独立先導者の成り上がり~盾の勇者は、ここからだ!!!~ 作:やいさほー
あのマインの裏切り行為以降、ゲバルは
1人でモンスターを倒して日銭を稼いでいた。
飯時以外は森の中で過ごしていたが、
元々ジャングルの様な島で育った為、
ゲバルが特に問題視する点は無かった。
チンピラの様な輩に絡まれることもあったが、
ゲバルが少し脅しをかけるだけで
彼らは怯え逃げていった。
そして、森の中で薬草を見つけた時には
それを採取もした。
そしてある時草を摘んでいると、盾が反応した。
それに驚いたゲバルは、試しにと
採取した薬草を盾に吸わせる。
すると、更に盾から反応が帰ってきた。
[リーフシールドの条件が解放されました。]
これを見てもピンと来なかったゲバルは
とりあえずウェポンブックを開いた。
[スモールシールド
能力解放! 防御力3上昇しました!
オレンジスモールシールド
能力未解放……装備ボーナス、防御力2
イエロースモールシールド
能力未解放……装備ボーナス、防御力2
リーフシールド
能力未解放……装備ボーナス、採取技能1]
「……?なんだこりゃ、わかんないな…」
まるで初めてゲームを与えられた
子供のように、ゲバルは項目を
ポチポチと選んでいく。
[『武器の変化と能力解放』
武器の変化とは今、装備している
伝説武器を別の形状へ変える事を指します。
変え方は武器に手をかざし、
心の中で変えたい武器名を思えば
変化させることが出来ます。
能力解放とはその武器を使用し、
一定の熟練を積む事によって所持者に
永続的な技能を授ける事です。
『装備ボーナス』
装備ボーナスとはその武器に変化している間に使うことの出来る付与能力です。
例えばエアストバッシュが装備ボーナスに
付与されている武器を装備している間は、
エアストバッシュを使用する事が出来ます。
攻撃3と付いている武器の場合は装備している
武器に3の追加付与が付いている物です。]
「……とりあえずリーフシールドに
すれば強いのかな?」
ゲバルはリーフシールドを選択する。
すると、風を切るかのような音が起こり
植物の盾に変化した。
しかし、結局どうしていいか分からずじまいで、仕方なく薬草取りの続きを始めようとした時、
偶然にも盾の効果とマッチ。
薬草が淡く光り始めた。
[採取技能1
アエロー 品質 普通→良質
傷薬の材料になる薬草]
簡易的な説明と共に、薬草の質が
上がったことを告げられる。
この手に疎いゲバルも流石に理解したようで、
その辺に生えていた薬草を可能な限り採取した。
その後、街の薬屋へとそれを持ち込む。
「ほう、中々の品ですな。これはどこで?」
「城を出たトコの草原で取れたんだ。
そんなにいいモノなの?」
「ふむ……そうですな。あそこで
これ程の物が採れるというのは珍しい。
もう少し質が低いと思っておりましたが…
十分高品質ですぞ。」
そう言って、彼はゲバルに銀貨1枚と
銅貨50枚を渡した。
こうして、ゲバルは明くる日も明くる日も
魔物を狩り、薬草を刈り、それらを
売って暮らしていた。
時間に余裕がある為、それらの単純作業でも
割と稼ぐ事が出来た。今手元には
銀貨200枚ほどがあった。
しかし彼は、この生活を不満に感じていた。
特にやることが見つからない。これなら
この世界には来ない方が良かったかもしれない、
そう思っていたゲバルに、ある日転機が訪れた。
「何やら、お困りの様子ですな?」
「…ん?」
シルクハットの燕尾服、そして肥満気味の
男がゲバルに路地裏で声をかける。
「俺に何か御用で?」
「フフ……むしろ貴方の方が
私を欲しているかと思いますよ。」
