テケテンテケテン~
どうも、初めまして。知ってる人には今日は。稗田阿求です。
唐突ですが、思いつきで行動するとろくな事がないって言われませんか?
子供の頃、もっとよく考えなさいと作者も言われたもんです。だけどまあ変わっちゃいない。
何でって?早速詰まってるんだもの、この小説に。
私が高座に上がれるのも、あと何回になることやら…
そんな思いつきで行動する奴は、いつの世代どこの世界にもいるようで。
「よっ、開いてるかい?」
「いらっしゃいませ~。あら、魔理沙!」
「よっ、ヤツメウナギと熱燗頼むぜ」
「はーい」
ジュウウウ…
「いやあ~しばらくぶりだな。どうだい調子は?」
「ぼちぼちですかね」
「またまたあ、謙遜しちゃって。結構噂になってるぜ?」
「あらそうですか?ありがとうございます」
「ひいきにしている客も多いんだろ?」
「おかげ様でだいぶ定着しましたね~。どうも、お待ちどうさま」
「お、早いね。流石だな。じゃあ早速…はふっ、ん~上手いな」
「あら、ありがとうございます」
「いい具合にふっくらしてるな~。タレもよく合ってるぜ」
「そんな褒めても何も出ませんよ?はい熱燗」
「お、悪いな。うん、酒によく合うぜ」
とまあ、こんな具合にウナギを食っては誉めたたえ、酒を飲んでは誉めるの繰り返し。
そんなこんなで一時間後。お勘定の時がやってきた。
「ミスティア、お勘定頼むぜ」
「はい。えーと、九文ですね」
「おおそうかい。えーと…ああすまない。細かいのしかないんだ。一つずつ数えながら渡すぜ。手え出してくれ」
「はい」
「ひい、ふう、みい、よ、いつ、む、なな、今何どきだい?」
「やっつですね」
「ここのつ。じゃあな、旨かったぜ」
「まいどあり~」
ここまでくれば皆さん察しがつくでしょう。
そう、あの有名な古典落語“時そば”のネタでございます。
魔理沙は八文目の銭を渡さずミスティアに“八”と言わせて一文勘定をごまかしたのです。
こうして銭を一文ちょろまかしてみせた魔理沙。それを一部始終見ていた奴がいた!
「ねえ、見た今の?」
「ええ。魔理沙さんやるわね」
「どうする?店主に言う?」
「言ってどうすんのよ。ねえ、私たちも試してみない?」
そう言ってほくそ笑んでいたのは、三月精のサニー、ルナ、スター。
いい話を聞いたと浮かれながら家路についた。そして次の日。
「ようし、昨日のやつ試してやろう!」
意気揚々と三人は人里の市場へとやってきた。時刻は正午といったところ。
「さーて、誰にするかな~」
「とはいえねえ、サニー。あんなのに引っかかるかしら」
「そこよ。だからこう、見た感じいかにもダマされそうなやつがいないかな~って」
「ダマされそうなやつ?」
「なんかこう、いかにもほわわ~んとしていて、疑うってことを知らないような…」
「そんな奴いるわけないじゃないの」
「いるかどうか調べてんの!ルナ、あんたも探しなさい」
「あ、いた」
「え!本当?」
スターが指さした先には、あられを売っている露店が一軒。
そこの女将がいかにも人の良さそうな雰囲気で売っている。
「お!スターでかした!成程、見ての通り疑うことを知らなさそうな顔してる」
「ちょっ!ちょっと待ってサニー!あの人って…聖白蓮さんじゃないの!」
そう、売っているのは命蓮寺の聖。
ちょうど寺が建った日なので、祝いに余ったもち米で菓子を作って売っていたわけで。
「何よルナ、知ってるの?」
「あんたは新聞を読んでないの!?あの妖怪寺の住職よ!」
「だったらなおさら好都合、いかにもダマされそうじゃない」
「嫌よ!私は絶対に嫌!バレたらあんた、魔法で南無三されるわよ!」
「ちぇっ、そこまで言うならいいわよ。スターはどうする?」
「私は見てるわ~」
「じゃあ私だけで行ってくるわ。楽しみにしてなさい」
「ああサニー、あんたの命もここまでか…南無阿弥陀仏」
「サニー…骨は拾ったげるわ」
「何をビビってるんだか」
物を知らぬというのは時に恐ろしいことを平気でさせるもので。
サニーは自信満々で聖に近づき、昨日聞いたように話し始めた。
「ごめんください」
「はいどうも」
「あられ三袋とお茶くださいな。いや~しばらくぶりだね。どうだい調子は?」
「え、あの…初めて会ったと思うんですけど。まあぼちぼちですかね」
「またまたあ、謙遜しちゃって。結構噂になってるよ?」
「あらそうですか?ありがとうございます」
「ひいきにしている客も多いんだろ?」
「そんなことはありません!みんな平等に接していますよ!はいあられ」
「お、早いね。流石だねえ」
「いや、もう作ってありますからね」
「じゃあ早速…はふっ、ん~上手いな」
「あら、ありがとうございます」
「いい具合にふっくらしてるな~」
「え?ふっくらしたあられなんて、私聞いたことないんですけど…」
「うん、酒によく合う」
「合いますか?私、お酒の味は知らないのですけど。あられとお酒って合うんですねえ」
とまあ、噛み合ってんだか合ってないんだか、わけのわからん会話になっていた。
サニーは誉めてるつもりだろうが、周りからすればちんぷんかんぷん。
そうこうしているうちにお勘定の時が来た。
「ええと、お勘定頼むよ」
「はい、十三文になります」
「そう。えーと…ああすまない。細かいのしかないんだ。一つずつ数えながら渡すよ。手を出して」
「はい」
「ひい、ふう、みい、よ、いつむ、なな、や、ここのつ、とう、じゅういち、今何どきだい?」
このセリフに聖の隣にいた一輪とナズーリンがピンときた!
