独立先導者の成り上がり~盾の勇者は、ここからだ!!!~ 作:やいさほー
ご自衛の程よろしくお願いします。
楽しんでいただければ幸いです。
後、この話はあくまで何故召喚される事に
なったかの話なので、本編に直接
関わっては無いです。
これは、ジュン・ゲバルという男が
異世界召喚される前の日の話である。
その日は、青空のよく見える
晴れた日であった。
「ボス!起きてくださいよ、ボスゥッ!」
島の民が、慌てて長を起こしに来る。
その島の民は、彼の寝場所であるロッカーを
強く何度も叩く。
その島の長であるジュン・ゲバルという男は
「横になって寝るのは死んでから
好きなだけ楽しめば良い」という変わった
自論を持っている為、立てるロッカーに
入って眠るのである。
しかしまぁ、起きて起きてとロッカーを叩くのは
なんとも異様な光景だ。
その必死の呼び掛けに、
ゲバルはゆっくりとロッカーの扉を開けた。
「…ン?オウ、もう朝か……オハヨウ。
どしたんだそんな慌てて?」
ゲバルは少し眠そうな顔で、
欠伸をしながら島民に質問をする。
「ドウシタもコウシタもありませんよッッ、
朝っぱらから、自家用ジェット機が
ここに飛んできて 島中大騒ぎなんですよッ!?」
「……ジェットォ!?」
流石にこれにはゲバルも驚きを隠せなかった。
この島独立して以来の珍事である。
「…なんだ?とうとう痺れを切らした
ボッシュの奴が島に攻めてきたか?」
ゲバルは厳しい目付きで、
なるだけ考えたくない可能性を口にした。
もしそうならば、これから各地に潜んだ
ゲバル軍団とアメリカの戦争になるだろう。
しかし、それは彼の杞憂であった。
「いやそれが……中に乗ってるのは
日本人でして。それも老人の。」
ますます訳が分からない。
もしや日本の政権者だろうか。
ゲバルは国を担う人として、
政治には敏感なのである。
「日本人?しかもお年寄りィ?
……日本人だけなら、ミスター勇次郎か
ミスター刃牙かって見切りをつけれたんだけど…
誰だろうな、そいつ?」
「…とりあえず行って下さい、ボス。
まだ待ってるみたいですから…」
そうして彼に言われるがまま、
ゲバルはその老人の元へと向かった。
すると、本当にジェット機の傍に
老人が待っていた。その男を
警戒しつつ、彼は近づいた。
「……おッ!おおおッ!!1目でわかったぞ、
アンタがジュン・ゲバルじゃな!?」
その老人は、まるで旧友でも見つけたかのように
ゲバルを見てはしゃいだ。
「……そうだよ、貴方は?」
「おぉ、これは失礼。
突然来て名乗りも挙げぬなど、無礼も
甚だしいことじゃな。儂の名前は
徳川光成、よろしゅうな。」
そう言って、その老人は
ニコリと笑い握手を求めた。
ゲバルは半信半疑な顔ながらも
それにしっかりと応える。
「トクガワ……って確か大昔は
幕府のトップで、今は世界クラスでも
スゲェ財閥の、あの徳川かい?」
そう、この島に来れる者の数は
かなり限られている。
その中で日本人となると更にだ。
そうなると、徳川という名前は
ただの見栄や嘘には見えなかったのだ。
「ほおぉ、知っておられたか。
こりゃ光栄じゃのう。」
「知ってるも何も………ア、とりあえず
お話しに来たんなら、上がっていく?」
ゲバルは、その男が権力絡みではなさそうな
話をしに来たのを察し、この島に上げる
判断を下した。険しい顔も解き、
いつもの柔らかい表情に戻す。
「おお、いいのかね?別に儂は
場所を変えて構わんぞ?」
「いや、別にまァ…せっかくですし、
上がってって下さいよ。」
「ハハハ…有難いのう、それでは
お言葉に甘えよう……」
それを一瞬、光成の付き人が止めかけるが、
光成は行く気満々のようで
止める事は出来なかった。
ゲバルはいつもの調子に戻り、
その老人を自宅へと連れていく。
彼を尋ねてくる客人とは珍しいらしく、
途中で島民に色々と話しかけられた。
「コンニチワお爺様、ボスのお知り合い?
観光なら、私も教えてあげれるケド……」
「あ、いや、観光をしに来た訳じゃ
ないから大丈夫ですぞ……
ただの世間話じゃ。カッカッカッ」
「ボスゥ!お客なんて珍しいッスね!
