テケテンテケテン~!
どうも、初めまして。稗田阿求と申します。
時季外れではございますが、ばかばかしい小噺を一つ。
酒豪ぞろいで二十歳前でも酒を飲むのが幻想郷。花見となれば誰しも酒を飲むものです。
何?「酒弱いから潰されるのが嫌だ?」甘い甘い。幻想郷じゃ酒代で潰れそうな神社がある。
今日だってねえ、酒飲んで帰ってきたんですよ?あの巫女。それだってのに二日酔いしてないんですよ?それどころか迎え酒してたんだから。
いや~、怖いですよね…東風谷早苗は。未成年のはずなんですけどね。
そんな酒豪揃いの幻想郷。桜が咲けば花見に行くのがここの人たちのたしなみでして。
「よ~、パチュリー!本借りに来たぜ!」
「借りるって言葉は返してから言いなさいよ…」
「死んだら返す」
「あんたは長生きしそうだから嫌。忙しいから出て行って」
「そうつれないこと言うなよ~。なんだ、花見の時期だってのに魔法の研究か?」
「違うわよ。何でもレミリアが白玉楼の一角で花見やるから、面白い宴会芸みたいな魔法でも考えてくれって」
「お!花見か!で、いつだ?」
「あんたも来るのね…まあいいわ。一人や二人増えても変わんないし。三日後よ。三日後の昼から」
「おーそうかい。じゃあ来るぜ」
「好きにしなさい」
宴会の約束を取り付けた魔理沙は、魔法の森をふらりと飛んでいた。
「いやー、相変わらず素直じゃないんだからパチュリーは。ありがたいぜ」
「おーい!魔理沙~!」
「ん?おお、アリスじゃないか。どした?」
「実はね、木曜日の昼に魔界でお花見やるのよ。あんたもどう?」
「魔界で!?出来んのかよ?」
「お母さんが桜並木を魔界に作ったのよ」
「へえ~、神綺がね~!」
「どうする?」
「行くぜ!!タダ飯食えるんなら葉桜でも行くぜ!」
「相変わらずねえ…」
ってなわけで、二人と約束をした魔理沙。意気揚揚と博霊神社にやってきた訳で。
「よう霊夢。邪魔するぜ」
「邪魔するなら撃つわよ」
「おい止めな。桜と共に散りたくはないぜ~。ずいぶんな挨拶だな、いら立ってるのか?」
「あんたの気分が高いだけ。何かあった?」
「おうよ。実はアリスとパチュリーに花見に呼ばれてな」
「へえ~。私もアリスに呼ばれたわよ」
「ん?パチュリーには呼ばれないのか?いや、呼ぶとしたらレミリアか」
「行けるわけないじゃないの」
「何だ、桜とワインは合わないから嫌か?」
「同じ日の同じ時間にどう行けって言うのよ?」
「へ!?」
「何驚いてんの?同じ日じゃないの」
「ちょっと待て!今日は…日曜だよな!?」
「何言ってんのあんた。今日は月曜日よ」
「うえええ!?なんてこったい…これじゃ私、二人の恨みを買っちまうぜ…どうしよう~」
「あ~あ、魔理沙の命もこれまでか。二股かけるなんてね」
「冗談じゃないぜ!どうにかして二人同時に…いやダメか、二人の場所はかなり離れている。ホウキで飛ばしても何十分もかかっちまうぜ」
「紫に頼んでみれば?」
「あいつがこんなことに手を貸してくれるタマかよ?何かねえかなあ…」
「無理よ。あんなに距離があるんだから」
「距離…?それだ!!おう、邪魔したぜ!」
ホウキに飛び乗り全速力で、風をも追い越し山越えて、魔理沙はひたすら飛んで行った!
ヒュ~~ン…ザザザザ!!
「おい!おい!起きろこら!」
「…ん?何だい、休憩中だよ今は」
「お前はいつでも休業してるだろ!そういうの、もはや廃業というんだぜ?」
「お、何だい。いつぞやの魔女じゃないか。肝が据わっていると思ってたのに、ずいぶん早い人生だったな?」
「馬鹿言え、このとおり足は付いてるぜ。そうじゃねえよ小町。お前の力を借りにきたんだ」
「あたいの力を?どういうこったい?」
「じつはその…かくかくしかじかで」
「何!?同じ時間に二人の女に約束入れた!?か~!これだから色男は…」
「男っぽいのは口とスペカだけだぜ…。とにかく、力貸してくれよ。お前の距離を操る力使うんだよ!」
「どういうこったい?」
「まず私はアリスの宴会に行く。お前はパチュリーの宴会に行ってくれ。30分したらお前の力で、私とお前の位置を入れ替える」
「なるほどね。そしたら二人の宴会に行けるな。でも、人に見られたらまずいよ?」
「なんとかして人目の付かないとこに行ってくれ!アリスとパチュリーには、お前が宴会に行けるよう話つけとくからよ」
「う~ん、まあいいか。タダ酒だよな?」
「当然だ」
「なら行くとするかね。ちょいと面倒だけど、それならやる価値はありそうだ」
そんなこんなで、宴会当日。
「よっ、アリス」
「あら、魔理沙。来てくれたの」
「当然だぜ。私は約束を守るタチだからな」
「調子のいいこと言っちゃって…」
「あら、魔理沙じゃないの。久しぶりね」
「おお、神綺じゃねえの。元気そうだな」
「あなたはずいぶん変わったわねえ。昔はもっと女の子らしかったのに」
「な、何のことだ?」
「あら、言ってたじゃない。うふふふふ…って」
「さ、さあな?いいじゃねえかそんな昔話。いいから飲もうぜ?魔界初の桜だ、酒飲まねえともったいないぜ」
「無理に話そらしたわね?」
「いいからアリス、お前も飲めって」
宴会始まってすぐ、調子よくグビグビ飲んでいく。そんなこんなで30分後
「どこ行くの?」
「ま、ちょっとな。聞くな」
「あ、そうね」
便所に行くふりをして、人気のないとこに向かうと、時計を確認する。
「もうそろそろだな…今度はパチュリーか」
ギュン!!
