八幡に天の鎖もどき持たせて、シンフォギアに放り込んでみた 作:シャルルヤ·ハプティズム
章機能使うの初めてなんですけど、なんか不味いだろこれ、とか思ったことあると、言っていただけると嬉しいです。
ep7 比企谷八幡①
「司令、避難状況は?」
『順調に進んでいる! 3人は、ノイズを駆除しつつ逃げ遅れた市民の捜索と保護だ!』
「了解」
『『了解!』』
2039年11月。寒さが本気を出し始めた頃。
特異災害対策機動部二課は、相も変わらずノイズ処理に精を出していた。一つ変わったことと言えば、ガングニールのシンフォギア······それを装着する天羽奏が実戦投入されるようになったこと。
そんな中、八幡は新たな任務を課されていた。
(パッと見、弦十郎さんの言うことには素直に見えるが······)
スコープから目を離せば、八幡の視力は遠くにいる奏の戦闘による爆発を捉えた。
八幡は、奏の監督───監視とも言うべき───という任務の真っ只中だ。
そんな八幡から見て、奏の戦闘は一言で言えば、粗暴だ。ノイズを倒すために、周囲にも大きな被害を出している。側のコンビニなど、店内まで戦闘の余波でズタズタだ。予算引っ張ってくるのだって簡単じゃない、と以前起きた似たような惨状を見た誰かがボヤいていたのを八幡は思い出した。
奏だって緒川から戦闘訓練を受けてはいるが、八幡や翼のように長期間というわけではないため、素人くささが付き纏う。高いポテンシャルを持っているのは確かだが、それを、足りない技術やノイズへの復讐心で無理やり振り回しているようにも見えた。奏は身の丈程の大槍を振るい戦うため尚更だった。当然、傍で戦闘している翼とも連携出来ていない。翼が一方的にフォローに回っているのが現状だ。
だが、奏が実戦投入レベルまで到達したおかげで良かったことも多くある。使えるシンフォギアが2つに増えたため、単純に考えて戦力は倍近くに跳ね上がった。戦闘を展開出来る範囲も、八幡と翼だけだった時に加えれば、確実に拡大している。
更には、それ以外にもある。
「エンキドゥ」
八幡が名を呼ぶと、神秘さを宿す鎖がコンクリートの壁から飛び出して、接近してきたノイズを貫いた。ノイズは塵になって風に流されていく。
奏がシンフォギアを纏うようになり、二課は八幡に対して、フォニックゲインの大幅な供給が出来るようになっていた。エンキドゥ単体のフォニックゲイン生成能力では、八幡が戦闘に出られる程のフォニックゲインを確保出来ない。長時間の戦闘は、八幡の肉体がため込めるフォニックゲインの量に限界があるため、AD兵器を手放すわけにもいかないが、いざとなれば八幡が、短時間なら翼と同じラインまで出張ることが可能になった。
「友里さん、あとノイズは」
『ノイズの反応は今ので最後ね。八幡君、お疲れ様』
「いえ······」
オペレーターから帰投OKの合図が出た。だが、八幡は二課本部とは逆方向に歩いていく。
『ダメだよ、こんなに周りを破壊しては!』
『命令守ってるしノイズは殺せてんだ、それでいいだろ!』
『ダメだよ!』
インカムから、こうも喧騒が聞こえてきて無視出来ないくらいには、八幡も人間的な人間だ。なにより翼を放ってはおけなかったのも事実。
八幡は、奏の監視を担うのが自分一人ではないことを、この時ばかりは不幸中の幸いだといるかも分からない神に感謝した。
「八幡君は奏ちゃんのこと、どう思う?」
現場から引き上げ、報告も済んだ一頃。休憩室でマッ缶をちびちび煽っていた八幡は、友里に声をかけられた。彼女の隣には、藤尭もいる。
「色んな人から聞かれますけど······。正直関わりたくないです」
「こら」
友里が揶揄うと、八幡は苦い顔をした。
「学生生活だと、気さくで男子にも女子にも人気って報告来てるけど······八幡君は、そういうタイプ苦手かい?」