外交ッすかァ!?」
「世間話しに来たんだってさ、
この人。ハハハ……」
そんな調子で島民のいる場所を抜け、
ゲバルの家へと辿り着いた。
「……ここが、お主の家か?」
「あぁ。そうさ。……ご不満がおありで?
ミスター徳川。」
「いや、なんというか…良い意味で
簡素な家じゃな。山小屋のようで……」
「ハハハ…無理に褒めなくて大丈夫だよ、
徳川サン。なんせ俺の国の奴らですら、
ボロ屋って気軽に言いやがるんだから…
今更気にしませんよ。
…さ、どうぞ上がって。」
「う、うむ。では失礼するぞ……」
そうしてゲバルの家へ入ると、
別段中が豪華な内装なわけでも無く、
本当に山小屋のような部屋だった。
これが小国とはいえ、
一国の大統領の部屋なのだろうか。
光成は、ゲバルに言われるがまま
1つの椅子に座った。
そして、ゲバルが机を挟み、
その反対側に座り込む。
「さて…ミスター徳川、早速本題に行こう。
貴方、何しに来たんで?」
ゲバルは単刀直入にそう聞いた。
あえて遠回りに聞くのは、
彼はあまり好きではない。
「おお、そうじゃったな。実はな、
アンタに頼みがあってここに来たんじゃ。」
「俺に頼みィ??……俺の隊員を
貸してほしいとか、そんなとこかな?」
普段来る頼みといえば、その位しか
彼には思いつかなかった。
しかし相手は徳川光成。
そんな依頼の為に
こんな場所にはわざわざ来ない。
「イヤイヤイヤ、確かにあんたの軍は
普通の軍と比べて明らかに融通が効き
強いだろうが……そうでは無い。
むしろ用事があるのはゲバル、
アンタ自身じゃよ。」
ゲバルにとってこれは意外であった。
興味深そうな顔で彼は聞き返す。
「ヘェ、是非聞きたいな。」
「それはな……ゲバルよ、アンタに異界に
行ってもらいたいのじゃ。」
あまりに唐突な事で、その場の時が
数瞬止まった。お互い何も言葉を発さぬまま
10秒ほどたった頃、ゲバルがやっと発声した。
「……ん??」
「いや待ってくれ!言わんでも分かるぞ!
そりゃ怪しいよな!?こんな爺が
いきなり島に来て言った言葉がこれ!
……でもそれは説明するから、
ちょっと、待ってくれんかの?」
普通なら即「帰れ」と言うだろう。
しかしゲバルは物分りがよく懐も深い。
金持ちがわざわざここにからかいには
来ないだろうと、真面目に光成の話を
聞くことにした。
「……わかった、その話、聞かせてくれ。」
ゲバルが話す事を許すと、
光成は嬉しそうに手を摩った。
「おお、聞いてくれるか。やはりお主、
懐が深いのう。……これはごく最近の事じゃ。
面白いものが古書店で発見されたんじゃよ。
実はな、異界に通じておる本が
見つかったのじゃ。その本が……これ」
彼は話しながら箱を取り出し、
それを開けた。その中には
少し古びた本が入っている。
「……雰囲気は凄いなァ、たしかに。」
素直にゲバルは頷いた。
普通なら一笑に付す所だが
彼はそういう事はしない。
それに、霊気や超常現象の類は
感じられないとしても、
その本に力がある事が彼には少し分かった。
風が吹くタイミングが秒単位で分かるように。
乱暴に脱がれ立ったままのタキシードが
いつヘタるかが理解できるように。
「お主にも何となく分かるか。
しかし儂は保証や根拠も無しに、
何となくで言っとる訳じゃないぞ。
その保証をしたのはな……
胡散臭くはあるが正真正銘本物の霊媒師……
儂の姉が宣言したのじゃ。」
ゲバルは、彼が姉、と言った瞬間
目を見開いた。その人物の名を、
彼は耳にした事がある。
「……ミスター徳川の姉で、霊媒師……
確かミス寒子、でしたっけ?」
