υπηρχεω【完】   作:トラロック

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iurisdicatio
07 武人の交渉


 迷宮都市オラリオにて繰り広げられた小さな戦い。その結果は――結局のところ鍛錬以上にはならず死傷者は出なかった。ただし、それは冒険者側の見解だ。

 人知れず一つの命が失われたことを当事者達は知っている。

 神々の気紛れにて生まれ出でた孤高の女王。その名は【静寂】のアルフィア・ストラディ。

 癖のない真っ直ぐに伸ばされた長髪は灰色。閉じた目蓋の中に左右色違いの瞳があり、元人間(ヒューマン)の女性であったが何の因果か竜女(ヴィーヴル)の変異種として再誕した。

 ごく小規模の騒動があったものの都市全体を揺るがすほどの混乱は生じなかった。

 唐突に現れ、唐突に消えた。これはただそれだけの事でしかない、()()()()

 深層への遠征に向かう【ロキ・ファミリア】との争いを都市中央に聳える『摩天楼(バベル)』の上層から地上に顔を向ける者が居た。

 いつものようにダンジョンに赴く白髪(はくはつ)の少年を眺める為に。

 天より地を睥睨するのは美と豊穣を司る女神『フレイヤ』――

 

(……随分と呆気ない最期だったわね。……魔石を持っていたから? ……報告にあった『異端児(ゼノス)』の避けられない弱点というのは……、(いささ)かつまらないものね)

 

 もし、彼らの弱点(魔石)が無ければもう少し歯ごたえのある戦いを見ることが出来たかもしれない。しかし、それはそれで倒しにくい敵が現れる事になる。

 自分の眷族(子供)達を強くするにはアルフィア(推定レベル7)くらいの強者の存在がどうしても必要だ。だから、その利用価値を見定めていたのだが――思いのほかデメリットが大きい事に女神(フレイヤ)は嘆いた。

 

(……レベル(セブン)一人居るだけで複数のレベル(シックス)を手玉に取れる。そして、彼らから得られる【経験値(エクセリア)】はとても多い)

 

 同レベル帯の鍛錬よりも旨味がある分、上位者との邂逅の機会はとても少ない。まして本気の殺し合いなど早々出来る事ではない。

 現団長にして【猛者(おうじゃ)】オッタルでさえ次の【ランクアップ】に未だ至れていない。――もう七年も経っているのに。

 窓に向けていた意識を室内に控える――身長二(メドル)はあろうか――オッタルに向ける。

 

(でも、試す価値はあるのではなくて? ……それには色々と妥協しなければならないわね。……駄目なら駄目で構わないし、元より成功など望むべくもない。結果が分からない方が楽しみになっていいんじゃないかしら)

 

 一歩、足を動かした時、後ろ髪を引かれる様な感覚を覚えた。それは微かな違和感のようなもの。

 フレイヤが振り向いた先にはオラリオの通りしか見えない。

 地上ではない。もっと下の方だ、と感覚が告げる。

 意識をダンジョンの底へ向けていくと目的の場所にたどり着く。

 

(……流石に深層までは届かないけれど……、確実に何かが上を目指しているようね。それも複数……。とても懐かしい感じがするわ。……ああ、この熱情に似た魂を持つ者を私は……)

 

 正体までは看破できないが面白そうな客人が現れた事だけは分かった。

 フレイヤは側に控える猪人(ボアズ)の武人オッタルに顔を向け、しばし思索に耽る。

 【ロキ・ファミリア】だけ楽しい思いをするのは面白くない。自分も楽しみたい。であれば――多少の手間をかけて娯楽に浸っても罰は当たらない筈だ。

 独占欲がある女神は嫉妬心も備えていた。

 

「……オッタル」

「はっ」

 

 女神の言葉に即座に(かしず)く武人。

 フレイヤは彼にいくつかの御遣(おつか)いを頼んだ。すると厳めしい彼の顔がより苦渋に満ちた。

 無理難題を言ったつもりはないのだけれど、と女神が言うと彼は不満を残しつつも御意と答えた。それがフレイヤにとって気掛かりを覚えるものになった。

 女神は彼に白髪(はくはつ)の冒険者ベル・クラネルが今しがた手に入れた大きな魔石を言い値で買い取れと言っただけだ。それのどこが難しい事なのか、彼女は部屋から退出する彼を小首を傾げながら見送る事になり、一抹の不安を抱く。

 

(……どんな深読みをしているのか分からないけれど、こちらも急がないと……)

 

 女神フレイヤは呼び鈴を振る。すると数刻を待たずに室内に従者が入ってきた。

 静かな足音以外の無駄な雑音を取り払ったかのような静謐さを醸し出すのは多くの侍従達を束ねる女性冒険者ヘルン。

 右目を隠すような髪型。灰色の髪と漆黒の如き瞳を湛える人間(ヒューマン)の相貌には感情というものが浮かばず、フレイヤに対し何の支障も与えないようにしていると思わせる。

