独立先導者の成り上がり~盾の勇者は、ここからだ!!!~ 作:やいさほー
詰めれる所は文字を詰めてみました。前の時とどちらが読みやすいか、もしご意見があれば教えて頂ければ幸いです。
勇者たちは王が用意した来客室の豪華なベッドに座り、
それぞれの武器をマジマジと見つめながら説明を読んでいた。
そして、その説明に書いてあることをまとめるとこうなる。
伝説の武器はメンテナンスが不必要の万能武器である。
持ち主のLvと武器に融合させる素材、倒したモンスターに
よってウェポンブックが埋まっていく。
ウェポンブックとは、変化出来る
武器の種類を記載している一覧表である。
武器のアイコンにあるウェポンブックを開くと、
それは瞬時に展開され、壁を越えて長々と記載されていた。
そのどれもがまだ変化不可能と記載されている。
また、特定の武器に繋がるように
武器を成長させていくこともできる。
スキルを獲得するには、武器に込められた力を
解放させないと駄目なようだ。
そして、最後に会得していたスキルである、
独立の先導者の説明を見る。
[スキル説明:これは自分の為でなく、
国の為に己と仲間を鍛え上げた者に
与えられる特別なスキル。
スキル効果は何を鍛えたかによって変化。
(例:射撃の訓練をした場合、
命中率等が補正されます)
スキル効果:武器を使用しない
技の威力補正(中)、
他人に技を伝授する際、
伝授される側のLvアップ補正(大)]
「ウーン…よく分かんないなァ、ヤッパリ。親父から教わった
戦闘術の方がまだ分かりやすいよ……」
ゲバルはそれらを眺めそうボヤいた。
「っていうかこれ、ゲームじゃね?
俺は知ってるぞ、こんな感じのゲーム」
元康が自慢げに言い放つ。
「え?」
「というか有名なオンラインゲームじゃないか、
知らないのか?」
「いや、俺も結構なオタクだけど知らないぞ?」
「お前知らないのか?
これはエメラルドオンラインってんだ。」
「何だそのゲーム、聞いたことも無いぞ…」
「お前本当にネトゲやったことあるのか?
有名タイトルじゃねえか。」
「俺が知ってるのはオーディンオンラインとか
ファンタジームーンオンラインとかだよ、有名じゃないか!」
「なんだよそのゲーム、初耳だぞ?」
「え?」
「え?」
「皆さん何を言っているんですか、
この世界はネットゲームではなく
コンシューマーゲームの世界ですよ。」
「違うだろう。VRMMOだろ?」
「はぁ? 仮にネトゲの世界に入ったとしても
クリックかコントローラーで操作するゲームだろ?」
ゲームの事をよく知らないゲバルを
置いてきぼりにして、3人は議論した。
「クリック? コントローラー? お前ら
何そんな骨董品のゲームを言ってるんだ?
今時ネットゲームと言ったらVRMMOだろ?」
「VRMMO?
バーチャルリアリティMMOか?
そんなSFの世界にしかないゲームは科学が
追いついてねえって、寝ぼけてるのか?」
「はぁ!?」
「あの……皆さん、この世界はそれぞれなんて名前のゲームだと思っているのですか?」
話が終わらなさそうなのを察したか、
樹が軽く手を上げて尋ねる。
「ブレイブスターオンライン。」
「エメラルドオンライン。」
「…ン~…俺はよく分からない。
ゲームなんてやった事あったっけなぁ?」
彼だけ無知のような雰囲気が出てしまっているが、
幼い頃は親からの戦闘教育、少年期は海賊、
青年期は独立するために
ゲバル軍団を鍛え上げる……こんな風に生きてきたゲバルに、
ゲームをしている暇は恐らくなかったと思われる。
仮に時間があったとしても、ゲバルはゲームより
リアルで闘う方が好きだろう。
「あ、ちなみに自分は、
ディメンションウェーブという
コンシューマーゲームの世界だと思ってます。」
「まてまて、情報を整理しよう…」
元康が額に手を当て、各々が好き勝手に
言う流れを一旦断ち切った。
「錬、お前の言うVRMMOってのは
そのまんまの意味で良いんだよな?」
「ああ。」
「ゲバルは…置いておくとして、
樹、お前も意味は分かるよな?」
「SFのゲーム物にあった覚えがありますね。」
「悪いなぁ、俺はサッパリでさ。」
「俺も2人に似たようなもんだ。
じゃあ錬、お前の、その……
ブレイブスターオンラインだっけ?