「……!?し、知っておったのか!?」
「情報網って、広い程面白い話が
飛び込んできて良いですよ、徳川サン♪」
彼の右腕、カモミール・レッセンや、
その他の色んな場所に派遣されている
武器無きゲバル軍隊。所属する場所が
多ければ、当然拾う情報も多くなるのが
当たり前である。
「す、すごいの……流石衛星で監視されるだけは
あるわい……しかし、それなら話は早いの。
まぁそんな姉が見つけた本なんじゃが、
開いたらすぐに開いた人物を引き込む位には
力が強力だと言っておった。」
「……それなら、誰も開けないように
封印とかしなきゃダメじゃないか、徳川サン。」
至極真っ当な意見だった。しかし、
それは光成にとってもよく分かっている。
そう上手くいく話ではなかったのだ。
「……そう、問題はそこなんじゃよ。
どうやらこれと異界を繋いだ者、
異界に相当来て欲しいらしくてな……
それも強者を求めておる。
つまり、この本の力は強い。
もしかすると、この本が求めるあまり
放置しすぎると危険かもしれん、
と姉が言ったのじゃ。」
要するにそれは、開くのは危険なのに
いつか誰かが開かなくてはならない、
まるで時限爆弾のような本だったのだ。
「……ははァ、読めたぞミスター徳川。
それで、そこに行くのに白羽の矢が
俺に立ったって訳かい?」
何もかもお見通し、そんな口調で
ゲバルは光成に質問を投げかける。
「……そう、その通りじゃ。
アンタがそれに相応しいと判断されたのじゃ。」
光成は真っ直ぐにゲバルを見つめた。
ふざけている訳では無い、
真剣にお前を選んだのだと。
「いやァまぁ……嬉しいけど…
俺より強いオリバとか、悔しいけど
そっちの方が適任じゃない?」
正直ゲバルも興味はある。
異界が強者を求めている。
何か強いヤツを求める理由が
そちら側の世界にあるのだろうか、と。
しかし、やはりそれを加味しても
自分が選ばれた事に彼自身が
あまり納得いかないようだった。
「それは……確かにあのオーガこと勇次郎、
お前さんがさっき例に挙げたオリバ。
上げていけばまだまだ居るかもしれんが……
姉が言う、本が求めている条件にはな、
ジュン・ゲバル…アンタが1番あっておった。」
そう、ゲバルが選ばれた最大の点はここだ。
徳川寒子が言った、本に求められている者。
それ即ち、行く資格がある者なのだ。
「……条件ってのは?まさか
良い顔である事、とか?」
彼は軽い冗談を口にした。
刃牙に言った「恋人になってはナシだぜ」
のレベルではあるが。
光成は少し言葉に詰まらせた後、
ゲバルにこう答えた。
「……それはな、勇気ある者である事、
そして、強く、優しく、賢く、
リーダーシップのある人物である事じゃ。」
ゲバルは少し困惑した。
これが条件、そしてそれに選ばれたのが俺。
……なんで?と、なるだろう。
いきなり褒められたようなモノだ。
彼は理解が得たく、再び光成に質問をした。
「……オーウ、それが俺なの??嬉しいけど…
なんでなのか、聞かせてもらって良い?」
光成は、困惑するのも当然といった
表情で、彼が選ばれた理由を語り出した。
「実はな、戦いのプロで、
顔も広い男に儂が聞いたんじゃ。
そしたらソイツはお主の事だと答えよった。
……刃牙、刃牙じゃよ。お主も会ったろう?
その男からの推薦じゃ。」
「……ミスター刃牙のかい?
そりゃあまた、凄い話だ……」
そう、事もあろうか、あの刃牙の推薦である。
割と負けず嫌いで自分が行くと
言いかねない様な、彼からの推薦だ。
その時彼は、こう語ったという……
~刃牙の話~
『エ?勇気があって、強く優しく賢く、
リーダーシップのある男?