(こいつ…なんかおかしいと思ったら、時そばのネタで勘定ごまかす気だわ!)
(どうする一輪?)
(面白い、私に任せてちょうだいな)
「えっと…」
「もうすぐ一つですよ」
答えようとした聖を差し置き、横から一輪姐さんが割ってきた!
この答えにサニーはびっくり仰天!
「あれ、一つ…?」
「一つよ。間違いないわ」
「ええ!?そんな馬鹿な!ねえ聖さん、あなたどう思う?」
「ええといくつだったかしら…店の方にかかりっきりなもので」
目論見が外れてしどろもどろ、あきらかに焦るサニー。
その隙をうかがって、目くばせした一輪姐さん。事情を察した雲山が寺の鐘に拳骨を一発!
ゴーン!!
「ほら、一つ」
「ええ…!?」
「えっと勘定は…次は二つからかしら?」
「そんな馬鹿な!数えなおそう!ひい、ふう、みい、よ、いつむ、なな、や、ここのつ、とう、じゅういち、じゅうに、じゅうさん!」
「確かに。ありがとうございます」
「ところで…何で君はあんなに慌てたのかい?」
「へ!?」
焦るサニーに、ナズーリンが奉行所並みの圧力で迫ってくる!
「え、それは、その…」
「君はなんで一つと聞いて慌てたんだい?もしや、君は時間を知っていたんじゃないのかい?」
「いや!そんなことは」
「じゃあなんで慌てた?」
「その、詳しい時間はわかりませんが…たぶん前に聞いたのが、鐘の回数が多かったなあと」
「じゃあ時刻はわかるだろう?十二と一の違いぐらいわかるだろうに」
「いえその、一つの鐘を聞き逃したんじゃあないかって」
「ここは寺のまん前なのに、かい?」
「ええまあその…はい」
正直逃げ出したいが時すでに遅し。周りは聖とナズに囲まれている。
いくら姿を消そうと逃げられたものじゃない。
しどろもどろになるサニーに、ナズーリンがさらに問い詰める!
「そんなわけないだろう!」
「いえ本当にそうなのです!あの、何といいますか…は、腹が減っていたんです。それで夢中であられ食べてたから聞きそびれたんじゃないかな~って」
言い訳に困ったサニー。ついに口から出まかせまで飛び出る始末。
言い終わったが最後ナズーリンに腕をつかまれ、もはやこれまでと目をつぶった!
「そうか。ならついてきなよ」
「え?」
呆然とするサニーをよそに、ぐいっと腕をつかまれ寺の中へと連れられて行く!
流石のサニーも恐れおののいたが…
「ちょっと待ってなよ。一輪?準備できたかい?」
「は~い!お待ち!」
通された部屋でどん、と出されたのは一輪特製の精進料理。ご飯に味噌汁、高野豆腐といった一品が並んでいく。
「腹減ってるんだろう、食わせてやるよ」
「え、あ、ありがとうございます」
わけもわからぬまま、まあタダ飯食えるならいいかと箸をつけてくサニー。
これが旨いのないの!ずっと炊飯係まかされているだけはある。
「はふ、はふ、はふ。旨いねえナズーリンさん」
「そうだろうそうだろう、どんどん食べなさい」
調子よくどんどん食べていくサニー。
だが精進料理といえど次々出されていく。当然妖精一人で食えるものではない!
「う、あの…」
「何だいサニー?時間を忘れるほど腹が減っていたのだろう?」
「いやさすがに…」
「お腹一杯、とは言わないよな?あられで腹は膨れんだろう?ん?」
つきについた嘘がどんどんとサニーの首と腹を苦しめる。
もう箸を置きたいのだが相当に食わなきゃあ、このナズーリン許してくれそうにない。
それに今更自首しても、もうそこは寺の中心部。何されるかわかったもんじゃない。
(まいったなあ、どうしようか。とにかくこのちゃぶ台の料理片付けたら、さすがに許してくれるかな~)
逃げようにも隣にはナズーリン。しょうがなくサニーは箸を進めていく。
旨い、旨いがもういい!と何度も心で毒づきながら、どうにかこうにか片づけた!
「うぇっぷ…うう、はあ…。どうも、ごちそうさまでした」
「おお食ったか、大した胃袋だ。腹が減ってたんだなあ」
「ええまあ。すいませんねえ馳走になって」
「いやこれしき。これも一つの善行さ」
(やっと終わった!ああ気持ち悪い…帰って横になろう!)
腹はぱんぱん、もうご飯粒一つ水の一滴すらも入らない。
一気に体が重くなったような心地がする。まともに飛べるかどうかもあやしい。
「ところでサニー?」
「はい、何でしょう?」
ガラリ!
障子を開けて一輪がにんまり、勝ち誇った顔で聞いてきた。
「食後のおやつはいかが?」
「いやいや!もういい!もういいです!」
涙目になって訴えるサニー。それでも一輪はお盆を持って歩み寄る!
もうサニーは食い物見るだけでも吐きそうだ!
「そんな遠慮せずに、作りたてのあつあつですよ?」
「いや!やめて!その…」
「なんだい?」
「こっ、怖いんだ!まんじゅうこわい!」
お後がよろしいようで
落語の話を落語で返す、ってネタですけどいかがでしょうか?
腹いっぱいの時にまんじゅう見せられたら、どんな人でも怖いと思います。