 

「貴女にはいくつかの【ファミリア】の主神に招待状を送ってくれないかしら? それも大急ぎで」

「御意」

 

 些かの迷いもなくヘルンは頭を倒して肯定の意志を見せた。

 彼女の『二つ名』は存在しないが『名も無き女神の遣い(ネームレス)』という通称が伝わっている。

 ヘルンに要件を伝え終わった後、部屋に一人きりになったフレイヤはいつものように大窓から下界を見下ろす。

 天より地を睥睨するのは女神の特権である。

 

(……もう少し私を楽しませて頂戴。……あら? あの子(ヘルン)にワインも頼んでおけば良かったわね)

 

 楽しみを優先させるあまり手持ち無沙汰であった事を思い出し、苦笑する。

 飲み物が無くともしばらくは平気だが()()()()()()()()()()()()()()()()

 

          

 

 女神フレイヤが暗躍している頃、アルフィアとの激闘を繰り広げた【ロキ・ファミリア】は当初の予定通りに深層への遠征に向かう。

 そんな彼らと入れ違いに【ヘスティア・ファミリア】の面々は本拠(ホーム)である『竈火(かまど)の館』へ帰還する。

 未知の強者アルフィアに(いざな)われ、様々な経験を得た少年ベル・クラネルは彼女が残した大きな魔石を即座に売り払うことなく居間のテーブルに置いて、しばし眺めた。

 紫紺の色を湛える宝石はダンジョンがモンスターに命を与えた結晶である。これを砕かれるとモンスターは即座に形を失い、灰と化す。

 

「……大きな魔石だよな。こうしてじっくりと眺めた事って無かったな、そういえば」

 

 ベルの側に座るのは赤髪の鍛冶師(スミス)である青年ヴェルフ・クロッゾ。

 後から加入した人間(ヒューマン)だがベルにとっての兄貴分のような態度を表す。

 反対側の席に座すのは小柄な体形の小人族(パルゥム)の少女リリルカ・アーデだ。今回の騒動で一番気苦労を経験したものの獲得した収穫物の収益金の多さに概ね満足していた。

 

「これだけの大きさなら一〇〇万ヴァリスは硬いかもしれません」

「………」

 

 ヴェルフとリリルカの言葉に反応を見せず、ベルはただ魔石を見つめていた。

 出会って日が浅い筈なのに昔から気にかけてくれた知り合いの様な雰囲気に戸惑っていた。

 見ず知らずの存在なのに。どうしてか胸が痛む。

 

(……アルフィアさん。まるで、僕の事を小さい頃から知っているような雰囲気があった)

 

 単に優しいだけではない何かが彼女にはあった。だが、ベルはそのことを知らない。

 それに――どうしてアイズ・ヴァレンシュタインと腹違いの姉弟(きょうだい)などと言ったのか、気になった。とても気になった。

 そんな言葉を言うからにはベルとアイズの事を知っていなければ出ない筈だ。単に異端児(ゼノス)として触れ合ったからお返しとしてそういう話しをしてくれたわけではない。

 彼女には何か確信めいた事情があった。そう思えて仕方がない。

 

(僕の知る限りアルフィアという冒険者の事は何も知らない。英雄に連なる人物ではないのは確かだし、リューさんとアイズさんの言う通り『闇派閥(イヴィルス)』の関係者だったのかもしれない)

 

 数年前、オラリオに破滅を(もたら)した元凶の組織。

 当時の関係者であることをアルフィアは否定せず、ベルも証拠が無いので否定できなかったけれど。それでも彼女が心底悪人だとは思えなかった。いや、そう思い込みたいだけなのかもしれない。

 

「我らの団長様は切り替えが遅いな」

 

 ヴェルフの言葉に彼らの対面に座る黒髪の女神ヘスティアはかける言葉を探しながら苦笑していた。

 少年が一度悩むと現実に戻るまで結構時間がかかるのは半年という短い付き合いではあるが、ある程度は理解していた。

 ヘスティアからすればいつもの騒動の一つ程度にしか感じなかったけれど、(ベル)にとって大きな心の傷になってしまったのかもしれない。なにせ、目の前で一つの命が失われたのだから。

 

「……【静寂】のアルフィア。小耳に挟んだ程度ですが……、彼女は【ヘラ・ファミリア】の団員でレベル7。七年前に起きた『大抗争』においてオラリオを危機に陥れた元凶の一人であることは間違いないようです。そして、当時台頭していた【アストレア・ファミリア】に討ち取られた……。リュー様達が彼女の事を知っているのは当然と言えます」

「七年前……。悪いけどボクは最近地上に降りた神だからねー。数年前の事はまるで分からないんだ」

(……本当に役に立たない神ですね、ヘスティア様は!)