不気味にその男が笑うと、こう続ける。
「貴方のその顔……どう見ても欲求が
満たされていない顔です。
例えば。楽しくない、
人手が足りない、仲間が欲しい……
こんな所でしょうか。」
「えっと…完全に間違ってはないかな。」
ゲバルが素直に認めると
その不気味な紳士はニタリと笑った。
「やはりそうでしょう。
私ならその問題、解決できますよ。
特に仲間の問題はね。」
「ヘェー、どう解決してくれるんだい?」
「……裏切らない仲間を私は
ご提供できます。『奴隷』ですよ。
私に付いてきて下さればすぐにでも。」
その男は更に口角を上げ交渉を
持ちかけようとした。
ゲバルは、その男が発した一言で
表情を激変させた。
「……奴隷?」
「そうですが…如何なされました?」
彼は今、驚き、困惑した。
奴隷、それは弱き者の地位を更に確固な物へと
変える、最悪のステータスである。
異世界にも存在しているのか。
しかし、ゲバルは困惑の気持ちを押し殺し、
商人に案内を求める。
「…連れて行ってくれないかな、
その、君が言う場所に。」
こうしてその奴隷商人はゲバルを案内した。
そこには、まるでサーカスのテントのような
小屋が路地の一角に存在していた。
「こちらですよ、勇者様。」
その案内の声にすらゲバルは
反応出来なかった。
奴隷商はそれを気にしてか気にせずか、
軽いステップでテント内を案内する。
「しかしお客様、
さっきから如何なさりました?
ずっとお話をされませんが…」
丸眼鏡を少し持ち上げながら、
心配そうに商人は尋ねた。
「すまないね、どうしても気分が悪いから…」
「おや、これは失礼。もしや奴隷は
お嫌いですかな?」
「……ウン、嫌いだよ。大嫌いさ……」
それを聞いた商人は、
少し気まずそうに髭を伸ばす。
「左様でございましたか。どうやら貴方、
噂とは少し違う方のようだ。どうします、
今からでも出ていただいて構いませんが?」
「……いや、最後まで案内してくれ。」
「そうですか、分かりました。」
少し変わったモノを見る眼差しで
ゲバルを見つめながら、彼は引き続き
テント内を案内する。
「さて、こちらが当店でオススメの奴隷です。」
商人が勧める檻に近づき
覗き込んで中を確認する。
「グウウウウ……ガア!」
「……奴隷って、これ?」
鍛えられた肉体を毛皮で覆った様な外見の、
奴隷が檻の中で暴れ回っている。
「ええ、獣人といって、
一応は人間の部類です。」
「……そうなんだ、思ってたのとは
チョット違う、かな?」
一応人間の部類ではあると言うものの、
ほとんどそれは獣だった。
「……ねェ、奴隷商サン。色々
この獣人とかに着いて、教えて欲しいな。」
まだ誰が悪いと決めつけるべきではないし、
奴隷と言っても動物に近い者を扱うのならば
問題は薄いかもしれない。
ゲバルはその考えの元彼にそう尋ねる。
「メルロマルク王国は人間種至上主義
ですからな。亜人や獣人には
住みづらい場所でしてね。」
「……ふーん…」
確かに、城下町で見かけたのは大部分が人間で、
それらしき者はほとんど見かけなかった。
「その2つって、どういうモノなの?」
「亜人とは人間に似た外見であるが、
人とは異なる部位を持つ人種の総称。
獣人とは亜人の獣度合いが
強いものの呼び名です。」
「……そうなんだね。」
「ええ、そして亜人種は魔物に近いと
思われている為に、この国では生活が困難、
故に奴隷として扱われているのです。」
何処の世界にでも闇はある。
弱い者や、変わった者は差別され
追い込まれる運命に陥りやすい。
それを運命と諦めなかったのが
ゲバルという男なのだが。
「そしてですね。奴隷には......」
