。

 

黒い騎士のようなシルエット。

銃と剣を融合したような武装。

背中には黒いマントのようなエネルギー翼。

 

黒い銃装騎士――デビグロリアス。

 

「どうだ、俺の最強の進化は!?」

 

ロボマルスは震えながらも叫ぶ。

 

「だからって、負けられないんだ!!」

 

ロボマルスは懸命に先手攻撃を仕掛けるが――

 

その動きは、まるで別次元。

 

ロボマルスの拳は一度も当たらない。

 

「遅いんだよ、ロボまる!!」

 

デビグロリアスの剣と槍の連撃が炸裂し、

ロボマルスは吹き飛ばされる。

 

 

「ぐあっ……!」

 

地面に転がり、何とか起き上がるが――

ダメージがかさみ、形態維持ができず、

 

ロボまるへ戻ってしまう。

 

デビグロリアスは笑いを堪えながら歩み寄る。

 

「ようやく……ようやく念願の雪辱が果たせる……終わりだ、ロボまる……!」

 

黒い剣が振り上げられる。

 

そして――

デビグロリアスの一撃が放たれた瞬間。

 

辺りから音楽が流れてきた。

 

重力場を震わせるような、強い旋律。

 

そして――

 

聞こえてきたのは、“歌声”だった。

 

ロボまるは目を見開く。

 

「え……歌……?」

 

デビグロリアスも動きを止める。

 

「なんだ……この声……?」

 

その歌声は、

ガルーダの方向から――

まるで空気そのものを震わせるように響いていた。

 

 

 

時間は少しさかのぼる。

 

ワイヤレスマイクを装着した瞬間――

エレの意識はふっと途切れた。

 

「エレ! エレ! エレっ!!」

 

アルの必死の呼びかけで、ようやくエレは目を開いた。

 

「……アル? 私どうしてたの?」

 

「そのマイクを付けたら君の意識が無くなっていたんだ。

 急に固まって……心臓止まるかと思ったよ」

 

エレはマイクを見つめ、ゆっくりと立ち上がる。

 

「そう……アル、見つけたよ」

 

「見つけたって、何を?」

 

エレは静かに微笑んだ。

 

「このマイクで、“私”ができる――

 とっておき よ!」

 

その言葉にアルは目を丸くする。

 

「とっておき……?」

 

エレはガルーダの外へ出て、少し開けた場所へ歩いていく。

その姿は、まるで何かに導かれているようだった。

 

「エレ……?」

 

エレは立ち止まり、ゆっくりと目を閉じた。

 

すると――

 

 

 

Sing a Song 『Esperanto(&Freesia)』(ロックマンゼロ4より)

 

 

 

辺りからメロディが奏で始めた。

 

それは、まるで空気そのものが震え始めるような旋律。

 

重厚で、切なくて、力強い。

 

 

戦場の空気を一変させるような、魂を揺さぶるメロディ。

 

アルは息を呑んだ。

 

「え……音楽……?

 ガルーダが……流してるのか……?」

 

だが違う。

 

音の中心は――

エレ自身だった。

 

彼女の声が、メロディに重なる。

 

震えるような、しかし芯のある歌声。

戦場の空気を切り裂くように響き渡る。

 

その瞬間――

 

 

ガルーダの装甲が淡く光り始めた。

 

「えっ……!? ガルーダが……光ってる……!」

 

アルは驚愕して叫ぶ。

 

ガルーダの内部で、未知のシステムが起動する。

 

 ― 歌声同期機構 (SING A SONG-LINK SYSTEM) ― 発動!!

 

ガルーダの目が輝き、翼が大きく広がる。

 

「ギャアアアアアアアアッ!!」

 

その咆哮は、まるで“覚醒”の叫び。

 

エレの歌声に反応し、ガルーダの奥底に眠っていた機能が解放されていく。

 

装甲が変形し、翼のエネルギーが増幅。

 

鳥獣形態となったグリフィード・ガルーダ。

 

ガルーダの身体が、まるで“音”を纏うように輝く。

 

アルは震える声で呟く。

 

「エレ……君の歌が……ガルーダを……

 覚醒させてる……!」

 

エレは歌いながら、静かに目を開いた。

 

その瞳は、まるでガルーダと同じ光を宿していた。

 

「お願い、ガルーダ……

 シオンとロボまるを……助けて……!」

 

エレからの心の声にガルーダは大きく翼を広げ、空へと舞い上がる。

 

その翼から放たれる光は――

重力場を切り裂くような“音の波動”を身にまとって……。

 

 

 

 

デビグロリアスの剣がロボまるへ振り下ろされる瞬間――

歌声が戦場全体を包み込んだ。

 

「な……なんだ、この声……!?」

 

そして――

シオンを飲み込もうとしていたブラックホールの重力場が、わずかに揺らいだ。

 

ノワールの声が低く響く。

 

「……これは……?重力場が……乱されている……?」

 

ガルーダの光が、戦場へ向かって一直線に降りてくる。

 

エレの歌声と共に――。

 

 

 

ロボまるは目を見開く。

 

「この声はエレさん……?

