ラードマギック 『悪の華』   作:Reigon

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第四話『開花』

真堂side

「広っ!」

俺の声が空間に響く。

俺は今、獣田さん達に連れられ、広い空間に連れてこられている。空間は一面真っ白で壁や天井、さらには床にまで線が伸びていて、正方形のパネルを作っている。

「あの、ここは?」

「ここは、美沙希が作った、トレーニングルームだ」

獣田さんが説明してくれた。

「ここからは私が説明するわね」

獣田さんの説明に弦巻さんが、割って入る。

「この空間に、私の『魔法』で作った『リアルバーチャル』を流す事で、色々な環境を再現出来るのよ!」

「因みに植物も動物も再現出来るのよ!すごいでしょ?」

弦巻さんが胸を張って自慢をする。

いや、確かに凄い、環境ましてや、生物を創り出すなんて…でも。

「凄いですけど…そのそれって『バーチャルリアリティ』と名前がほぼ同じなんですが?」

弦巻さんが胸を張ったまま、固まる。

「え、えっとね……真堂君?」

「はい」

「この世の中には気にしなくていい事は沢山あるんだよ?」

「ねぇ?真堂君?」

「あっはい」

顔をグイッと近ずけて、話してくる。

どうやら気にしてはいけない所らしい。

「おぉい、もう良いか?美沙希?」

獣田さんが割って入る。

「あら、ごめんなさい、それじゃあ何処にする?」

「それじゃあ、『森林』で頼む」

「はぁーい」

弦巻さんが手を揉みながら、歩いて行く。

中心くらいに来た時に、両手を上げた。

「ふぅ…『からくり☆メカニカル』!」

?…なんて言ったんだあの人は、あれは魔法名か?

「おいで!、今週のびっくりどっ可愛いメカ!『リアルバーチャル』!」

上げた両手を地面に叩き付ける。

そうするとその部分の正方形のパネルが光輝き、そこから広がるように他のパネルも光っていく。

光が収まったと思えば白いパネルが盛り上がってゆき、色も変わっていく。

「これは……」

「すげぇだろ?」

獣田さんが自慢げに話しかけてくれる。

白いパネルは土の地面に、さらに大きな木もうっそうと生えている。

遠くからは何故か鳥の声がする。

「本当に…森になっちゃった…てか」

「これは森林と言うよりかは、『ジャングル』みたい」

もう狙ったんじゃないかと言うくらいにうっそうとしている。

「よし、ありがとうな美沙希ぃ!」

先程弦巻さんが行った方向に獣田さんが大きな声で話しかける。

「はぁ〜〜い!それじゃあ頑張ってねぇ〜!」

遠くから弦巻さんの声が響く。

「それじゃあ、私は弦巻さんを連れて行って見学していますね」

プッチさんがそう言うと…消えた、え?

