元下士官と人形   作:FAZZ

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遅くなって申し訳ない、色々諸事情があってな……


#5

「ねぇ、レイブン。前から気になってたのだけど、そのIDタグは45のよね?」

 

首のタグを指しながら416が聞いてくる

なんて言おうか迷って、交換したと答える

 

「あの時お願いとは言ったけど、そこまで行くとはねぇ」

 

「まぁ、色々あってね。ハハッ」

 

改めて言われるとちょっと恥ずかしいな

あの後、指揮官しか誓約の指輪はもらえないので、IDタグをお互い交換した

これでお互いが支え合う事を誓ったという訳だ

古い言い回しだと一蓮托生かな?

 

「あの日から結構経ったわけだし、余り突っ込みたくはないけど共依存しないようにしなさい、そうなったら最悪なんだから」

 

「そうならない様に注意しておくよ」

 

「ならいいわ。そう言えば、今日は暇かしら?」

 

「特に予定はないね。どうかしたのか?」

 

「貴方、メインしか持ってないからサブを買いに連れて行こうかとね」

 

「なるほど、416監修のもとなら安心して買えそうだ」

 

早速買いに行こうか、何かいいかなぁ

416に連れられるままやって来たのは、本社の銃砲店

古今東西のあらゆる武器が売っているマニアには嬉しいお店

まぁ、そんなマニアも生き残ってるか怪しいが

 

「人形だったら少しでも大口径の物を勧めるのだけど、貴方は人間だからそんな大きいのじゃ無くてもいいと思うわ」

 

「確かにその通りだな」

 

「……その通りと言いながらデザートイーグルを手にするのは止めなさい」

 

ロマンあるからつい手に取りたくなるのさ

だって、男の子だもん

 

「コイツはどうかな、初期の1911とか」

 

「どうして癖のあるものを選ぶのよ……」

 

「んー、ロマン?」

 

「実用性を考えて頂戴」

 

「じゃあ、やっぱり王道を行くHK45かな」

 

「話を聞いてたかしら?余り大口径はお勧めしないわよ。それに、王道ではないじゃない」

 

「でもストッピングパワーもあるし45口径だったら動作不良は少ないでしょ?」

 

前に某動画サイトで検証してるやつ見たから選んだんだけど

あと、軍用モデルのTタイプならサプレッサー取り付け出来るし

弾数少ないけど、一撃必中を目標にしたら問題ない

 

「貴方がそれで良いならそうしなさい。訓練には付き合ってあげる」

 

「416教官の指導が貰えるのか、ありがてぇ」

 

「教官はやめなさいよ、45からそのネタでイジられるのよ?」

 

「いっそ教官を認めたら良いんじゃない?」

 

「は?」

 

「じょ、冗談だぜ……」

 

416の威圧がヤバい事になっちゃった

とりあえず、この拳銃を買うとして、他に何買おうかな

416に聞いてみるか

 

「オススメのアタッチメントとかある?」

 

「好きなのを付ければいいわ」

 

「ごめん、俺が悪かったから機嫌直してくれ。じゃあ416と同じ物をチョイスしようかな、完璧な人形が使ってる物にハズレはないし」

 

「ふん、まぁ確かに、私の使ってる物を真似るのは良いかもしれないわ」

 

コレでちょっと機嫌を持ち直してくれれば良いんだけど

どうだ?行けるか?

 

「でも、指導する時は覚悟しておくことね」

 

ヒェッ、絶対零度の目で見てくるよぉ

結果ダメだったわ……

 

 

 

 

 

「あら、結構激しく指導してもらったの?」

 

「45……死ぬかと思う位にはヤバかった」

 

部屋に帰ってシャワーから出ると、45が面白い事を聞きましたって顔で見てくる

そりゃ、傍から見れば面白いだろうなぁ

俺だったら爆笑してるわ

 

「でも、かなり練度は上がったと思う」

 

「ふふっ、頼りにしてるわ」

 

「あ、そう言えば聞きたいことあったんだ」

 

「あら、何かしら?」

 

「次の作戦の事なんだけど、本当に俺だけで視察に行くのか?」

 

「そうよ、それがどうかしたの?」

 

「怪しまれないか不安なんだが」

 

「それなら心配ないわ。レイブンの経歴は怪しまれない程度には誤魔化してるから」

 

「それならいいけど」

 

