IS×GUNDAM~シン・アスカ覚醒伝~   作:パクロス

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今回は比較的早く仕上がったけどその分若干粗いかなぁと思えるところも……まあここまで来たから後は野となれ山となれぃ! という訳でPHASE-06始まるで。


PHASE-06:クラス対抗戦、そして忍び寄る影

 あれから時は流れクラス対抗戦当日、アリーナピット内にて一夏は自身のIS――白式を展開した状態で待機していた。

 

「うわぁ……満員御礼だなぁ、こりゃ」

 

 満席となっているアリーナの観客席の様子を見て、一夏は思わず声を上げる。

 

「それだけ注目されているのですわ。因みに会場に入りきらなかった人達は校舎内のモニターで観戦するそうですわ」

「うぅ……何気にプレッシャーかけるなよ……」

 

 セシリアの話を聞いて一夏は緊張で全身の筋肉が強張るのを自覚する。とはいえ一夏にとってこれだけの観客に囲まれてのISの試合は初めてだ。緊張するのも無理はない。

 

「情けないぞ、一夏。何を怖じ気付いている!」

 

 そんな一夏に対して箒が激励の言葉をかける。

 

「しっかりしろ!! 胸を張って堂々と行け!!」

「そうですわ。特訓の成果を披露して下さいませ」

「箒……セシリア……」

「ほら! シン、お前も何か……」

「アスカさんも何か一言……」

 

 箒とセシリアの言葉に嬉しい気持ちになる一夏。そのまま箒とセシリアはシンにも何か言ってもらおうと声をかけるが……

 

「「…………」」

「し、シン? 大丈夫か?」

「あぁっ!?」

「あ、いや、何でもない!」

 

 不機嫌なあまり、身体中から負のオーラが沸き上がってるシンの様子を見て、二人共言葉を失う。一夏が声をかけてみるものの、返ってきたこれでもかと言う程不機嫌極まりないシンの台詞に一夏は何でもない、と前言を撤回する。それから一夏、箒、セシリアは顔を寄せて小声で話し合う。

 

「なあ。あれって多分……」

「ああ、先週のあれだな」

「ええ、あれですわね」

 

 三人がしきりに言う先週のあれとは果たして何なのか。話は一週間前に遡る。

 

 

 

 

 一週間前、五月に入った頃、一夏達はクラス対抗戦に向けての訓練を行っていた。しかしその中にこれまでと明らかな違いが生まれていた。

 

「なあ、シン。俺の特訓を手伝ってくれるのはありがたいんだけど……もうちょっと優しく出来ないか?」

「無駄口叩くな。アリーナで訓練できるのは今日までなんだから気を引き締めろ」

 

 ピットからアリーナへと向かう通路の中、一夏は隣を歩くシンにそう訴え掛ける。しかしシンは容赦のない冷たい台詞で切り捨てる。それを見た一夏は思わずげんなりしてしまう。

 クラス対抗戦の日時と対戦表が公開されてから、シンは一夏達の訓練に付き合う様になっていた。これまで一夏から距離を置いていたシンがここに来て急にこの様なことを言い出したことに初めは一夏は疑問に感じたが、その後のシン――正確には鈴との仲の悪さを見て思わず納得する結果に至った。

 鈴がIS学園に転入してからというものの、シンと鈴の二人はことあるごとに売り言葉に買い言葉と言わんばかりに壮絶な口喧嘩を始め出す。初めはそんな二人に一夏達も心配していたが、二人の喧嘩の内容のくだらなさにそのうち誰も気にしなくなってしまっている始末である。

 理由はともあれシンが自分達と接してくれるのは嬉しいとそれまでシンに距離を置かれていた一夏は最初は喜んでいた。そう、最初は。

 

「正直あんなにキツいと体が保たねえよ。箒の剣道よりキツいのがあるとは思わなかったぞ」

「おい一夏!! どう言う意味だ、それは!?」

「保たせろ。それぐらいじゃないとアイツに勝てねえぞ」

「シンも無視するな!」

「はあ……」

「溜息をつきたいのはこっちだ!」

 

 シンの厳しい訓練内容に思わず何か箒に対して非常に失礼な文句を言う一夏だが、当のシンは冷たくあしらう。しかしその目はクラス対抗戦で鈴をボコボコに負かしてやると言っている。それを見て一夏は深い溜息をつくしかなかった。ちなみにここまでの間で一夏とシンに無視されている箒は半ば涙目状態である。哀れ。

