学生の皆さん、学校楽しいですか?
私はため息が止まりません。
唯一の楽しみが執筆とゲームだけなので。
ではどうぞ
連日、バーテックス関連の話題で持ちきりのニュース番組。一週間も寝てたら星音も流石に飽きてきた頃だった。
「というか、逼迫してるのにバラエティなんてやってられないか。」
とカチカチ切り替えていると、
『勇者とはなんでしょうか、相原さん?』
勇者、という単語が耳に入ってきたのだ。相原という神官が説明を始めた。
『勇者様とは、神様が力をお与えになった人を指し、皆さんのことをお守りするお方です。三宮の皆様をお守りし、一万もの命をお救いになられました。その名を國塚星音様。初日の御役目後、そのお身体をお安めになっています。』
「は、はずかしい・・・」
マインドヴォイスではなくリアルヴォイスが出てしまった。自身が赤面しているのも理解できた。と、話題が変わった。
『金星台に星音様に力を御与えになった天津甕星様の大社が神戸大社で天津甕星様のお声を神託として受け取る巫女、美祢坂愛衣様の指示により創建されることが決定しました。』
「金星台に大社が?」
金星台はヴィーナスブリッジの近くにある、いわば公園のようなところだ。
「目的はなーんとなくわかるけど・・・」
とニュースを眺めて入るとドアからコンコンと音がなった。
「どうぞー」
と入室を許可するとガチャっとドアが開いて、
「今日退院日だけど、身体はどう?」
と愛衣が入ってきた。
「ああ、愛衣。ニュースに名前なんか出ちゃって、すっかり有名人じゃん。」
と対面早々におちょくって見せた。
「それは星音もでしょー?」
「そ、そうだった・・・」
と手痛いカウンターを食らったのだった。愛衣は本題に入った。
「原稿、覚えてくれた?」
「うん。」
流石に一週間もありゃ頭に入るというものだ。
「じゃ、今日の夜、金星台で演説してもらうから!」
「え」
唐突すぎる本番日の宣告だった。
「え、じゃない。」
「いや、え、だよ。リハとかないの?」
「今から」
「ええ・・・」
とはいえ、やれることなら早くやりたかったのも事実だ。
「ま、しゃーないでしょ。」
と言いつつ一週間ぶりにベッドからテイクオフした星音はゆっくり立ち上がった。
「迎えが来てるから。みんなに会わなきゃでしょ?」
愛衣の気の効いた手配だった。
「一週間もベッド生活じゃ心配するな。」
愛衣はコートを差し出した。
「ふふ。ありがと。」
と微笑みながら受け取った。
「外は寒いからね。」
まだ完全回復とはいかない星音は愛衣の肩を借りつつゆっくり歩いた。
「なんだか、お互いに幸福なのやら不幸なのやら・・・だよね。」
星音は愛衣に何気なく話しかけた。
「少なくともみんなとは距離ができちゃったなー。」
「やっぱ崇拝対象になってる節はあるね。」
「今日の演説でより一層深まるんだろうけどさ。」
「みんなの心の拠り所が必要でそれが私たちだっていうのも、まだちょっと夢見てるみたいだけどね。」
「今日で決心できるから、むしろ演説はさせて欲しかった。」
すると愛衣がちょっと不満げな顔をしている。
「どうしたのさ?」
と尋ねてみた。
「いやー星音がちょっと大人になっちゃったなーって思って。やっぱさみしいよね。」
だがそれは星音も同じ気持ちだった。
「テレビとか見てると愛衣も少し遠く感じるよ。」
愛衣は驚いた。
「へぇ」
「なに?」
「いや、私もそう思われてたのかーってね。でも」
愛衣が手を握ってきた。
「私が巫女になってなかったとしてもずっと星音の友達だよ。」
星音はついウルっときてしまった。
「やっぱいつもの星音だ。」
と愛衣が今までのやり取りを全て破壊する一言を放った。
「こういうところでそういうこと言っちゃうのも私への愛ってわけだ。愛衣だけに。」
ははは、と二人ともノリで笑いに行った。
車に乗ると夢星台にはすぐに着く。星音は久々に外界を窓越しに見た。
「悲惨だな。雪も積もってるし、とても住める状態じゃなさそうだ。」
と破壊された街をみていった。人気はうっすらとだがある。
「私たちが起点になって神戸のみんなを盛り上げなきゃね。」
と若干プレッシャーをかけてきた愛衣は少し笑っている。
「しばらくは勇者としてのお役目よりメディアに振り回されそうだ。」
星音も今後を思うと苦笑いせずにはいられなかった。
そうこう言っているうちに夢星台中学前までやってきた。
「こんなに学校の姿を見なかったのは初めてかな?インフル連続感染の方が長かったか・・・あ、長期休暇除いてだけど。」
「うわー懐かしいね。A治って5日目にBにかかったやつだ。」
星音は小学生の時、半月出席停止期間を食らったことがあったのだ。インフルで。
