とある魔術の留年生(仮)   作:ブッシュ

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焼肉 そのに

第四学区に立ち並ぶ飲食店から大きく外れた路地通りに建つ知る人ぞ知る知らない人は普通に知らない焼肉店で、上条たち2-7組および1年特別クラスの打ち上げはひっそりと行われていた。

肉を焼く煙がもうもうと立ち込める店内で、クラスメイト達は思い思いに楽しい会話を弾ませるなか上条当麻たちのシマも今まさにトークのピークを迎えていた。

 

「イヒヒヒヒ、飲み物込みで2980円って貴様は私たちをどんなとこに連れていこうとしてたのよ、上条」

「面目次第もござらん…」

「でもですね、先輩は私たちに頑張って奢ろうとしてくれてたというかですね」

 

吹寄はいつもの生真面目な相好を崩し、珍しく声を上げて笑っている。テーブルの上のソフトドリンクではなくこの場の雰囲気に酔っているのかもしれない。

舞殿はしょぼくれた上条とそれを肴にする上条の友人の顔を相互に見回しおろおろと愚にもつかない弁護を繰り広げていた。

結果から言うと言うまでもなく上条当麻の値引き交渉は失敗に終わった。

 

「いや笑い事やあらへんよ!カミやんが店員に縦縞だろうが横縞だろうが構わないからもっと安くならないか?って言ったときはホンマ肝を冷やしたで…」

「あひひ、ムフ!いひひひ!だみぇお腹痛い上条貴様笑い殺す気?」

「面目次第もござらん…」

「わたくしはお気持ちだけで嬉しかったですからね?」

 

そもそもの話である。壁の外と比べ学園都市の飲食店の価格設定は非常に高い。

一方通行の統括理事会理事長就任によってかつてのそれに比べ、リーズナブルになってきてるとはいえまだまだ学生たちにとっては辛い状況が続いていた。

それを考えると2980円で焼肉を食べようとするのがいかに神も恐れぬ所業か理解してもらえるのではないだろうか?

オチが付いたところで小休止。吹寄と青髪ピアスはコップに注がれた極彩色の液体で笑いすぎて渇いたのどを潤す

 

「ふふ、ふひ、あーお腹痛い。でもさホントにこの学園都市なら作っちゃうかもしれないわね。縦縞の肉牛」

「意味なさすぎですやん?某有名フライドチキンチェーン店の都市伝説ならまだしも」

「6本足の鶏…ですか?実現したとしても食肉に出荷までの飼料が通常の3~4割増しになる上に、多脚化による運動機能の制限からもたらされる病気のリスクを鑑み、早々に放棄された畜産計画ですね」

「「えー……作ろうとしたんだ…」」

 

鼻をフンスとならす物知りガール・舞殿星見がちょっとだけ誇らしげに語るのを余所に、冗談を本気で商業ベースに乗せれるか否か検討してしまったこの街の大人たちになんとなくゲンナリしてしまう吹寄、青髪ピアス。

バカ騒ぎをすれば喉が渇き、腹も減るのは当然というもので手を上げて吹寄は通りがかる大学生ぐらいの年若い男性ホールスタッフを呼び止める

 

「あ、すいません牛タン追加!」

「お客様申し訳ありません、最初にお出しさせてもらった物を全て召し上がって頂いてからの追加注文とさせて頂いています」

 

そう言うとあわただしげに去っていくホールスタッフを見送りおもむろに焼肉テーブルの上の大皿料理を見て吹寄はため息をつく

 

「嫌いじゃない…決して嫌いじゃないのよ…」

「分かるぞ吹寄!いらないよな焼肉食べ放題の時のチャプチェとトッポギ!」

 

焼き肉食べ放題の時に立ちふさがる最強の敵、店側からの明確な悪意と警告

絶対に高い肉はバカバカ食わせないぞ!という強烈な意志を感じさせる炭水化物2大巨頭がテーブルに鎮座していた

 

「いくら5人前とはいってもね…へへ」

 

先ほどの馬鹿笑いとは趣の違う口の端を数センチ動かすビターな笑い

食べなければ好きな肉は頼めず、かといって全部食べてしまえば肉を入る予定の腹をジャックしちゃう無法者。お互い目配せしながら膠着する時間が数瞬…

 

「しゃーないインデックスに「わたくしがさらっちゃいますね!」

 

上条の言葉にかぶせるように大きな声で言ったかと思うと舞殿が大皿を自分の前に引き寄せる、先輩たちの考えが痛いほど分かり気を遣ったのだが、冷静な舞殿にしては一つ大きなことを忘れていた

 

(あれ?これお箸じゃないと食べるの無理じゃないですかね?)

 

そうなのだ。この二つの料理、形状あるいは味付け的に普段舞殿がやっている突き刺し、かっ込みで食べるのが非常に難しい。

春雨はいうまでもなく韓国餅も箸で刺すには硬過ぎる。

じゃあかっ込んで食べるのはどうかというとボリューム的に厳しいのもさることながら味付けがとんでもなく辛いので確実にむせる。

そもそもである。花も恥じらう女子高生が大皿に盛られた炭水化物をかっこんだり、犬食いしたりするのはどうなのよ?とそんなことを考えながら箸を握りこんだまま固まっている舞殿

 

「独り占めはよくねえぞ!舞殿」

 

固まる少女の前から大皿を奪い返す上条

 

「ほら青髪もさっさと食えよ」

「合点承知の助!」

 

炭水化物を腹に放り込む機械となった馬鹿二人をじっと見る舞殿にそっと耳元で吹寄が語りかける

 

「ごめんなさい気を遣わせちゃって…あとね実は舞殿さんの指の事なんだけど、この食事の前に上条から聞いてるのよ」

「先輩が?」

「ああ悪く思わないであげてね。了解も得ずに言っちゃうなんてほんと馬鹿だから上条、うんほんと馬鹿なのよ」

「もちろんそれは…でもなんでわざわざ」

「せっかく新しい学校で新しい生活を始めたんだから、変な気を遣わせたくないから見て見ぬふりしてろって…たく、それで余計に後輩に気を遣わせるんだから世話無いわよ」

「ほんと馬鹿ですね…先輩は…ああ先輩も青髪先輩も二人で食べちゃダメですよ!わたくしにも残してください!」

 

そう言うと舞殿は小さな口を大きく開けて人指し指を軽くクイッと動かした。

 

「カミやん目が!目が!めっちゃくちゃ痛いです」

「馬鹿野郎ですかお前は!念動力の無駄遣いだろうが!トッポギの汁めっちゃ飛んでるんですけども?青髪なんてあまりの痛さに標準語に戻ってるぞ」

「ムグムグ。仕方ないじゃないですかわたくしお箸使えないんですから」

「それにしたってやり方考えろってんだ!」

「じゃあ先輩が食べさせてくださいよ、あーん」

「あーもう不幸だ――――!!」

 

馬鹿笑いでも苦笑いでもなくいつも様に優しく笑いながら吹寄はこう言った

 

「まったく先輩たちが馬鹿なら後輩も馬鹿にもなるわよね。あ、すいません牛タン塩5人前にカルビタレ3人前…あとフォークを一つお願いします」

 

 

 

 

 

余談ではあるが実は同じシマにずっと黙って座っていた弓箭であった

(ああああ、あれ?喋り出すタイミングがなかなか掴めないですね。)

 

 

 

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