 それはともかくして一行は第三アリーナに到着する。圧縮空気の抜ける音と共に扉が開くと、ピットには目下の一夏の目標の相手――鈴がいた。

 

「待っていたわよ、一夏!」

 

 目の前に現れて早々、威勢良く言う鈴。シンの姿を見て一瞬顔をしかめるも、直ぐに元の表情に戻す。シンのことは無視する様だ。

 

「貴様、どうやってここに!」

「ここは関係者以外立ち入り禁止ですわよ!!」

「あたしは関係者よ。一夏関係者。だから問題ナシね」

 

 思わぬ恋敵の登場に、箒とセシリアは噛みつくも、鈴はあっさりとそう切り返す。

 

「ほほう、どういう関係かじっくり聞きたいものだな……」

 

 鈴の返事を聞いてか、箒の反応が恐ろしいものと化している。シンはふと、ディオキアで理由は分からんがえらく不機嫌だったルナマリアを思い出し、女とは何もしなくても男を震え上がらせられるんだなあ、としみじみ感じていた。

 

「とにかく、今はあたしが主役なの。アンタら脇役はすっこんでてよ」

「脇役!?」

「どういうことですの!?」

 

 鈴の脇役発言に憤慨する箒とセシリア。しかし鈴は意に介さず再び一夏に話かける。

 

「で、一夏。反省した?」

「へ? なにが?」

「だ・か・らっ! あたしを怒らせて申し訳なかったなーとか、仲直りしたいなーとか、あるでしょうが!」

「いや、そう言われても……鈴の方が避けてたんじゃ謝ろうにも謝れないだろう」

 

 そう言いながら段々と鈴の機嫌が悪くなっていく。どうやらまたこの馬鹿(一夏)は何かやらかしたらしく鈴はそれに謝罪を求めているものの、当の一夏は何で怒らしたのか理解していない様である。要はいつもの一夏のパターンな訳である。

 

「あんたね……」

「おい、いい加減にしろよ! いつまでモタモタしてるんだよ!」

 

 あまりに平行線をたどり続けてる一夏と鈴の会話にイラつきだしたシンが割り込みだす。こっちは(こいつ)の顔見るだけでもイラつくのに、いつまで居続ける気なんだ、とシンは内心毒つく。しかし鈴もシンに言われて腹がたったか負けじと言い返す。

 

「ちょっと! あたしは一夏と話してるの! 脇役どころか部外者のあんたが割り込まないでよ!」

「誰が部外者だ! こっちからすりゃお前が部外者だよ! 俺達がISの訓練しようって時に邪魔するんじゃねえよ!」

 

 売り言葉に買い言葉、気がつけば二人の喧嘩は只の罵り合いになっていた。何やら後ろから「いいぞ、シン! もっと言ってやれ!」と妙な野次が飛んできているが無視する。

 

「大体、事あるごとに突っかかって来やがって……お前のダミ声聞こえるだけでも腹立つからどっか消えろ!」

「誰がダミ声よ! あたしが言いたいぐらいよ! ギャーギャー吠えるしか無い癖にグダグダ五月蠅いのよ!」

「んだと!? このクソアマ!!」

「なによ!? 逆ギレ男!!」

 

 段々とエスカレートしていく二人の口喧嘩。そしてとうとうシンは鈴に言ってはいけないことを言ってしまった。

 

「うるせえ!! 貧乳!!」

 

その言葉が鈴の耳に入ると同時に、次の瞬間、激しい衝撃と轟音がピット内に響き渡り、舞い上がった煙が晴れるとそこには、肩から先までをISのアーマーで覆われた鈴の姿が見えた。壁を見れば、そこには直径30cm程のクレーターが出来ていた。

 

「い、言ったわね……言ってはならない事を、言ったわね!」

 

 わなわなと震える声で鈴が呟く。どうやら彼女にとってそれは禁句の様である。一夏がアチャー、とでも言いそうな表情になっている。しかしシンはそれを見ても怯む様子はなく、寧ろ火に油を注ぐかの様な発言をする。

 

「そうかよ! 悪かったな! まな板女!」

 

ブチブチッ!!

