【完結】異世界で獣人少女を虐待するだけの話   作:ネイムレス

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今回は迷走したような気がする。


第四話『狐耳魔女は金貨袋で叩け!!』

 おじちゃーん、魔法使いくーだーさーい。

 ってなノリでやってきました奴隷市場。もはや上客の一人として出迎えられるようになった何時もの奴隷商に案内されて、注文通りの奴隷の納められている牢獄の前へと行きついた。

 辿り着いたのは良いんだが、何だこのとんでもない悪臭は。生臭い様な青臭い様な、吐き気を催す強烈な臭いが目の前の牢獄から漂っている。こいつはくせぇ、ゲロ以下の匂いがプンプンするぜ。

 

 今回のリクエストはとにかく魔法が使える奴隷と言うのが第一で、懐に余裕があるので負債額も問わないと言う事にした。容姿や性別は特に指定はしなかったが、格子の隙間から覗き見るにどうやらまた女性の様である。

 服装は体にまとわりつく様な質感のワンピースに、頭の上にはトンガリが二つある鍔広帽子。上から下まで黒づくめで、これで箒でも持っていればまさに魔女と言わんばかりの出で立ちだ。そして臀部から突き出している、筆の先の様に豊かに毛を蓄えた長く太い尻尾。恐らく帽子の中には隠れて見えないが獣の耳が存在しているのだろう。そう、例にもれずまた獣人である。

 

 牢獄の中でぺたりと座り込んでいた魔女が、人の気配に気が付いたのか俯かせていた顔をツイとこちらに向ける。なんと言うか、暗い雰囲気の女だった。整った顔立ちなのは分かるが長い黒髪はぼさぼさで、目の下にはべっとりと隈が在って美容に正面から反逆している様に見える。そう言えば尻尾は小麦色で先端だけ白いのに、髪の色は尻尾とは違う色なのだな。先の二人とは異なる特徴なので、ずいぶんと珍しいと感じてしまう。

 そして何より、凄く臭い。近づくのも嫌になる位の悪臭が牢の中から漂って来ている。

 

 どうしてこんなに臭いのかと奴隷商に訊ねて見れば、なんとそれは彼女が奴隷落ちするきっかけが理由だと言う。何でもとんでもない高級な材料を使って作り出した万病に効く魔法薬を売り出そうとしたが、そのあまりの強烈な臭いに買おうとする者は無く在庫と借金ばかりが残ったのだと言う。そして、その時の匂いが染みついて体から離れず、何度も水浴びさせた結果今程度まで匂いが収まったのだとか。

 端的に言って、馬鹿なのかな? 控えめに言って、大馬鹿なんじゃないかな?

 

 まあ、奴隷の身の上話などどうでも良い。この場合は、要は魔法さえ使えればそれでいいのだ。という訳で使用できる魔法の種類を奴隷商に訊ねたのだが、なんと使用魔法の目録などは作っていないらしい。それは職務怠慢なのではないかと詰め寄ったが、どうも魔法使いは魔法を秘匿していること自体が財産の一部であるとの事でそう簡単には種を明かしはしないのだそうだ。魔法使いを買うと言う事は、一種の富くじの様な博打に近い物なのだとか。というかガチャだな、これは。

 それでも売れてしまうぐらいに、魔法使いは人気が高いらしい。例え外れたとしても、どうしても必要であればまた買い求めなければならない。ぼろ儲けじゃないか。

 まさか異世界に転生してまでガチャを回す日がこようとは、この悪しき文明は根強く世に蔓延っている様だ。

 

 まあ、今回のガチャの結果はもう既に外れを引いた様な気がしないでもない。だが臭いはともかくとして、習得している魔法は有用な可能性はまだあるのだ。まだきっと負けてない筈だ。負けてない、負けてないからガチャを回す必要は無い。耐えろ耐えるんだ、生活費にまで手を出して回す必要は無いんだ!! 運営の露骨な誘惑に負けるなー!!