「消えたっ!?」

「あ?、あぁ、あいつのラード魔法さ」

獣田さんが説明してくれる。

ラード魔法ってあんな瞬間移動まで出来んのか。

「そんな事よりこの試験のルール説明をするぜ?」

「はい!」

「ルールは簡単、今から1時間の間にこの俺を探し出しそして、仕留めてみろ」

え?…大分簡単だな。

「今簡単そうだな?とか思っただろ?」

「え、えぇまぁはい…」

「まぁいい…ルールはこれだけだ、始めるぞ」

何やら秘策があるみたいだけど…とりあえず、やるしかないよな。

「それじゃあ、目を瞑れ、そして十秒数えろ」

「は、はい」

素直に目をつぶって数え始める

「いーち、にーい、さーん…」

────────────────────────

「………きゅーう、じゅーう、っと」

周りを見回しても誰もいない。

当然ちゃあ当然だが…

「とりあえず探すか…」

よし、とりあえず何を使って探すか…犬にするべきか、それとも別のヤツにするべきか、悩むな。

「……まずは動き回らないとな…」

────────────────────────

あれから10分ほどたった、ある時…

近くの草むらが揺れた。

「!!」

「……何者だ?」

さらにガサゴソ動く草むら…

頬に冷たい汗が伝っていくのを感じる。

「…!」

バサッと出てきたのは……うさぎだった。

「なぁんだ、うさぎか、よって…」

「ぇぇええええ!!」

その時ハッと脳に弦巻さんの言葉が蘇る。

───────────────────────

『この空間に、私の『魔法』で作った『リアルバーチャル』を流す事で、色々な環境を再現出来るのよ!』

『因みに植物も動物も再現出来るのよ!すごいでしょ?』

───────────────────────

あれかァァァ…

凄いリアルだなぁ、これ。

「ふふっ、可愛いな、やっぱりうさぎは」

うさぎにしゃがみこんで手を伸ばしモフろうとした時だった。

「ガルルルルルルル…」

「ん?」

頭上から獣の声が聴こえた。

恐る恐る上を見上げると…

「ガルルルルルルル!」

大きな黒い狼の様な化け物が見下ろして、唸っているのが視界に映った。

「……ヤッバ」

ついハスキーボイスが出てしまう程恐ろしかった、でもそれだけじゃなく…

ゆっくりとその化け物は前足を上げる。

その行動に嫌な予感がした俺は、咄嗟にバックステップで下がる。

バックステップをしたと同時に前足が振り下ろされ、先程自分が居た位置に当たる。

「あっっっっぶなっ!」

「グルルルルル…」

その化け物の眼に映るのは、敵意の感情がハッキリと伝わってくる。

「やるしかないか…」

とは、いえ何の動物にするか、余り体力は使いたくはないからなぁ

「…………はっ!」

そうだ、あの動物にしよう。

その化け物がこちらに走って来る、俺はタイミングを見計らって…

「ガルルバファ!?」

思いっきり顎を蹴り上げた、足に再現した動物は『フレミッシュジャイアント』先程会ったうさぎの最大種だ。

そんなうさぎの最大種の脚力を人間サイズで打ったんだ、幾らの化け物でも効いている筈だ…

「…ワォォォォォォン!!」

いきなり息を吸い込んだと思えば、この大音量の遠吠え、耳が痛い!

