独立先導者の成り上がり~盾の勇者は、ここからだ!!!~   作:やいさほー

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怪しい風

夕方、城下町に戻った彼らは、

再び武器屋に訪れていた。

 

 

 

「お、盾のあんちゃんじゃないか。

他の勇者たちも顔を出してたぜ。

何だ、相方さんの武器でも

選びに来てくれたかい?」

 

 

他の勇者もここで買っていったらしい。

店主の嬉しそうな表情から察するに

良く売れたのだろう。

 

 

「オー、よく分かったね。

……さてはテレパシーかな?」

 

 

「いやいや、テレパシーも何も

あんちゃん武器は使わねぇって

自分で言ってたじゃねぇか。」

 

 

そりゃそうだ、とゲバルが笑うと

店主も「陽気なヤツだな」と笑い出した。

 

 

「…あ、そういやミスター、

コレってどこで売れるの?」

 

 

 オレンジバルーン風船を店主に見せると

彼は外を指さした。

 

 

「魔物の素材買取の店がある。

そこへ持ち込めば大抵の物は

買い取ってくれるぜ。」

 

 

「サンキュー、ミスター。」

 

 

「で、彼女の装備を買いに来たんだろ?

予算はどんなご予定で?」

 

 

「ンー……ミス マイン、ご予算は

どれくらいのつもりかな?」

 

 

ゲバルがそう聞いても全く反応せず、

彼女は黙々と装備を選んでいた。

 

 

「……アララ、ミス マインってば、

武器にお熱みたいだね。

…ミスターはどう思う?」

 

 

少し寂しそうにゲバルは肩を竦めた。

 

 

「お連れさんの装備ねぇ……

確かに良いものを着させた方が

強くなれるだろうさ。」

 

 

「まぁそうだろうね。

……ねェミスター、ミス マインが

あの調子だと値段高く着きそうなんだけど、

大丈夫かな?」

 

 

「ハッハッハ、勇者様、金欠が不安かい?

なんなら値引こうか?」

 

 

今日は機嫌がいいのか、

店主自らが値引きの提案をした。

 

 

「おっ、ホント?

じゃあ遠慮なく行くよ、八割引!」

 

 

「幾らなんでも酷すぎる! 2割増。」

 

 

「ミスター、それ増えてるよ!

……んじゃあ分かった。お互い謙虚で行こう。」

 

 

「商品を見せてねぇで値切る野郎には

倍額でも惜しいんだがな、まぁそうだな……

謙虚に行くなら許可してやろう。」

 

 

「おっ、流石!物分りが早いね♪

それじゃあ……7割9分!」

 

 

「何が謙虚だふざけてんのか!!2割1分増!」

 

 

「そこを何とか~……7割8分でいいからさ~…」

 

 

「何が良いからだ!せめて1割は下げろ!!

…仕方ねぇ5分引きだ。」

 

 

「5分引きィ~?んじゃあ俺は10割5分引きで!」

 

 

「無料(タダ)超えてんじゃねぇよ!!」

 

 

本気にしない2人の値下げ問答、

久々に冗談を言い合えている

ゲバルはとても楽しそうな表情だった。

 

 

しかしそれも終わりを告げることとなる。

マインが武器を選び終わったのだ。

 

 

彼女は、デザインが可愛らしい鎧と

妙に高そうな装飾用の金属が

使われている剣を持ってきた。

 

 

「勇者様、私はこのあたりが良いです。」

 

 

「ミスター、これで合計どれくらいの品なの?」

 

 

「オマケして銀貨480枚でさぁ、

これ以上は負けられねえ、5割9分だ。」

 

 

かなり良心的な値引きをして貰ったのにも

関わらずにこの値段、これを買えば

残り銀貨は320枚になる。

 

 

 

「…ミス マイン、ホントにこんなに必要?」

 

 

「はい、私勇者様の足を

引っ張りたくないので!」

 

 

彼女はゲバルに胸を押し付けながら

そう言った。

 

 

「……そう。まぁ良いか。面白い

ミスターに払ったと思えば、ね?」

 

 

ゲバルは店主に笑顔を向けながら、

銀貨480枚を渡した。

 

 

「値引きしといて何が面白いミスターに、だ。

全く…ヤッパリあんたはとんでもねぇ勇者様だ。

……ありがとうございやした。」

 