奴隷商が指を鳴らすと奴隷商の腕に
陣が浮かび上がり、檻の中に居る
奴隷の胸に刻まれている陣が光り輝いた。
「ガアアア! キャインキャイン!」
胸を押さえて苦しみだしたかと思うと、
悶絶して転げまわる。
もう一度、奴隷商が指を鳴らすと
胸に輝く陣は輝きを弱めて消えた。
「このように指示一つで罰を与えることが
可能なのですよ。」
「……惨い、なァ。」
仰向けに倒れる狼のような奴隷を眺め、
ゲバルは嘆くようにそう言った。
「私としても罰を与えて楽しみたい訳では
無いのですが、如何せん言う事を聞かせないと。
これでしか私は食っていけないものでしてね…」
「……そうなんだね。」
「ちなみにコイツは戦闘において有能な
部類でして。お値段は金貨15枚、
と言った所ですかな。いかがです?」
「…今は無理だ。そんなに金は持っていない。」
「左様でございますか。あ、参考までに
この奴隷のステータスはコレでございますよ。」
小さな水晶を奴隷商はゲバルに見せる。
するとアイコンが光り、文字が浮かび上がる。
[戦闘奴隷Lv75 種族 狼人]
その他色々と取得技能やら
スキルやらが記載されている。
「コロシアムで戦っていた奴隷なのですがね。
足と腕を悪くしてしまい、
処分された者を拾い上げたのですよ。」
「コロシアムか…。」
強き者でもいつかは堕ちるのだろうか。
闘牛のような扱いとはいえ、少し頂けないが。
「さて、一番の商品は見てもらいました。
…次は、どこを案内致しましょう?」
「…最後まで見せて欲しい。」
((…ここの奴隷制がどこまでのものなのか、
見ておきたいしね。))
その言葉どおり、商人はゲバルを案内し続けた。
先程の奴隷よりは劣るが怪我の少ない獣人、
珍しい色付きをしている鳥の獣人など
様々な奴隷を収監しているのがよく分かる。
そのまま、檻がずっと続く
小屋の中を案内される。
暴れる様な声がしていた区域を抜けると、
今度は泣き喚いたり、
啜り泣く様な声がする区域に入る。
「一通り紹介させて頂きましたが……
ここが勇者様に提供できる
最低ラインの奴隷です。」
そうして商人が指を差したのは三つの檻だった。
一つ目は片腕が変な方向に曲がっている
ウサギのような耳を生やした男。
見た限りの年齢は20歳前後。
二つ目はガリガリにやせ細り、
怯えた目で震えながら咳をする、
犬にしては丸みを帯びた耳を生やし、
妙に太い尻尾を生やした10歳くらいの女の子。
三つ目は妙に殺気を放つ、
目が逝っているリザードマン。
その3人を見たゲバルは、
居た堪れない表情になった。
「左から遺伝病のラビット種、パニックと病を患ったラクーン種、雑種のリザードマンです。」
「…そう、なのか。」
悲哀とはよく言った物だろう。
胸が張り裂けそうになる程の悲しみに、
口を抑えたくなるほどの哀しみ。
そんな感情が、彼の中で沸き起こる。
島の民を導こうと決めた、あの時のように。
「コンニチハ。俺はジュン・ゲバルって
言うんだ、よろしく。君たちの名前も
教えてくれないかな?」
いつものような優しい笑顔で、
しかしどこか哀しそうな目で
ゲバルは3人を見つめた。
しかし、ウサギの男と少女は怯えて声を出さず、
リザードマンの男はギロリとこちらを
睨み返すだけだった。
「…奴隷紋を使いましょうか?」
商人が言う事を無理やり聞かそうと
すると、ゲバルは直ぐにそれを制止させた。
「それはダメだ。そんなモノで
人を操った所で何にもならない。
……さて、もう一度聞くよ。君の名前は?」
「…すみません、ちょっと言えない、です……」
しどろもどろとしながら答える
彼にゲバルはニコリと笑った。