「ああ、でも、ヘラがどういう女神かは知っているよ。……陰湿で陰険で横暴で傲慢で……常にゼウスを付け狙う狂気じみた神だ。とても友達になりたいと思わせないヤバイ女神さ」

(……それ、もう女神じゃなくて邪神の(たぐい)では?)

 

 彼らが話している横で飲み物を配る女給は金色の髪と毛並みの尻尾を持つ狐人(ルナール)のサンジョウノ・春姫。その彼女を手伝うのは極東から来た少女ヤマト・(みこと)である。

 ――ヘスティアを含めた六人が【ヘスティア・ファミリア】の全戦力であった。

 

          

 

 思い悩むベルを自室で休むようにヘスティアが言うと魔石を持って退出していった。

 しばしの静寂の後、息苦しい空気から解放された団員達はそれぞれ深呼吸する。多感なベル・クラネルの心境を理解するのは誰にとっても難しい事だった。神であるヘスティアも同様に。

 

(下界の子供達は永遠に生きる訳じゃないけれど、身近な死は堪えるようだね)

 

 特にアルフィアはベルをとても気にかけていた、と聞いている。どういう意図があったのかヘスティアには分からない。ただ――

 

 二人がまるで親子のように見えたのは確かだ。

 

 そして、確かに聞いた。

 ベル・クラネルは私の家族だ、と。

 神に対して嘘は付けない。ゆえにその言葉が嘘か真実かヘスティアには分かる。

 

(……単なる出まかせなんかじゃあなかった。あれは……、あの時の言葉は確かに真実だった。……仮にベル君の母親だったなら彼自身が分からない筈がない)

 

 帰り際、こっそりと母親について尋ねた。

 ベルは物心つく頃には育ての親たる祖父しか居なかった。

 両親の事は知らず、けれども祖父から幼い頃に死んだと聞かされた。

 

「ちなみにアルフィア君がベル君と何がしかの関係があるという事はないかい?」

「そもそもベル様の事はあまり知らないのですが……。【静寂】のアルフィア・ストラディとベル・クラネル……。名前からして繋がりがあるとは……」

「ヘスティア様は二人が肉親だと思われるのですか?」

「……いや、まあ……。アルフィア君が自分の家族だと言ったんだ。……とても嘘とは思えない。……これから死にゆく者が嘘をつくとも……、ボクには思えなかったけれど……」

 

 意気消沈するような態度でヘスティアが言うと団員達が戸惑いを見せた。

 アルフィアについての情報はまだ然程集まっていないがリリルカが追加情報を得てきましょうか、と言うと女神はより一層思い悩んだ。

 知らなくてもいい真実が現れるかもしれない。しかし、彼にとってはとても重要になる筈だから応援しなければならない。その気持ちの葛藤に揺れる。

 闇派閥(イヴィルス)の幹部うんぬんはベルも聞いているので不都合な話題は既に解消していると見て間違いない。問題は彼とアルフィアが本当に家族関係にあるとしたら――ヘスティアはどう振舞えばいいのか、だ。

 

(と言っても彼女は死んだ。今更彼女の情報をほじくり出すのはベル君の傷を広げることにならないだろうか。それとも第二級冒険者となった彼に色々と教えた方が今後の為になる? ……どちらがいいんだろう)

 

 それにベルはとても優しい子だ。身近な死に今は傷心している状態。今しばらくそっとしておいた方がいい気がした。ただし、情報だけは集めておいていいかもしれない、と思いリリルカに指示を出す。

 アルフィアとは何者か。――ベルの事はギルドのアドバイザーである半森妖精(ハーフエルフ)のエイナ・チュールが一番知っている。いや、よき理解者の一人だ。彼の事は彼女(エイナ)に任せよう、と。

 

          

 

 意見が出そろう頃に本拠(ホーム)の門を叩く音が聞こえ、(みこと)が対応に向かった。それから数刻と経たずに慌てた彼女が居間に駆け込んできた。

 【フレイヤ・ファミリア】団長オッタルが来た、と。

 ヘスティアは然程でもなかったのだが団員達はそれぞれ驚きの声を上げる。ただし、春姫は小首を傾げていた。オッタルについての知識があまり無かったので。

 

「あの猪野郎がどうして……」

「す、すみません。姿を見かけただけで驚いてしまい、用件を聞くのを忘れていました」

 

 そう言いおいて命は玄関に向かった。

 都市最強と名高い【猛者(おうじゃ)】が直々に他派閥の本拠(ホーム)に来るとは誰も思わない。単なる挨拶に来るような、気軽さを持ち合わせていなかった。

 【ヘスティア・ファミリア】は弱小でありながら話題に事欠かない。その点でも【フレイヤ・ファミリア】と抗争するような間柄ではない事は女神ヘスティアも承知している。

 主神同士の仲は険悪ではなく、出会えば言葉くらい交わす。

 