次の作戦は、とある基地の監査になっている

事の発端は、報告される資料に不審なところが見受けられたからだ

どうも報告されている戦果と釣り合わない資材が消費されているらしい

今回はそれの調査と内部状態の把握に行く事になった

 

「作戦決行まであと3日あるから、ちゃんと準備しておいてね」

 

「了解、ボロは出さないように気をつけるよ」

 

作戦まで時間はある、やれるだけの事はしよう

とりあえず、今日は寝よう

俺を起こさないでくれ、死ぬほど疲れてる

 

 

 

 

 

そして、とうとう作戦が決行されて、俺は某基地に来ていた

まず初めに歓迎ムードではなかった事は仕方ないとして、何故か人形に覇気がない

早速ゲロ以下の臭いがプンプンするぜェ!

とまあ、お巫山戯はここまでにして真面目にやりますか

 

「この度、情報監査に派遣されました情報担当官です。さっそくで悪いのですが、この基地の戦闘記録を見てもよろしいですか?」

 

「好きに見たまえ、何も出ないと思うがね。私は執務室にいる、何かあったらそこの人形に聞いてくれ」

 

私は暇ではないからな、と最後に付け加えて指揮官は立ち去ってしまった

何だァ、テメエ

感じ悪いやつだなと思いつつデータサーバーに案内してもらう

案内している人形は終始無言だから気まずい雰囲気が流れているし最悪だ

 

「ここがサーバーです、必要なことがありましたらブザーで呼んでください」

 

「ありがとう。そう言えば君の名前を聞いてなかったな、名前はなんと言うのかな?」

 

「G41です。では、何かありましたらいつでも呼んでください」

 

そうしてG41が退出して行ったが、あのG41があんなになっているところを見ると本気でなにかある気がしてならない

作業に取り掛かる前に一度45に報告しておこう

 

「45、こちらレイブン。基地内に入ることに成功した、今からサーバーの情報を漁る」

 

「了解、変なところがあったら報告して。こっちもできる限り支援はするから」

 

「了解。レイブン、アウト」

 

それじゃあ、始めるか。洗いざらい吐いてもらうぞ

とりあえずは報告が一致してない部分から探っていこう

比較的に前線に位置するこの基地は、戦闘記録だけでも膨大な数になる

その一つ一つを見ていたら終わりが見えないのは明らか

 

「まずは記録を年間に並べ替えて、戦闘記録が変なところを当たろう」

 

数年の戦闘記録が表示されるがコレと言って変なところは見つからない

もしかすると、詰んだかな?

もう少し細かく見てみよう、何か隠されていることが有るはず

 

「だめだ、全然見つからない……」

 

何だろう、何か見落としてるはずなんだけど

パソコンの前で唸っていると、時計に目が行く

もう2時間は作業してたのか

 

「休憩を入れるか」

 

とは言ったものの、ここの基地は内部構造が本社と違うせいか休憩所を探す所から始めないとな

ブラブラと歩いていると色んな戦術人形とすれ違う

やはり会う人形達はどこか暗い

 

「おっ、G41ちゃん。いま暇かな?」

 

「監査官さん、勝手に動かないで下さい」

 

「ごめんね、休憩所探してて。その書類は?」

 

「貴方には関係ないものですから」

 

超怪しいんだけど

目を反らしたし、雰囲気も面倒くさい事になったって感じしてるし

絶対なんか有るよな

 

「そうか、でも一応確認させてもらうけど良いかな?」

 

「困ります、基地の機密なので」

 

「その機密も確認するのが俺の仕事だからね」

 

「……急いでるので手短にお願いします」

 

渡された書類をサラッと見る

おかしい部分があれば違和感に気付くはず

……はずなんだけど、文面はさっきから見てる物と変わらずだな

 

「うん、異常なしみたいだね。ありがとう」

 

「ではこれで失礼します」

 

その場から急いで離れるG41を見て、やっぱり何かおかしいと感じてはいるものの成果は得られずか

さっきの書類も定形文だらけだったけど、特に変なところは無かったしなぁ

 

「……いや、よくよく考えたら全部定型文っておかしいよな」

 

今まで見てきた物も殆ど定型文で作られていたし、何処か人間味が無かった

もしかして、本人は書いてなくて人形に作らせているのか?

