流星の魔法少女   作:消火酵素

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星が好きだった。

 

 

 

夜の闇を照らす星の輝きが尊いものに思われて、とても好きだった。

 

 

 

闇を照らす光のような生き方。うん、良いじゃないか、素敵。

 

 

 

こんな私たちでも、誰かの人生を照らすことができるだろうか。

 

 

 

━━━できるなら、そんな生き方をしたい━━━

 

 

 

いつからか、漠然と、そう思うようになった。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

耳障りな電子音。その出所を探して布団から這い出る。

 

 

 

「うあぁぁぁぁぁ」

 

 

 

微睡みの中、呻きながら目覚まし時計のボタンを叩いて音を止める。そのまま畳の上に座り込み、目を擦る。

 

 

 

「朝かぁ」

 

 

 

望む者にも望まざる者にも等しく朝は訪れるとは誰の言葉であったか。そんなことを未だに稼働しきれていない頭で考える。そのままとりあえずカーテンを開けると朝日の光が入り込み、雀や雉の鳴き声が聞こえてくる。正直動くのも億劫だったけれど、つい先月に高校に入学した学生たる私には学校に行くという義務がある。

 

 

 

「さて、着替えますかね」

 

 

 

そう呟き、寝巻きを脱ぎ捨てて、まだ純白のカッターシャツとまだ糊の効いた紺のブレザーに折り目のしっかりついた同色のスカートに着替える。寝巻きを洗濯機に突っ込むために洗面所へと向かう。ついでにショートボブの髪を解かして顔を洗っておいた。ちなみにわが校はメイク禁止なのでその分時間が浮く。

 

 

 

居間に向かうと母がいた。

 

 

 

「おはようございます」

 

 

 

「おはよう」

 

 

 

朝の挨拶を交わして朝食の席につく。母がコーヒーを用意してくれていたのでありがたく頂くことにする。温くなったそれを一息に飲み干す。

 

 

 

「っはぁ」

 

 

 

「オジサンくさいわよ」

 

 

 

思わず口に出してしまった。反省。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

あの後パンを胃に押し込み歯を磨いてバッグを背負い、星型のオブジェクトが先端に付いたステッキのストラップをポケットの中に突っ込んだ。

 

 

 

「行ってきます」

 

 

 

そう言って自転車(黒。欲しかった水色は売り切れてた。)に乗り、漕ぎ出した。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

田んぼと田んぼの間のろくすっぽ舗装もされていない、通るのは近所のジジババの軽トラと私のチャリくらいの農道を進み、月間利用者15人くらいの駅を通りすぎ、山を一つ越えて、家から40分ほどすると、比較的人が集まった街が見える。

 

 

 

そのまま街中には入らずに海側へ向かうとそこから5分くらい漕ぐと海に面した小さな高校が見える。そこが私の通う県立高校である。偏差値微妙、設備微妙、立地ゴミの高校だけど家から一番近くの高校だったので毎朝45分かけてチャリでここに通っている。

 

 

 

なお次に近い高校が約二時間かかるから私の家がどれほど僻地にあるか想像がつくだろう。ちなみに距離の問題さえ解決できれば私は県一の進学校に行けるくらいには頭が良い優等生なのだ。

 

 

 

ボロボロの、錆びが浮いた自転車小屋にチャリを停めて、学校に入る。

 

 

 

教室のドアを開けると

 

 

 

「おはようよっちゃん!」

 

 

 

「おはようはっちゃん」

 

 

 

身長150ちょいくらいの黒髪ポニーテールの垂れ目のおっとりした感じの女の子―――私の唯一の小学生以来の親友たるはっちゃんこと虹林初音(にじばやしはつね)が最初に挨拶をくれた。

 

ちなみによっちゃんとは私山田夜空(やまだよぞら)のことである。どうも先祖が明治に名字が許された際、「周り山と田んぼしかないから山田でいいよね!」的なノリでつけた名字らしい。

 

 

 

席に着いて、教科書を机の中に突っ込みながらはっちゃんと会話を続ける。それは今日の授業がどうだとか隣のクラスの誰ソレが付き合い始めたとか今朝の日経株価だとか他愛ないもの。はっちゃんそんな話を楽しそうに振ってくれる、根本的にあまり人と会話が続かない私にとってかなり得難い存在である。

 

 

 

ちなみに私と彼女が親友になったのには紆余曲折あったのだがそれは割愛する。誰も黒歴史なんて思い出したくないからね。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

先日のテストの振り返りノートが見つからず焦ってバッグをひっくり返しファイルの中にそれを見つけて安堵していると

 

 

 

「ねぇ、聞いた?また犯罪が起こったんだって。『能力者』の。しかもこの辺で。怖いよね~」

 

 

 

はっちゃんがそう話を振ってくる。『能力者』という単語に思わずはっちゃんの方を勢いよく向いてしまった。

 

 

 

「な、なんか食い付きがすごいね」

 

 

 

「あー、ちょっと『能力者』ってとこに反応しちゃって。ほら、どんな能力がも分かんないんだから怖いな、って」

 

 

 

とりあえず言い訳。はっちゃんはこれで納得してくれたらしく「よっちゃんに怖いものがあるなんて意外」なんて言ってる。極めて心外。

 

 

 

ちなみに一応私は能力者であるが隠している。バレたらろくなことにならないと思うがこういうところからバレたりしそうで怖い。

 

 

 

なおも話を振ってくるはっちゃんだが、ここで朝の予鈴が鳴る。私は席に戻って、頬杖を付き、空をぼんやりと眺め先生の話を聞き流しながら「あの日」に思い返していた。

 

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

そも、『能力者』というのは一体何か。

 

 

 

それは今から約一ヶ月前に突然現れた超常の力『固有能力』を扱う人間。比較的弱いものでは力が強くなったり、皮膚を任意で硬化させたりする程度の能力だが強いものでは天変地異すら引き起こすほどの力を得る。

 

 

 

本当に前触れも何もなく起こった変化であり、そのため当初は何らかのバイオテロだとか異界の何かだとかはたまた魔法であるとか世論は侃々諤々、流言飛語飛び交うカオスな状況になった。

 

 

 

無論私もその日、能力に目覚めたわけであるが、その日は言ってしまえば最悪の1日だったと言うしかなかった。

 

 

 

 

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