「『神会(デナトゥス)』やパーティかなんかの時はフレイヤと話す機会がある程度だけど……。子供達とは話したこと無いな……」

「フレイヤ様の名前は聞いたことがあるのですが姿は殆ど見たことがありませんね」

「美を司る女神を見ると魅了されるからね。見ない方がいいんだよ。あれは子供達には毒だ。神すらも手玉に取っていると聞いたよ」

 

 そんなことを話している内に命が再度やってきた。

 【猛者(おうじゃ)】の目的はベルが得た魔石を買い取りたい、というもの。

 どうしてそれを知りえたか――神フレイヤがどこかで見ていた以外に思い浮かばない。

 ヘスティアは銀髪の女神の笑う姿を想像してげんなりした。

 

(……フレイヤめ……。今日に限って……。全く何を企んでいるのか知らないけれど……、眷族をけしかけてくる相手だから……、きっと逃げても無駄なんだろうな)

 

 フレイヤの神意は分からないし、きっと理解できない。その女神が眷族を送って魔石を所望している。おそらくアルフィアの魔石だと分かった上で。

 砕くのか、それとも単に飾る目的があるのか。

 どちらにしてもベルの同意を得ない限り勝手な判断は神であっても出来ない。

 

「……猪人(ボアズ)君を入れてあげてくれ。言い分を聞こうじゃないか」

「わ、分かりました」

 

 そんなものはありません、と断る事も出来るが強引な手に出られれば【ヘスティア・ファミリア】はあっさりと崩壊する。

 本拠(ホーム)は大きいけれど団員数はまだ一桁(実質五人)だ。

 唐突な強者の訪問に右往左往する頃、武人オッタルが(いか)めしい顔のまま命の案内で客室に訪れた。

 まず代表として団長が挨拶すべきところだがヘスティアが出る事にした。今のベルには休息が必要だと判断したからだ。

 

「……や、やあ、猪人(ボアズ)君。ようこそ、我が【ファミリア】の本拠(ホーム)へ」

 

 他の眷族からはしたないだのけしからんだの言われている薄着のままオッタルの対面に座る。

 小柄なヘスティアと比べるとオッタルは倍近くの背丈があるような錯覚を覚え、迫力もそれ相応に感じた。それと始終気難しそうな顔つきのまま。

 他所(よそ)行きの身なりではなく、このままダンジョンに潜りそうな簡素な戦闘衣(バトル・クロス)(まと)っていた。

 

(……改めて見ると強そうな子だな……。一人でうちの【ファミリア】を潰せそうだ)

 

 ヘスティアがベルを伴うようにフレイヤの側にはオッタルがいつも居た気がする。

 喋るところを見たわけではないが温厚なイメージがあった。常に周りに気を張り巡らせる神経質さは無かったはずだ、とヘスティアは記憶を辿った。

 浅黒い肌に猪人(ボアズ)特有の丸っこい獣耳。筋肉質の身体つきだが太っている印象を抱かせない。

 

「用件を聞こうじゃないか。……ベル君の持っている魔石なんだろうけれど」

「……その魔石を是非とも買い取らせていただきたい」

「君は知っているのかい? あれが何の魔石なのかを。ただのモンスターから落ちた物じゃないことくらいフレイヤは知っている筈だ」

「……俺はただ主神の命に従っているだけです。目的の魔石が何なのかは承知していない」

(……おいおい。ちゃんと聞いてから来なよ。何でもかんでも命令されたからっていう言い訳は面倒ごとの前兆じゃないか)

 

 仏頂面のオッタルに憮然とするヘスティア。

 少しの間、考える振りをしつつ【猛者(おうじゃ)】を見据える。命令された事に嘘は無い。ただ、彼としても無茶な言い分であることを承知しているような感じがした。

 女神の命令だからといって彼とて気まずさを感じていないわけがなかった。

 

「……いいだろう、なんてボクが言えるわけないだろうが。……フレイヤめ……、何を考えているのかさっぱりだぁ! ……あー、ボクはベル君に嫌われたくないのにさー」

 

 大仰な振る舞いをしながらも内に溜まる不満をオッタルにぶちまける。この際、多少の無様さは許容する。

 【猛者(おうじゃ)】はフレイヤの為だけに行動している。それが自分を辱める事になっても構わない、という強い意志も感じられた。

 だからこそ、ヘスティアも自分の不満を隠すことなく(あらわ)にした。(オッタルか、フレイヤ)がしようとする事はどれだけボク(ヘスティア)を困らせることになるのか。

 

          

 

 少し待ってくれるかい、と告げると急いでいるので今日中に返事が聞きたいと言ってきた。これについて引き延ばせば力づくで奪う、という声なき圧力を感じ、ヘスティアは脂汗を流す。

