IS×GUNDAM~シン・アスカ覚醒伝~   作:パクロス

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『00』のロックオンを間違えてロックマンって呼んでるやつ結構いたなあ、と今更ながらに思い出す私。しかしマクロスとかアクエリオンEVOLとかガンダムAGEとか最終回が超急ぎ足で終わらせてる気がしてなんかなー、って思いました。
てなわけでPHASE-03どうぞ。


PHASE-03:怒れる瞳、悲しき雄叫び

 クラス代表決定戦当日、シンと一夏、そして特別に箒がISアリーナピットで待機していた。

 

「なあ、箒?」

 

 ISスーツに着替えた一夏が唐突に箒に声を掛ける。

 

「なんだ?」

「俺にISのこと教える話って一体どうなったんだ?」

「............」

「目 を そ ら す な」

 

 どうやらこの二人、あれからずっと剣道の稽古のみをしていた様である。

 

「お前ら今まで何やってたんだ?」

 

 一夏達の話を聞き、同じくISスーツ姿のシンが呆れ気味に話に割り込む。

 

「し、仕方がないだろう。お前の専用機はまだ届いてないのだから」

「でも知識とか基本的なこととかあっただろう」

「大体、専用機がないなら訓練機を借りても良かったんじゃないのか?」

「........................」

「「目 を そ ら す な 」」

 

 今度は一夏とシンが同時に言う。箒に頼むのではなかったと今更ながらにシンは後悔する。とは言え今はそんなことを言ってる場合ではない。現在肝心の一夏の専用機が未だに届いていないのだ。

 

「なあ、これで俺のISが間に合わなかったらどうなんだ?」

「訓練機を使うか向こうの不戦勝だな。どっちにしろお前が負けるのは確実だな」

「どうすりゃいいんだよ............。」

 

 シンの説明を聞いて、一夏は思わずうなだれてしまう。

 

「だ、大丈夫だ! 一夏なら勝てる!」

「いや、一週間剣道しか教えなかったやつが言っても説得力無いから」

「うっ............」

 

 箒が必死で激励しようとするもシンの台詞で言葉を詰まらせる。まあ、ISは基本操縦者の身体能力にも左右されるので何の足しにもならない訳では無いが、それでも代表候補相手にそれで差が埋まるとは言えないだろう。

 

「お、織斑君織斑君織斑君!」

 

 そうしている内に、ピット内に真耶が慌てた様子で駆け足でやってきた。駆け足と言うよりはパタパタ走ってきたと言う方が合ってる気がするが。

 

「あー、山田先生落ち着いて下さい。はい深呼吸」

「は、はい。ひっひっふー、ひっひっふー」

「いや、何でそこでその呼吸!?」

 

 ただの深呼吸のはずなのにどこかおかしな呼吸を始める真耶にシンは思わず突っ込んでしまう。というかこの教師、何故にこうもツッコミ所が多いのだろうか。試しに眼鏡を外したら目が3になってるのではとシンは本気で思い始める。

 

「目上の人間に何をやらせているんだ、馬鹿者」

 

 真耶と共にピットに入ってきた千冬によって一夏の頭上に炸裂音と共に出席簿が振り下ろされる。というか今のは真耶が勝手にボケただけの気もするが。まあ、言ったところで黙殺されるか出席簿なので何も言わないでおこう。

 

「ち、千冬姉......」

「織斑先生と呼べと何度言ったら分かる。学習しろ。さもなくば死ね」

 

 出席簿のダメージに悶える一夏に一夏に千冬は容赦ない言葉を浴びせかける。これ以上無いほどの暴力発言、よくこれで教師になれたものだとシンは思った。もしくは世界最強のIS操縦者は何やってもいいのか。

 

「そ、そ、それでですね! 来ました! 織斑君の専用IS!」

「へ?」

 

 真耶の言葉にシンと箒が反応するも、肝心の一夏が何なのか理解できていない。お前の話なのに何故そうなる。

 

「織斑、すぐに準備しろ。アリーナの使用時間は限られている。本番でモノにしろ」

「この程度の障害、男子たるもの軽く乗り越えて見せろ、一夏」

「何でもいいからさっさと行け、一夏」

 