 

 再び何かが切れる音と同時に鈴がシンに殴りかかろうとする。

 

「お、おい! 鈴、落ち着け!!」

「殺す! ぶっ殺す!!」

 

 一夏が後ろから羽交い締めにして必死に押さえつけるが、鈴の怒りは収まることなくシンに罵詈雑言を浴びせかける。その怒りは先程の箒とセシリア等霞んでしまう程である。

 

「色白! 男女! 寝癖頭!」

「はんっ! 勝手にほざいてろ! 洗濯板女!」

 

 鈴は次々と繰り出すも、シンは逆に言い返し、鈴の逆鱗に再度触れた。

 しかしここで鈴もシンの怒りのパロメーターを振り切らせる様な予想外の発言をしてしまう。

 

「こんのぉ……黒わかめ頭!」

 

 その言葉が鈴の口から出てくるのと同時に、再び衝撃と音がピット内に響く。見ればシンの右腕にはIS『デスティニー』が部分展開され、シンの側の壁には同じくクレーターが出来ていた。

 

「し、シン?」

「……不愉快だ」

 

 恐る恐ると言った感じで一夏が声をかけるがシンからの返事が無い……と思いきや、暫くしてからシンのワナワナと怒りに震えた声が聞こえる。

 

「猛烈に不愉快だ! 初めてだ! こんなに不愉快になったのは!」

 

 怒りに震えた声は声が段々と力強いものとなりだす。

 

「お、おい、シン! 落ち着け!」

「これのどこが落ち着けってんだ!? あぁっ!?」

 

 流石に普段と様子の違うシンに一夏もなだめようとするが、その行為はむしろシンの怒りを増長させる結果となってしまう。

 

「てめえ……よくも言ってくれたな!」

「五月蠅いわよ! そもそも先に言ったのあんたでしょ! わかめヘア!」

「ふざけんじゃねえ! マイクロチェスト!」

 

 そのままISを完全に展開しそうな勢いになる二人。下手したらピット内が廃墟になりそうな予感がしてくる。

 

「ふ、二人共落ち着け!」

 

 そんな二人に慌てて一夏が再び仲裁に入る。しかしもうパターン化しているのか、シンと鈴は聞く耳を持たない。それどころか、怒りの矛先が一夏に向けられ始める。

 

「一夏は黙ってなさいよ! 弱っちいのに出しゃばんないでよ!」

「おい! いくらなんでも「うるせえ! 雑魚はすっこんでろ!」もういいよお前ら! 勝手にやってろ!」

 

 鈴の容赦のない一言に思わず一夏は反論しようとするが、そこにシンがさらに追い討ちの言葉を叩きつけ、一夏ももうやけくそ気味にこの犬猿の仲の二人にそう言い放つ始末である。お互い睨めつけ合う事数十秒、やがて鈴がああもう、とそれまでに溜まった鬱憤を吐き出す様にシンに言いつける。

 

「だったら来週のクラス対抗戦!! それでアタシが一夏に勝ったらアンタ、土下座してアタシに謝りなさいよ!」

「ちょっ!? 何勝手に「いいじゃないか! 手っ取り早くて済む!」シンまでやめろ!」

 

 気がついたら二人の喧嘩のベットにされていた一夏が口を挟むが、それを再びシンが遮り話がどんどん進んでいく。

 

「精々腕を磨かせることね! あたしが勝ったら三食全部わかめづくしにしてやるわ!」

「ああそうかい! じゃあ一夏が勝ったら裸で学園一周してその貧相な体さらさせてやらぁ!」

「いいじゃない! 上等よ!」

 

 数秒間お互いをにらめつけると、鈴はピットの出口へと走るかの様に向かっていった。そしてピットから出る直前に振り返った。

 

「じゃあね、一夏! 首洗って待ってなさいよ!」

 

 それだけを言い残して鈴はピットから出ていった。シンは何も言わずにただ立っている。それがなんとも嫌な威圧感を出していて、一夏、そして完全に外野と化していた箒とセシリアは何も言えずにいた。

 

「し、シン?」

 

 一夏が声をかけるが返事が無い。いや、少しして、シンは一夏の方に振り返り近づいてくなり、ガシッと肩を掴んできた。

 

「え? シン? ど、どうした?」

「……一夏……」

 

 突然肩を掴まれ一夏は困惑する。と言うか肩がミシミシ嫌な音を立てているのだが。

 

「いいか、勝てよ! 絶対勝てよ! 死ぬ気で勝てよ!いいな!」

「お、おう。わか「良しっ! じゃあ今日から特訓だぁ! 1日34時間やるぞ!」え、ちょっ、てか34時間っておかしいだろ!」

 