 もしかしなくても交渉というより脅迫である。もちろん、オッタルにも言い分があり、やむなく従っている所があるのは理解できる。

 何を言っても手に入れる事は確定事項のようで、後はヘスティア側が折れるだけ。その際、オッタルを敗走させられる――可能性がありそうな――眷族はベル以外に存在しない。

 

「……無理を言っている事は理解しています。ただ金を払って魔石を譲ってもらうだけでは納得しないでしょう」

「……世間一般の常識から言って納得する方がどうかしているよ。突然来訪してきて金を払うから大事な眷族を買うと言っているのと一緒だよ。……魔石といえどベル君にとって大切なものなんだ。彼の意見を無視することは出来ない。いくらフレイヤの子供であってもここは譲れないね」

 

 腕を組んではっきりと言い切った。

 神であるヘスティアにとってレベル7のオッタルでさえも一人の子供だ。どれほど威圧的に出てもほんの少し神の意識を発揮すればそよ風の如く――と簡単にはいかないがある程度は威圧に耐えられる。

 真に神に危害を加えられるのは神だけだ。

 

「……一応、ベル君の意見を聞いてみない事には……。君、少し待ってておくれよ」

「はい」

 

 武人が素直な態度を示したのでヘスティアは少しばかり安心した。その後、扉の外で待機していたヴェルフ達の下に向かい笑顔を見せた後、オッタルに飲み物でも振舞うように指示し、ベルの部屋に向かった。

 別室にて(ベル)は枕元に魔石を置いて、対話するかの如く見つめていた。

 扉を何度かノックしたものの返事がなく、鍵をかけていなかったので様子見のつもりで覗いたらそうしていた。

 

「……起きてたのかい?」

「神様……」

 

 廃墟同然の教会に居た時からベルとは共同生活してきた。寝床は古いソファだったり、大きなベッド一つだけ。

 他の女子の前だと恥ずかしがる彼も神との添い寝だけは特に反応を示さなかった。それがまた納得できない事の一つではあったが――

 

(……ボクが勝手に入っても、いつものように流される。……それってボクに魅力が無いってことかい!? 神だから特別だと思っているのかもしれないけれど……)

「……ベル君。その魔石を買い取りたいと言っている子が来ているんだ」

「えっ?」

「相手は【フレイヤ・ファミリア】だ。断れば即座に実力行使に出られるかもしれない。……君にとって不本意かもしれないけれど……、彼らには何か考えがあるのかもしれないよ。……彼らというかフレイヤが」

 

 思い悩む少年にヘスティアは優しく語り掛ける。

 決めるのは団長だが無理に拒否する事も肯定する事も出来ない。その上でどうするのかを尋ねた。

 こういう場合、買取拒否を示すのが正しい回答の一つだ。金目当てに応じる事も間違いではない。

 フレイヤはかなり早い段階から眷族を寄こしている。それは何故か、を考えなければならない。

 

(……ロキの子供達との戦いからそれほど時間も経っていない。もし、アルフィア君が目的なら戦闘中に介入してきたはずだ。魔石だけになったら(むし)ろ興味を無くすんじゃないのかい?)

(どうして【フレイヤ・ファミリア】が……。今も居るならリリ達が危ないってこと?)

「……ボクとしては彼らを信用してもいいと思う」

「……神様。ですが、安易に換金するのは気持ち的にも抵抗があります」

「それは相手側も同じだろう。まずは話しだけでも聞いてみないかい? 彼ら、というか彼は真面目な眷族のようだし、こちらの言い分も聞いてくれると思う」

 

 そもそも交渉しに来たのだから一方的な搾取にはならない筈だ、とヘスティアは予想する。

 言葉尻からも聞き訳が無いようには思えなかったし、なによりオッタル自身困惑しているようだった。何か考えがあって命令したのだろうけれど眷族である彼はその真意を測りかねている。

 強引な手も打ちたくない、などといった感情も伝わった。

 

          

 

 困惑するベルは【ファミリア】を守る為に交渉に臨むことにした。何より相手は最大派閥の【ファミリア】だ。自分一人の責任で逃げ回ることなどできない。

 おそらく本拠(ホーム)は既に取り囲まれているかもしれない。そんな気がした。実際に外から刺すような視線をいくつか感じたので。

 ヘスティアの様子からリリルカ達を人質に取っているわけではなく、交渉に来ているのは間違いなさそうだった。

 不安を抱きながら客室に向かうと何度か見かけた偉丈夫の武人オッタルの姿が見えて思わず息をのんだ。

 泰然とした佇まい。背筋をまっすぐに伸ばした姿勢はとても整って見えた。

 弱小【ファミリア】に対しても決して油断しない硬い表情に軽く怯む。

 

「お、お待たせしました……」

「……うむ」

 

 ベルは彼の対面に座り、ヘスティアは側面の椅子に座った。

 オッタルの身長が高いせいで上から見下ろす形になり、まるで説教を受ける子供の様な様子になっていた。

 対話の前に持ってきた魔石をテーブルの上に置く。もし、速攻持ち去るようであれば厳重抗議をする所存である、という意思表示を見せておく。――武人と名高いオッタルがそんなことをするとは思えないが念のために姑息な方法を試しておく。