「いやーあれはひどかった。」
と懐かしの話しをしていたら運動場で子供たちが雪遊びしている姿が見えた。
「子供たちは何が起こったのか理解できてるのかな?」
と愛衣が呟くと
「まだ現実に目をむけなくてもいいと思うな。」
と星音は自分の意見を口にした。
「いつか向けなきゃいけない時がくると思うけど、まだまだ、ちびっこはああ出なくっちゃね。」
歳相応には見えない発言をした。
「私たちのこと知れ渡ってるのかなぁ・・・」
星音は別の不安を抱えていた。
「まだ姿を見せたわけでもないし、夢星台町以外じゃ誰も知らないと思うけど、この街だったら話は別だね。しかも、母校ともなれば。」
愛衣はボロボロになった母校の校舎を見上げた。
「あまり変に様付けとかやめてほしいけど。特に同級生からは。」
「たしかにその辺は心配かも。」
と不安を抱えながらも地下大倉庫の扉を開けた。
中は意外にも明るく、一時居住スペースも炊き出し場も整っており活気にあふれていた。
「もっと暗いの想像してた。けど、みんな生きるのに必死なんだ。」
すると、その言葉を聞いていたのかある少女が近づいてきた。
「最初はもっと暗かったですよ。もう終わりだ、と怒鳴り散らす人もいました。空を見れなくなった人も、外にも出れなくなった人もいます。一生治らない心の傷を負ってしまった人もいます。それでも、一人一人が現実をちゃんと見つめて、無理矢理にでも元気を出していかなければこんな活気付いた世界を築けやしません。」
愛衣は驚いた。これで最初が暗かったなんて想像できもしない。
「私は國塚星音。貴女の名前を教えてもらってもいいですか?」
と問うと
「存じ上げております。神戸祇園中学2年の
初っ端から様づけときた。
「できれば、様づけはやめてほしいです。」
星音は晴美にお願いしてみた。望みは薄そうだ。だが・・・
「わかりました。なんなら敬語も取っちゃおう。」
あっさり受け入れてくれた。
「晴美ってよべばいい?」
「うん。私も星音、愛衣、って呼びたいな。」
二人は満面の笑みで、うん、と頷いた。
「さっきから気になってたんだけど」
愛衣は晴美に早速話しかけた。
「晴美ってもしかして・・・」
「わたし、人の心がわかるんだよね。だからほんとは星音と愛衣に話しかける時に敬語の方がいいかフレンドリーにしようか迷ったんだよ。」
星音は納得した。すると誰かの携帯が鳴っている。
「あ、私だ。」
と晴美は二人から離れ対応した。
「誰からだろ?」
「さぁね。」
しばらく経って帰ってきた。
「ごめん、大社の召集かかっちゃった。」
二人はびっくりした。
「大社の人だったんだ・・・」
「2日前だけどね。」
晴美は二人の前に立って改めて名乗った。
「勇者國塚星音と巫女美祢坂愛衣の専属カウンセラーにして整体師の沖山晴美です。今後ともよろしくね。」
「専属カウンセラー!?」「整体師!?」
「あっ」「えっ」
合わないことに動揺する二人を見てぷぷぷと笑う晴美。
「どうして笑うのさ!?」「そこ笑うとこ!?」
若干ニュアンスが違う。晴美は笑いながらその場を立ち去ってしまった。
「行っちゃった・・・」
「だね・・・」
二人は顔を見合わせた。すると、愛衣がクスクスと笑い出した。星音も思わず笑ってしまった。
二人はゆいとみのりを探して地下大倉庫を歩いた。
「そういえば、なんでこんな大きい倉庫があったんだう。」
星音は愛衣に尋ねた。
「ここ、ほんとは倉庫じゃなくってね、元々神社だったんだよ。金星台に通じる大霊脈があって、それで建立されたって由縁のね。」
星音は首を傾げた。
「星にまつわる神社ってほとんど天津甕星さまを御祭神としてるのになんでここだけ?」
すると愛衣はため息をつきつつ言った。
「生田神社、だろうね。」
「生田神社の祭神は
愛衣は少し驚いた。
「へぇ、よく知ってるじゃん。」
「一週間の間に勉強したんだよ。」
と星音は得意げに言った。
「天照大神と天津甕星は存在がそもそも背理しているから、主神の天照大神が優先されて建てらなかった。それで、ひっそりとここで信仰してたってことだ。」
と推測した。
「生田神社から天照大神の神性は無くなったから建てるけどね。」
と話していると星音はハっとした。
「二人一緒にいるな。」
「ふふ、そうだね。」
星音は手を挙げて、ゆいー、みのりー、と呼んだ。すると二人は微妙な表情をして、近づいてきた。
「えーっと・・ ・」
「どう呼べばいいか迷うわね・・・」
と二人は言った。
「今まで通りでいいよ。私も愛衣もその方が楽だし。」
するとゆいの顔がぱあっと明るくなった。
「よかったー。町長さんが様呼びしてたからどうしたものかってもやっとしてたのよね。」