耳を抑えていると、化け物がジャンプし、俺の右腕に噛み付く。

「いっっっだぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛!!!」

咄嗟に何とか、『クロカタゾウムシ』の鎧を腕に再現…出来た、けど…

「ウッソだろお前ッッ」

化け物の牙は容易に鎧を穿く、すげぇ顎の力と、牙の硬度。

これでも、元の生物はステンレス製の一番大きな標本用の針も突き通さない位の硬さを誇ってるのに…

「離れろっ!」

空いている片方の腕で化け物を殴り飛ばす。

「ちょっと、しばらくは使い物にはならないな…」

噛まれた腕は、血が流れており、力が入らなくプランプランしている。

「腕が使えねぇから、やっぱり今回は…うおっ!」

化け物が飛びかかって来たのを、バックステップで避ける。

腕が使えないとなると、やはり蹴りでやるしかないのか……そうだ。

「えぇっと…確かこうだったけか」

俺は昔見ていたアニメのキャラがやっていた蹴りの構えをする。

右脚を膝がへそのちょっと上くらいに来るまで上げ、右脚に『クロカタゾウムシ』の黒い鎧を纏わせる。

腕はボクサーの様に構える。

さぁ、反撃(アッセンブル)の時間だ。

「ガルルァ!」

化け物が、飛びかかって来る…ここまでは予想通り。

「ふっ」

俺は化け物の下を潜る様にしゃがみ、上へ蹴り上げる。

腹を蹴り上げられた化け物は、宙へ吹っ飛ぶ。

「どうだ!」

しかし化け物は空中で体制を直し、牙を向けてこちらに突っ込んでくる。

「あっぶなっっ」

うさぎの脚のバネによって何とか回避したけど…

タフ過ぎやしねぇか、あの化け物。

落下地点には砂埃が舞い中がよく見えない。

よく見ようと近ずいた、瞬間体に衝撃が走る。

「うぐっ!」

化け物の体当たりをモロに喰らっちまった。

吹っ飛んだ俺は木か何かにぶつかって止まる。

「ハァハァ…」

よく見ると化け物も疲れてきているように見える。

俺の体力も含め、一発で決めたいが…

「バルルル、ガァ!」

唸っていた化け物がこちらに突進して来ている。

一か八かやるしかねぇか…

先程と同じ構えをする…化け物はもう目の前、タイミングを見計らって…

大きく開いた口に思いっきり蹴りを入れる、当然の様に口が閉まり、歯が足に食い込む。

「…これで、避けれねぇし、体制も変えらんねぇよなぁ!」

そのまま、空いている片方の足を化け物の頭上へ持ち上げ、踵落としを決める。

粗砕(コンカッセ)!!」

噛まれた足は踵落としの瞬間に引き抜けた…腕よりかはまだ無事で動かせる。

頭を粉砕された化け物は霧の様になって消える。

「残り時間がどうか、分からないが急いで探さないと。」

余り体力は使いたくはないが、仕方ない。うさぎの脚を元に戻し、そして。

ヘビ科の生き物は地面の振動を感じ取れる、さらにそれに『ハチノスツヅリガ』と言う生物界最高の聴力を持つ生物の耳を合わせる。

眼は『ダチョウ』の眼にする、ダチョウは視力が『25』もある稀有な存在だ。

この大森林で視力は勿体ないが、無いよかマシだろう。

色々な足音が聴こえる、この中で最も人間に近い足音は……

───────────────────────

獣田side

ん?、俺の視点は初めてじゃねぇのか…まぁいいか。

先程、俺のラード魔法で出した獣の一体がやられた、ただこの感じからして、そこそこ噛んだりは出来たみたいだ。

その時俺の背後から敵意を感じた。

俺のラード魔法は獣を出す能力なのだが、その獣達の影響か、俺自身も獣のように俗に言う”第六感”ってやつが発達している、それにより、敵意を感じ取れるようになってんだ。

後ろを咄嗟に見ると…

「ようやく見つけたぜぇ!」

左腕を振りかぶって殴る構えをしている、真堂の姿が目に映る。

こういう時は落ち着いて、相手の腕をよく見る、黒く変色しており、金属のようなテカリが見える。

「目的がバレバレすぎる…もっとフェイントというものを学べ」

殴ろうとする腕を半身を逸らして躱し、避ける。

そのまま振り抜かれた腕を掴み、肩の間接を極める形で倒し抑え込む。

「っで!」

地面に倒れた真堂に上から乗っかる。

「残りあと…10分どうするんだ?」

「この危機的状況をどう打破してみせる、真堂!」

その時だった、真堂が右手でOKサインを作ってみせた、ほう…

この状況を打破出来ると…やってもらおうじゃないか。

その時、俺の体が空中に浮かび上がった。

「なにっ!?」

そのまま空中で停止したかと思うと、近くの木に白いもので貼り付けられる。

よく足を見ると、足が蜘蛛の脚の様に細い、よく見ると白い物体は、ネバネバしてる…まさか!

───────────────────────

真堂side

ふぅ、予め『ダーウィンズ・バーク・スパイダー』の能力を再現しといて正解だったぜ。

「…流石元軍人さん、近距離戦闘もお手の物ですね」

「くっ、お手上げだ、この蜘蛛の糸が張り付いて動けねぇし」

「良かったぁ…」

獣田さんが負けを認めてくれた。

「美沙希ぃ!終わったぜぇ!」

獣田さんがどこかに向かって叫ぶと。

「はぁーい、分かったわ〜!」

どっかから弦巻さんの声が聴こえる。

それと同時に周りの木が白く変色していき、地面も元のタイルの様な質感だ。

俺は獣田さんから糸を切り離しながら、周りを見ていると。

「お〜つかれ〜さま〜!」

弦巻さんの声が聴こえてくる、頭上の方から…上を見上げると…

突如頭上から弦巻さんが降ってくる………回転しながら。

「えっ!」

綺麗に着地した弦巻さんは俺らに近寄る。

「お疲れ様!真堂君、獣田君!」

「お疲れ様です、御二方」

いつの間にか、プッチさんがいた、あの瞬間移動かな?