 

(……顔は魔石に向いたけど……、手は出さないな)

 

 魔石の大きさは二〇(セルチ)ほど。紫紺の輝きを今も湛えている。

 これが人型のモンスターの体内にあったとは思えないのだが、灰と化した時に落ちて来たのはこれだけだった。

 

「……じゃあ、まずは挨拶からするかい?」

「……結構。本題に入ってくれ」

「……一応……。【猛者(おうじゃ)】オッタル、さんですよね?」

 

 ベルの確認するような言葉にオッタルは静かに頷いた。

 挨拶をしなかったのはお互いの名がオラリオに広まっていると考えたからだ。今更名乗る事に何の意味がある、というのがオッタルの考えだ。対するベルは世間の常識で名乗るのが当たり前かな、と思った。――面識があっても挨拶しないのは失礼にあたるのでは、と。

 

(改めて見ると大きいな。……都市最強の冒険者でレベル7……。確かレベル7は二人いて、そのうちの一人が【猛者(おうじゃ)】でもう一人の【ナイト・オブ・ナイト】が海の向こうに居るんだっけ?)

 

 現在知られている最強は二人。レベル8以上は居ない。その正式な記録ではそうなっている。

 今日(こんにち)発覚した【ヘラ・ファミリア】の団員アルフィアもまた強者の一人だった。

 まだまだ自分の知らない世界がある事にベルは少し興奮を覚えた。

 

「オッタルさんはどうして……この魔石が欲しいんですか? フレイヤ様の命令だから?」

「そうだ。俺は女神の意向に従っているだけだ。その真意までは分からない」

(……目的を知らされていないなら、どうしてって聞いても無駄か……。でも、もっと価値のある魔石を【フレイヤ・ファミリア】なら取ってこれそうなものなのに)

「……僕の記憶が確かなら階層主の魔石の方が大きいと思うんですが……」

 

 今まで戦った階層主の魔石は少なくとも一(メドル)以上の大きさがあった。それに比べれば他と大差のない代物だ。違いがあるとすればアルフィアのものであることぐらい。

 女神がそのアルフィアを目的としているのであれば――譲った方がいいのか。フィン・ディムナも換金した方がいいと言っていた。

 唐突な別れで未だ気持ちに整理がつかないが早急な処分は考えていなかった。それゆえに迷う。

 早い決断を迫られているようなのは薄々理解しているけれど。

 

「……どんな使い道があるのか知らぬままでは渡せまい。正直、俺もこれをどうするのか知りたいところだ。……もし、方法を知りえたら譲ってくれるか? 言い値で買い取れと指示を受けている」

 

 言い値、という言葉でヘスティアの両目がヴァリス金貨に変わった。

 現在【ヘスティア・ファミリア】には笑っちゃうような膨大な借金があり、その返済方法に神と眷属が頭を痛めている。

 貧乏ゆえにギルドからの指令を断れず、度々任務に失敗しては違約金を――血の涙を流さんばかりのリリルカが――払ったりしてきた。今回の『強制任務(ミッション)』による稼ぎが少なからず良い話題となったばかりだ。

 

(言い値と言っても吹っ掛けるわけにはいかない。……きっとフレイヤ様ならそういうところも見越している筈だ)

 

 ベルの予想ではリリルカの見立てである一〇〇万ヴァリスが無難なところ。これ以上ともなると後々、報復などが起きる可能性が高まる。

 交渉であるからには相手からの譲歩を引き出すのが通例だ。アルフィアもそうだった。そして、交わしたからには強者と言えど守るのが『約定』というもの。それが例え口約束でも。

 

「……本当に言い値でいいなら……、五千万ヴァリスで……、お譲りします。……もし、この魔石の使い道について教えてくれるか、僕達の立ち合いなどを許してくれたら提示額を半分、またはそれ以下に……下げてもいいと考えています」

ほぅわ!? ベベ、ベル君!? そんな額じゃあ借金は……」

(……ご、五千万か……。さすがに吹っ掛け過ぎだな。俺の見立てでは一〇〇万も超えない代物だ……。女神(フレイヤ様)の裁量を図っているのか?)

