「それではみなさん、簡単な自己紹介をお願いしますのですよー。なーに偉大な先達が盛大にずっこけてくれましたから肩の力を抜いて気軽にやってください。えーとじゃあ舞殿ちゃんから…」
「小萌先生、俺の挨拶を空前絶後の失敗例みたいに言うのはやめてもらえませんかね?」
「うるせーのですよ、留年野郎。可愛い女の子たちの為に黙って捨て石になりやがれなのですー」
上条と月詠教諭のやり取り聞きながらクスクスと笑う小柄なおかっぱ頭の小柄な少女、舞殿星見は椅子から腰を上げ少しだけ言葉を震わせながら言葉を紡ぎ出した。
「舞殿星見。念動能力(テレキネシス)レベル4です。今更隠すつもりはありませんので敢えて申しあげておきますが、わたくしはかつては元統括理事・根丘則斗麾下の実働部隊構成員をやっていました。皆さん以後お見知りおきを」
教室の空気は昨今の温暖化が嘘のように冷え込み張り詰めたものとなった。
女の子同士の自己紹介なんて好きなスイーツは生チョコガナッシェです!うっそー私も好きなんですけど!みたいな甘くてフワフワした内容を予想していた上条は自分の考えが誰よりも甘かったことにようやく気付いた。
「最後まで新体制統括理事会に噛みつイた狂犬共の生き残り…」
真っ白な髪に真っ白な肌、真っ赤な瞳だけがやけに悪目立ちするやせっぽちの少女は誰に聞かせるわけでもない無機質な言葉を並べた
「結局それも無駄なあがきだった訳よ。というか自分の能力なんて馬鹿みたいにペらぺら喋って軽率に過ぎるんじゃないの~?」
金髪碧眼のフランス人形のような容姿の少女は白い少女の言葉に相乗りするように舞殿を嘲笑するが、
「馬鹿はあなたたですよ、フレンダ=セイヴェルン」
ここは譲らない。譲れない。自分は上条当麻と約束したのだ。自分はこの学校でこのクラスで普通を取り戻す。と
「私たちの能力・経歴はおろか3サイズに男性遍歴だって上はもとより、『これ』を付けている以上、この場のみんな全てが知ろうとすれば簡単に知ることが出来ます」
舞殿は左腕にまかれた味気ないデジタル時計を掲げる
くだらない暗部の駆け引きなんて持ち込ませたりしない統括理事共の思惑なんて知った事ではない。
もう前みたいに嘘はつきたくない。未来の友人たちに
「私の指先の障害もあなたがアイテムを抜けた理由も隠す意味が無いし、私はそれを隠す必要がないんです。そうことやりたくてわたくしはここに来たんじゃない!そういうことをやめたいから!ここにいるみんなと笑い合いたいから!もう一度やり直したいからここいるんだ!分かったか馬鹿野郎!以上!」
そこまで言い切ると舞殿はすっと着席した。
興奮しているせいなのか泣いているのか小刻みに肩を震わせる小さな少女に上条は
「かっこいいじゃん、後輩」
「…先輩、わたくしの3サイズ調べちゃダメなんですからね」
「え、ダメなの?」
「馬鹿」
「それじゃあ次はフレンダちゃんなのですね。張り切ってお願いします」
生徒たちのキャットファイトなんて意にも介してないのか月詠小萌は場違いなくらい変わらない甘い声で次々と生徒を促す。
「結局そこのちんちくりんに言われちゃったけど、まあいいって訳よ。フレンダ=セイヴェルン、16歳、好きなものは鯖缶とぬいぐるみ!結局今日はこれだけ覚えて帰って欲しい訳よ。一年間よろしくね、ニヒヒ」
金髪碧眼のフランス人形のような容姿の少女・フレンダは快活に笑う
「九十九海月(つくも くらげ)、能力は窒素操作レベル4…さっきは余計なこと言って悪かった。今度美味しイ紅茶をご馳走するンで許して欲しい…」
白い少女は抑揚こそないが確かな謝罪の意を込めて言葉を紡ぐ
「ゆ、ゆゆゆゆ弓箭猟虎でっす!あの私も皆さんと仲良くなりたいなあって…ああ私は!そこの金髪(ゴールド)とは既に親友っていうか運命共同体っていうかフヒッ」
「勝手なこと言うんじゃないわよ!このどSスナイパー!結局枝垂桜に普通に戻れば良かったじゃない!」
「冷たいこと言わないでくださいよ、ゴールド」
フレンダと既に知己を得ているようだった黒髪を後ろで二つ括りにした上品な少女はもごもごと早口で自己紹介を終える。
「八重桜(やえ さくら)、水流操作レベル4。いまはこれだけで勘弁してくれないか」
その名前のとおり桜色の髪色をしたすらっと高身長の少女は言葉少なく席に着いた
「はい、皆さんありがとうございましたー。本当はもう一人生徒さんがいるんですが手続きの関係で5月頃の編入になるそうです。…どうでしたか?みなさん。自己紹介してみて?……ここにいる人はみんな年齢も経歴も能力もバラバラで本来は同じ学校の同じクラスで学ぶことなんてありえなかった6人です。それでもここで出会うことが出来た6人なのです。それを意味のあるものにできるか否かは、皆さんの今後の振る舞いによって決まってくるのです。それだけは忘れないでくださいね。」
教室にいる6人の顔をしっかり見据え一人一人に語り掛けるような月詠小萌、そんなシリアス空間に耐えられなくなった我らが頼れる兄貴・上条当麻
「まあそんな難しい事考えず気楽にやっていこうぜお前ら。そのために先輩の俺もいるんだからよ!」
「上条ちゃんはもうちょっと人生を難しく考えていく必要があると思うのですよ…というか上条ちゃん2年生なのにこの中で一番カリキュラム進捗遅れてるって知ってましたか?」
「おいマジかよこの教師?それは隠していくべきことだろうが!」
「先輩隠し事は無しでお願いします」
「マジ?結局上条は先輩の器じゃないって訳よ?」
「せンぱイ…流石にそれはまずイ」
「か、上条先輩!今度みんなでいいい一緒に勉強会やりましょ!そうしましょ!」
「当麻先輩、それほんと大丈夫かい?」
初顔合わせで早くも先輩として威厳が地の底に潜った上条当麻…彼に明日はあるのか?