それはVRMMOなのか?」
「ああ、俺がやりこんでいたVRMMOは
ブレイブスターオンラインと言う。
この世界はそのシステムに
非常に酷似した世界だ。」
錬の話によると、VRMMOというものは
錬にとって当たり前のようにある技術で、
脳波を認識して人々はコンピューターの
作り出した世界へ入る事ができる、という話だ。
「それが本当なら…錬、お前のいる世界に俺達が言ったような古いオンラインゲームはあるか?」
錬はその返答がわりに首を横に降った。
「これでもゲームの歴史には詳しい方だと
思っているが、お前達が言うようなゲームは
聞いたことが無い。お前達の認識では
有名なタイトルなんだろう?」
元康がそれに頷く。詳しいのにその知識がないというのも
おかしな話なのだ。
「じゃあ一般常識の問題だ。
今の首相の名前は言えるよな、
ゲバルも大丈夫そうか?」
「……俺は俺の国で大統領なんだけど、
これはどうしたら良いかな?」
少し申し訳なさそうな、しかし半分ジョークのゲバルの言葉に
元康は先程のゲバルの自己紹介を思い出した。
「あっそうか、ゲバルはそもそも在住日本じゃないんだな。
そりゃそうか……まぁいいや。一斉に言うぞ、せーの!」
「湯田正人。」
「谷和原剛太郎。」
「小高縁一。」
「俺!」
「「「「……」」」」
4人とも全く違う答えになり、全員が沈黙を帯びた。
自分は小国の大統領と言っていたゲバルは
ともかくとして、他の3人の答えが明らかに一致していない。
「どうやら、僕達は別々の日本から
来たようですね。彼はともかく」
奇妙なものを見る目を向けられたゲバルは
「イヤァ申し訳ナイ」と言った表情をした。
「そのようだ。間違っても同じ
日本から来たとは思えない。」
「という事は異世界の日本も存在する訳か。
それ所かゲバル大統領なんて聞いた事ないし
世界ごと別なのかもな。」
「時代がバラバラの可能性もあったが、
幾らなんでもここまで符合しないと
そうなるな…」
奇妙な集まりとしか言いようがない。
日本国籍ですらない者もこの中にいるのだから
中々よく分からない人選である。
「このパターンだと色んな理由で
来ちゃった気がするんだけど、どう?」
「あんまり無駄話をするのは趣味じゃないが、
情報の共有は必要か。」
練がどことなく上から目線で、
4人の中で最初に語り始めた。
「俺は学校の下校途中に、
巷を騒がす殺人事件に運悪く遭遇してな」
「あらら…」
「一緒に居た幼馴染を助け、犯人を取り押さえた所までは覚えているのだが」
錬が脇腹を摩りながら事情を説明する。
きっと助ける為に犯人を取り押さえた所
反撃され、死んでしまったという事だろう。
「そんな感じで気が付いたらこの世界に居た」
「そっかァ~…危ないヤツから
ダチ庇うなんて、勇気あるなァ。
男の鑑だ!」
そんなゲバルの素直な賞賛の言葉に練はクールに笑い返した。
「じゃあ次は俺だな。」
軽い感じで元康が自分を指差して話し出した。
「俺はさ、ガールフレンドが多いんだよね。」
「確かに君は、良い面してるけど
一途なタイプには見えないな。」
何となく女好きそうな雰囲気も含め、
ゲバルはそんな言葉を返した。
「それでちょーっとね……」
「二股三股でもして刺されたか?」
錬が小バカにするように尋ねる。
すると元康は目をパチクリさせて頷いた。
「いやぁ……女の子って怖いね」
「ハハ…そうか。」
ゲバルは苦い笑いを返した。
あんなにも体が大きくなってしまったマリアを、
心から愛していたビスケット・オリバと比べて
なんと軽い男だろうかと少し軽蔑の心を抱きながら。
すると次に、樹が胸に手を当てて話し出す。
「次は僕ですね。僕は塾帰りに横断歩道を
渡っていた所……突然ダンプカーが全力で
カーブを曲がってきまして、その後は……」
「…っちゃ~…災難だな、そりゃァ……」
「「……」」
要するに引かれてしまったということだ。
ただただ災難な話である。
「あ、次は俺?…俺はなぁ…」
ここに来た理由は、みな死んだからであった。
しかし、ゲバルだけは、本に選ばれここに飛んできたのだ。
どう言葉を選んだものか、少し悩んでからゲバルは始めた。
「……えーっとね、信じにくいかも
しれないけど…選ばれて来たんだ、俺。」
「…選ばれた?もしかして…お前は
勇者に相応しいとか、そんな感じか!?」
「あー、そうそう!そんな感じ(ワカンナイケド)、
それで俺はここに来たんだ。」
「……くぅ~、すげぇな、
大統領はスケール違うわ~……」
そんな元康の言葉にアリガトウ、と笑いながらゲバルは返した。
正直それで良かったのかも分かってはなかったが。
「そういや皆、さっきの話的に
この世界のルールっていうか…
仕組みは割と熟知してるワケか。」