「え? え? なん......」

 

 当の一夏は未だに何なのか理解できていない様だがそんな悠長にやってる時間は無い。

 

「「「早く!!」」」

 

「はい............」

 

 真耶、千冬、箒に急かされズルズルと引っ張られる。ピット搬入口に辿り着くと同時に防壁扉が重い駆動音を立てながら開いていく。

 

――そこには、『白』がいた――

 

「こ、これが............」

「はい! これが織斑君の専用IS『白式』です!」

 

 そのIS――白式の名前を真耶が言い、ISの装着方法を一夏に教えるが、一夏の耳にそれらの単語は入ってこない。汚れの無い白、無を象徴する白、そこにはまるで無限の可能性を秘めているようにも感じ、その純白の装甲の継ぎ目からどこからともなく『熱』の様なものを感じた。

 

 

――この色……因子より解き放たれし……――

 

 

「「!?」」

 

 突如聞こえた声に一夏、そしてシンは思わず周囲を振り返る。しかしピット内には一夏、シン、真耶、千冬、箒だけしかいない。

 

「それで、座る感じで体を、ってどうしました、二人共?」

「あ、いえ......」

「何でも......」

 

 それまで説明していた真耶が口を止め一夏とシンを見るが、二人共なんでもないと返す。それに真耶は違和感を感じながらもそれ以上は追求しなかった。

 

「まあいい。ともかく織斑、早くISを装着しろ」

「あ、はい」

 

 同じく違和感を感じながらもそれを顔には出さず、ISの装着を促す。一夏はその言葉で慌ててISに手をかけ、手足をISの腕部、脚部ユニットに入れ、軽い音と共にISの装甲が閉ざされ一夏の体にフィットする。

 途端に生まれた時より体の一部だったような一体感が一夏を襲い、白式と一夏が一つになった。

 ハイパーセンサーを通して視覚がよりクリアーに感じる。

 

――戦闘待機形態のISを感知、操縦者セシリア・オルコット。機体名称『ブルー・ティアーズ』、中距離射撃機体、特殊兵装あり――

 

「ISのハイパーセンサーは正常に機能しているようだな。一夏、気分は悪くないか?」

 

 一夏がISを装着し終わったのを確認し、千冬が声をかける。流石に自分の弟の初戦と言うこともあってか、口調がIS学園の教師ではなく一夏の姉のそれに戻っている。

 

「大丈夫、千冬姉。いけそうだ」

 

 それに一夏が威勢良く肯定の言葉で返し、千冬もそうかと言う。

 そして一夏は今度は箒とシンに向けて言う。

 

「箒、シン」

「な、なんだ」

 

 いつもと違う声色の一夏に箒が僅かに動揺しながら返事をかえす。それを聞いた一夏が後ろを振り返る。

 

「行ってくる」

 

 そう言う一夏の顔、それは戦いへと赴く男の表情だった。

 

「......ああ、勝ってこい」

 

 それを見た箒はしっかりと返事を返す。それを聞いて一夏は頷き、足を進める。カタパルトに脚部を固定し、ゲートが開き全ての準備が整った。

 

「白式、行くぜ!」

 

 その言葉と共に白式を纏った一夏はカタパルトによって押し出され、アリーナへ発進していった。

 その様子を見守っていた千冬は今度はシンに声をかける。

 

「おい、アスカお前はピットの外で待機していろ」

「え?」

「織斑先生?」

 

 千冬の台詞にシンと箒はそれぞれ疑問の声を上げる。しかしそれは次の千冬の説明で解消された。

 

「お前がこの試合でオルコットの機体特性を知ったら公平ではないだろう?」

「ああ............」

 

 千冬の説明にシンは納得の声を上げる。確かにそれはフェアでは無い。今回の試合はお互いの機体について誰も知らない状態だ。一人だけそうではないのは公平ではない。

 

「分かったなら早く出ろ。もうすぐ試合が始まるぞ」

「あ、はい」

 

 千冬の鋭い言葉にシンは慌てて返事をし、ピットから出ていった。

 

 