 一夏が色々言うもシンの耳には入っておらず、ズルズルとアリーナへと引っ張られていった。

 それから一週間、ISアリーナではシンの怒号と一夏の悲鳴が響きわたっていたとさ。

 

 

 

 

 そして時はクラス対抗戦当日へと戻る。

 

「まさかあんなに切れるとは思わなかったよ。」

「本当だな。わかめであれほどとは……」

「でも言われて見れば……」

 

 と、ヒソヒソと小声で話し合う三人だがセシリアの言葉でシンを――厳密に言うならシンの頭を――見ると、微妙にへたった髪、艶のある髪質、鈴に言われたからかも知れないが、なるほど見れば見るほどわかめに見えてしまう。

 

「? なんだよ?」

「い、いや! なんでもない!」

「……?」

 

 ふと視線に気づいたシンが目を向け、慌てて一夏達は目を逸らす。正直今の状態だと笑ってしまいそうで困る。幸いにもシンは気づかなかった様だが。

 そうしていると、代表の入場のアナウンスが入る。

 

「じゃあ、行ってくる。」

「応! 胸を張っていけ!」

「頑張って下さいませ!」

「いいか、一夏! 何が何でも勝てよ! あいつに組み付いて自爆してでも勝てよ! 勝てば官軍さあ行け!」

「「…………」」

 

 一夏の言葉に励ましの言葉を返す箒とセシリア。一方のシンはかなり物騒なことを言って二人を呆れさせる。

 

「じゃ、じゃあ行ってくる」

 

 そんなシンを見て若干引き気味な様子で一夏が返事をして、アリーナへ飛びだった。後に一夏は負けるのがこれほど恐ろしく感じた瞬間はなかったと言う。

 

 

 

 

「来たわね」

 

 アリーナに到着すると一夏の目の前には自身のIS――甲龍(シェンロン)に身を包んだ鈴が空中に漂いながら待っていた。その目には闘志で燃え上がっており、あのような理由でなければバトル物なら中々の展開だろう。

 

「あのぉ、手加減とかは「するわけないでしょ! 完膚無きまでに叩きのめして、あのわかめ頭の毛根むしり取ってやるわ!」……さいですか」

 

 それを聞いて一夏はガックリと頭を下げ、何事もなく終わらせるという選択肢を諦めた。と言うか二人の喧嘩が何で俺に飛び火したんだと言いたい所である。

 

『それでは両者、試合を開始して下さい』

 

 アナウンスがアリーナに響き、ブザーが鳴る。同時に一夏と鈴は動き、次の瞬間各々の獲物である雪片弐型と甲龍の近接装備の青竜刀――双天牙月がぶつかり、鍔迫り合いの状態になる。

 

「ふうん。初撃を防ぐなんてやるじゃない。けどね……」

 

 そう言うなり鈴は双天牙月をバトンの様に振るう。その早さと角度を変えながらの切り込みによって生じる斬撃の嵐に一夏は何とか捌くも、このままではジリ便だ。

(まずい! このままじゃ消耗戦になるだけだ! 一度距離を取って……)

そう判断した一夏は白式のスラスターを噴かし、離脱を図る。

 

「甘い!」

 

 しかしそう簡単に逃す筈もなく、鈴の甲龍の肩アーマーがスライドして開くと、次の瞬間一夏はそこから発せられた見えない衝撃により地面に叩きつけられた。

 

「グオッ!?」

「今のはジャブだからね。」

 

 それを聞いて体勢を立て直すも、その瞬間再び見えない衝撃が再び一夏に襲いかかりだした。

 

 

 

 

「なんだ、あれは……?」

 

 ピットで試合の様子を見ていた箒が呟く。それに答えたのはセシリアだった。

 

「『衝撃砲』ですわ」

「衝撃砲?」

 

 その聞き慣れない名前にシンが尋ねる。

 

「ええ。空間自体に圧力をかけて砲身を生成、余剰で生じる衝撃それ自体を砲弾化して撃ち出す――ブルー・ティアーズと同じ第三世代型兵器ですわ」

「……成る程」

 

 せセシリアの説明を聞いて理解するシン。一見落ち着いてる様だが心の内では苦戦する一夏に焦りを感じていた。このままでは負けるのは確実。この状況を打破できる手段は一発で相手のシールド・エネルギーを大幅に削れる白式の単一能力――零落白夜。

果たしてその一発逆転の切り札足り得るそれがどう戦況を及ぼすのか。戦いは新たな動きを見せた。

 

 

 

 

「やるじゃない。衝撃砲『龍砲』は砲身も砲弾も目に見えないのが特徴なのに」

「…………」

 

 鈴のその言葉に一夏は何も言わずにいる。確かに衝撃砲は砲身も砲弾も見えず、それが一夏に反撃を許さない。さらにこの衝撃砲は砲身射角に制限が無く、ほぼ死角が無い。これだけの相手、ISに関して素人の一夏には厳しいものである。

(けど、まだ手は残ってる!)

