【完結】異世界で獣人少女を虐待するだけの話   作:ネイムレス

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これで終わり。


第六話『奴隷の主人は報いを受けろ!!』

 あれから何年がたっただろうか。

 

 孤児院は人が増えた事により経営が軌道に乗り、その甲斐もあり必要に迫られて更に人数が増えていた。十人しか居なかった住人たちは何時の間にやら二十、三十と数を増やして出来る事の幅が広がって行く。それに伴って建物は施設と居住区を増やす為に増改築を繰り返し、それでも限界を迎えて最終的には二棟ほど追加で孤児院を建てたほどだ。

 

 いつしか孤児院の周囲には製品加工用の工場や、狩猟の為に使う装備の為の鍛冶場なども併設された。狩猟の規模の拡大に合わせて、一時保管用の倉庫や馬車の為の馬房も作られる。必要になればその都度手を加え、次第にそれは孤児院だけの規模では収まりきらなくなって行く。

 それだけ奴隷と言う者は切り無く補充され、また孤児は常に孤児院に送られて来るものだったのだ。

 

 そうなれば、次はいよいよ職場近くに家を建てて住まう者が出始めた。いちいち孤児院まで戻るのも億劫となる故、卒業生として孤児院を出て家庭を築く者が出始めたのだ。例え身分が奴隷だろうと、希望者には結婚をする許可も出した。番となって繁殖し、新たな労働力を生み出させる為に。

 そうつまりは、結婚という人生の墓場に突き落とし、未来永劫苦しみ続けると言う虐待を成したのだ。

 

 この時点で既に村と言っても良い規模にはなっていたが、ここからさらに発展は続いた。

 人が多くなれば当然酒場や食事処などの娯楽施設を作らねばならなかったし、行商や人の行き交いが活発になったので宿泊施設も作る必要が出て来る。そうなると当然治安も維持しなくてはならないため、自警団を組織して村内の巡回と周囲の魔物への警戒も行うように手配した。

 煩わしい事この上ないが、苦労するのはどうせネコミミ少女率いる内政メイド達なので問題は無い。

 

 外部からの移民も無い事は無かったが、辺境伯領地という国としての最前線にわざわざ引っ越そうと言う者は少なかった。なのでそれら施設の働き手は当然孤児院の卒業者となり、当然こちら側の紐付きとなるのでいろいろと融通が利く。村落の形はとっているが、何処までも身内的な集まりなのは変わらなかった。

 

 世の情勢の悲しみか買い入れる奴隷は尽きる事は無く、卒業生という名の追い出された外暮らしはどんどん増えて行く。その者達の暮らす家屋は孤児院側からの貸し出しという形で、こちらが完全監修して一軒一軒計画的に建てて行った。無論の事、トイレと風呂は全ての家に完備させて、増えるであろう家族の為に部屋は多めに作らせたのだ。前世の生まれた国的に、飯風呂トイレに妥協は一切ないのである。

 

 とは言え元奴隷達からは料金を徴収する事はせずに、代わりに稼いだ賃金の中から個別に税金を払わせる形にした。賃貸を無料にした事で恩を売り、他に無い優遇された環境で縛り付けるのだ。もちろん、稼いだ金で自分を買い直す事も出来るが、その場合は外部からの移民と同じ様に賃貸に料金が発生する。この世界で風呂トイレ付きの優良物件の値段が高額なのは当然だが、無料だった物に金を払うと言うのに人は強い忌避を覚えるものだ。奴隷を止めたいと言う者は早々出ではしなかった。

 

 稀に居る事はいたのだが、そう言う者は外に向かって旅立つのがほとんどだ。外の世界を見たいやら故郷に帰りたいやらと理由は様々だが、出て行きたいと言うのならば止めはしない。せいぜい庇護の無くなった世界で、血反吐を吐くような思いをして生き抜けばよいだろう。それはそれで愉悦である。

 

 

 人が増えて収入も増え、管理の手間が増えた事で順調に奴隷達の苦しみも増えた村落。犬耳娘を筆頭にした狩猟部隊の尽力もあり、周囲からは魔物の脅威も消えて収入も安定している。それを加工運搬する手配をネコミミ少女たち率いる内政部隊が整えて、土木建設の関連を狐耳魔女の弟子たちが魔法を使ってインフラ整備を担う。もう放っておいても、勝手に金を生み出し続ける環境と設備は整ったと言えよう。

 