 

 言った瞬間に眉根を寄せるオッタルの顔を見て、やはりこの人(オッタル)はある程度の価値が分かっていると感じた。その上で勇気を出して五千万の提示を取り下げなかった。もちろん吹っ掛けた自覚はある。だが、【ファミリア】の借金は提示額より一桁多い二億である。

 問題はここから何を言ってくるかだ。

 ベルは緊張の為に固唾をのむ。目の前に居るのは弱小【ファミリア】を単騎で壊滅させられる実力者だ。それに果敢に挑むのは世間を賑わせる【白兎の脚(ラビット・フット)】だ。

 

(立ち合いで更に半分か……。買い取れと言われたが彼らに何も伝えるな、とは言われていない。……フレイヤ様にお伺いを立てるべきか。それとも言い値で黙らせるか……)

 

 黙らせるのは簡単だ。しかし、額が予想以上に多くて困惑したのも事実だ。

 フレイヤの意向に逆らうかもしれないがオッタル自身は目の前に置かれた魔石には多額の資金を投入するほどの価値を見い出せない。無駄に【ファミリア】の資産をドブに捨てるようなものだ。

 いくら潤沢の資金を保有しているとはいえ女神フレイヤの資産であるからには使い道が雑であっては沽券にかかわるのではないか、と深読みする。

 モンスター討伐以外に興味を覚えない武人に交渉事は苦手分野ではあるが――

 

「……分かった。五千万ヴァリス払おう。……ただし、立ち合いについては俺の独断で決めるわけにはいかない。もし、許可を得れば減額させてもらう事は可能か?」

「も、もちろんです」

「……へ、減らすのかい?」

「……神様。大きなお金を貰ってもいい事はありませんよ」

 

 オッタルは事前に受け取っていた羊皮紙に文字を書いていく。これは『証文』というもので多額の資金を持ち歩かない代わりに信用によってギルドから引き落とすことが出来る。

 大手である【ファミリア】であれば眷族に書き方を教えるのは珍しくない。

 【ヘスティア・ファミリア】の財政は基本的にリリルカが担っているので彼女も証文を書くことが出来る。ベルと他の眷族達は練習している最中だ。

 特にベルは眷族になって半年。ギルドに行って交換所で受け取るヴァリス金貨を見ないと安心できない。

 

          

 

 オッタルとの交渉は(つつが)なく取引が成立し、魔石を渡す算段まで漕ぎつけた。これらのやり取りを部屋の外から見守っていたのはリリルカ達だ。

 【フレイヤ・ファミリア】の団長が直々に来たので――本来ならば――ベルの助手を担おうかと思った。だが、万が一暴力に出られれば間違いなく足手まといになってしまう。

 ヘスティアは女神なのでいくら【猛者(おうじゃ)】とて危害を加える事は無い。そうだと頭では分かっていても心配だった。彼女は意外とベル並みに騒動に巻き込まれやすいので。

 

五千万を許容した!? それほど急ぎの案件だということですね)

(す、すげぇ。五千万をもぎ取りやがった)

 

 小さく喜ぶのは鍛冶師(スミス)のヴェルフ。すかさずリリルカが肘鉄を彼に食らわせる。

 内容を確認すれば後々減額されるものであって決定事項ではない、と小声で怒鳴る。

 これはいわば手付金、または保証金のようなもの。約束が守られた場合は返還しなければならない。

 

(リリの想定は一〇〇万です。いくらアルフィア様の魔石だとしても魔石は魔石です。見た目からして特別なものではありません)

 

 そう言いつつ交渉を終えたオッタルが迫ってきたので扉から離れる。気配で何人かが控えている事くらい分かっている筈なので相手の邪魔にならない位置に移動する。

 悠々と部屋から出て来た彼は足元に控えるリリルカ達を見据え、すぐに顔を出口に向けた。

 

「……【白兎の脚(ラビット・フット)】とそこの小人族(パルゥム)は付いてきてもいい」

「は、はい。急いで支度してきます」

「……急に来たかと思ったら随分と大きな態度だな。大手の貫録ってやつかい?」

「文句があるなら力で証明しろ」

 

 ヴェルフの軽口に意外にも反応を見せたオッタルに眷族達は戦々恐々となった。しかし、殺気を振り撒かなかったので命と春姫が失神するような事態には至らなかった。

 言葉の少ないオッタルはそのまま玄関に向かい、何事も無かったかのように外に出た。その後を最低限の武装を整えたベルとリリルカが追随する。

 【ファミリア】総出で出かけるほどではないとしても何も起こらずに済むとは思えなかった。ヘスティアは本拠(ホーム)にてベル達の無事を祈るのみ。

 残されたヴェルフ達はダンジョンから戻ったばかりなので静養が必要であることを思い出す。それと持ち帰った様々な資材の整理が残っていた。

 

          

 

 地上で様々な出来事が動いている間、地下世界でも殺伐とした光景が繰り広げられていた。主にモンスター同士の戦闘が。

 片方は地上を目指して、もう片方は異分子の排除だ。

 一〇匹のモンスターと無限に湧くモンスター。数の暴力でいえば少数が不利なのは火を見るより明らかである。――しかし、その常識が彼らに通用すると誰が決めたのだろうか。

 数的不利は明らか。けれども、少数は多数を圧倒、とまでは言わないが今のところ敗走にまでは至っていない。

 三〇階層より下に生まれ出でた者達は現在二七階層まで駆け足で登ってきた。運よく階層主の居ない時期も合わさり、想定以上の速度で上を目指せていた。だが、そんな彼らも急激な進軍によって疲れを見せていた。