一夏は右手に握る武装、雪片弐型を握り締める。この武器と白式の零落白夜、この二つを使えば逆転が可能だ。一気に向こうに接近出来る技能『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』もある。後はそれを完璧に決めなければならない。

(成功出来るかどうか分からない……けど、決めてみせる!)

一度大きく息を吸い込み、吐き出す。そして意識を集中する。

 

「鈴」

「な、なによ」

 

「本気で行くからな」

 

「っ!」

 

 その気迫に鈴が圧される。

 そして一夏が動いた。瞬時加速を発動させ、一気に接近しようとする。

 

「そんな直進的な動き、いい的よ!」

 

 鈴はそう叫び、衝撃砲を発射する。

(今だ!)

一夏は咄嗟に判断し、加速中の状態で体の向きを180度回転させる。衝撃砲の砲弾が背に当たるのを感じながら一夏は瞬時加速を発動させる。

 瞬時加速の原理というのは後部スラスター翼からエネルギーを放出、それを内部に一度取り込み、圧縮して放出する事によって得られる慣性エネルギーを用いて爆発的加速を得ると言うものだ。

 それはつまり、外部からのエネルギーでも良いということだ。

 衝撃砲の砲弾を受け体が悲鳴を上げる。一夏はそれを無視して体の向きを元に戻し、加速した。

 

「え!?」

「ウォォォォォォォォォォォォォ!!!!」

 

 あまりに想像を超えた一夏の行動に鈴は完全に虚をつかれる。一夏はそのまま加速し、零落白夜を発動させた雪片弐型を振るう。

 

 

 

 

 後少しで攻撃が届く、その所で……

 

 

 

 

突如激しい衝撃――鈴の衝撃砲とは違う――がアリーナを襲った。

 

 

 

 

「「っ!?」」

 

 アリーナの中央を見れば、そこから煙が上がっている。どうやら衝撃の正体はソレがアリーナに突っ込んだことで起きたものの様だ。

 

「な、何だ!? 何が起き……」

 

 突然の事態の変化に一夏が慌てていると、鈴からの通信が入る。

『一夏! 試合は中止よ! 直ぐにピットに戻って!』

「え、いや、どういうことだよ! これは……!」

 

――ステージ中央に熱源。所属不明のISと断定。ロックされています――

 

 白式のハイパー・センサーからの情報が伝わると同時に高出力のビームが一夏に襲いかかる。何とか回避する一夏だったが、かわしたビームが地面に着弾した時の衝撃と爆炎にぞっとしてしまう。あんなものが観客席にでもいったら、その様なことが頭をよぎり青ざめる一夏。そこで煙が晴れ、相手の姿がはっきりと確認できた。

そのISの姿は異様なものであった。深い灰色の装甲、異様に長い腕部、肩と頭が一体化した様なデザイン、そして全身装甲(フル・スキン)

 ISは通常その防御をシールドバリアで行われている為、装甲は部分的にしか必要がない。そう言った点を鑑みれば、この全身装甲のISは充分異様だ。

 武装は両腕に左右合わせて四基のビーム砲。威力は先の一撃で十分脅威なもの理解できる。全身にはその巨体の体勢を維持するために大量のスラスターが搭載されている。

 

「一夏! あたしが時間を稼ぐから、その間に逃げなさい!」

「馬鹿言うな! 今撤退したら、もしあのビームが観客席にでも向けられたら!」

「っ!」

「先生達が来るまでの間で良い、あいつを止めるぞ!」

「……分かったわ!」

 

 そこで二人に通信が入る。通信を開けば、相手は千冬だった。

 

『織斑、凰、無事か?』

「「千冬姉(千冬さん)!」」

 

 千冬の声を聞いて思わず普段の呼び名に戻ってしまうが、千冬はそれを訂正せずに話を続ける。

 