 

 

 試合開始から30分が経過、それでも続いている試合にシンは段々イライラしだしてきた。まだかまだかと待ちかねていたシンの元に真耶が駆け寄ってきた。

 

「アスカ君、織斑君の試合が終わりました。次お願いします」

「っ! 分かりました」

 

 シンは簡潔に返事をし、ピットに入った。入ってまず目に入ったのは何が起きたのか分からない、といった表情の一夏だった。先程の引き締まった表情はどこにいったのやら。

 

「で? どうだったんだ?」

「いや、負けたんだけど............」

「なんだ、負けたのか」

「うっ!!」

 

 一夏が何か言おうとしたが、シンの容赦の無い言葉で一刀両断された。そんな(精神的に)瀕死の一夏に千冬がさらに追い討ちをかける。

 

「分かったか。過程も大事だが、結局は結果が全てだ。精進しろ」

「わ、分かりました............」

 

 そんなどこぞのボクサーみたく真っ白に燃え尽きた一夏を見て、千冬はやれやれと呟く。最も顔には出してはいないが初心者である自分の弟が初陣であそこまで戦えたことに喜んでいる様だ。

 一夏への小言を言い終えた千冬は今度はシンに向けて言う。

 

「さて、次はお前の番だ、アスカ。準備をしろ」

「了解」

 

 それにシンは簡潔に返事をし、胸元の待機形態の自分の愛機に手を伸ばしデスティニーを展開する。瞬間通常なら白い光を放つ他のISと違う緑色の光がシンの体を包み込み、瞬く間にシンの体を白灰色、青、赤で塗られたデスティニーの装甲が覆った。一夏の時と違い淀みなく準備を進め、カタパルトに両脚部を接続する。暫くして真耶から発進準備が終了した言う報告と共に発進許可が下りた。後はアリーナへ飛び出すだけだ。

 

「シン・アスカ、デスティニー、行きます!」

 

 馴染みの掛け声と同時に全身に軽い負荷がかかり、シンはアリーナへ向けて飛び立った。

 

「............」

「どうした、一夏?」

 

 それを見ていた一夏に何か感じたか箒が声をかける。確かに一夏の表情はどこか浮かないものである。

 

「いや、シンの奴大丈夫かな?」

「あいつの力量なら大丈夫だろう。」

 

 そう心配する一夏に箒は疑いもなく答える。何回かアリーナで訓練をしているシンを見ていた一夏と箒だが、素人目から見ても相当な腕前である。しかし一夏はそうじゃない、と答える。

 

「何だか分からないけど............嫌な予感がするんだ......」

 

 そう言う一夏の表情は複雑なものである。

 

 

 

 

 アリーナへ飛びだったシンの目にまず入ったのはISブルー・ティアーズを纏ったセシリアだった。

 

「来ましたわね............」

「............」

 

 セシリアはシンの姿を見て呟く。ハイパーセンサー越しでセシリアのその呟きははっきりと聞こえたが、シンは答えない。そのセシリアの表情はどこか物憂げなものだ。先程の試合で何かあったのか、しかし今のシンには関係ない。ただ潰すのみだ。

 

「負けたときの言い訳は考えましたか?」

「そんなもの必要無い、ただお前を............潰すだけだ!」

「っ!! そうですか............でしたら!」

 

 そういうなりセシリアは自身が持つレーザーライフルーースター・ライトMk-Ⅳをライフルモードで構える。対するシンもビームライフルを展開し構える。

 いくばくか静寂がアリーナを支配する。そして............

 

「行きなさい!」

 

 試合開始を告げるブザーと同時にセシリアはスター・ライトMk-Ⅳを撃つ。シンにめがけて放たれたレーザーはしかしその直前にシンが体をそらすことで回避されてしまう。

 

「な!? 避けましたの!?」

「どうした!! もう終わりか!!」

 

 お返しとばかりにシンもビームを撃つ。セシリアはそれを回避するが、その射撃の精度の高さに驚いた。相手はISを動かしてまだ1ヶ月程だ。その間に訓練をしてもこれほどの領域に達するのは難しい。

 しかしそれがセシリアを冷静にしたか、目の前の相手を甘く見るべきでないと判断する。

(負ける訳にはいけない! 男などに、何より私自身の為に!)