 

 

 このまま奴隷市場に居れば無尽蔵にガチャを回してしまうかもしれない。逃げるように奴隷商に金を払い、強烈な悪臭に耐えつつ陰気な魔法使いを馬車で屋敷へと連れ帰った。馬が悪臭から逃げようとして本気で走ったせいか、何時もの半分ぐらいの時間で帰れたわ。その代りこの馬車は後で薬品で隅々まで洗浄しなければ、乗った瞬間に残り香で死人が出るだろう。むしろ燃やしてしまっても良いかもしれぬ。

 

 そしてその元凶は、早速裸に剥いて何時もの水攻め薬品攻めだ。相手が魔法使いだろうが何だろうが今回こちらは三人がかり。有無を言わせず浴場に叩き込んで、全身隈なく泡塗れにしてこびりついた臭いを殲滅する。心象的にはデッキブラシ辺りで擦ってやりたかったが、大人しくされるがままだったので流石に自重してやった。武士の情けだ。

 

 流石は錬金術師特製の薬品。ふんだんに使えば頑固な悪臭もきっちり落としきって見せた。これで犬耳娘も毒気除けの布マスクを外せると言うモノだ。初遭遇時はあまりの臭さにキャインと鳴いて逃げ出した位だからな。手伝う様に説得するのに苦労した。

 裸にしてやっと解ったのだが、どうやらこの魔女は狐の獣人だったようだ。だが、裸身を晒しているというのにさして恥ずかしがる訳でも無く、ただ只管に状況を受け入れてだるそうにしているばかり。これでは狐と言うよりナマケモノだ。

 

 魔女と言う者はみんなこうなのだろうか、それともこやつが特別アレな性格なのか。どちらにせよ、これで魔法まで碌でも無い物だったら目も当てられん。さっさと魔法について詰問してしまおう。その為に自室に戻って来て、わざわざ全員分のお茶まで用意したのだから。

 なお、最初に着ていた服は焼却処分しようかとも思ったが、とりあえず薬品漬けにして一度洗濯してから処分を検討するとして保留中。今はネコミミ少女と同じクラシカルなメイド服を着せて、ピンと尖った狐耳が頭の上のホワイトブリムと一緒に揺れている。

 

 ふむ、大中小とバランスよく揃ったな。そして残念だったなネコミミ少女よ。犬耳娘程ではないにしろ狐耳魔女も、どうやら持つ側の存在だった様だ。口惜しい気持ちはわからんでもないが、あまり食い入るように見つめるのはやめておけ。

 ふふっ、ネコミミ少女は直ぐに胸を気にするから実に観察し甲斐が有る。とは言え、今は先に気になる事もあるのでこれくらいにしておこう。

 

 さて、肝心な魔法の方だが、これが何と教えないという返答が来た。残念、好感度が足りない様だ。

 この時点で犬耳娘が犬歯を剥き出しにして唸り声をあげて斧槍を持ち出したので、お座りの一言で大人しくさせ武器を部屋の隅に置きに行かせる。思い通りに行かないからと言って、直ぐに暴力に訴えてはいけない。そういうのは最後の手段だ。

 続いて動いたのはネコミミ少女。彼女には交渉を円滑に進める道具を持って来る様に耳打ちをしており、怒られてしょげている犬耳娘を伴い退出して行った。その間に、こちらはこちらで交渉を続けよう。

 

 

 まず確認した事は、なぜ魔法を教えられないのかと言う事だが、これは弟子以外には魔法の事を話すつもりは無いと言う事であった。要するに手の内を全て明かしたくないと言う事なのだろう。それが魔女や魔法使いにとっての処世術と言うのであれば、例え奴隷落ちした立場だとしても無碍にするわけにも行くまい。

 ではその上で、奴隷として主人に尽くす事は了承してもらえるのか、と言う事には同意が返された。自分を買い戻すまでは仕事を請け負うのは良いが、仕事をどうこなすかは彼女に一任すると言う事か。願いは叶えるがその手段は望み通りとは限らない、まるでどこかの黒い聖杯みたいだな。

 つまりは、今は従ってはいても、いずれはここを去るつもりがあると言う認識なのだろう。それは少し困るな。

 

 では、スポンサー契約を結ぶと言うのはどうだろうか。聞けばわざわざ借金をしてまで万能薬を作ろうとしたのは研究費用を捻出する為だったと奴隷商には聞いている。こちらとしては十分に研究資金を提供できる用意が有り、借金の形に押収されてしまった設備と住居もまた用意しようではないか。

 そんな提案をして見た所、狐耳魔女は露骨に訝しむ様な眼を向けて来る。どうして自分にそこまでの優遇をするのかが分からないらしいが、こちらとしては魔法使いを囲っておくことがメリットになると考えているからだ。自分がライターになる必要は無く、ライターが何時でも使える所にあるのであればこちらとしては満足が出来る。それだけの事にしか過ぎない。

 