「そうか、仕方ないさ。…君は?」
「…ラ、ラフタリア…コホ、コホ……」
咳が辛そうに彼女は名乗りを上げた。
この絶望的な場所で奴隷として扱われて、
なお目に光が宿っている彼女に
ゲバルは可能性を見いだしていた。
「いい名前だね。最後に、君は?」
そのリザードマンは寡黙だった。
睨むだけで、何も返さない。
「ハハ……それもまたひとつの答えだ。」
世には雄弁は銀、沈黙は金という言葉もある。
もっとも、この場合当てはまるかは別だが。
「……さて、そんな3人に聞いて欲しい。
俺は君達に道を用意できる。
そう言ったら、皆はついて来てくれるかい?」
「「「…!!」」」
ゲバルの問いかけに、
3人が目を見開いた。
「…勿論無理にとは言わないよ。
来ないとしても、絶対に君達は助け出す。
それを信じるも信じないも、君達の自由だ。」
ゲバルがそう言いながら、
1人目の檻に手を差し伸べると
彼はまともな方の片腕でゲバルの手を握った。
「俺……行きます……」
絶望しかなかったこの生活に、
終止符を打ちたかったのだろう。
そのウサギの男はゲバルの手を握った。
「よく言ってくれたね、これからよろしく。」
ゲバルはそんな彼に握られた手を握り返した。
そして、次の檻に手を差し伸べる。
「ゴホゴホ……私も、良いの…?」
不安そうに怯えながらも宣言する彼女に
ゲバルは力強く答える。
「ああ、勿論だ。もう奴隷扱いも差別も、
どこの誰にもさせない。」
ハッキリとそう告げると、彼女は
差し伸べられた手をそっと優しく握った。
優しく包まれたその手を、
ゲバルは大事そうに見つめた。
最後にリザードマンに手を差し伸べると、
彼は無言で手を握った。
「…来てくれるんだね、嬉しいよ。」
ゲバルがそう言うと、リザードマンは
黙ったままゲバルを見つめた。
そして、その一連を静かに見守っていた商人が
ようやく口を開いた。
「……奴隷紋をお付けするかどうか、
聞くのは流石に野暮でしょうな。
奴隷が嫌いとはそういうことでしたか。」
流石にある程度察したのか、
奴隷商人は先程と打って変わり
静かな口調でゲバルに語りかける。
「……そうだよ、俺は奴隷が嫌いだ。
ヒトの尊厳を全て真っ向から否定するような
奴隷という身分はね。」
(……奴隷という存在は間違っている…
誰だって権利は持っている。
それをあまつさえ弱き者から奪い
彼らを鎖で縛り付ける……
それを俺は、許すことが出来ないッッ!)
密かに心の中で、怒りの炎を燃やすゲバル。
「なるほど、どうやら貴方様は
本当に噂とは違う方のようだ。
……それに、私のような人間を恐らく
嫌っているでしょう。」
商人の顔に怪しい笑みはもうなかった。
真顔でゲバルを見つめている。
「流石に奴隷商人を好きにはなれないかな。
……でも、君には危害は加えるつもりは無いよ。
1番悪いのは奴隷制度を許している王政だ。
それにアンタ、この仕事をしないと
生活出来ないんだろ?それなら仕方ないさ。」
「…左様でございますか。」
「ま、いつか転職はしてもらうけどね♡
ン~……アンタは、宝石商辺りが
似合うんじゃないかな?」
「フフ、これはまた随分面白い事を仰る…
しかも、冗談のつもりではありませんな。」
商人は、もはやどんな顔をしていいか
分からなかった。
こんな人間は見た事がなかったのだ。
一方ゲバルは、この国を変えたい、
変えてみせると決意していた。
自分の為でも、この世界の為でもない。
この世界にも存在していた弱き民の為に。
ラフタリア以外の2人の名前、調べて見ても全く出なかったんですがどうすればいいでしょうか?ご意見あればよろしくお願いいたします。