 

「行きなさい! ブルー・ティアーズ!」

 

 セシリアの命令と共に非固定浮遊部位の4つフィンパーツがパージされたかと思うと、それがシンに目掛けて飛び出し先端部からレーザーを放つ。

 

「なに!? ドラグーンか!?」

 

 それを見たシンは元の世界でカオスやレジェンド、フリーダムに搭載されていた分離式統合制御高速機動兵装群ネットワーク・ システム――ドラグーンを思い出す。慌てて回避するも予想外の攻撃に対応しきれず数発かすりシールドエネルギーが少量減少する。

 

「さあ、踊りなさい!」

「誰が!」

 

 セシリアが再びビット(ブルー・ティアーズ)を飛ばしシンを狙うが、伊達にドラグーン搭載型MSを相手にしてきたのではない。二度目のビットの攻撃を回避すると今度はカウンターでビームライフルとCIWSを連射、ビットを一機撃ち落とす。

 

「な!? やりますわね。でも負けるわけには!!」

「そいつはこっちのセリフだ!!」

 

 セシリアは一度ブルー・ティアーズを戻すとスター・ライトMk-Ⅳをアサルトモードに切り替え、連射性の高いそのモードでシンを追い詰める。さらにビットをブルー・ティアーズ周辺に展開、ビットブルー・ティアーズ最大の弱点であるビット稼動中に自身が動けないという欠点を補う。一方のシンもスラスターを噴かしレーザーを避け、或いはビームシールドで防ぎ、ビームライフルとCIWSで反撃する。

 戦いは始まったばかりだ。

 

 

 

 

 その様子を一夏達はピット内で見ていた。

 

「すげえ............」

「これがIS同士の戦い、か............」

 

 その高速で移動し、ビームとレーザーによる応酬の嵐を見て一夏と箒はそう言うしかなかった。二人がそう言う間にもISを纏ったシンとセシリアはアリーナを縦横無尽に駆ける。デスティニーのフラッシュエッジを引き抜きビットの一基に向け投擲、破壊する。そのままビームとCIWSを連射し手元に戻ったフラッシュエッジをソード形態にし切りかかろうとするがセシリアはアサルトモードのスター・ライトと残り二基のビットで弾幕を張り、シンを近づけさせない。

 

「..................」

 

 二人の凄まじい戦いぶりを見て一夏は歯痒い気持ちになる。先の自分とセシリアの試合、あのただ翻弄されていただけの戦いと今のシンの戦い、その両者の間には大きな隔たりがあった。それはあまりに大きい。

 一夏がシンとセシリアの戦闘に魅了されている一方、千冬と真耶はシンの戦いを冷静に見ていた。

 

「は~、アスカ君すごいですねえ。わずか1ヶ月であそこまでになるとは」

 

 真耶が言うのも最もだ。負けたとは言え初戦で30分も持ちこたえた一夏もそうだが、1ヶ月で代表候補生と互角に戦える程の力量に達しているシンはそれ以上である。普段は辛口な千冬もそれに同意する。

 

「元々才能はあったようだしな。それにアイツ自身この1ヶ月の間に相当な訓練を行っていたからな」

 

 だが、と言いかけるが千冬はそれを心の奥にしまい込む。そしてここ日本から遥か彼方の地にいる自分の弟子を思い出す。

(アスカもアイツと同じだ、力の意味を理解していない、いや違うな。力とは何か迷っている、か......)

千冬はそのまま黙ってシンとセシリアの試合を見る。

(アスカ、お前は一体どうしたい? その力を以て......)

 そして戦いは終わりを迎えようとしていた。

 

 

 

 

 強い!

 それはシン・アスカと言う男を目の当たりにし、そして戦い、セシリアが抱いた感想だ。負けたとは言えその内側に恐るべき強さを秘めた一夏もそうだが、このシン・アスカはそれ以上の強さを持っている。ただISの操縦が、だけではない。その心もセシリアが分かる程の強さを持っている。セシリアが今まで軽蔑してきた男たちにはこれほどの男は居なかった。

 だからだろうか。セシリアの心の内に徐々に過去の思い出が浮かび上がる。

(彼らはこうも強いの? 男は皆内側にこのような強さを持っているの?)

