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荘厳な空気が漂っていた。そこは白い建物で、三角屋根の形をしており、縦長の窓が並んでいた。周囲に他の建物は見当たらない。この建物は丘の上に鎮座している。門は木で出来ていた。純白の、翼がついた子ども達が門に入らんとする人々をじっと見つめている。それは、ちょうど門の真上に彫られた彫刻だった。
教会だった。
夏の朝。雲は分厚く、陽光は輝きを見せない。白い建物の街を鈍く照らしている。
カイリは教会の中、明るい色の木で出来た長イスの1つに腰を下ろしていた。イスは2 列で、全て等間隔に並んでいる。カイリは並んだイスの真ん中辺りに座っていた。カイリの他にも、数人が教会に訪れている。散り散りになって、神父の声を聞いている。
カイリも、神父の話を聞いていた。目を閉じて、耳から入る情報に集中する。
しかし、カイリの目的は、神父の話ではなかった。ちょっとした瞑想のために来ていたのだ。ただ、神父の話を聞かないで神に祈るのは罰当たりな気がして、しっかり聞くことにしたのである。
そうして、神父の話が終わり、その場で全員が神に祈りを捧げる。
カイリは心を空っぽにした。
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実のところ、カイリはそれほど教会に通っていない。前世が仏教徒なこともあり、教会に通うことに抵抗があったからだ。正直、悪いことをしている気分になって居心地悪く感じるのである。浮気した人間の気持ちを知ったような感覚を覚えたようで、なおさら罪悪感が募るようだった。
そんなカイリは、なんとなしに何か問題に行き詰まった時にしか教会に行かないことにしている。
そして、この日は自身に関するちょっとした問題を発見したために、カイリは教会に訪れた。
カイリは平日、学校に通っている。義務教育は12歳までで、それまでは文字の読み書きや計算問題、地理に歴史、理科の実験などを行う。
そして、体育の授業も存在する。
この頃の授業は器械運動だった。そして昨日、カイリの問題は授業中に起こった。
カイリは運動が得意だ。今世では遊び回った甲斐あって、カイリの運動神経は並の子どもの比ではない。ただ、これについてカイリは自覚していない。前世のカイリは運動が出来なかったからだ。徒競走はビリケツ、投球は飛ばず、逆上がりも苦手だった。並の子どもがどれだけの運動能力を持つのか、カイリは知らない。しかし、今世のカイリは運動に関して心配することはないはずなのである。
しかし、この授業中、カイリはバク転が出来なかった。
実のところ、このような問題は前々から多々あった。まず、カイリは最初、マットの上以外で側転が出来なかった。理由は単純で、"痛そう"だったからである。今でこそパルクールなんかに応用出来ているが、マットの外での側転、倒立回転飛び、胴ひねりなど、カイリは当初出来なかったのだ。
そして、今回はバク転である。バク転に関してはマットでも出来なかった。
何が言いたいか。つまり、カイリは度胸がなかった。
怖そうなこと、痛そうなこと、失敗したらと考えると足がすくむこと。これを一発で成功させるという度胸、そして自信。カイリにはこれが欠けている。これはつまり、とカイリは考える。
───私はまったく戦闘に向いていない。
カイリが気づいてしまった問題とは、つまるところこの事実である。
度胸がないとはどういうことか。これは、敵を前にして十分な動きが出来ないことだとカイリは思う。恐ろしさに負けて動けない、隙を突くことも出来ないとなればカイリの未来は暗い。一瞬の躊躇いが命取り、とは大勢が言っていることである。
これについて、ちょっとどうしようもなくなったために、カイリは教会に瞑想をしに来ていた。
そして、深く考える。
───戦うことが怖いなら……、
戦う前に勝敗が決まった戦いをするならば、毒を用いるのだろうか。ただし、これには膨大な知識がいるし、罷り間違って自分が毒に殺されるかもしれない。眠り薬も同様である。
近接戦闘なら、きっと自分は怖くて腰が抜けるだろう。実を言うと、カイリは本気で人を殴ったことがない。殴れない環境で育ったこともあるが、前世からの常識がカイリに人を殴らせなかった。敵をどうにかするよりも、防御に専念した方がいいのかもしれない。
では、何か護身術を習うべきなのか。しかし、この街にそんな教室はない。ネットで調べるにしても結局中途半端な出来になる。
なら、遠距離からの攻撃だろうか。これなら、自分の意志はある程度無視できる。本気で殴れないなら、強制的に威力が出るものが望ましい。
思い付くものは、銃火器、弓矢などでバリエーションがない。銃にしても用途によって種類が違う上に結構重い。走って持てる気がしなかった。では弓矢か。弓矢なら、ボーガンがある。鎧くらいなら貫く威力がなかったか。でも、連射が得意なイメージがない。最新のものなら連射機能が付いてるかもしれないが、その分お金がかかるだろう。それはちょっと、家計が厳しかった。
───どうにかならないかなあ。
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教会を出るともう昼頃で、街が賑わいを見せている。その様子は丘の上からはっきり見えた。どこかの店のランチの匂いが鼻をくすぐる。
ふと、カイリの耳に声が届いた。子どもの声だ。少なくとも5人以上、子どもが近くで遊んでいる。どうやら、丘の下、整備された公園から聞こえているらしい。カイリは気になって、まっすぐ公園へ向かった。
───何してるんだろ、入れてもらおっかな。
子どもは7人いた。1人は長い棒を両手にじっと遠く離れたもう1人を見つめている。棒の子どもの後ろに、2人ほど並んでいる。見据えられたもう1人の子どもは、大きな革の手袋をしていた。その手には拳ほどの白いボールがある。そして、棒の子どもに対面する形で3人、綺麗に散らばっていた。
ふ、と。子どもが動く。白いボールを持った子だ。ボールを両手に頭の後ろへ。片足を上げて体に引き寄せて。次の瞬間、引き寄せた片足を大きく踏み出し、勢いよく白いボールを投げつけた。対するは棒を持った子で、ボールが宙に投げ出されるやいなや、彼はその棒を横に振った。
カキン。
と、音がした。
「あ。」
───これって、武器になるのでは?
第3話 完
戦闘面の補完及び武器熟考回。近接戦闘は苦手でも逃げちゃいけないのは本人も分かっている。
おまけ
襲われた時、真正面なら喉を狙うべし。胸の真ん中、骨の隙間狙って突くと一瞬息が止まる。
顎を殴ると脳震盪。弁慶の泣き所も結構痛い。目を突くのは個人的に抵抗があるが、結構効果的。
追記.
相手が男の場合、金的を蹴り上げるべし。(すごく痛い)