独立先導者の成り上がり~盾の勇者は、ここからだ!!!~   作:やいさほー

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裏切りの逆風

ゲバルは馬車にしばらく揺られ、

王城に着いた。

 

 

降りると騎士たちが拘束しようとするが、

ゲバルが不機嫌気味に脅しをかける。

 

 

「投げ飛ばされたいならお好きにどうぞ、

王に仕える勇敢なソルジャーさん。」

 

 

先程凄まじい勢いで腕が払われたのを

見ていた彼らは、その言葉に警戒し

距離を置いた。そしてそのまま、

王の謁見の間へと通される。

 

 

其処にはなにやら不機嫌そうな王様と大臣、

そして錬と元康に樹、

その他の仲間が集まっていた。

そして、マインが元康の後ろに隠れ、

ゲバルの事を睨み付けていた。

 

 

「アララ、皆さんお揃いで……

それにどしたんだい、そんなに睨んでさ。

急に俺の事嫌いになっちゃった?」

 

 

 

「……本当に身に覚えが無いのか?」

 

 

 

元康が仁王立ちでゲバルに問い詰める。

 

 

「ン~……悪いけど、あったらこんなに

堂々と出来ないよ。」

 

 

「ふざけんな!何が堂々と出来ないだ、

白々しい!まさかお前、そんなに外道だとは

思わなかったぞ!」

 

 

「マイッタな、外道か……

あんまりに身に覚えがないんだけどね。」

 

 

ゲバルの軽い返答とは逆に、

重たい空気が周りを流れている。

 

 

「して、盾の勇者の罪状は?」

 

 

「罪状ォ?なになに、昨日の

武器屋のミスターとの値切り交渉が

ダメだったとかそんなトコ?」

 

 

「うぐ……ひぐ……盾の勇者様はお酒に酔った

勢いで突然、私の部屋に入ってきたかと

思ったら無理やり押し倒してきて……」

 

 

「………ふーん……」

 

 

「盾の勇者様は、

『まだ夜は明けてねえぜ』と言って私に迫り、

無理やり服を脱がそうとして……」

 

 

彼女が喋る度に、

ゲバルの顔からどんどん柔らかさが消えていく。

 

 

「私、怖くなって……叫び声を上げながら、

命からがら部屋を出て

モトヤス様に助けを求めたんです。」

 

 

「……ナルホド、良く出来たシナリオだ……」

 

 

ゲバルは大きくため息を着いた。

予感はまさに的中したと。

 

 

「俺は飯食った後はなんにもしてないよ。

酒も飲んでないしね。なんなら俺の部屋には

人さえ来なかった。」

 

 

「嘘を吐きやがって、じゃあなんで

マインはこんなに泣いてるんだよ!?」

 

 

「ウソ泣き、かな。俺の事をよく思ってない

目をしてたから嵌めようとする気持ちは

よく分かるよ。」

 

ゲバルの鋭い観察眼は、彼女が心の奥底に

隠していた気持ちを見抜いていた。

 

 

「……さて、王様。俺は彼女が

俺の事が嫌いだから嵌めようとした、

と思ってるんだけど、王様はどうなの?」

 

 

「黙れ外道!」

 

 

余裕のありそうな表情でゲバルが

意見を求めると、それを蹴り捨てるかのように

王は怒鳴った。

 

 

「嫌がる我が国民に性行為を強要するとは

許されざる蛮行、勇者でなければ

即刻処刑物だ!」

 

 

「……好き放題言うなァ、まぁイイけど。

そこまで自信タップリに言うんだ、

証拠品も出てくるんだろうね。」

 

 

すると、それを待っていたかのように

王の騎士の1人が声を上げた。

 

 

「王様!盾の勇者の部屋から

これが発見されました!」

 

 

そう言って彼が掲げたのは、

綺麗な女性の下着だった。

 

 

「……さて外道よ、これが何よりの

証拠では無いのか?言いたい事はあるか?」

 

 

証拠品を出した瞬間下を向いたゲバルを見て、

勝利を確信したのか王は更にゲバルに

詰め寄った。

 

しかし、ゲバルが下を向いたのは

状況が不味くなったからではなかった。

 

 

「……フフフ、イヤ失礼。

あんまり面白くてね……

彼女は『無理やり服を脱がされた』って

証言してるのに、綺麗な下着持ってくるから

……プッ、ハハハ……!」

 

 

矛盾し過ぎている証拠品に

笑いが止まらない、それを抑えるために

彼は下を向いたのだ。

 

 

「…だ、黙れ!何がおかしいのだ!!