みのりも
「二人とも遠くなったような気がしたけど、いつもの二人ね。」
と嬉しそうに言った。
「無事だってのは知ってたけど実際に顔を見ないとさ、なんだか不安じゃない?」
星音は一週間の間ほとんど人に会っていなかったから、心配もする。するとみのりはクスクスと笑って愛衣をみた。
「すごく叫んでたね。『生きたいなら私を信じてついてきてくださいッ!』て。」
さらに
「倉庫の演説もすごかったわよ!『これは神の御言葉です。生きている限り、希望を持ち続けろ。そういうのです!』とかね。」
とゆいが追い打ちをかけた。
「私が演説する前に演説しちゃったんだ・・・」
ちょっと聞きたかったと思っている星音とはよそに顔がカァーっと赤くなってしまっている愛衣は
「あ、あ、あれは、そ、その、なんか、みんなをま、守らないとって、お、思ってぇ・・・」
と一生懸命自身の内を伝えた。
「わかってるわよ。愛衣が本当にみんなのことを案じてたのは。」
みのりは愛衣の頭をよしよしと撫でた。
「私たちもう行かなきゃ。」
星音は時計を見て言った。
「ご両親のところ?」
ゆいは聞いた。
「うん。まぁ遺体は残っていないって聞いてるけど・・・ね?」
一週間、星音は家に帰らずじまいだった。
「お帰り言わなかったらお母さんもお父さんも、心配するから。」
「そっか。そうよね。」
ゆいはうんうんと二回頷いた。
「みのり、ゆい。じゃあ、また近いうちに。」
「星音も元気で。」
「明日にでもきなさい!」
とみのりに無茶を言われた。
みのりとゆいと別れて、星音の家の前にきた。
「ああ・・・」
無惨にもほかの家と同様、もう住めるような状態ではなかった。わかってはいたが、いざ実際に目の前にすると言葉が出ないし、固まってしまった。
「・・・家、入ろっか。」
愛衣が促してくれた。
「・・・うん。」
星音はまだ残っているドアノブを掴んで
「ただいま・・・」
と言いながら何故か少し硬いドアを力一杯引いて開けた。いつもなら聞こえてくる母親の声も、学校のことを聞いてくる父親もいない。廊下を歩いて、リビングに至るドアはなかった。無言でリビングを見渡す。壁の横には大きく穴が空いて、隣の家が見えていた。その穴の反対側にはもう黒くなった血痕が二人分あった。逃げる間もなく喰われたのだろう。
「お父さん・・・」
壁の右側についた父親のものと思われる血痕をなぞって、
「お母さん・・・」
今度は左側の血痕をなぞった。
「あの時は怒りに身を任せてたけど、今の私じゃ戦えない・・・」
息を吐くようにそう呟く。
「戦えるのは私しかいないのに覚悟ができてないんだ。」
その声は身体すらない両親に向けられていた。
「自分でもわかってたはずなんだ。人を守れるような立場の人間じゃあないってことは。でも・・・」
「その立場の人間になれてしまった。自分の意思とは関係なしにね。」
「これは・・・脅迫観念なのかもしれない。守れる力があるのに使わないっていうのはなんだか、罪な気がして。」
愛衣は安心するように笑みを浮かべた。
「みんな星音に期待してるんだよ。だって自分たちを守ってくれるのは星音しかいないから。だから、最大限の敬意を払って、最大限星音の生活をバックアップしてくれる。だからね、私も星音に勇者をやめていいよ、とは言えないの。」
星音の顔に苦い笑みが浮かび上がった。
「きびしい、な。」
「だから言わなきゃいけない。ある種お決まりとも言えることだけど、残酷な言葉でもある、自分にしかできないことをやりなさい、と。」
星音はもう一度両親の血痕をなぞった。
「愛衣も、みのりも、ゆいも、そして晴美も、私を支えてくれている。そしてみんなも私のことを見てくれている。その期待に応えるか否かは私の自由だけど・・・」
星音はようやく顔をあげ、愛衣をみた。
「期待には絶対に応える。それが私。國塚星音だ。だから、お父さん、お母さん。星の上から私を見守ってください。私が跪きそうになった時は、そっと背中を押して。それだけで多分、立ち上がれるから。」
血痕から手を離した。その瞳に一切の陰りはなく、自身の歩むべき道を見定めていた。
「決意、できたね。」
愛衣は尋ねない。
「ありがとう愛衣。」
「お礼はいらないよ。だってこれからいっぱい言ってもらうもんね。」
クスクスと星音は笑った。
「たくさん助けられるだろうからか。」
愛衣も笑った。
「ご明察。いっぱい助けちゃうよ。」
二人は玄関まできた。星音は振り返って言った。
「行ってきます。」
そして軽くなったドアを開けて二人は金星台へと向かった。
次回は演説回ですかね。演説内容考えなきゃ・・・
次回、星希の少女
お楽しみに!