 自身の考えを素直に話しているときに、丁度良いタイミングでネコミミ少女と犬耳娘が戻って来た。二人ともパンパンに膨らんだ麻袋を背負っており、それをとりあえず部屋の隅に下ろさせる。そして自ら立ち上がり麻袋に近づくと、その中を開いて確認してそのうちの一つを引っ張り出す。

 袋の中から取り出したのは、更に中身の詰まった小さな袋である。そしてそれの口を軽く開いてから、狐耳魔女の前にぽんと放り投げてやった。

 

 重い音を立てて小袋がテーブルの上に落ち、中に詰まっていた金貨がジャラリと音を立てる。そう、詰まっていたのは何の変哲もないこの世界で使われている貨幣だ。それをまずは一袋。

 投げ出された金貨袋を一瞥して、狐耳魔女はフヘヘっと薄く笑う。どうやらこの程度では雇い入れるには足りないらしい。一袋で一応、一財産ぐらいはあるのだがな。

 

 では追加しよう。同じ様に中を見える様にして、五袋程どちゃどちゃと乱雑にテーブルに並べてやる。これにはさすがに心が動いたのか、すまし顔で啜っていたお茶がカタカタと手の中で震えだした。どうやら魔女としての矜持と、現金への渇望が彼女の中でせめぎ合っているらしい。

 では追加でもう四袋乗せてやろう。この時点でネコミミ少女が持ってきた方の袋は空になった。まあこれだけあれば、三年は研究に没頭できるんじゃないかね。相場は知らんけど。

 

 そんな状況に狐耳魔女は、フヒフヒと気持ち悪い感じに口元を歪めていた。もうすっかり現金に夢中だなぁ。そしてちらちらと、テーブルの上ともう一つの大きな袋に視線を送っている。うんうん、解るよ。貰える物ならもっと欲しいもんなぁ。

 じゃあ、減らそう。どうも勘違いしている様だが、別にどうしても狐耳魔女を支援しなければいけない訳では無い。また金を払うのは業腹ではあるが、魔法の使える奴隷にはまだ当てが在るのも確かな事実なのでね。その事を告げてやりながら、与えた飴を少しずつ取り上げるとしよう。

 

 目の前に積まれていた金貨袋をまず一つ、ネコミミ少女に元の袋にしまうように命じて取り上げさせた。その命令を聞いた狐耳魔女は目を白黒させて、座っていた椅子から思わず腰を浮かせる。そこで一言囁いてやるのだ。

 出資者と認めて契約してくれるかな? そんな風に、優しくやさしーく訊ねてやった。

 

 しかし狐耳魔女の返答は無し。両眼をグルグルと渦巻き模様にしながら、何でこんな事になったのかと大混乱している様子。いやー、直ぐに答えないから気に入らないのかと思ってしまったよ。そんな事ないって? またまたぁ、御冗談を。

 ではもう一袋減らしましょう。途端に狐耳魔女の口からああっと悲痛な叫びが漏れ出す。元気があって良いですね。ああ、一袋では足りなかったかな。それではもう一袋――

 

 と、突如として腑抜けた悲鳴を上げながら狐耳魔女がテーブルの上の貨幣に飛び付きそれを遮った。残った袋は七袋か。それをまるで我が子の様に大事そうにその身で守りつつ、契約します契約しますと何度も泣きそうな声を絞り出していた。と言うかもう泣いている。

 うん、その顔が見たかった。一連の流れの表情の変化は、一言で言うならこうだな。ご馳走様でした!

 それでは、契約書の作成に移りましょうかね。

 

 何事も最初が肝心とばかりに、がっちりと契約内容は固めさせてもらう。大金を払うのだからそれに見合った成果も出してもらうし、勿論こちらからの依頼も魔法なりなんなり使って解決してもらうつもりだ。魔法の内容を教えられないなら、その分は働きで返して貰うしかない。まさかできない等とは、言えるとは思ってはおるまい。契約期間はまあ、年更新と言う事で。無論、自身を買い戻して奴隷を止めた時点でこの関係はご破算だ。

 

 好き勝手に金を使えると思われても困るから、帳簿管理もこちらできっちりと締め付けさせてもらう。スポンサー契約というよりは雇用契約に近くなってしまったが、元々奴隷の身分なのでこれでも破格の筈だ。本人も完全に金に目が眩んでいて、ウンウンと頷くばかりでこちらの提案を受け入れたしな。 もはや言うなりされるなり。やりたい放題で無抵抗である。少しつまらない。しかもむせび泣きながら、金を守れた喜びでふへぇっと笑っていやがるし。器用な物だ。やはりつまらない。