……ン~………いやァ、定義が難しいケド、
ゲバルさんじゃないかなぁ。』
『ミスターアンチェインこと
オリバさんと戦ってから、朱沢グループに頼んで
ゲバルさんの島に行ってみたんです。』
『そしたら島の皆さんが暖かく迎えてくれて。
しかも彼ら、ゲバルさんの話バッカリで……』
『大蛇に丸呑みにされた子供を助ける為に、
大蛇の中に入って腹をぶち破って
出てきた、みたいな話から
独立を起こす時の武勇伝まで…』
『しかも全部カッコイイんだなァ、
その話の中のゲバルさん。
それを誇張しているようにも聞こえなくて。』
『小さい島の長が大国という強大な力に
腕っ節1つで立ち向かう誇り高きその勇気。
そんな精神的意味でも、
肉体的意味でも十分な強さ。
自国の民や、弱き人への優しさ。
そしてその2万人の国民を引っ張りあげた
リーダーシップ。
…悔しいですけど、
喧嘩ではあの人に勝てても、
そういう所じゃ俺、なんなら父親の
勇次郎でも負けるんじゃないかなぁって…』
『いやァ、あの人だってやろうと思えば
出来ると思いますよ?貧民を救っての、
勇次郎国の立ち上げ…でも、彼はそういうの
きっと嫌いでしょうから……』ハハ
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「……とまぁ、こんな具合で
お主を絶賛しとったんじゃ、あの範馬刃牙が。」
全てを聞き理解した彼は、
少し恥ずかしそうに顔を歪めた。
「カァ~……アイツらいつの間に
俺の噂を…なんか照れちゃうね」
「何を恥じることがあるやら。
寧ろ誇るべきことじゃよ。」
光成は腕を組み、フンと鼻を鳴らす。
まるでそれが自分の事であるかのように。
「さて、話を戻そうかの。
……君には責任がある。この島の
大統領としての責任がな。
それを加味するならば、
これはあまりに酷な依頼であろう。
何故ならは向こうに行けば長く戻って来れない。
最悪、儂の姉に頼めば、
何とか戻ってこれるかもしれぬが……
異界に言ってみてくれなどと
ハッキリ言って滅茶苦茶じゃ。
もし無理であれば今からでも
断って貰って全く構わんぞ。」
本心ではないだろうが、真っ当な意見だ。
本当は、ミスター2と言われる彼が異界に
行ったなら、どのようなことが起こるのか。
そして、どんな経験をするのだろうか。
それが徳川老は気になっているだろう。
しかし、それは単なる興味に過ぎない。
大統領の仕事が大事と言うなら、
それは当然の判断である。
それに、本が暴走する件についても、
最悪ゲバルの変わりは居る、
光成はそう考えている。
光成の言い分を最後まで聞き終えた
ゲバルは、顎に手を当て悩むポーズを見せた。
ゲバルとしては正直、
仕事は大切だがそれに興味がない訳ではない。
オリバの噂だけで刑務所に収監されに
行った男だ、ロマンを求める心は十分にある。
そこで彼は、他の者に意見を求める事にした。
「…ン~……そうだな……
ちょっと、皆と話してきて良いかな?」
「ああ、もちろん。その権利はゲバル、
お前さんにあるのだからな。」
アリガトウ、と一言だけ残し、
彼はサッと出ていった。光成は
この場所で待つことを決めた。
どれくらいかかっただろうか。
ゲバルは小走りで戻ってきた。
「お、早かったの……で、
結果的にどうじゃ?」
「いやァ……皆広場に集合させて
ミスター徳川の言った事、
そのまんま言ったらさ~……
『ロマンあるじゃん!行ってきなよボス!
俺らなら大丈夫だからさ』
……だって。頼もしい民衆だよ、マッタク」
ゲバルが半分呆れ、しかし半分楽しそうに
そう答えたのを見て光成は大笑いした。
「カッカッカッッ、そうかそうか。
ゲバルよ……お主は、それで良いんじゃな?」
「…オリバの事聞いてさ、
直ぐに刑務所に収監されに行くくらいには
好奇心まみれの男だよ、俺ってね♪」
彼は爽やかに笑った。
その最後の返事を聞いて、
光成はにぃっと白い歯を見せた。
「よォし、決まりじゃあ!
ミスター2、ジュンゲバルの新しい船出ッッ!!
いやァ、断られてもおかしくないと
思っとったが、受けてくれて嬉しいぞ!!」
彼はゲバルの手を出会った時のように取り、
出会った時以上に振り回した。
「お、落ち着いてくれミスター徳川……」
そうして光成の興奮が覚めたあと、
2人は本を机に置き、その目の前に立った。
「……これを開けた瞬間、お前さんは
この世界から居なくなる。
……それは、承知の上なんじゃな?」
「さっきも言ったでしょ徳川サン。
俺はもう決めたんだ。皆も応援してくれた。
行ってくるよ。……出航の刻だ。」
ゲバルはニコリと光成に微笑み返し、
本を開いた。すると、その本は
瞬く間に輝き始めた。
そしてゲバルを、異世界へと誘った……
人を誘い満足したのか、その本は
パタリと独りでに閉じた。
光も収まり、力は消え失せたように見えた。
「………行って、しもうたのぉ~……
達者でな、ジュン・ゲバル……
もし帰ってきた時に、お前さんが
望むこと、なんでも叶えてやるからのぉ~……」
……画して、ジュン・ゲバルという男は
異世界へ誘われた。彼はその世界で
何を行うのだろうか。それはまだ、
誰にも分からない話である………
もし、誤字やご意見があれば教えて下さい。
作品へのご意見だけでなく、追加した方が良いタグ等でも
是非お願いします。次の話からは、
盾の勇者の成り上がりの本編と同じように繋がります。