 

「……いくらなんでも武器無しで戦闘をするのって大変ね。ほんと、モンスターさんには恐れ入るわ」

「……そんな軽口が叩けるだけ団長さんは余裕そうですね」

「喋るな、うるせーから。ほら、またお客さんが来た」

「最初はどうなるかと思ってたけど……。意外と私達戦えているよね。なんでかしら?」

「日頃の経験が役に立っているだけだろ? それに……()()()【ステイタス】が関係している気がする」

 

 それぞれ疑問を抱きつつも戦闘を重ねながら身体の調子を分析する。すると色々と分かる事があった。

 まず基本となる身体の強さは(おおよ)そ生前の【ステイタス】と変わらず、モンスターだからといって爆発的な強さを得たわけではない。

 見た目はそれぞれ違う種族だが階層ごとに現れるモンスター特有の強さではない。――もし、モンスター特有の強さであれば一部は既に滅んでいてもおかしくない。

 

(……最初はウォーシャドウってどういうこと、と思いましたが……。速攻で滅びずに戦えるのはアストレア様のお陰……。それと……)

 

 モンスターの身体ならではの増強方法である魔石の摂取だ。

 最初は抵抗があったが生き残る為に試し、今に至る。

 体内に魔石を摂取すると気持ち的に『能力値(アビリティ)』が増えた()()()()。これは『強化種』のモンスターを倣っての事だ。

 残念ながら本当に強くなったかどうかの実感が伴わない。しかし、死ににくくなっているのは確かだ。

 

「身体が変わっても痛みは人間(ヒューマン)の時と一緒……。モンスターであっても痛みの感じ方は変わらないのね」

 

 彼らが一番不思議に思う事は生前の『スキル』を使えることだ。モンスター由来の能力が未だまともに使えない今はとても重宝しているけれど。

 考えている間にもモンスターは壁や床から現れて襲ってくる。

 じっくりと考察するにはもっと上を目指さなければならない。それだけが今の彼ら――彼女達の第一の目標であった。

 

「……その前に重大な問題もあるけれど……」

 

 モンスターの身体とはいえ腹が減る。

 今のところ水の都たる階層には豊富な水源があるので喉の渇きは癒せるが食料となる物資が見当たらない。

 モンスターも食べられなくは無いが魔石が砕けると全てが灰になる。当然、腹に入れた分まで。それはもう連帯感を伴った現象と言える。

 

「最悪共食いすればいいわけだし」

「……あと一〇階層も上がれば『雲菓子(ハニークラウド)』が待っている」

 

 物騒な事を言い出すのは味気ない鉱石(魔石)を食べている反動からだ。それに誰もが精神的に疲弊している。

 ほぼ休みなく戦闘を続けている為だ。

 いつもであれば適度に休憩し、回復薬(ポーション)や携帯食に頼るところだが――今は何も持っていない。身体一つで上を目指さなければならない状態だ。

 ダンジョン探索において兵站(へいたん)の確保はとても重要である。それゆえに深い階層を目指すときは入念な準備が必要となる。

 

「……あー、海の(さち)がたくさんあるのに」

「水が飲めるだけまだマシよね。……それより結構な量を食べて来たと思うけれど……、みんな強くなれてる?」

「なれてるみたいよ。身体が丈夫になってきた」

「……攻撃も通りやすくなっているし、何より怪我が少ないのがいいわ」

(最大の懸念は……他の冒険者との接敵よね……。どうしよう)

(これだけ戦っているのにどうして冒険者の姿を見かけないのかしら? 誰かしら居ると思っていたけれど)

 

 楽しげに喋りつつ、けれども戦闘は激しく。そんな乱戦を潜り抜けて次の二六階層に登る為の階段を探していた時、更なる衝撃が彼女達を襲った。

 それはつい先日複数の階層を爆破し、地盤を落下させる事で起きた――この暴挙を働いたのは闇派閥(イヴィルス)の冒険者である――事故現場である。

 未だ修復が終わらぬまま瓦礫の山を晒し、その光景を見た彼女達は唖然としたり、絶望感に打ちのめされたり、乾いた笑いを漏らした。

 いつも行き慣れていた階層の風景がここまで崩れているのは――元団長の記憶にも無いほど。

 

(……なんだこりゃあ!)

(あれ? 階層間違ったかな?)

 

 辺りを散策しても瓦礫ばかり。それどころかいくつか火炎石を見つけてしまい、何者かによる爆砕――いや、彼女達の中にある【ファミリア】名が天啓のように浮かんだ。

 信じられない事だが階層を崩壊させうる犯人に心当たりがあり、団長以下全員に緊張が走る。

 

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