 

「休憩は後回しにして戻ろう、ヒントが見つかったかもしれないな」

 

急いでサーバールームに戻ってパソコンに食らいつく

 

「確か、人形は嘘を付くときにある程度の真実を混ぜて話すってデータがあったな」

 

と言う事はだ、その日に何があったのかと、物流を照らし合わせたらある程度の推察は出来る

更に時間をかけて見ていくとやはり見つかった

 

「戦闘に出た日は必ずと言って割に合わない物資が流れてる、何処かに横流ししているのか?」

 

しかしこれだけでは情報が足りない

もっと核心を突けるような情報はないのか?

 

「戦術人形の総数にバラつきが出てる?」

 

居たり居なかったり、製造したデータと食い違いが出てる

居ない日付を確認していくと、戦闘があった日は僅かだが数字が合わない

これだ、この期間でなにか起こってる筈だ

 

「45に連絡しないと……!」

 

俺は急いで45に連絡を取った

 

 

 

 

 

「なるほど、その日に基地の周りで何かあったのかを調べてほしいのね」 

 

「そう、人形が消えるとなると恐らく車両か何かが動いてるはずだ、その車両の痕跡を追ってほしい」

 

「了解、分かったわ。何かあったら連絡するから」

 

了解とだけ返して連絡を終わる

推測だが、戦闘と称して物資を何処かに流して、人形を売買しているのかも知れない

当たり前だが、許可なく売買しているのは犯罪だよ犯罪

あとは、何処とやり取りしているのかだ

 

「これ以上は何もでてこないか、今日は流石に休んだほうが良いか」

 

基地から支給された野外ベットを設置して就寝する

念の為に入り口にはロックを掛けておく

ここで暗殺されたりしたら最悪だし

 

「あ、飯食べてないや。……起きてから食べよ……」

 

そんなに長く眠れないが、頭の整理と気分転換にはなるだろう

そう思って目を閉じた

 

「レイブン!大変なことが分かったわ!」

 

いきなりの通信に飛び起きる

時間にして結構寝てたらしいが、緊急性のある通信だったので眠気が吹き飛んだ

 

「人形を流してる相手は鉄血よ!」

 

「よりによってそっちかよ!今からデータを粗方送るからクルーガーに渡してくれ!」

 

「データを送ったら直ぐに離脱しなさい!鉄血に感付かれたみたい!」

 

おいおい、冗談だろォ?

って事はこの基地がドンパチ賑やかになるってのかよ

死ぬにはまだ早いって!

 

「直ぐに離脱は無理だぞ、データの転送に時間がかかる。ここのパソコン型式古過ぎて伝送速度低いんだから!」

 

「……クルーガーに支援出すように言ってみるわ。駄目だったら私達が行くから」

 

「すまん、頼んだ」

 

通信が切れると同時に部屋を飛び出し、執務室に向かう

すれ違う人形に変な目で見られるが気にするかよ

勢いよくドアを開けて指揮官の前まで行く

 

「なんだね、ドアをノックもしないで入って来るとは、何か見つけでもしたのかね」

 

「そうだよ、全部見つけたぞ。だが今はそれどころじゃない、鉄血がこっちに進行してきている」

 

「なんだと?」

 

「鉄血にこの監査のことがバレてたんだろうよ、だからこのタイミングで秘密裏にグリフィン側の人形を横流ししてた事を口封じに来たんだろうな」

 

「鉄血め……何か安全を保証するだ!クソッ!」

 

「今は時間が惜しい、死にたく無いのは俺も同じなんだ。今すぐ地雷と鉄条網を張り巡らせるんだ、防衛戦を張らないとマズい」

 

「クソっわかった。全戦術人形に告ぐ今から言う方角に防衛陣地を構築せよ!コレは訓練ではない!」

 

「全体の指揮は任せる、くれぐれも死ぬなよ?重要参考人なんだからな」

 

「誰が死ぬものか、私は意地でも生き残る」

 

特務室を出て屋上に向かう、鉄血と思われる集団が南の方角から来ているのを確認すると同時に指揮官に報告した

報告したとほぼ同時にスナイパーライフルを持った戦術人形とハンドガンを持つ戦術人形が入ってきた

 

「指揮官からの司令で偵察と狙撃を行います、貴方は前線の構築に向かって欲しいとの事です」

 

「了解、鉄血は南の方角から来ているのを確認したところだ、出来るだけ足止めを頼んだ!」

 

急いで階段を駆け下り前線の構築箇所に向かうと、そこにはAR、MG、SMGが作業に取り掛かっていた

 

「ここの担当は誰だ!」

 