 

だったら

 

 

――自分の父は一体何だったのだろうか――

 

 

 セシリア・オルコット、彼女の家族構成、そしてその人生は複雑で決して幸福とは言えないものであった。

 彼女の父親は弱い人間だった。元々婿入りの身、それが引け目だったか常に母親の顔色ばかり伺っていた。ISが登場し女尊男卑の風潮が起きてからはますますそれは強くなっていた。一方の母親は強い人間だった。女尊男卑以前から女と言う身でありながらも幾つもの企業を経営しそれを成功に収め、オルコット家の名をより大きなものとしていった。

 そんな両極端の二人であったから『家族』として過ごした時間はほとんどない。親としての『愛』は受けたが『家族』としての愛はそこにはなかった。

 そして三年前に起きた越境鉄道の列車事故。死傷者100人を超える大規模な事故、その中で両親は帰らぬ人となった。後に残ったのは莫大な遺産、そしてそれを狙う金の亡者。

 両親の遺産を守る為、セシリアはあらゆる勉強をした。IS適性テストA+を出した時、政府から国籍保持の為に様々な好条件を出された。それは遺産を守るためにも役に立つものだったので、彼女はイギリス代表候補生に選ばれ、第三世代装備ブルー・ティアーズのパイロットとして稼動データと戦闘経験値を得るため、ここIS学園へやってきた。

 そう、全ては両親の遺産を守るため、両親を守るためだ。

 しかし、その中で彼女の心はどこかで求めていた。

 

 何故こんなことに?

 

 何故両親は死んだのか?

 

 何故自分はこうまでして守っているのか?

 

 まだ幼い彼女が心を腐らせるのにそれは十分だった。

 

 だからだろう。

 

 彼女の思い出に残っていた母親との優しい思い出は気がつけば、憎い思いへと変わっていた。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 シンのデスティニーが高エネルギー長射程ビーム砲を展開、赤色のビームがセシリアを襲う。回避するもその威力はブルー・ティアーズの装甲をわずかに溶解させシールドエネルギーを削る。

 

「............何故あなたはそんなに強い?」

 

 気がつけば、セシリアの思いは口に出ていた。それをシンは疑問に感じる。

 

「? いきなり何を「何故あなたはそんなにも家族のことが思えるの?」!?」

 

 その言葉にシンは呆然とする。何故そんなことを言う? 家族を思うのは当たり前だろ?

 しかしシンとセシリアの間には大きな違いがあった。シンが家族を失った時、シンは怒りの矛先をオーブに、アスハに向けた。向ける先があった。しかしセシリアにはそれがなかった。彼女の心の内に留めておくしかなかった。それが彼女の内で毒となり、彼女の家族への思いを変えた。

 

「あなたの家族がそうなのでしたら............わたくしの家族は一体なんだったのですか!?」

 

 セシリアの言葉はやがて悲痛な叫びとなった。その言葉に脈絡はなく、彼女を知らないシンには何を言っているのか分からない。

 

 だからだろう

 

「家族なんて......親なんて......」

 

 彼女のその一言は

 

「いなければよかったのに!!」

 

 シンの心にどす黒い怒りを呼び起こした。

 

「行きなさい!!」

 

 セシリアがスター・ライトをライフルモードで撃つ。シンに向けられたその一撃を、しかしシンは避けようとしない。何があったか身動き一つしようとしない。そのままシンに目掛けてレーザーが直撃しようとした。

 

 

 その時、シンの中で何かが弾けた。

 

 

 同時に右腕を上げる。

 

 

ただそれだけ、防御も何もない、ただそれだけの動き、しかしその上げられた右腕は直撃しようとしたレーザーを防ぎきった。

 

「!?」

 