「ああ。」
「やりこんでたぜ。」
「それなりにですが。」
「そういう意味では俺って遅れてるんだなぁ…
ねェ先輩、色々教えてくれると
嬉しいんだけど…」
冗談交じりの懇願に、錬は冷酷に、元康と樹は何故か
とても優しい目でゲバルを見つめた。
「よし、元康お兄さんがある程度、
常識の範囲で教えてあげよう。まず、
俺の知るエメラルドオンラインでの話だけど、シールダー……盾がメインの職業な。」
偉そうに話す元康の話をゲバルは目を見開いて、
ウンウンと頷いて聞いた。
「最初の方は防御力が高くて良いのだけど、
後半に行くに従って受けるダメージが
馬鹿にならなくなってな。」
「ありゃ……」
「高Lvは全然居ない負け組の職業だ」
「へぇー…そうなのか。まぁ
受け側に一方的に回っちゃ
不利はなりやすいのは考えれば
当たり前の話だよな。」
ゲバルは戦闘経験が豊富だ。守りばかりする者がどうなるかは
よく知っている。攻撃防御両者備えてこその戦闘能力なのだ。
「まぁそういう事だな。ドンマイとしか
俺には言えないかな…」
憐れむ元康を他所にゲバルは淡々と質問を続ける。
「そういや、転職とか武器の変化ってあった?」
元康は静かに首を横に振る。
「君たちはどうかな?」
ゲバルが錬と樹に目を向けると、
2人は元康と同じような反応をした。
「そうか、まぁ別に構わないかな…」
そんな3人とは対称的に、ゲバルは全くめげていなかった。
むしろゲバルが身につけている格闘術は、
武器を必要とせず、自分の五体を存分に活かす体術なのだ。
槍、剣、弓だったならそれの邪魔になっていた可能性もある。
俺の武術はこの世界でも通じるのかなぁ、
など1人思いふけっているゲバルを他所に、
3人は話を再開した。
「そういや、地形とかどうよ?」
「名前こそ違うが殆ど変わらない。
これなら効率の良い魔物の分布も
同じである可能性が高いな。」
「武器ごとの狩場が多少異なるので
同じ場所には行かないようにしましょう。」
「そうだな…効率とかあるだろうし。」
ゲバル以外の3人も
戦闘の事を考えているようだが、
それは効率であったり場所であったり、
また彼とは違う方向性の話のようだ。
「勇者様、お食事の用意が出来ました。」
そんな風に過ごしていると、案内係であろう
召使いが部屋に入ってきた。
「ああ。」
4人は扉を開け、案内係に着いていく。
すると、騎士団の食堂に辿り着いた。
その場所は煌びやかな装飾が施されており
まさしく中世の貴族の食事場、といった
雰囲気の場所であった。
そのテーブルにはバイキング形式で
食べ物が置いてある。
「皆様、好きな食べ物を
お召し上がりください。」
「なんだ。騎士団の連中と
同じ食事をするのか…」
練がまたもや上から目線でそう呟くと、
ゲバルが少し顔を歪めた。
「嫌いな物があったならしょうがないけど、
そういう言い方は良くないな、ミスターレン。」
そう言われた練は黙ってゲバルを見つめる。
すると、争い事になるのを嫌ってか、
召使いが間に入って2人を宥めた。
「お気遣いは有難いですが、
お気になさらないでください。それに、
こちらにご用意した料理は勇者様が
食べ終わってからの案内と
なっておりますのでご安心ください。」
どの道優先順位は勇者の方が先のようだ。
それならいいか、と練は引き下がった。
「ありがたく頂こう。」
「ええ。」
「そうだな。」
勇者はそれぞれ好きな料理を手に取り、口にした。
慣れない食材が多く、食べる度に
ゲバルはオモシロイな、と思っていた。
全員が食事を終え、部屋に戻ると
3人は寝る準備をいそいそと始めた。
「そういや、風呂とか無いのかな?」
「中世っぽい世界だしなぁ……
行水の可能性が高いぜ。」
「言わなきゃ用意してくれないと思う。」
「まあ、一日位なら大丈夫か。」
「そうだろ。眠いし、明日は冒険の始まりだしサッサと寝ちまおう。」
元康の言葉にみんな頷き、就寝に入る…が、
ゲバルだけはベッドには入らなかった。
「…ゲバル、何してんだ?まだ寝ないのか?」
「ん?あぁ、俺の寝場所はロッカーとか
なんだ。この部屋ならクローゼットが
丁度いいかなァ、ってね…♪」
それを言った瞬間、3人はゲバルの事を
怪訝な目で見つめる。
「ろ、ロッカー?クローゼット?
普段そんな所で寝てんのか…?
……大統領なのに?」
「ハハ…そうだなァ、これは俺の
価値観なんだけど…横になって寝る事なんて、
死んじまってからたっぷり楽しめば良い、
なんてね。戦士はいつでも
起きれるようにしておくモノなのさ…」
ポカンとしている3人を他所に「オヤスミ」とだけ言い残し、
ゲバルはクローゼットに入った。
強いヤツと戦えるのかな、なんて希望を抱きながら。