藤尭のもっともそうな疑問に、八幡は、うっ、と呻いた。藤尭自身そういったタイプが得意というわけではないが、友人にはそういうタイプも普通にいる。
「······俺は、ここでの天羽奏しか知らないんで」
「なるほど」
八幡には、ノイズに血走った目と殺意を向けて出撃する天羽奏以外を直に目撃したことがない。彼女の入院中、現実を諦めた目を見たことはあったが、同一人物だとも思えなかった。緒川から聞いた話では、奏が退院する直前に、弦十郎が彼女を訪ねたらしい。弦十郎が何を言ったかは分からないが、今の奏になるに十分なことを言われたのだろう。
そんな時、八幡のケータイが鳴った。友里と藤尭のも同様だ。
「呼び出し······」
休憩時間は、以外と短かった。
「······緊急で集まってもらった理由は他でもない。新しい任務が入った」
会議室では、各部署の長や作戦に関わる人員が席を埋めていた。八幡は一番後ろの席に座ったが、自分が呼ばれて翼や了子がいないことが気にかかった。人数的には、それなりに大規模な作戦のはずだ。もちろん、そんな八幡の憂慮も他所に会議は始まった。
「緒川」
「はい」
弦十郎の指示で緒川がタブレットを操作すると、大型のスクリーンには地図が映った。名古屋の湾岸部だ。
「来月の2日から3日にかけて、聖遺物が密輸入されると、調査部の報告があった」
弦十郎の話によると、東南アジア系のマフィアが日本への進出を狙って、聖遺物を密輸入するというのだ。近年衰退の一途を辿っている指定暴力団は、海外のマフィアに頼ってでも勢力の維持を図りたいのだという。実際、既にその予兆はあり、3年前まで減少傾向だった違法薬物の検挙数が、ここ2年は全国的に右肩上がりに転じた。表向きは明らかになっていないが、裏で銃火器の売買が活発化しているという話もあった。
「我々は、警察庁と連携して聖遺物を確保、及び容疑者の一斉検挙を試みる」
スクリーンには、この密輸に関連すると思われる人物がリストアップされた。どう考えても異例尽くしの事態だったが、弦十郎が5年前まで公安警察官だったことを思い出した。
「これに際して、調査部から5名、及び戦闘班から2名を選出した臨時の戦闘部隊の設立も決定した。この隊には、作戦時のノイズ出現に備えてもらいたい」
八幡は、漸く自分が呼ばれた合点がいった。同時に、翼や了子がいないことにも納得した。つまりは
明後日に、当日の各員の待機場所が改めて指示されることを弦十郎が説明して、会議は終了した。
会議後、八幡は一人残り、指令書を見返している弦十郎を訪ねた。
「
「どうした」
八幡は、懐のAD兵器を会議机に置いて、弦十郎に尋ねた。
「何で俺を呼んだんですか? 別に具体的な話をしなくても、待機命令出すだけで良かったでしょ」
八幡が疑問をぶつけると、弦十郎は八幡の顔······正確には右目を指差した。
「八幡、お前今義眼付けてないだろう?」
「そうですね」
4年前の事故で右目を摘出した八幡だが、普段は、了子も所属する研究グループが開発した試作型の義眼を右眼孔に嵌め込んでいる。視力機能があるだけでなく、AD兵器のスコープとも連動出来る優れものだ。だが今は、戦闘後の調整と洗浄のために外していた。
八幡は白い眼帯に軽く触れ、そういうことかと納得した。
「もう一つ聞きたいんですけど、何で天羽奏を? あいつの戦いじゃ市民にまで気付かれかねないと思うんですが」
弦十郎は顎を擦りながら、そうさなと肯定した。
「考えはあるさ。お前も、協力してくれるだろ?」
弦十郎の期待に、八幡は場合によりますと返した。
翌々日。
「なんか、想像してたのと違う······」
「映画ぁ?」
「俺らしいとは思わないか?」
年少の戦闘員3人は、弦十郎の自宅のシアタールームにいた。