八幡に天の鎖もどき持たせて、シンフォギアに放り込んでみた   作:シャルルヤ·ハプティズム

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 早速感想頂きましたありがとうございます。現時点では奏加入前ですね。

 UAがもう1200行ったんですよこの作品。本当にありがたい。シンフォギアはXVで完結しました(続編ありそう)けど、今週末の生放送とかもあるし、まだまだ熱が続きそうですね。


ep2 ゴクラク浄土

 

 

 認定特異災害、ノイズ。人を炭素の塊に変えるバケモノ。

 かつて中国でこれを研究していたある学者は、ノイズはあらゆる生命体の中でも人間を優先的に狙うのではないか、という仮説を立てた。というのも、かつて中国でノイズが大量発生した際、発生地点から付近にあったペットショップの動物にほとんど被害が無かったからである。

 これには映像の証拠があり、ショップのスタッフが炭に変えられた後、ノイズが箱の中の小動物を狙わずに、店外にいた歩行者を狙った姿が監視カメラに捉えられたからである。

 この映像と仮説は、マスコミに取り上げられ瞬く間に中国内外に広まった。

 

 

 

 

 

 長野県長野市、皆神山。

 

 そこは今、静かな地獄と化していた。土曜日の行楽地。本来なら人が溢れるそこは、黒い塵で溢れていた。塵が巻き上げられ、風が黒く染まる。周辺を、どこかの店から流れてくる流行りの曲が流れていた。

 

 シンフォギアを纏った蒼い髪の少女、風鳴翼は、血が出るほど唇を噛み締め、生存者を探していた。

 

「誰かいませんか! 助けに来ました! 返事をしてください!」

 

 初任務だと言うのに、己を奮い立たせて地獄を歩く少女は、これまでに既に40を数えるノイズを切り伏せていた。彼女の纏う衣と、握る日本刀が、それを可能にした。

 

 翼は、自分以外の生命反応が存在しない黒い世界で、気が狂いそうだった。誰でもいい。ノイズでもいいから出て来て欲しいと思えるほどだった。

 そんな時だった。

 

『翼ちゃん! 生命反応を確認! 2つ!』

 

 オペレーター、友里あおいの叫びだった。翼は救われたような気さえした。

 

「どこなの!」

 

 待ちわびた報せに、翼は焦ると同時に気分を取り戻した。

 

『翼ちゃんの所から、2km南西! ·······あっ!?』

 

 友里の吐息に、走り出した翼はすぐに立ち止まった。

 

『今の生命反応の350m南にノイズの反応確認! 数4!』

 

「急がなきゃ······!」

 

『八幡君も向かってる! 連携して!』

 

「はい!」

 

 緊急事態ではあるものの、同じく戦闘員で歳も近い八幡と合流出来ることで、翼は少しだけ余裕を取り戻せた。

 

 

 絶対に助ける。彼女の初任務は、誰も意図しない程に重いものだった。

 

 

 

 

 

 

 

『八幡君は、北東1.5kmの要救助者を! 多分、翼ちゃんより先に着く!』

 

 八幡はインカムに届く新人オペレーター、藤尭朔也の声を脳に叩き込みながら、走っていた。

 

 翼とは逆側に配置された八幡は、翼と同じ世界を見た。それでも、八幡は翼より落ち着いていた。歳下の女の子に負けてはいられない、という小さなプライドの賜物だ。

 しかし、その一方で翼以上に強い焦りも覚えていた。生存者の南にノイズが確認された以上、八幡は直進しているとノイズと鉢合わせする可能性が高かった。八幡はシンフォギアを持っていない。つまり、翼ナシではノイズの位相差障壁を突破出来ない。

 

 

 八幡の持つライフルは、Assault Device Weaponという櫻井了子が開発した、シンフォギアが稼働時に放出するエネルギーを蓄積し、放出する機構を持つ兵器である。ノイズには通常兵器よりも効果があることは運用試験で実証されたが、シンフォギアとの連携を前提としたものだった。

 余談だが、ライフルだけでなく拳銃タイプもある。

 

 

「藤尭さん、生存者2人は動いてますか? ノイズを迂回したい」

 

『生存者は北に動いてる。ただ、あまり早くない。登山道から外れてて映像がないんだけど、怪我人か子どもなのかも·······』

 