「現在、アリーナの遮断シールドはレベル4に設定され、アリーナ内のドアはロックされている」

「な、何だって!?」

「まさか、あのISの……」

『そうだ。現在政府に救援要請、外から三年の精鋭がシステムクラックをしているが時間がかかる。何とかそれまで持ちこたえられるか?』

 

 千冬の問い掛けに一夏は鈴と顔を合わせる。それに気づいた鈴は表情を引き締め肯定の意を示す。

 

「分かった、やってみる」

『……了解した。部隊が突入するまでの時間が稼げば良い。まともにやりあおうと……』

 

 まだ千冬が説明を続けようとしたところに、千冬の言葉を遮るかの如く赤色のビームが空間を走り、そのISに直撃、右腕を溶解させた。

「何!? 今の!?」

「あのビーム……まさか!?」

 

 そう、そのまさかであった。そのビームが放たれた場所――一夏が先程待機していたピットから一機のISが躍り出た。白灰色、赤、青の鮮やかなカラーリング、各部のクリアーパーツから発せられる緑色の燐光、非固定浮遊部位の赤い翼――

 

「ウォォォォォォォォォォォォォ!!!!」

 

 IS――デスティニーを纏ったシンであった。

 

 

 

 

 ピットのモニター越しに見えた謎のIS、そしてそれが一夏に向けビームを撃った時、シンの脳裏に浮かんだのは、『死』という単語、そして同時に感じたのは、それに対する恐怖であった。

 だからだろう、シンの行動は迅速なものだった。即座にデスティニーを展開、エネルギー供給ケーブルに接続し高エネルギー長射程ビーム砲を展開、本来の出力で放った。その威力は容易に遮断シールドを貫く程のものであった。

 

「ウォォォォォォォォォォォォォ!!!!」

 

 シンはまるで獣の様な雄叫びを上げ、デスティニーのヴォアチュール・リュミエールを発動、敵ISに接近すると 同時にその勢いのまま思い切り蹴りつける。猛スピードで蹴られた敵ISはアリーナの壁付近まで跳ばされる。

 

「シン!?」

「あんた、何でここに!?」

 

 突然のシンの登場に一夏も鈴も当惑を隠せない様子である。しかしシンはそれに答えず、再度敵ISに向け突撃をかける。それに気づいたISが体勢を立て直しビームを放つが、最大出力で展開されたビームシールドがそれを弾く。再び懐に飛び込むと、今度はビームを撃ち出す為に突き出した左腕を抱え、背負い投げの要領で地面に叩きつける。それでもなお銃口を向けようとしている左腕をデスティニーの脚部で押さえつける。

 これで相手の手札は切れた、誰もが思ったその時、敵ISの胸部装甲が展開される。その中央にあったのは、左腕のそれよりも遥かに大口径のビーム砲。その砲口には今まさに凶悪な破壊力を持つビームが放たれようとしている。

 

「っ! シン!」

 

 それを見た一夏は思わず叫ぶ。しかしシンは動じず、右腕を突き出す。

 途端に右腕全体を光が覆い、光が収まった時シンの右腕には巨大な杭打ち機とも言える現IS実弾装備中最高威力を誇る武装――165mm大型パイルバンカー『アバレスト』が展開されていた。

 シンは迷わずそれをビーム砲口に突き刺し、その怒りのままに引き金を引く。

 

「くたばれぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 

 瞬間、アリーナ全体に大型の地震と間違えてしまう程の衝撃が襲いかかった。

 

 

 

 

 衝撃が過ぎ去って少し経ち、シンがアバレストを打ち込んだ時に生じた煙が晴れる。そこには完膚無きまでに粉々に砕け散った敵ISとPICでも抑えきれない反動で痛む右腕を押さえ、苦しげな表情のシンが立っていた。しかしその瞳には未だ闘志は消えていない。

 もう、いいだろう。頼む。これで終わってくれ。頼……

 そのシンの思いは、しかし

 

『…………』

 

 ギシギシと音をたてながら左腕を向ける敵ISによって打ち砕かれた。

 

「う……うぁあぁ……

 

うぁぁあぁあぁあああぁぁぁぁぁぁぁああああぁ!!!!」

 

 その瞬間、シンは獣の様な叫びを上げ、強く握られた右拳を敵ISに向けて叩きつける。粉砕されるISの左腕。

 

「ああぁぁぁぁぁぁああぁあぁああぁあぁああぁぁ!!!!」

 

しかしシンはなおも拳を振り続ける。繰り出される拳は敵ISの装甲を砕き、内部のケーブルを断ち切り、オイルをまき散らす。

 