 敢えて欠点を指摘するならば食糧自給率の低さだが、食糧関係は敢えて手を付けずに穴を作ったままにした。主食である麦や米などを外部依存にする事により、辺境伯領ひいては王国に対して独立を企てる様な芽が無い事を内外に示す為である。完璧に作り過ぎてしまえば要らぬやっかみを生むと言う物だ。そんな面倒な事をするぐらいなら、のんびりと静かに奴隷達が苦しむ様子を眺めていたい。

 

 そして、安定してきたと確信し始めたころから、以前より患っていた咳が悪化し血を吐いた。狐耳魔女の所見に寄れば、肺からの喀血であるらしい。なるほど、長く続いた胸の痛みは肺病であったと言う訳だ。

 もちろん、その時点で魔女達の作った薬は試してみた。だが、症状が緩和されて一時的に体調を取り戻しても、しばらくすれば緩やかに咳が再発し放置すればまた血を吐く様になる。

 これはもう、治し様が無い病なのだと狐耳魔女は無情に告げて来た。そして、この女が涙を流した所を初めて見る事になる。録画する設備があれば、一生の宝になっただろう。

 

 その事を聞いて、不思議と落胆や絶望などという感情は沸いてこなかった。ただ、来るべき物が来たのだなと、妙に納得する自分が居る事に気が付く。ああ、思ったより早かったが、これが報いという奴なのだろう。

 大量の人を苦しませて来た末に、病で苦しむ様になるとは滑稽ではないか。

 

 ともあれ、薬を飲めば一時的に症状は緩和するのだから、その後もする事はあまり変わりが無かった。金に任せて新しい奴隷を買い漁り、労働に従事させてその苦しむ様子を楽しむ。先達の奴隷達がそれを迎え入れ、教育を施すのに四苦八苦する様子に口元を緩ませる。

 要するに、今まで通りと言う事だ。

 

 変わった事と言えば、幾日か置きに胸が痛みだしたら薬を飲むと言うのが日常に加わっただけ。その薬も狐耳魔女やネコミミ少女達が飲め飲めと五月蠅いので、仕方なしに飲んでいる状態だ。正直味が悪いし匂いが酷いので飲みたくないのだが、こやつら今までの復讐の為にやっているとしか思えない。犬耳娘に至っては、泣きながら無理やり飲ませて来るので始末に負えん。

 というか、狐耳魔女は監修しないで薬を作らせると、やはりとんでもない臭いの薬を作る癖がある様だ。どうしようもないな。

 

 そんな生活を何年か続けていると、次第に薬の効きが鈍くなって行った。薬を飲む間隔が短くなり、三日が二日に、二日が一日にと狭まる。一日に何度も飲まなければならない様になると、もはや立って歩く事もままならなくなってしまった。不味くて臭い薬で責め立てられるなど、これでは生きているだけで拷問のような物だ。

 

 この時点で実家の家族には見限られたようで、見舞いにすら来なくなったが気にする事も無いだろう。家は兄弟の誰かが継ぐだろうし、この村の収入は辺境伯にとっては頼もしい税収の筈だ。今更管理者が居なくなったとしても、取り潰す様な事はしないだろう。以降はネコミミ少女達最初の三人を管理者とした、三派閥の相互監視管理が続く手はずになっている。

 

 つまり、我が奴隷達は主人亡き後も延々と苦しみ続けると言う訳だ。それは間違いなく、この身には何よりも代えがたい福音に他ならない。全自動絶望製造機の完成に至ったのだから当然だろう。

 やり遂げてやったのだ、この後に地獄に行くとしてもそれは本望ですらある。

 

 それから後は、ひたすらに苦しんだ。好き放題にやってきた報いだと言うのなら、この苦しみはその罪の重さを感じられる勲章のような物だ。日に日に暗く落ち込んで行くネコミミ少女達の姿も、闘病中の清涼剤として確かな愉悦で励ましてくれた。もがき苦しむ病人の看病など、それは大変で嫌悪する物だろうからな。

 

 苦しむのは嫌だが誰かを苦しませていると言うのならば、例え一分一秒でも長く生きて居たい。ベッドから起きられなくなって、意識も朦朧として今が昼なのか夜なのかも解らなくなる。それでも確かに生きてはいたのだ。生かされ続けていたと言っても過言ではない。材料費も安くはないだろうに、薬を何度も何度も飲まされたのを朧気ながらに覚えていた。

 

 お互いがお互いを苦しませ、延々とただ只管に愉悦を感じ合うだけの日々。それにもやがて終焉の時が来る。ついに薬が効かなくなり、肉体もまた限界を迎えたのだ。来るべき時が来たとしか、もはや互いに思えなくなっていた。

 疲れていたのだろう。心も、体も。生き続ける事にも。まったく情けない話じゃないか。

 

 

 最後の日。

 