 藤尭は自分の推測を口にしていくウチに、語尾が弱くなっていった。八幡は多少の頼りなさを覚えたが、口には出さなかった。

 

『藤尭! 悲観的になるな!』

 

『は、はい!』

 

 弦十郎の怒鳴り声と、藤尭の裏声が八幡の耳に突き刺さった。キーンという音を堪えて、八幡は捲し立てた。

 

「ノイズが追い付くまでの時間と俺追い付くまでの時間、出せますか?」

 

 計算能力に長けた人材として司令の弦十郎がどこかから拾ってきた新人オペレーターは、慌てて自分の能力を発揮する。

 

『えぇっと······前が278セコンド、登山道から外れてるのも考慮すると、八幡君が追い付くのは251セコンド! 迂回ルートも転送完了!』

 

「ギリギリじゃないすか!」

 

 八幡はギリギリの時間と自分の足を恨んだが、そんなことを考える余裕も無くしそうだった。だが、余裕が無くなりそうなのは藤尭も同じだ。

 

『八幡君の足なら追い付く! 急いで!』

 

「分かりましたよ全く!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 少女───天羽奏は、不慣れな山道をよろよろと歩いていた。考古学者の親を持つ彼女は、妹共々親の仕事現場の見学に来ていた。今日は、一般人も参加出来る大学主催のイベントがあったのだ。その準備を手伝う代わりに自分と妹を、母にねだって参加者に捩じ込ませた奏は、あの日に戻りたいと半泣きで考えていた。

 

 妹は、泣くことも忘れたのか、無表情のまま自分に手を引かれている。黒い砂の前にへたり込む妹の手を引いて逃げ出したものの、逃げる途中で足を挫いて、走ることも出来ずにふらふらと歩いていた。

 

 奏は、ノイズの大軍がじわりじわりと押し寄せる様を一瞬だけだが見てしまった。泣きたかった。それでも、自分はお姉ちゃんだから、と言い聞かせて、歯を食いしばって、それだけを考えて足を動かした。

 

 

「いつまで、逃げれば────」

 

 いいんだろ······。そうボヤきそうになった瞬間、奏は、唐突に無重力感に包まれた。

 

「え」

 

 次に襲いかかるのは、重力。妹の手を握るのに集中しすぎて、足下が見えていなかった奏は、足を滑らせて滑落した。

 

「あ、ぎっ、」

 

 突発的に体を覆う痛みで呻くこと以外何も出来ず、数秒転がり続けた奏は、全身の痛みに耐えながら、目を開けた。

 

 

    ノイズ(バケモノ)がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 余裕もなく指示されたルートから逸れないように必死に走り続けた八幡は、遠目にノイズを視認した。

 

(予想より速い······!)

 

 単独で仕掛けるべきではない。そう分かっていながらも、ライフルを握る手に力が入った。焦る気持ちを押さえて迂回しようとした八幡は、ノイズの進行方向に女の子が倒れていることに気付いた。

 

「わぁぁああああ!」

 

 次を考える前に、八幡は叫びながらノイズに向かってライフルを撃っていた。ビームは、位相差障壁によってノイズの体をすり抜け、女の子の頭上を通り抜けて、どこかへ飛んでいった。だが、八幡に気付いたノイズは方向を変えた。

 

「今ぁッ!」

 

 八幡は全速力でノイズの脇を通り抜け、女の子を抱えてそのまま離脱した。

 

「翼と合流します!」

 

『いや!』

 

 次の瞬間、蒼い斬撃が宙を走りながら、3体のノイズを両断した。斬撃は、そのまま数本の木を切り倒して消滅した。

 

「────っ! 翼か!」

 

 八幡は、目の前に降り立った歳下の少女がとても頼もしく思えた。少しだけ、眩しさを覚えたほどだ。

 

「翼、助かった······」

 

「遅くなってごめんなさい······ひっ!?」

 

 だが、そんな八幡と対象的に、翼は振り向くと同時に悲鳴を上げて後ずさった。

 

「なんだよ······?」

 

「そ、それ······」

 

 八幡が翼の豹変を訝しむと、翼は手を震えさせて、八幡の抱える、失神した少女を指差した。

 

「この子が────」

 

 八幡は、少女を見下ろして、そして固まった。

 

 

 

 

 少女·······天羽奏は、気絶してもなお妹の手を握っていた。握り締めていた。

 

 

 

 

 手首から先は、なかった。

 

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