 

「はは、今日はアリガトウ。

値引きしてくれなきゃ野宿だったよ。」

 

 

「ありがとう、勇者様!」

 

 

彼女は気を良くしたようだ。

ゲバルの手にキスをしようとする…が、

彼はそれを静止させた。

 

 

「……それはイケナイよ、ミス マイン。

そういうのはね、本当に心から愛している者に

すべきなんだ。軽く扱っていいモノじゃない。」

 

 

「…は、はぁ。ごめんなさい。」

 

 

こうして2人は店を後にし、

街の宿屋へと入った。

 

 

そこの宿屋は一泊一人銅貨30枚で

泊まれるようだった。

 

 

「二部屋で。」

 

 

マインがそう言うと、ゲバルは黙って

2人分の部屋代を出した。

 

 

「はいはい。ごひいきにお願いしますね」

 

 

 宿屋の店主が揉み手をしながら

ゲバル達が泊まる部屋へと案内した。

 

 

そしてその後、ゲバル達は

宿屋に並列している酒場で晩食を取る事にし、

そこで別料金の食事を注文した。

 

 

 

「そういえば今日はこの辺で戦ったっけ?」

 

 

帰りがけに購入した地図を広げ、

ゲバルは彼女に質問する。

 

 

「はい。そうですね。明日行くなら

草原からもう少し進んで、ラファン村を

抜けた所にあるダンジョンに行くのが

いいと思いますよ。」

 

 

ゲバルは頷きながら、その地図をじっと眺めた。

出来るだけ頭に入れて置いた方が

これからの移動に良いだろうと。

 

 

 

「ところでで勇者様、

ワインは飲まないのですか?」

 

 

「アー……酒は特別な時しか

飲まないって決めてるんだ。ゴメンね。」

 

 

「そうなんですか、でも一杯くらい

いいんじゃないですか?」

 

 

「……後、今日は単純に気分じゃない、かな。」

 

 

「でも……」

 

 

「……悪いね、今日はダメだ。」

 

 

「そう、ですか。」

 

 

残念そうにマインはワインを引っ込める。

 

 

「もう今日は寝るよ。おやすみ。」

 

 

「はい、おやすみなさい。また明日。」

 

 

ゲバルはその時、顔からいつもの笑みは

消えていた。何故なら、彼女に嫌悪感を

抱いていたからだ。

 

 

((ミスターの店の時と、酒場での

あの目……ソックリだ。

俺や、島の民達を踏みつけにしようとした

あのボッシュの目に。少なくとも……

俺の事は、嫌いなんだろう。))

 

 

だが、それを敢えて彼は言わなかった。

自分の思い過ごしかもしれない。

それに、本当にそうだとしても

言う必要まではないだろう。

 

 

彼はマインの事を警戒しつつ、

寝床(クローゼット)に着いた。

 

 

しかし結局、朝まで特に変わった事象はなく

そのまま時は経った。

 

 

何事も無かったとはいえ、ゲバルは

まだ警戒を解かない。一応マインの

部屋に向かい、ノックしようとした

ちょうどその時だった。

 

 

何やら足音が騒々しく近づいてくる。

その正体は、王に仕える騎士の足音であった。

 

 

「盾の勇者だな!」

 

「そうだけど……何か用?」

 

 

「王様から貴様二召集命令が下ったのだ。

さぁ、ご同行願おうか。」

 

 

「ヘェ~……オーケイ、わかったよ。」

 

 

「さぁ、分かったならさっさと来い!」

 

 

騎士の1人が腕づくで連れて行こうと

ゲバルの腕を掴んだ瞬間、

彼は目にも止まらぬ速さでそれを振り払った。

 

 

「うおっ!?」

 

 

2代目ミスターアンチェインの名は伊達ではない。

警官が銃という強力な武器を持ってしてなお、

彼が好き勝手するのを止められないのだ。

鎧を着た騎士程度が彼を操れないのは

当然の事である。

 

 

「……俺は1人で歩けない

ガキじゃないよ、兵隊サン。

さぁ、行こうか。」

 

 

「…よ、よし、わかった。」

 

 

そのまま外に出ると馬車が待ち構えていた。

 

 

これで城に行く、という事だろう。

馬車は余裕ある顔のゲバルを乗せて、

駆けていくのであった。

 

 

 

 

 

 

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