誤魔化すのはやめろ!!」

 

 

どこまで犯人扱いをしたいのだろうか、

王は怒りながら誤魔化した。

 

 

しかし、樹と練は先入観からか、

ゲバルを犯人と決めつけていた。

 

 

「異世界に来てまで仲間に

そんな事をするなんてクズだな。」

 

 

「そうですね。僕も同情の

余地は無いと思います。」

 

 

2人が意見を言い終えた所で

ゲバルは笑うのを終え、

王に質問を返した。

 

 

「皆からの嫌われちゃったね……で、王様は俺に

どうして欲しいんだい?」

 

 

その問いに答えたのは、王ではなく

3人の勇者達だった。

 

 

「…決まっているだろう、 お前の様なやつと

波で戦いたくはない。すぐに責任をとった後

別の勇者に変わって貰おう。」

 

「全く同意見ですね。」

 

 

「そうだそうだ!お前なんざ勇者辞めちまえ!」

 

 

「……だってさ王様。」

 

 

すると、王は渋そうな顔で、

言いたくなかった事実を話し始めた。

 

 

「そうしたい所なのだが……

強制送還は出来ん。方法がないのだ。

勇者の再召喚も、全ての勇者が

死亡してからと研究者が語っておる。」

 

 

「…なん、だと…」

 

 

「そんな……」

 

 

「う、嘘だろ……!?」

 

 

3人は王の発言に愕然としていた。

しかし、ゲバルだけは特になんとも

思ってなさそうな顔つきだった。

 

 

「アララ……そりゃ不味いね。

……で、結局どうするの?

死刑にするって言うなら流石に

逃げようかなって思うけど。」

 

 

「……今の所、波の対抗手段が

勇者なのだ。どんな者だろうと

極刑には出来ん。だが、罰として

マインに罰金は支払ってもらう。」

 

 

「……オーケイ、分かった。

早く出たいし払うよ。」

 

 

王が提案した罰に、ゲバルは軽く答えた。

そして王から貰った袋を取り出し、

その中から銀貨を取り出す。

 

 

そしてそれを…投げつけることも、

潰す事もゲバルはしなかった。

かと言って普通に手渡した訳でもない。

 

 

まるで王の間に誰も存在しないかのように、

銀貨を色んな向きで重ね始めたのだ。

それも口笛を拭きながら、遊ぶように。

 

 

横に置き、縦に置き、その小さい

面積の上に更に積み重ねる。

何故かそんなアンバランスな状態でも

銀貨のタワーは崩れることは無かった。

 

 

あまりに奇怪なゲバルの行動に皆が

見とれている。

ゲバルが手を伸ばせる限界まで積み上げた後、

彼は満足そうに出口まで向かった。

 

 

彼はドアを開け、それと同時に

指をバチン、と鳴らす。

するとその瞬間、先程作った

銀貨のタワーはものの数瞬で崩れ去った。

 

 

「それじゃあ皆さん、さよなら。

王様はこうならないように、ね。」

 

 

ゲバルは王に嫌味をぶつけ、外に出た。

 

 

そのまま城をぬけ城下町へ向かうと

道を歩く人間が皆ゲバルを避け、

声を潜めて噂話をしていた。

 

 

「ア~ア、すっかり不人気者か……」

 

 

悲しいのか、どうでもいいのか

よく分からない表情をゲバルは浮かべながら

そんな町中を歩く。

 

 

そして、偶然武器屋の前を通りがかった。

 

 

「おい、盾のあんちゃん!」

 

 

「…武器屋のミスター。

…どうしたんだい、なんて聞かなくて

良さそうかな。」

 

 