 その日は狐耳魔女が特別な薬を設えて与えてくれた。大きな代償と引き換えにして少しだけ時間を作る薬だそうだ。おかげでその日は痛みを感じる事も無く、穏やかにベッドの上で過ごす事が出来ていた。残された時間は少ないが、血反吐を吐きながら逝く心配はとりあえず無いらしい。最後ぐらいだ、素直に感謝してやろう。

 

 狐耳魔女は投薬だけを済ませると、さっさと部屋を後にしようとしていた。なのでその背中に感謝の言葉を投げかけ、そして今後どうするかは好きにしても良いとだけ伝える。このままこの村落に残っても良いし、自由になって出て行くのもまた良しだ。ただ、弟子達の事は少なくとも見捨てないでやれとは言っておく。これくらいの楔を打ち込むのは許されても良いだろう。

 その言葉にそっけない返事だけを残して、狐耳魔女は帽子を目深に被ったまま退出して行く。顔を絶対に見せまいとするかのようにする立ち振る舞いが、やけに印象に残った別れであった。

 

 暫くして遠くから爆発音のような物が聞こえて来たので、恐らく狐耳魔女が新しい調合でも始めたのだろう。くだらない理由で囲い込んだ女であったが、存外にここに残る事に前向きなのかも知れない。医療にも開拓にも役に立つ存在なので、残ると言うならば我が命亡き後もこの村落は末永く庇護される事であろう。

 その分長々と苦しみの輪が広がるのだから、墓の下からでも愉悦に笑う事が出来るに違いない。

 

 

 次に部屋に入って来たのは犬耳娘だ。入って来たと言うよりは、飛び込んで来たと言った形容が相応しかろう。

 顔を合わせるなりベッドの上に乗って来て、普段の面影も無く体を摺り寄せて抱きしめて来る。そうか、今ここでトドメを刺そうと言う腹積もりか。冷静そうな顔をしていても、激情家なのは良く知っている。

 

 だがその手は食わんぞ、仕返しとばかりに頭に手を乗せて押し返してやる。いつの間にか枯れ枝の様になってしまった手だが、それでも何とか犬耳娘は体を離して今度はベッドの上に蹲った。自分から引き下がったようにも見えたが、きっと薬のおかげで少しだけ力が戻ったのだろう。そうに違いない。

 

 丁度良い高さなのでいつものように頭を撫でて、屈服の姿勢でプライドをズタズタにしてやる。犬耳娘はあえて受け身の姿勢のまま、今日は尻尾を振る事も無く落ち着いている様子だ。これが最後たと理解しているからだろうか、むやみに興奮することなく時が過ぎるままにしている。泣きながらトドメを刺しに来たとは思えないこの殊勝さは、最後の手向けとでもいうつもりなのだろうか。それとも、本当に別れを惜しんでいるとでもいうつもりだとでも? ふっ、あれだけ虐待されたと言うのに、情に絆されるとは甘い事だ。

 

 だからという訳では無いが、撫でられるままの背中にこれからは自由に生きろと告げたが返答は無かった。自分から今の居場所に縛られるか。それもまた、こやつの選んだ自由だろう。

 もっとも、いつまでも縛られ続けていられるようなタマでもないと思うがな。いつまで耐えられるのか、それはそれで楽しみである。せいぜいあの世から見ていてやろう。

 

 

 最後に現れたのは、一日の仕事を終えた後のネコミミ少女だった。幾年も経ったと言うのに、この少女は最初に出会ったままの容姿からほとんど成長していない様に見える。恐らくは種族的に若い期間が長いのだろう。

 それにしてもわざわざ仕事終わりまで顔を見せないとは、狩猟を放り出してベッドに潜り込んで来た犬耳娘とは大違いに真面目な事だ。そうだからこそ、面倒な仕事と責務を押し付けたのだがな。

 

 まだ生きておいででしたか等と言って来るかと思ったが、特に何を言うでも無く傍に近寄り手を握って来た。いつの間にか眠ってしまった犬耳娘とは逆側に座り込み、ベッドの上で特に何をするでもなくこちらの手を取る。

 なんだこの状況は。これではまるで、穏やかに看取られる成金みたいじゃないか。こんな演劇めいた空間を作り上げるとは、まったく最後の最後まであざとい奴である。

 

 思えばこの少女を買い取った日から、順風満帆な人生が始まったと言っても過言ではない。

 楽しかった。奴隷達の新たな人生を眺め、それに喜びを見出す日々は実に楽しかったのだ。例えそこに込められた感情が仄暗い物だとしても、感じていた充足感に嘘偽りは一つも無い。

