とある魔術の留年生(仮)   作:ブッシュ

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ふたりぼっち そのに

「才人工房第三研究室、内部進化…薬物・精神操作を利用し人為的に思った通りの能力を人に発現させようとした愚か者どもの夢の王国、それが私の始まりです」

 

弓箭猟虎は星々輝く夜空を見上げ、昔々あるところにあったどこか遠くのおとぎ話を幼子に読み聞かせるかのような口ぶりで上条当麻に話始めた。

 

「レベル5を生み出したなんて耳障りの良い言葉で展望ある少女たちを集め行った違法研究…そんなものに憧れて私は、私たち姉妹は門を叩きました。そこでのわたくしは大層な劣等生でしてね、来る日も来る日も動脈に認可されてるのかどうかも分からない怪しげな薬品ぶち込まれて、大仰な機械で脳みそかき回されて、それでも全く目に見える能力増進はありゃしない…フフフ、まったく参っちまいますよね?上条先輩」

 

過去の自分を嘲っているのかあるいは上条当麻に何かを求めていたのか囁くように言う。

 

「そんなくそったれな世界でもわたくしは希望を持っていたんですよ。いつかは超能力者になれるって…妹から…誰からにも尊敬される何者かになれるって」

「それなら…」

「ああ、そこで生み出されたレベル5に謀反起こされて研究所はあっさり解散しちゃいましたよ…そういえば貴方もご存じだったはずでは?蜂の女王は」

「済まない誰の事なんだ?」

 

先ほどまで歌うように語っていた弓箭猟虎は一瞬とても悲しそうな顔をし続ける。

 

「失礼しました、私の記憶違いだったようです…ああ話が逸れましたね。研究施設の解散後に妹はわたくしの元から消えました。きっと無能力者で人付き合いが苦手な私に嫌気が差して消えたんでしょう、全く酷い妹ですよ…その後は上条先輩もご存じのように生きるために暗部に身を落としたわたくしは日を重ねるごとに一つ一つ罪を重ねて、裏切り裏切られの世界に骨まで馴染んじゃいましてね、今更友情だの愛情だのなんて信じられない身体と心になっちゃいました。チャンチャン。どうでしょーかね神父様わたくしの罪はいまさら許され学校通って友情ごっこなんてやれるんですかね?」

 

弓箭はコーヒーで汚れた指を舌先でぺろりと妖艶になめとり、罪重ねた過去と未来の狂気を語る。

 

 

「新体制も最初だけ。結局彼らはいかに美辞麗句で飾ろうと暗部を必要としてわたくしたち暗部の開放を始めています。これは試金石!たった一年!たった一年我慢すればまたこの街で殺したり殺されたり出来るんです!私はまたハンティングを楽しめるんですよ!だから私は虫唾が走るこの友情ごっこを演じます、だから上条先輩も業腹かもしれませんが演じてくださいませんか?この滑稽な茶番劇を」

 

確信をもって。

 

「弓箭…」

「はい?」

「駄目だよ、懺悔だって言うならちゃんと真実を言ってくれなきゃ。それじゃあ俺は納得できないよ」

「何を言っているんですか?貴方は…嘘をつく理由やメリットなんかどこにあるって言うんですか?私は暗部の殺し屋ですよ?貴方が考えてるような倫理観で全て理解できなくても仕方ないと思いますが…」

「分かるさ」

 

上条当麻はここまで聞いても即答する。

さしもの弓箭も口元をひきつらせ狂気を帯びた笑顔は消えた。

 

「弓箭、お前は最初になんて言ったか覚えているか…『懺悔』だよ。本当に全て納得ずくで何一つ後ろめたさのない奴は嘘でも冗談でもそんな言葉使ったりしないんだ」

「そんなつまらない言葉だけで自信たっぷりそんなこと言ってたんですか?どんだけおめでたいんですか、わたくしの善性を買いかぶりすぎでは?」

「そうかもしれない」

 

上条は率直に認めた

自分の論理の幼稚さを実証性の無さを

 

「そ、そうでしょ?だったら!」

「そうかもしれない…でもだったらお前なんで泣いてるんだよ?」

 

弓箭猟虎の大きく黄金色の瞳からは確かに確かに一筋の雫が零れていた。

辛い。と

悲しい。と

弓箭猟虎の言葉に精いっぱい抵抗するように本人の意思と反するように。

 

「殺しを楽しんでいたのかもしれない。誰かを裏切って裏切られて傷ついて人付き合いなんてウンザリだって思ってるのかもしれない!それでもアンタはどこかで誰かと繋がりたいって思ったから俺の誘いに、みんなとの食事会に、こんなバカげた計画に乗っかったんじゃないのか?だってそうだろ?外に出るだけならこの計画が成功した後に改めて悠々と出てくればいい。演技までして茶番劇の道化を演じる必要なんかなかった」

「黙ってください…」

「黙らないよ。人とは繋がりたいただやはり人と付き合って傷つくのは怖い…だからアンタは臆病になって閉じこもって鎧を着た。ぼっちだから仕方ない。空気読めないから相手が離れても仕方ない。そんな言い訳で自分を動けなくした。でも違うんだよ!弓箭!人付き合いなんてものは相手とぶつかりあって傷ついて当たり前なんだよ!」

「黙れって言ってんだよおおおおおお‼」

 

咆哮。

弓箭猟虎は制服の袖口に仕込んだ女性用の小型拳銃を取り出し、震える手の神経に渇を入れ、上条当麻の心の臓に銃口を定めた。

 

「うるさいうるさいうるさい!!もうわかりましたはいはいそうですねもういいです。一年いい子で過ごしてまた暗部でハンティングする未来も諦めた!殺処分も仕方ない!ただあなただけは…あなただけは私と道連れになってもらいますよ上条先輩」

「やっと本音がこぼれたのかこの口下手野郎」

「私みたいな奴に深入りした自分を後悔しながら死んでください、いい声で鳴きながら」

 

上条当麻の持つ力、幻想殺しは鉄の塊を吐き出す銃には無力だ。血管、重要臓器の一部が傷つけばあっという間に死んでしまう脆弱な肉の身でしかない。

それでもそれでも銃口を見据え上条当麻は凶悪に笑った。

 

「いいぜ!口論よりこっちの方が得意だ!喧嘩しようぜ弓箭猟虎!」

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