「お、ここは白玉楼か!流石だぜ小町、役に立つ!宴会場は…いたいた。おーい、パチュリー!」
「もう、遅かったじゃないの」
「悪いな~。前の日も酒飲まされて、すこし寝過しちまった」
「まったく…レディーを待たせるものじゃないわよ?」
「あん?レミリアか。どこがレディーだよ、レミィのくせに」
「うっさいわよ!まあいいわ。今日は無礼講よ。とっておきを用意したわ!」
「お、何だい?」
「紅魔館秘蔵のヴィンテージワインよ!私が生まれた日に作られた500年物のワイン、たっぷり振る舞ってあげるわ!」
「おお!そりゃ美味そうだ!」
「さあ、じっくり味わいなさい」
「おっととととと…いいねえ、この香り」
「じゃあみんな、この花見にかんぱ~い!」
「パチュリー、乾杯!」
「あ…乾杯」
「なんだよ、嬉しそうだな?」
「んー、そうね…魔理沙」
美味いワインで酒が進み、また30分後。
ギュン!
「おうアリス…」
「長かったわね魔理沙…って、顔が相当赤いわよ?大丈夫?」
「だ、大丈夫だぜ!さ、飲もう!な?」
「う、うん…」
ギュン!
「ようパチュリー…」
「遅かったわね…大丈夫?足元ふらついてるわよ?今日はそんな飲んでいないはずだけど」
「だ、だいじょーぶ、だぜ。な、飲もうぜ?な?」
「え、ええ…」
こんな太鼓持ちみたいな真似をずっとやっていたわけで。最初からぐびぐび飲んでたもんだから、酒には多少強い魔理沙でも効いてきた。
宴会じゃ最後まで残る魔理沙が、すぐに帰ったんじゃ怪しまれる。かといえ、アリスとパチュリーの見ていない所でも酒飲んでいるなんて、二人は夢にも思っちゃいない。
怪しまれないよう、二人の前ではいつも以上に酒を飲んでいたわけなんだが…
「な、なんてこったい…二つほぼ同時で酒飲んで、しかもいつものペース以上飲まなきゃいけねえんだから…いつもの二倍は飲まなきゃならないのか…」
宴会始まって3時間。すでに魔理沙は千鳥足。ホウキをつえにし、ふらふらと歩くまでになっている。二人の前じゃ気丈に振る舞うが、もうすでに吐きそうだ。
顔はもう真っ赤に染まり、目はうつろ。酒臭くって少女らしさのかけらもりゃしない。
「おうアリス…」
「魔理沙…大丈夫?」
「大丈夫だって!ほら、このとお…っとっと!」
「きゃあ!もう、大丈夫?」
「お…悪い」
「もう…ほら、こっち来なさい」
「ん?」
「ヒザ、貸したげる」
「お…悪いな」
「まったく、あんたはいつも無茶しすぎなのよ。どうせ宴会前日も酒飲んだか何かしたんでしょ?」
「…くー」
「聞いてないし」
「おっとっと…。あたいも酒が回ってきちまったようだ。だいたい、この入れ替えはいつまでやってたらいいんだ?全然決めてなかったよ…」
一方、白玉楼で飲んでいた小町も、結構に酒が効いている。
後先考えず酒飲んでいたから、こっちもいつも以上に酒がまわっている。
「うー…ああ、立てないや。まあいいか。えっと、魔理沙魔理沙…いた!ホイっと!」
ギュン!
「ねえ魔理沙…ほんとに大丈夫?あなた前は結構飲んでいたじゃない?永遠亭で薬でも貰った方が…って、キャ!!」
「うおっと!」
「あ、あんたいつぞやの死神!なんであんたヒザで寝てるの!」
「え!?あ、いやその…」
「魔理沙は!?魔理沙をどこにやったの!?」
「いやその、あの…ほら、迎えにきたんだ!魔理沙のお迎えに!」
お後がよろしいようで
いかがでしたか?
一応解説して置くと、酔いつぶれた魔理沙のお迎えに、死神の小町が迎えに来るという縁起でもない話です。皆さんもお酒はほどほどにしましょうね。
阿求を噺家に選んだのは、数少ない和服キャラで似合いそうだったからです。座布団に座って話す姿が一番しっくりくるのでこうしました。
それでは、読了ありがとうございました。