 その光景にセシリアは思わず目を見開く。同時にデスティニーが動き出す。非固定浮遊部位が展開しヴォアチュール・リュミエールによる光の翼が形成される。さらにビームライフルを放り投げ、格納領域からアロンダイトを展開する。そしてシンの怒りに呼応するようにデスティニーの各部のクリアーパーツと胸部クリスタルの緑色の輝きは失われ、代わりに血の様な黒に近い禍々しい赤色に変容していった。

 

「な、なんですの、その姿は!?」

 

 そのデスティニーの姿にセシリアは恐怖を感じる。そのデスティニーの姿はまるで、悪魔や鬼神の様に見えた。そのセシリアの問いにシンは答えない。代わりにポツポツと語り出す。自分の怒りを、その原動力を。

 

「俺の家族は......父さんや母さん、マユは二年前に死んだ」

「っ!?」

 

 その事実にセシリアは固まってしまう。しかしシンの言葉はまだ続く。

 

「いや、違うな。死んだんじゃない、殺されたんだ! 俺が信じた国(オーブ)に! 人の命をゴミみたいに扱う奴ら(連合)に!」

 

 今でも記憶に残っている。空から降り注がれた無慈悲な一撃が家族を吹き飛ばしたあの瞬間を。

 今でも思い出す。妹の――マユの体から引き裂かれた右腕を。

 なおもシンの言葉、いや、叫びは続く。それは聞いている人間にも、そしてそれを語っているシンにも悲しみと痛みを突き刺していく。

 

「あんた............分かって言ってるのか? 自分の何気ない一言が......その人にとって欲しくても手に入らないこのなのか............自分の言った言葉が............人の心を傷つけることだって............

 

分かってるのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「!!」

 

 そのシンの叫びと共にデスティニーのヴォアチュール・リュミエールをフルドライブ、一気にセシリア目掛けて急加速する。それを見たセシリアは残ったビットをスパイクモードで飛ばし、さらに腰部に取り付けられた弾道(ミサイル)型のビットも射出する。

 

「うぇぇぇぇぇぇい!!!!」

 

 シンが獣のような雄叫びを上げ、アロンダイトを振るう。ビットとシンのデスティニーが交差した瞬間何かが切り裂かれる音と共にビットが全基両断され、爆発する。

 

「な!?」

 

 セシリアはその一瞬の間にビットを全て破壊されたことに驚く。必死でスター・ライトで狙い撃つも、デスティニーのミラージュ・コロイドによって生じている残像のせいでかすりもしない。

 シンがセシリアの目の前に現れるが、同時にセシリアもスター・ライトの銃口をシンの顔面に当てる。

 

「ゼロ距離、取りましたわ!」

 

 セシリアは間髪入れずスター・ライトをブラスターモードにセット、シンに向けレーザーを放つ。この距離で最大出力のレーザー、さらに絶対防御の発動が確実な顔面、セシリアは勝利を確信する。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

しかしその攻撃はシンが首を動かし、さらに右腕でスター・ライトの銃身を強引に引き離すことで頭部右側面の装甲部を溶かすだけであった。

 

「うそ!?」

 

 そのあまりに常識はずれな動きにセシリアは何度目かも分からない驚きの声を出す。引き金を引いてからレーザーがシンに直撃するまでの一秒未満の時間の間であの様な回避をするなど、常人の反応速度では対処できない。

(一体この方は............)

しかしセシリアの思考はそこで中断される。シンのスター・ライトを持ったままの右腕から光が溢れる。

 

――パルマ・フィオキーナ発動――

 

 その電子音がシンの脳裏に響くと同時に暴力的なビームの光がデスティニーの右手から放たれ、セシリアのスター・ライトを破壊する。

 

「............」

 

 そのあまりに予想外の事態にセシリアの口からはもう驚愕の声は上がらず、呆然とした表情しか見当たらない。同時にセシリアは恐怖の思いを抱く。そのシンの表情――狂気に満ちた怒りの表情に。

 

「これでもう武器は残ってないな」

「っ!!」

 

 その言葉でセシリアは身構えるが、もう遅い。シンのアロンダイトがセシリアのブルー・ティアーズの装甲を袈裟懸けに切り裂いた。

 

 

 

 

