とある魔術の留年生(仮)   作:ブッシュ

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始まりの電話

世界の動乱は去り3月、平穏な学園都市のとある学校のとある職員室にて

 

「上条ちゃんは馬鹿だから留年確定です。」

 

ツンツン頭の少年にピンクの頭髪で見た目小学生の恩師が伝えたその言葉には、冗談も侮蔑も憐みも含まれておらずそれが事の深刻さと信憑性を何よりも証明していた。

 

「小萌先生ちょっと待ってください!俺が何やったって言うんですか!」

 

ツンツン頭の少年…上条当麻は恩師月詠小萌に無駄な抵抗だと思いつつ最後の徹底抗戦をしようとした矢先

 

「何もしてないのが問題なんですよ…上条ちゃん。」

 

一分一厘反論の余地がない言葉がお馬鹿な不良高校生に直撃した。

そう。上条当麻の出席日数は学園都市のお偉いさんと超ハイテクスパコンがなたんぱくと電子で出来た優秀な頭脳をフル回転させて決めた進級に必要なそれを大きく下回っていた

 

「先生も色々手を尽くしては見たんですが……本当に申し訳ないです!」

 

「先生は…先生は…」

 

努めて平静を保とうとした月詠の涙腺は自分の言葉と自己嫌悪によって決壊し、目尻には大粒の涙があふれ出していた。

 

「ああ……小萌先生が泣くような事じゃないですから!というか上条さんは小萌先生ともう一年余計に一緒にこの学校通えると思うとウキウキですよ!ウキウキ!ほら見て先生!ウキウキ!」

 

だったら先ほどの抗議はなんだったのだ?という馬鹿の言行不一致はさておき泣いた烏はもう笑った。

熱血教師は不出来な教え子のエールの前ではいつでも無敵なのだ。

 

「グスッ……上条ちゃんはほんと馬鹿ですね。自分が一番大変なのにこんな時まで泣いてる女の子を放っておけないんですか?ほんと馬鹿です……」

 

「先生は女の子って歳じゃ…」

 

「上条ちゃんはほんと馬鹿ですっ!」

 

上条当麻はそれを見て独りごちる

 

「まったく泣きやんだと思ったら何怒ってんですか…はぁ不幸だ」

 

世界の難題を悉く拳で解決した馬鹿には、女心の色変わりを読み解くのは四色定理よりなお難しく複雑を極めるのだった。

それを傍目で見ていた色気がない残念美人巨乳ジャージ教師曰く

 

「やっぱ小萌先生とこの生徒は…馬鹿で面白いじゃん」

 

眼鏡をかけてお化粧をばっちり決めた美人教師曰く

 

「泣いても化粧が落ちてない…」

 

 

 

そんなお馬鹿なやり取りを一通り転がして落ち着きを取り戻した月詠は告げる

 

「すいません上条ちゃん、教師である私が取り乱してちゃダメですよね。ここは上条ちゃんじゃないですけどポジティブに考えましょう。」

 

「一年余剰に学習できるって事は決して悪い事ばかりじゃありません。昨今の学園都市は能力開発に重きを置き過ぎ。ともすれば座学や各分野の基礎知識を軽視しがちですっ。この際先生と一緒にみっちりお勉強しちゃいましょうね!」

 

月詠は上条をそして誰よりも自分を納得させるようにまくしたてはじめた。

 

「うおおお!そうなってくるとこれは新しいカリキュラムとタイムスケジュールを作らなきゃいけませんね!分かってます上条ちゃん!学習スピードに付いてこれるかどうか心配なんですよね!だったら放課後も先生と自宅学習しましょうそうしましょう!いやいや上条ちゃん気にしないでください先生は生徒の為なら平気ですから!そこで間違いが起こってもそれはきっと正しい事なんですよ!」

 

度を越えた熱量と狂気を帯びていく教師の熱情あるいは劣情を「不幸だ…」の一言で言い表すのは忍びなく、口をつぐんでいた上条当麻。

その異様な空間を現実に引き戻す電子音が鳴り響く。

 

「PRRRR....」

 

今時珍しい職員室備え付けの固定電話の受話器を取り月詠は玲瓏な声で対応する

 

「はい、月詠です…ハイ…ハイ…そうですか…はい分かりました。それでは失礼します。」

 

月詠は受話器を置きこちらに向き直り一言上条当麻に告げる

 

「上条ちゃん馬鹿だけど留年(仮)です!」

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