「「「…………」」」

 

 それを間近で見ていた一夏、鈴、そしてシンがこじ開けた穴からアリーナへ飛び出したセシリアはあまりに凄惨なその光景に何も言うことができずにいた。

 恐ろしい。

それは今のシンを見て三人が同時に心に抱いたものだ。オイルが体中にこびりつきながらも拳を叩きつけ続けているシンの姿、そしてその狂気を孕んだ表情はまるで『狂戦士』といえるものであった。

もはや四肢が砕かれ、動くこともできない状態になった敵IS。しかし、シンは最後のとどめを差そうとする。

 

「ぐぉぉぉぉおぉぉおぉぉおおぉぉぉ!!!!」

 

 唸り声を上げながらシンは両腕で敵ISの股間部、頭部を掴むと一気に自身の頭上にまで持ち上げ、そしてあらん限りの力を籠めだした。

 

「おい、シン! もう止せ!」

 

 そこで漸く一夏が声を出せたものの、シンの耳には何も入ってこない。ギシギシと各部から悲鳴を上げる敵IS。そして、とうとうそれが起きた。

 次の瞬間、嫌な音を立てながら敵ISは胴部を境に真っ二つに引き裂かれてしまう。裂かれた箇所からおびただしいオイルが空を舞い、シンの体に降り注ぐ。

 

『…………』

 

 敵ISはもう動く様子はない。もう戦いは終わったのだ。しかし、そのことに安堵する者など誰もいない。一夏達の視線はそのままシンに注がれる。そこにいたのは狂気に身をやつした、『羅刹』であった。目を下に向けたまま、シンは動こうとしない。どれくらいそうしていたのだろう。シンがやっと顔を上げる。しかし、そこには先程あった表情というものがすっぽりと抜けた不気味なものだった。

 

「っ! シン!」

 

 それを見た一夏は居てもたってもいられなかった。一夏にはシンが分からなくなってきた。

何でこいつはそんな自分がボロボロになる様な戦い方をしているんだ。

何で俺達を頼ろうとしないんだ。

無論一夏も自分の力の上限ぐらい自覚している。彼にとってつらいのはシンがまるで一夏達が無事なら自分の体などどうでもいい様な戦い方をしていることにある。

そのまま一気にシンの元に近づく。

 

「……一夏か。大丈夫か?」

 

 一夏の存在に気付いたシンは平時を変わらぬ口調で尋ねる。それが一夏には余計悲しく感じてしまう。

「大丈夫かって……それはこっちの台詞だよ! そんなボロボロになって!」

 

 そんなシンに思わず一夏は怒鳴ってしまう。

何故そんなボロボロになってまで戦うんだ。

そんな心が折れそうな表情をしながらも戦うんだ。

 しかしシンは変わらぬ口調で話す。

 

「俺は、良い。大丈夫だ。お前たちが無事なら、それで……」

「お前……」

「何言ってんの!? あんた!!」

 

 そのシンの言葉に何も言えない一夏。と、どこで鈴がシンにわめき散らす。

 

「……何だよ、いきなり」

 

 いきなりの鈴の怒号に面食らうシン。しかし段々怒鳴り返す気力も無くなってきたのか、先程より疲れ気味の声で返す。

 

「何だじゃないわよ! 何でそんなボロボロになってまで戦うのよ!?」

「……決まってんだろ。そこに敵がいるからだろ」

 

 その鈴の問いかけにシンは逆に不思議そうに返す。

 

「アタシはそういうことで言ってんじゃ……」

「そこに……」

 

鈴が言い返そうとするが、それをシンは遮る。そのままシンは言葉を続ける。

 

「そこに敵がいるんだから、倒さなきゃいけないだろ? 倒さなきゃ、誰も守れない。皆、死んでしまう」

 

 そういうシンの脳裏には、C.E.で見てきたいくつもの光景が浮かんできた。

 連合の襲撃を受けたアーモリーワンの光景を、ディオキアの戦いでタンホイザーの爆発に巻き込まれて死んだミネルバクルーを、廃墟となったベルリンを、レクイエムによって崩壊したプラントを、そして

 オーブで失ったシンの家族の姿を

 ベルリンで失ったシンが守りたかったあの無垢な少女を。

 

「シン……」

 

 シンのその言葉に一夏はどう返せばいいのか分からなくなる。シンの言うことは正しい。だらと言ってシンがそんな傷だらけになってまで戦う理由になるのか。

 しかし一夏が答えを出せない様に、シンにも答えがなかった。

 俺は何をしているんだ?

