とある魔術の留年生(仮)   作:ブッシュ

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ふたりぼっち そのさん

上条の宣戦布告と同時、上条当麻と弓箭猟虎は後ろに跳ねとんだ。

弓箭は距離をとるや否や小型拳銃で上条を狙いつけ軽い発砲音が2発…わずか7ミリ前後の金属の塊…上条の命を十二分に奪いうる威力と殺意を秘めた極小の暗殺者はさらに距離を取ろうとする上条の頬と脚に掠る。

焼けるような痛みを覚えるが、その痛みをなんとか押しこらえて大通りの枝道に走りこむ。

 

「ありゃりゃりゃ上条先輩、あんだけ啖呵切っておいて後ろに下がるんですかね?それはあんまりにもダサくないですか?」

「うるせーよクソぼっち!正面から拳銃とやりあってられるか!戦略的撤退だよ!バーカバーカ」

 

頭だけ出して言い放つ軽口が言い終わる前にさらに発砲音が1発…上条の身を隠している建屋外壁の表面がはじけ飛び、慌てて頭を引っ込める。

 

(ちっ…くしょぉ!最悪だ…頬はともかく脚まで…こりゃさっさと打開策見つけないとじり貧だな)

 

明滅する意識とじくじくと痛む足を引きずり、寂れて破棄されたであろう商店区の裏道の奥へと入りこんでいく上条当麻。

 

 

 

 

 

 

上条が逃げ込んだ枝道へ死角から飛び出してくる強襲を警戒しつつ追走する弓箭。

 

「上条先輩!寂しいじゃないですかー!一人ぼっちにしないでくださいな!」

 

いつも暗部で行っていたような群衆に紛れ、相手が自分を見失ったところでの狙撃…弓箭の趣味と経験を兼ね作り上げた勝利方程式とは違い周りは人通りも無く、さらに獲物は隘路をへと入りこんでいった。

いつもとは違う臨場感に嗜虐心と性的興奮を覚え柄にも大声を張り上げる。

5分ばかり道なりに進むとほんのわずかではあるがぽつりぽつりと路上に赤い斑紋が弓箭はしゃがみ込み、その斑紋に指を付け、その指を舌の上に押し付ける

 

(おやおや浅くない負傷までしてるんですかぁ~上条先輩。道幅が無く奇襲に適した遮蔽物に建屋も存在しない隘路。おまけに獲物は既に手負い済みしかも自分で自分の逃走ルートをさらけ出しています…ちぇっ!人生を賭けた割にはこの狩りどうにも面白くなりそうにもなりませんね。さっさと片を付けますか)

 

上条にはもはや逆転の目は無くなった!残酷な笑顔を顔に張り付けて上条当麻が逃げたであろう道、雑踏に転がる空き缶やポリバケツ、詰みあげたビンケースなどを蹴散らしつつも足早に駆け抜け隘路を抜け出し開けたスペース…いったいつ作られいつ打ち捨てられたのかもわからないコインパーキングへ、そしてついにそこで標的を捕らえた。

 

「みーつけたーっ☆」

 

上条当麻は傷ついた足のせいであろうか、それとも死の緊張感に耐えかねおかしくなったのであろうか?撃ち殺してくれと懇願してるとしか思えないなんの遮蔽物にもならないいつから置いてあるのであろうか?古ぼけたロック版タイプの駐車スペースに主が戻らず何年も待ちぼうけを食らった軽自動車がいくつかあるだけのだだっ広い場所で上条当麻は立ち尽くす。

 

「わたくし少々上条先輩を買い被っていたのかもしれませんね…とはいえ獲物はかつての英雄・上条当麻。最後はわたくしに極上の狩りだったと言わせてくださいませ」

 

いささか拍子抜けとはいえこれで詰み。とばかりに弓箭は小型拳銃を構え指先に全神経を集中させ、引き金の抵抗を楽しみ…その時であった上条当麻が自身の状況を理解出来てないのか大きな声で弓箭に声をかける

 