「私です!」

 

「G41か!後どれくらいで終る!」

 

「後15分で終わります!」

 

「急げ!奴らは直ぐにここに来るぞ!」

 

土嚢を積んで遮蔽物を作る

全員が作業終了する頃に丁度SRが射撃を開始した

有効射程が500メートル前後だと仮定すると残り時間は少ない

相手も応射しているようで流れ弾が飛んでくる

 

「さっき見ただけでも2百近く鉄血が居たが、絶対ここを通すなよ!」 

 

「了解しました!」

 

既にコチラの有効射程に入って来た鉄血に対して射撃を開始する

戦力差は恐らく3倍近く

しかも相手は撃たれても足を止めない

ジワジワとこっちに来るのが気味悪いな

無線では指揮官と人形がやり取りをしている、無線を聞くだけでもかなり指揮官としては優秀な分類に入るのが分かる

何故そんな奴が鉄血に横流ししていたのか、全くの謎だが今はそれを考えてる余裕もない

初めの先制に成功してから数時間

今は射撃音すら疎らに聞こえる程度の戦場となっている

そうなるのも仕方ない、相手以上にコチラが人員物資共に疲弊しているのだ

 

「リロード!」

 

「カバー!」

 

「弾が切れた!弾をくれ!弾をくれぇ!」

 

「今倉庫から運び出してる最中よ!無茶言わないで!」

 

「何で地雷踏んでもこっちに来るの!」

 

「ここで終わるの……?」

 

「縁起でもない事言わないでよ!」

 

段々と劣勢に追い込まれつつあるせいか士気が落ちて来ているのが分かる

SRの射撃も減って来て鉄血を足止め出来なくなりつつある

 

「諦めるな!まだ希望を捨てるな!」

 

「諦めるなって、弾もほとんど無いのにどうするのよ!?」

 

「こっちはもう弾ないよぉ」

 

クソ、もう殆どの人形が戦意を喪失しつつある

戦線の維持が限界に近い、流石にもう駄目か!?

その時、空を何かが飛んて行った

 

「待たせたかしら、レイブン」

 

「ナイスタイミング過ぎるぞ45……!」

 

飛んでいったのはグリフィン所属のヘリ部隊だった

ドアガンからの斉射を見て人形達も顔に覇気が出てきた

しかし弾がないのは変わらない、あとひと押しが足りず歯痒い思いをしている所にヘリが3機着陸する

 

「遅れて済まないな、準備に手間取った」

 

「クルーガーさん!」

 

「弾を持ってきた、先ずはここを片付けよう」

 

それぞれが弾薬を補給し、もう一度立ち上がる

もう諦めた顔をした人形は誰一人としていない

最高の状態で反撃が始まった

 

 

 

 

 

「お疲れ様、レイブン」

 

「45か、お疲れ様」

 

あの後、無事に反撃に成功し指揮官も確保された

観念したのか大人しくヘリに乗り込んでいるのを確認したのが最後だった

鉄血がグリフィンの戦術人形のプロトコルを解析し、尋問時の嘘をつくパターンを解読していたと言う情報も出てきた事で新しくプロトコルが追加されたらしい

もっとも、嘘をつくパターンをもっと細分化する程度になっているらしいが

 

「今回ばかりは支援が間に合わないかと思ったよ」

 

「あれでも最速だったのよ?でも、無事で良かったわ」

 

「準備が間に合ったからな、もしどれかの情報が遅かったらどうなったか分からないけどね」

 

本社に戻って今は自室で休暇を取っている、事後処理とかでゆっくり休めなかったから、暫くは平和を享受したい

あと、コレは後日談ではあるが、あの基地には別の指揮官が着任したらしい、社報を見る限り仲良くやっているそうだ

 

「じゃあ、俺はもう一眠りするよ。結構疲れてるからさ」

 

「ふぅん、なら私も寝ようかしら?」

 

「添い寝?」

 

「やってほしいの?」

 

冗談だよ、と返してベッドに向かう

やっと正規のベッドが来たので野外ベッドともお別れ

なれたら寝心地は良かったからちょっと名残惜しい気もするけどね

しかし、このあと知らない間に45が入り込んでいてナインに物凄い形相で追いかけ回されてしまったのだった

 

「頼むからゆっくりさせてくれ、死ぬほど疲れてるんだ……!」

 

 




次も頑張って書きますのでよろしくお願いします!
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