「……噂で聞いたぜ、

仲間を強姦したんだってな。

…1発殴りてぇが、どうも引っかかる。」

 

 

武器屋の店主は、怒ってはいるが、

完全に怒りきれていない表情をしていた。

 

 

「あんちゃん、俺は覚えてる。

相方と店を出る前に、相方の嬢ちゃんが

手にキスをしようとしたよな。」

 

 

握られた拳が震えている。

 

「そしたら、あんちゃんは

それを止めてこう言った。

『本当に心から愛している者にしか

そんな事しちゃダメだ』……ってな。

立派な奴だって俺はそう思ってた。

だが……噂ではお前は強姦魔だ!

真実を教えてくれ!」

 

 

必死に怒りを堪える店主を見て、

ゲバルはとても優しい目になった。

 

 

「アリガトウ、優しいミスター。

噂を疑ってくれて。……ミスター、

俺は絶対に『やってない』。

俺の目を見てくれないかな。

…それでも信じるに足らないのなら、

俺はその程度の男だ。思う存分殴ってくれ。」

 

 

ゲバルは優しい目をしていた。

自分を信じてくれる者に向ける、

感謝の眼差しだった。

 

 

「……そうか。俺はあんちゃんの事を

信じてみるよ…これは餞別だ、取っておきな。」

 

 

そう言って彼は体を包むマントの様な

ものをゲバルに手渡した。

 

 

「……感謝するよ。」

 

 

ゲバルは店主の手を固く握った。そして、

武器屋を後にし、昨日倒し集めた

魔物の素材を売りに向かった。

 

 

その買取屋であろう、

小太りの商人がゲバルを見るなり

へらへらと笑う。

 

 

舐められている、というのは

彼でなくても分かったであろう。

 

 

先客が色々と売っていく中、

その中にはバルーン風船があった。

 

 

「そうですねぇ……

こちらの品は2個で銅貨1枚でどうでしょう?

エグッグの殻は一体分で銅貨5枚ということで…」

 

 

「頼む。」

 

 

「どうも、ありがとうございました。」

 

 

客が去り、ゲバルの番が回ってくる。

 

 

「どうもコンチワ。」

 

 

「ようこそいらっしゃいました…」

 

 

その男が怪しく笑ったのを、ゲバルは

聞き逃さなかった。

 

 

「そうですねぇ、バルーンは10個で

銅貨1枚、その殻は2つで3ゴールドと

言った所でしょうか。」

 

 

「ん?さっきより安いね?」

 

 

「いえいえ、これが普通ですよ。」

 

 

誤魔化す事すらせず、堂々と嘘をつく商人。

 

 

「ふーん……あ、ちょっと

よーく目を見開いてみて。」

 

「…は?こ、こうですか。」

 

 

その商人が困惑気味に目を見開いたその時、

ゲバルは目潰しを繰り出した。

それも寸止めで。

 

 

「………ッッ!!?」

 

 

「ハハハ、後、2cmって所かな?」

 

 

汗をダラダラと流す商人に、

ゲバルはさらに続ける。

 

 

「普通の値段でいいんだ。

買い取ってくれないかな?」

 

 

「…こ、こんな事をして……」

 

 

「さて、どうなるのかな。」

 

 

ゲバルの目付きは一気に厳しくなり、

商人の恐怖で閉じかけている目玉の前には

瞼ごと貫いてやる、と言わんばかりの

指が構えていた。

 

 

「……っっ、わ、分かりました……」

 

 

商人が怯えながら承諾すると

ゲバルはゆっくりと腕を下ろした。

 

 

「オーケイ。それに、

値引きたいなら最初から言ってくれれば

良いからさ。俺としても、まだここは

使わせてもらいたいんだ。」

 

 

「…正直断りたいですが、買取品と金には

罪はありません。良いでしょう。」

 

 

「アリガトウ。ついでに

噂でも撒いといてよ。次もまた

これするのもイヤだからね。」

 

 

「ハイハイ、全くとんだ客だよチクショウ!」

 

 

商談は何とか成立し、

無事に換金が終わったのだった。

 

 

 

 

 

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