 エレさんの……歌が……?、あっ!これってまさか?」

 

ロボまるは今ボディに感じる力の感覚に覚えがあった。

 

胸の奥に走る震え。

身体の内部から湧き上がる“力の感覚”。

 

 

ロボまるはそれを知っていた。

 

 

――以前の戦い。

 

 

五人の歌姫が奏でた歌の調べで、世界の崩壊を防いだあの奇跡。

 

 

 

「これなら……いける!!」

 

ロボまるは立ち上がり、拳を握りしめる。

 

「トランスコード――『カスタまる』!!」

 

光がロボまるを包み、追加装甲が展開する。

ロボマルスよりもさらに強化された姿――

カスタまるが誕生した。

 

デビグロリアスは舌打ちする。

 

「ちっ、カスタまるになりやがったか……

 だけど、この俺に勝てると思うなよ!!」

 

二人は激突する。

炎、風、衝撃、黒雷――多彩な技が交錯し、戦場が揺れる。

 

 

シオンの方に移り、ブラックホールの重力場に翻弄されていたシオン。

その身体が引きずり込まれようとした瞬間――

 

空から光が降りてきた。

 

「ギャアアアアアアアアッ!!」

 

鳥獣形態のグリフィード・ガルーダ が重力場を切り裂き、シオンを救い出した。

 

「ガルーダ……!」

 

ガルーダの翼が音の波動を纏い、重力を無効化する。

 

そして――

ガルーダの目が光り、シオンは頷き、叫ぶ。

 

「ソウルユニオン!!」

 

光が二人を包み、シオンとガルーダが合体する。

 

「チェンジ!!――『ファルフィード』!!!」

 

ファルフィード が誕生した。

 

翼を広げたその姿は、まるで“光の戦神”。

 

 

突然の重力消滅に、ノワールはわずかに目を見開いた。

 

「……これは……?

 歌声の波動……?

 重力が……乱されている……?」

 

しかし、すぐに静かに構え直す。

 

「だが……まだ終わりではない……」

 

レクス・グラビタティオが重力場を再展開し、攻撃を開始する。

 

だが――

 

ファルフィードは高機動性でそれを回避した。

 

「そこだ!!」

 

シオンの飛び蹴りが激烈に炸裂し、

レクス・グラビタティオが派手に吹き飛ぶ。

 

ノワールの声が揺れる。

 

「ぐっ……!」

 

ファルフィードは空中で構えを取り、大型キャノン砲を召喚する。

 

「スパイラルメテオキャノン!!」

 

砲身が展開し、ターゲットスコープが起動。

 

「ターゲット・ロックオン!!」

 

照準がレクス・グラビタティオを捉える。

 

「スパイラルメテオキャノン、GO!!」

 

次の瞬間――

 

――ドォォォォォン!!!

 

高エネルギー砲が直撃し、

大爆発が戦場を揺らした。

 

黒煙が空へと昇る。

 

やがて煙が晴れ――

レクス・グラビタティオの姿が露わになる。

 

装甲は深く抉れ、重力コアが露出し、

重力場は不安定に揺らいでいた。

 

ノワールは静かに呟く。

 

「……この私が……ここまで……」

 

そして、決断する。

 

「撤退するしかないようだな……

 だが、覚えておけ……ファルシオン……

 次は……必ず仕留める……」

 

レクス・グラビタティオの重力場が収束し、

黒い空間が開く。

 

ノワールが消えた直後――

戦場に残った闇の騎士が、低く笑った。

 

「少しは面白くなってきたじゃねえか!!」

 

デビグロリアス の銃槍武器が展開。

強力なエネルギーがチャージされていく。

 

カスタまるも両腕のパーツを展開し、構えを取る。

 

「これ以上、君とバトルする気はないよ……

 この島の危機を助けるんだ!!」

 

チャージされたエネルギーがカスタまるの右手に集中する。

 

デビグロリアスが叫ぶ。

 

「喰らいやがれ!!デス・ストーム・クラッシャー!!!