 

 薬品を良く仕入れる得意先の錬金術師も囲ってやろうかと誘ったのだが、『シッショーと離れ離れになるとか耐えられないんでパス!!』とスッパリと断られてしまったからな。今回の取り込みは簡単に成功してくれて本当に助かった。

 これで売りに出せる商品がまた増える。魔物の素材以外にも、魔女の作る薬品等が売れるとなれば販路も豊かになるだろう。無論臭いに関しては徹底的に監修させてもらうがな。あんな悪臭が出るような商品は二度と作らせはせんぞ。

 

 

 しかしまあ、奴隷もいつしか三人か。流石に自室の天蓋付きベッドも段々と手狭になって来た物だ。同じ部屋で共同で暮らすのもぼちぼち限界かも知れない。相手のプライドをへし折る為の食事の用意も、毎回別の物を用意させるのが面倒になってきたしな。ネコミミ少女からもそろそろ一人だけ豪華なのは申し訳ない、などと具申された事もある故に。

 何度も同じ嫌がらせをし続けるのはナンセンスだ。絶望には鮮度があるとも誰かが言っていた。ここらで一つ、趣向を変えた大きな絶望とやらを与えてやるのも良いかもしれんな。せっかくの魔法使いなのだから、その方面でも大活躍してもらおうではないか。

 

 それにつけても今は寝床の心配か。このまま増え続けるのならばいっそ、資金を活かして別荘でも立ててしまうのが良いかもしれない。狐耳魔女の研究施設も必要になるだろうし、存外悪い発想でも無いかもしれないな。

 うんにゃ、将来増えるであろう奴隷たちの収容性を考えたら、むしろアパートメントの様な作りの方が良いやもしれぬ。それこそ、孤児院の様な集団生活を送るのに適した建物の方が……。

 

 孤児院か。案外、そういう場所を作った方が色々と都合が良いのかも知れない。一度に大勢の苦痛に歪む顔を見れるかもしれないとなれば、このまま資金に任せて作ってしまおうか。奴隷に身を落とした者を買い漁り収容し、その能力で己が望みを叶えさせる小さな王国を。

 ふふっ、今はまだ捕らぬ狸の皮算用だが、存外悪い夢でもないだろう。

 

 新居を作り引っ越したらこのデカいベッドともお別れになる。こんなにデカい物を動かせるとも思えないし、そもそもこの部屋から出せるのかも怪しいからな。そう思うと幾ばくかの寂しさを感じなくもない。デカくて邪魔になるが寝心地だけは良いので尚更だ。だが、それも現状の悲惨さに比べれば些細な事に他ならぬだろう。

 四人で寝る事になった為に犬耳娘が頭に抱き着く様にして幸せの塊を押し付けてくるし、ネコミミ少女が反対側に陣取って腕を取ってしがみ付いて来るしで暑くてかなわん。狐耳魔女も最初は恥ずかしがって隅っこに居た癖に、寝入った今では足にしがみついて中規模サイズを押し付けて来る始末。暑いんだよお前等よう。

 今の心境を例えるのなら、多頭飼いしたペットに一斉に張り付かれた時の気分によく似ている。

 

 ふと、こいつら一人一人に個室を与えた時に、こいつらは喜ぶのか残念がるのかが少し気になった。どうせなら残念がって欲しい物だ。それがどういった理由であるにしても、我が望みはこいつらが残念がったり悔しがったりする顔を見る事なのだから。それは大前提にして、唯一無二の最終目標である。

 たとえどんなに慕われようとも、たとえどんなに嫌われようとも。それだけは絶対に揺るがない。

 

 なんにせよ忙しくなる。パッパに許可を貰ったり、犬耳娘の狩に付き合ったり、狐耳魔女の道具や施設を揃えたり。ネコミミ少女をせいぜいこき使って、じっくりと準備を整える事にしよう。

 ああ、眠気が強まると逆に考え事が多く湧いて出る。さっさと就寝しないと、体調を崩すかもしれない。色々する事があると言うのに風邪でも引いたら時間がもったいないと言う物だ。やりたい事が多すぎて困る。

 

 

 そんな事を考えていたせいだろうか、こふっこふっと軽く咳が出てしまった。何だか胸の内も痛い様な気がする。やれやれ、暑っ苦しいがさっさと寝る事にしよう。こんな物は寝て起きれば治っているに違いない。

 躓いている暇など無いのだ。やりたい事をやって生き抜くためにも。

 

 




もう二回ぐらいで終るかな。
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