 何故俺は戦うんだ?

 俺の敵とは何だ?

 俺は何故ここまで堕ちていながら生き永らえているんだ?

 分からない。

 何も分からない。

 自分自身が

 自分の進む道が

 分からない

 まとまらない思考が幾つも流れ、その場で立っているのもキツくなってきたその時であった。

 

「俺は……!?」

 何がそうさせたのか、シンがポツリとそう言いかけたところで、突然全身を駆け巡る様な悪寒がシンと一夏に襲い掛かる。

 

「「っ!?」」

 

 突如襲いかかったそれにシンと一夏は表情を変え、シンは同時に既視感の様なものに襲われた。

 

この感覚、あの時、月面で感じた時の――

 

 そこまで思考がいった所で今度は上空から殺意の様なものを感じた。

 

「っ!! 全員、回避行動をとれ!!」

「っ!?」

「な、何!?」

「どうしたんですの!」

 

 そのシンの言葉に一夏は反応し、鈴とセシリアが聞き返す。

 

 瞬間、上空からビームが空間を走った。それを見た一夏とセシリアはとっさに回避行動をとるが鈴が遅れてしまっている。

 

 間に合わない!

 

 鈴を見てそう判断したシンは鈴前に立ち、両腕のビームシールドを展開、何とかやり過ごす。そしてビームが跳んできた方向、上空に目を向ければ、空が歪み、暗雲の様なものが立ちこめだしていた。

 

「な、何ですの?」

 

 今全員が抱いている疑問を代弁する様にセシリアがポツリと口にする。しかしそれに答える者は誰もいない。暫くしてからそれに変化があった。暗雲の中からISに似た何かの足が出てきた。初めは何なのか分からなかった。しかし徐々にその全貌が見えるにつれ、シンは思わず呆然としてしまう。

 あのモスグリーンのカラーリング、肩とスパイクとシールド、そしてザフト系列に共通のモノアイ――

 

「何で、ザクがこんなところに……」

 

 ZGMF-1000『ザク・ウォーリア』、シンが所属したザフトの量産型MSである。サイズは3mとISサイズにスケールダウンしているが、その特徴的なフォルムは間違えようが無い、ザクだ。それが20機程現れた。

 これだけでも驚くことなのに、ザクが現れた後に現れた最後の一機にシンは一瞬唖然とするも、次に心の内から沸き上がってきたのは、怒りだ。

 

 何でこいつがこんな所に?

 

 分かり切っていることじゃないか。

 

 こいつはこうやって、何時も俺から何もかも奪っていったんだ。 

 

 ああ、そうかい。

 

 そうやってまた――

 

「俺から全て奪っていくつもりかよ!!!!

 

 

フリーダム!!!!」

 

 シンはそう言い捨て、目の前に悠然と佇む美しき堕天使――フリーダムを睨めつけた。

 




どうも。パクロスです。八房先生の妄想力もとい発想力に憧れるパクロスです。

八房龍之介先生はスパロボOGのコミカライズをやってる方なんですが、もうロボの設定の濃さがハンパないんですよねぇこれが。足の無いアルトにメガブースターつけたり、SRXにR-GUNの代わりにハガネがパージしたトロニウムバスターキャノンモジュールで擬似爆砕砲やったり……いいぞ八房もっとやれ。もの書きとしてあんな発想力が欲しいところです。

今回はこの作品でのシンのポジション決めといいますか、まあ一言でいうと「わかめ回」です。なんでわかめ?と思いますが、まあ深く考えないでください。某カードゲームの主人公達が蟹だったり海老だったりするのと同じ?…全然違うなこれ。

IS設定としては一夏の瞬時加速、あれは原作ではこの後のゴーレム戦で使ってた技ですが、ゴーレム戦はシンが全部持ってっちゃうのは決まってたのでじゃあここで使おうと思ってやってみました。書いてる途中で中々興奮するものがありましたねぇ。
で最後に登場したザク、そしてフリーダム、現段階では何も公開できない状態ですが、一応カテゴリーはこの手の作品によくあるISの無人機とかではなくMSとして登場させています。まあここから先はネタバレになるので伏せますが。こうご期待。

次回は第一章も大詰め。怒涛の展開、シンの葛藤、そして最後に始まる「覚醒」。これらが複雑に絡み合いすごいことになると思います。ではまた次回。
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