 戦いはもう一方的なものとなっていた。シンのデスティニーがアロンダイトを振るう度にセシリアのブルー・ティアーズの装甲が無残な姿にされていく。その猛攻にさらされ、意識が朦朧とし出したセシリアがブルー・ティアーズに唯一残された格闘武装『インター・セプター』を呼び出そうとするもシン果てのない猛攻がその合間を作らせない。

 その様子をピットで見ていた箒はいてもいられなかった。

 

「シン............お前は............」

 

 今のシンの姿――ただ怒りのままにアロンダイトを振るう姿に箒は過去の自分を重ねてしまう。あの頃の自分――ただ憂さ晴らしのために剣を振るった自分を。

 その時、真耶が緊迫した声を上げる。

 

「ブルー・ティアーズ、操縦者生命危険域(デッドゾーン)に到達!! このままではオルコットさんが!!」

「!! アスカ、試合は中止だ、直ちに攻撃を停止しろ!!」

 

 千冬がすぐにインカムでシンに呼びかけるが、シンはそれに答えない。それどころかとどめをささんばかりにアロンダイトを腰だめに構える。あの体勢はセシリアを突き殺すつもりだ。

 

「......駄目だ............シン............そんな風に力を使ったら............」

「!? い、一夏!? どうしたんだ!?」

 

 そこに何が起きたのか急に頭を抱え痛みにこらえた表情の一夏が呟く。その様子に気がついた箒が慌てて駆け寄る。

 

「どうした!! 一夏!!」

 

 それに一拍置いて気づいた千冬も同じく一夏に駆け寄る。弟のその苦しむ姿を見てか口調がいつの間にか素に戻ってる。

 

「おい!! 一夏!! 大丈夫か!!」

「駄目だ............怒りのままに力を使ったら............お前がそう使ったら駄目だ............シン!」

「一夏!!」

 

 箒と千冬が留めようとするも一夏はそれを振り切り、ISアリーナへ飛び出した。

 

その左手を右腕に装着されたガントレット――待機形態の白式に乗せて。

 

 

 

 

 シンがアロンダイトを振るい、ブルー・ティアーズの非固定浮遊部位が切り裂かれ爆散する。それに意識が呼び戻され、セシリアが苦痛の声を出すが、シンは攻撃を止めようとしない。

 

 

――まだだ。まだコイツを痛めつけてやる!! もっと苦しめてやる!! 父さんは、母さんは、マユはもっと苦しんだんだ!!――

 

 

 そのシンの怒りに呼応するようにデスティニーのエンジンが唸りを上げる。全身を覆う紅い光がより強く輝く。そのままシンは何も掴んでいない左手でセシリアの腹部を鷲掴みにする。セシリアが再び痛みの声を出すが、怒りに支配されたシンの耳には入らない。そのままパルマ・フィオキーナを発動させ、連続でセシリアにゼロ距離のビームを叩きつける。

 しかしここでピットで管制をしている真耶と千冬から千冬から通信が入る。

 

『アスカ君! 攻撃を中止して下さい!! これ以上はオルコットさんが!!』

『おい、アスカ! これ以上はオルコットが危険だ!! もうやめろ!』

 

 

やめろだって? あんなこと言った奴を許すのか?

 

 

俺が欲しくても手に入れられない家族(もの)をいらないなんて言った奴を許すのか?

 

 

なんで............なんでコイツを許さなきゃいけないんだ!

 

 

 シンは千冬と真耶の言葉を無視し、ボロボロのセシリアを投げ飛ばす。そしてアロンダイトを腰だめに構え、突きの体勢に入る。

 

 

「う」

 

 

その体勢で

 

 

「お」

 

 

ヴォアチュール・リュミエールを稼動させ

 

 

「おお」

 

 

セシリアのブルー・ティアーズへ突っ込みだした。

 

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

 

 

「止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

しかしそれは、白式を展開した一夏によってセシリアに突き刺さることはなかった。

アリーナにアロンダイトと白式の武装――雪片弐型がぶつかった金属音が響く。

 

「何すんだ、一夏!! そこをどけ!!」

「駄目だ! シン、それ以上は駄目だ!」

 

 シンのその叫びは、一夏に遮られる。

 

「何で!! そいつは俺の家族を!! マユを!!」

 

 シンの悲痛な叫びに一夏は、しかし反論の言葉を言う。

 

「確かにそうだけど、お前の言うことも分かるけど!」

「だったら「でも!」!?」

 

「力をそんな風に使ったら駄目だ!! シン!! お前は怒りのままに戦うのか!! 