 

カスタまるも叫ぶ。

 

「フェニックス・ナックル!!!」

 

互いの技が激突し、

光と闇が交差する。

 

――そして倒れたのは、デビグロリアス。

 

「ぐっ……そんな、進化したこの俺が?」

 

カスタまるは静かに言う。

 

「確かに君は強くなったよ……

 でも、今の君と僕の戦う理由が違うんだ。」

 

「この野郎!! 正義の味方気取りかよ!!!」

 

その瞬間――

デビグロリアスの身体から光の粒子がこぼれ始めた。

 

「ちっ、時間切れかよ……」

 

デビグロリアスがこの時代に存在できるのは、

時間制限があった のだ。

 

カスタまるは静かに言う。

 

「事が終わったら気が済むまで相手をしてあげる……

 だから、今は大人しくしていて」

 

「その言葉、忘れるんじゃねえぞ!!ロボまる!!!」

 

デビグロリアスはデビクロウへ戻り、

転移するように消えていった。

 

 

 

一息ついたところで、

ファルフィードがロボまるの元へ合流する。

 

さらに――

大型プロペラ機ロボポンが着陸。

 

そこから降りてきたのは、エレ。

 

ファルフィードが尋ねる。

 

「エレ……その歌の力、どこで?」

 

エレはワイヤレスマイクを見せる。

 

「ガルーダの中で拾ったの。

 これを付けたら……使い方や歌詞が頭に流れ込んできたの」

 

ファルフィードは首を傾げる。

 

「そんな装備……俺は知らないぞ……?」

 

その時、会話に割り込む声があった。

 

「失礼、ほかにも話をしたいところですが……」

 

カスタまるが振り向くと――

そこに立っていたのは、見覚えのあるロボポン。

 

「ノロイダーさん!?」

 

だがロボポンは首を振る。

 

「ノロイダー?

 いえ、私の名は クルセイダー

 王国のロボポン防衛隊長を務めているロボポンです」

 

姿形は似ているが、

青を基調とした清廉な装甲。

禍々しさは一切ない。

 

カスタまるは理解する。

 

「……別人なんだね」

 

エレが説明する。

 

「城に父さんが合流して、

 動けるロボポンを修理してくれたの。

 クルセイダーさんをはじめ、数体のロボポンが応援に来てくれたの」

 

クルセイダーは深く頷く。

 

「皆さんの戦い、拝見しました。

 王子と王女の救出――

 我々も全力で協力いたします」

 

戦場に吹く風は、

先ほどまでの重力の嵐とは違い、

どこか希望を感じさせるものだった。

 

戦場の重力が静まり、歌声の余韻が風に溶けていく。

ファルフィード、カスタまる、エレ、アル、そしてクルセイダーら防衛隊ロボポンが一箇所に集まった。

 

エレは胸に手を当て、強い瞳で前を見据えた。

 

「みんな揃ったね……

 じゃあ――“ルナ・クレストの丘”に行こう!」

 

その言葉に、カスタまるが力強く頷く。

 

「ハイ!!」

 

ファルフィードはエレに向き直る。

 

「君も行くのか?」

 

エレは当然だと言わんばかりに笑った。

 

「当たり前でしょ。

 それに……教わった歌、まだ“あと2つ”残ってるんだから」

 

アルが遅れて駆け寄ってくる。

 

「エレ……」

 

彼女の頑固さをよく知るアルは、ため息をつきながらも微笑む。

 

「こうなった時のエレはテコでも動かないよ……

 それに、君の歌で生まれた力を僕は間近で見た。

 無理に止めるなんてできない……僕も一緒に行く。

 後方支援に徹するよ」

 

その言葉に、エレは嬉しそうに頷いた。

 

すると、クルセイダーが一歩前に出る。

 

「エレ殿、アル殿。

 あなた方の安全は、私と防衛隊が守ります。

 王国の名にかけて」

 

エレは胸に手を当て、真剣な瞳で言う。

 

「私も……この島の人やロボポン達を助けたいの。

 お願い、行かせて」

 

その言葉に、ファルフィードはもう断れなかった。

 

「……わかった。

 一緒に行こう、エレ」

 

エレは笑顔で頷く。

 

ファルフィードが先行し、空へ舞い上がる。

 

その後ろには――

エレ、アル、カスタまる、クルセイダーら防衛隊ロボポンを乗せた

大型プロペラ機ロボポン が続く。

 

目的地はただ一つ。

 

“ルナ・クレストの丘”

 

王子と王女が囚われ、

ドクターゼロが“封印の鍵”を持ち込んだ禁断の地。

 

風が吹き抜け、空が開ける。

 

光の騎士ファルフィードが先導し、

仲間たちを乗せた機体がその後を追う。

 

島の運命を決める戦いが――

今、始まろうとしていた。

 

 




NEXT…

ノワールとデビクロウの猛攻はエレノアの歌声とおかげで退けたシオンとロボまる。

王国のロボポン達が助っ人に加わり、王家の山「ルナ・クレスト」へと到着。

待っていたのはドクターゼロが率いるロボポン軍団。

そして……“黒きロボポン”

果たして、二人はこの脅威を打ち破り。元の時代に戻れるのだろうか?


次回「帰還・俺達の(ザビアツタ)

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