「ちょっと待っててね、今傷を治して上げるから。」

弦巻さんが両手を上げる。

「『からくり☆メカニカル』、おいで!、『ピーポーセイバーメディック』!」

そういい、思いっきり両手を叩いた。

パンッという乾いた音が響き、それと同時に遠くから救急車の音が聞こえる。

「真堂ぉ、我慢するんだ、分かったな?」

「えっ、あっはい…って何をですか?」

いきなり獣田さんが話しかけて来たけど何を我慢するんだ?

獣田さん俯いてるし…

先程から聴こえていた、サイレンの音は大きくなっており、気が付くと、弦巻さんの目の前にトミカみたいな小さい救急車が浮いている。

「さぁ、誰から治す?」

弦巻さんがグルッと周りを見廻す。

「そうね、獣田君は特に怪我はしてないみたいだしぃ」

「真堂君だね、右腕と、右脚、出血に筋肉が千切れてる…よし」

弦巻さんがこちらに近寄って手を握る。

「それじゃ頑張ってね!」

ニコッと微笑むとその瞬間全身に激痛が走る。

「〜〜〜〜〜〜!!!」

言葉に出来ない程の痛みが体を襲う。

───────────────────────

一体何時間経ったんだろうか、きっとほんの数分間だったのかもしれないが、あまりの痛みにそれが途方もなく、長く感じた。

「お疲れ様!」

痛みがすんなりと消えてゆく、やっっっと終わった。

「い、今のは?」

「あれが美沙希の作ったメカの一つ『ピーポーセイバーメディック』」

獣田さんが説明しようとすると。

「どんな傷も治せるのですが、その代わり死ぬ程の痛みが全身を襲うという副作用が付いた、医療メカです」

プッチさんがそれに被せる。

確かに腕が普通に動くし、痛みもない。

「うん、これでよしっと」

弦巻さんが医療メカをしまうとこちらを見る

「で、どうだった真堂君は?」

「あぁ、動きはまだ粗雑で、意図が丸見えだが、」

弦巻さんが獣田さんに質問する。

「…だが、自身のラード魔法をよく理解し、その長所に磨きがかかっている」

「…これは文句無しで採用だな」

フッっと獣田さんが微笑むと、弦巻さんが太陽みたいな笑顔でこちらを向く。

「やっったじゃない〜!」

「これで今日から、貴方もこの『カタルシス』の一員よ!」

よかったァァ、何とか合格を貰えたぁ。

「言っとくがな、真堂」

獣田さんが話しかけてくる。

「はい、なんでしょうか」

「あれはまだ本気じゃねぇからな?」

「えっ」

「俺はあの獣を10体十体同時に創り出して操れんだ」

「あれで俺に勝ったと思うんじゃねぇぞ?」

とんでもねぇ事を最後にいいやがった、この人。

あれがあと九体ぃ!?

強すぎるだろ。

「は、はい、すみません…」

「まぁ気にすんな、一体だけでも勝てただけすげぇんだからよ」

肩をポンポンって叩いて励ましてくれた。

「ありがとうございます!」

「それでは、歓迎会の準備をしますね」

プッチさんがそう言うとまた消えた。

「あぁそうだったな、よし美沙希ぃ、真堂ぉ、急いで行くぞー」

そう言うと獣田さんは、走って扉から出ていった。

「もう、待ってー、ほらっ真堂君も行くわよ!」

獣田さんを追っかけながら、弦巻さんはこちらを向く。

「はい、今行きます!」

こうして俺の試験は合格と言う2文字で幕を閉じた。

───────────────────────

?side(三人称)

「お前達、準備は出来たか?」

どこかの暗いジメジメした部屋に、低い冷たい男性の声が響く。

「「勿論です、我が君主、全ては順調です」」

若い男性の声が同時に二つ響く。

「相変わらず、心配性ねぇ〜」

若い女性の声が響く。

「口を慎め、我が君の御前だぞ!」

渋い男性の声が女性を注意する。

「は〜い、分かりましたよ〜」

再び男性の口が開く

「頼んだぞ、全ては」

「「「「我ら『カテドラル』の為に!」」」」

ひっそりと闇の中に悪の華は咲き誇る、、、

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