 そしてそれは、今際の際であっても、絶対に妥協などしない信条だ。

 

 こやつにはどんな言葉を贈るのが、一番長く苦しませられるだろうか。死した後にもその人生を縛り付け、魂の奥底までを拘束する様な最高の贈り物をしてやりたい。我が享楽の切っ掛けとなった者ならば、それ相応に報いねばそれこそ死んでも死に切れないではないか。

 

 ああ、そうだ。たった一言で良いではないか。どう返答されたって構うものか。言ってやる。もう、薬が切れかけて意識がはっきりとしない。それでも言い放ってやる。最高に格好をつけて、そしてなお余裕があるように見せかけて。

 後は頼む……、と。きっと口から言葉は出たはずだ。それを聞いてネコミミ少女の、こちらの手を掴む力が強まったのだから。その力強さに、ふっと気が緩むのを感じた。張り詰めていた糸が、はらりと解れるかのように。

 

 それが、限界の訪れを呼んだのだろう。体から力が抜けて倒れかけた所を、ネコミミ少女に支えられてゆっくりとベッドに寝かされた。もう起き上がる事も出来ない。体に力が入らず、段々と意識が狭まって行くのを感じた。

 窓の外は夕暮れ時で、日が落ちるのに合わせて時が着た様だ。

 

 その拍子で浅く寝入っていた犬耳娘が起き出して、こちらの様子を見るなり部屋を飛び出して行く。恐らくは誰かを、狐耳魔女を呼びに行ったのだろう。もう既に別れは済ませたと言うのに、何も知らずに飛び出すとはそそっかしい奴だ。

 後に残されたネコミミ少女は落ち着いた物で、一度ベッドから立ち上がり開け放たれたままの扉を閉めてからまた傍らに戻ってくるほど冷静だった。

 

 そうして二人きりになった最後の時で、ネコミミ小女はどうやら何かを伝えようとしている様だ。懸命に唇を動かして言葉を紡ぎ、今度は両手でこちらの手を握りながら何かを訴えている。

 なんだ、恨み言か? 残念だがもう、声も聞こえないのだ。今までの怨嗟を伝えたいのなら、もっと早く言うべきであったな。

 

 もう霞んで見えなくなった目を閉じる。すると、ぽつぽつと顔に雨が落ちるのを感じた。部屋の中で雨が降ると言うのが妙におかしくて、最後の最後でふふっと笑みを零してしまう。

 それきり、何も感じなくなって。もう、考える事も出来なくなった。

 

 

 

 

 そうして、貴族に生まれ変わったかの人物の二度めの生は幕を閉じる。その葬儀は厳かに、しかし村落総出となって執り行われ、その死を惜しむ声は幾日も潰える事は無かった。いやまったく、虐待されていたと言うのに不可思議なものだ。

 

 それ以後の村落の存在については、詳しく伝えられてはいない。ただ、辺境伯領地の国境付近に、元奴隷の集団が集まる大規模な狩猟組織があったと言うのは、確かに諸外国には認識されてる。曰く、貴族の道楽で作られた村落が、辺境伯に対して膨大な資金を落として援助し続けていたのだとか。何代にも渡る援助を続け、そしてその功績を認められて国民の一部として併合されて、その存在は緩やかに歴史の中に溶け込んで行ったのである。

 

 未来永劫続く物などは無く、誰かが作り上げたモノもまた、移ろい行く時の中で風化して消えるのが定めなのだろう。少なくとも、人の命や思いなんてのは、儚く散る泡のような物だ。

 徹頭徹尾悪意しかない筈のものが、受け取り手によっては数世代に及ぶ恩へと変わる事もある。世の無常も確かだけれど、げに面白きは人の情と言う事か。

 

 長々と続いた悪だくみもついには終了。お疲れ様でしたと言う事で、この魂の物語は次の回へと進む。残して来た者達も、永久に生きる訳でない故に。追い縋られて、今度は手を引かれている始末。三人もいると、姦しい事この上なし。

 まさかあの世に来てまで付きまとわれるとは、これも多生の縁という奴なのだろうか。こちらには時間の概念が無いらしく、向こうは久しぶりでもこちとらさっきぶりだと言うのに。感慨も何もないわ。

 

 ともあれこれ以上語る事は無いので、ここらでお別れのあいさつでもさせてもらう事にしよう。

 

 これにて一巻の終わり。もし今一度まみえる事があれば、次の転生先でお会いいたしましょう。どうかその時まで、暫しの別れをお伝えします。また会う日まで、さようなら。

 

 ま、もう会うことも無いだろうけど、どうぞ貴方にも良き虐待ライフを。

 

 




終っちゃった。
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