 

お前は何の為に『力』を手にしたんだ!!!!」

 

 その言葉にシンはかつて同じことをシンに言った人間のことを思い出す。それはシンの怒りの炎を燃やすのには十分だった。

 

「............お前も......」

「シン?」

「お前もあの人と同じことを言うのかあ!!!!」

 

 そう叫ぶなり、シンはアロンダイトを構え、一夏に向け振るおうとした。かわせないと思った一夏は思わず身構える。

しかし突然デスティニーの動きが止まる。同時にアロンダイトのビーム刃が途切れ途切れの状態になる。

 

「っ!? デスティニー!!」

 

 シンが叫ぶがデスティニーの動きは先程とは比べられないほど鈍重なものとなっていた。ハイパーセンサーで確かめれば、ビーム兵装を使いすぎたからかシールドエネルギーが一桁を切っていた。

 その時、シンに通信が入った。

『アスカ、それ以上はもうよせ。分かっているな............』

「っ! ............了解」

 

 千冬のそのドスの入った威圧感のある声にいくらか理性を取り戻したシンは従うしかなかった。

 一方一夏は満身創痍のセシリアを抱きかかえていた。セシリアは朦朧としながらもなんとか言葉を紡ぐ。

 

「織斑......一夏............」

「お、おい! あんま喋るなよ。傷に触るぞ」

「何故............わたくしを............」

「え? いや、何でって言われても............」

 

 一夏はそれに口を濁らせるも、何とか答えを出す。

 

「まあ色々あったけどやっぱクラスメイトがそんなに傷つくのを黙って見てる訳にもいけないし」

「............そうですか」

 

 それを聞いたセシリアは顔を伏せ、一夏に問いかける。

 

「あなたは……」

「え?」

「あなたは……これから……その力(IS)を使って何を……守る……の……」

 

 

 その言葉を最後にセシリアは気絶してしまう。

 

「俺の守りたいもの……か……」

 

それを見た一夏は心の中でそれを物憂げに繰り返す。そして今度はシンの方を振り返る。見ればシンの表情は俯いていてどんな表情なのか分からない。しかし一夏にはシンの心が悲しみに満ちている様に感じた。

 

「シン............」

 

 そのシンを見て一夏はそう呟くしかなかった。

 

 

 

 

 試合終了のブザーと共に真耶のシンの勝利を知らせる声がアリーナに響く。

 

 

 

 しかしそこにシンの勝利への歓声はなく

 

 

 

 ただ不気味なまでの静寂がアリーナを支配していた。

 




どうも。パクロスです。マジンカイザー熱に巻き込まれているパクロスです。

マジンカイザー、最近はSKLとかもありますけど、どちらもカッコいいですね。片や動く要塞というマジンガーの系譜を継ぐカイザー、そしてガン=カタとかネタにされてますけど、めちゃカッコいい動きをするSKL、私的にはどっちもツボですわー。

今回はやっとの決定戦、シンVSセシリア戦です。戦闘描写はサクサクかけましたけどやっぱセシリアの心理描写がキツイですね。やっぱ子供の時の環境が人を変えるっていうのを表現したかったですけどなかなか難しいところですね。上手く書けたか怪しいところです。あと原作ではセシリアが一夏に惚れる所をこっちでは惚れない感じにしました。別に無理して惚れさせても良くね?というコメントを以前いただいたのでそこら辺を修正しました。

それと今回登場したブルー・ティアーズですけど、若干武装が原作と変更になっています。主武装が複合性能レーザーライフル『スター・ライトMk-Ⅳ』という原作のMk-Ⅲの新型になっています。

ではそんなこんなで次回をお楽しみに。また修正したりとかで時間かかりそうですけど。では。
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