「おい弓箭、後ろは見るなよ!」

「はぁ…何を言ってるんですかね?恐怖でおかしくなりましたか?」

「舞殿が凄い顔でお前をにらんでいるんだ…見ない方がいいぞ!」

「そんな都合良い事が起こるわけが…」

「おいおい弓箭、お前は俺を捕まえるまでどれだけ時間かけたと思ってるんだ?およそ15分。電話で舞殿を呼べばさっきの店から走れば十分にたどり着ける距離だぜ。楽しんで殺す悪癖が災いしたな!」

「ハッタリです!さっきの場当たり的な逃走経路がすべて計算ずくだとでも…」

「その答えを考えるのはお前の役目だよ!」

 

(もし本当に上条先輩が舞殿星見を呼んだとしたら?そしてこの場に彼女が間に合っていたとしたら)

 

最悪の想像はあっという間に弓箭の思考を支配する。

レベル4念動能力者、舞殿星見。元根丘派最大の打撃戦力にして現在では上条当麻の犬…状況によっては倒せないとは思わないし自分が劣ってるとは言わない…言わないが単純な殲滅力では勝負にすらならない。

相手は原子力空母や高層ビルすら平気で真っ二つにへし折る規格外の化物だ。真っ向勝負なんてすればあっという間に瓦礫の下で躯を晒すのは目に見えている。

 

「ううう嘘ですよね?」

「さあいよいよ決断の時間だぜ覚悟はいいか!?後輩!!!」

 

その時であった金属がへしゃげる音がコインパーキングに響き渡る。弓箭の呼吸が止まる

(念動能力?)

思考と並行するようにその場を飛びのき弓箭は音のする方に視線を向けるとそこには、低すぎる車高が災いしたのか埃まみれの軽自動車のドア下に食い込み上がり切らないロック板がメシメシと音を鳴らしていた。

 

「クソがクソがクソが!やはりブラフじゃねーか!死ねや!」

 

視界を前に戻すと弓箭に一直線に向かってくる弾丸、上条当麻が

 

「遅すぎるんですよ!こんなちんけな手で私を…」

 

弓箭の動きが止まったのは数瞬…上条当麻と弓箭の距離は15メートル…カモであった。

跳ねる心臓とひりつく呼、定まらぬ視点をねじ伏せ再度上条当麻に小型拳銃で狙いを定め

 

「終わりです上条先輩、なにわたくしもすぐ行きますから」

 

終わりであった。

が、

 

「舞殿!!!頼んだぞーーー!!!」

「先輩!わたくしが睨んでるとはどういう事ですかね!あとでお仕置きですよー!!」

 

舞殿星見の怒声がコインパーキングに響き渡り今度こそ本当に弓箭猟虎の時が止まった。

 

(回避?上条先輩を仕留めて間に合うか?駄目、舞殿の能力はそこまで甘くない…だったらすべてを捨てて逃げる…そんなのダメすぐにアンチスキルに見つかってすぐに死刑…嫌だ…それは嫌です…絶対嫌です…一人で死ぬなんて…嫌です)

 

逡巡は一秒足らずだが上条当麻にはそれで十二分。

両者の間に合った距離を喰いつぶしお互いの手が届く、つまり上条の拳が届く距離。

この戦いが始まってから初めてのそして最後の上条の攻撃のチャンス。

 

「一人はもう嫌なんです!」

 

弓箭の虚ろな思考と視線で放たれた一発の銃弾は上条の右肩に確かに貫いた。

それでも彼は止まらない。

振りかぶった右の拳は血をまき散らしながら弓箭の左の頬に食い込み、弓箭は竹とんぼのように撥ね飛ぶ

 

「一人はもう嫌か…言えたじゃねーか。心配すんなよ弓箭、これは俺たちの喧嘩だもんな…ここには俺とお前以外はだれもいやしない俺もぼっちだっての…」

 

上条は銃創によって痛みと熱でうなされながらいますぐコンクリートの床で眠りたいという誘惑に耐え、駐車車両の陰に隠した携帯端末を拾い上げ、大音量の設定で怒り狂う愛しい後輩にねぎらいの言葉をかける

 

「ありがとう、お前のおかげで勝てたよ…」

「先輩大丈夫ですか?大丈夫ですよね?怪我とかしてないですよね?」

「だーいじょうぶだって…舞殿…こりゃ殺し合いなんかじゃなくて喧嘩だよ…口喧嘩だけじゃどうしようもなくて…それでも相手に想いを伝えたいから殴り合う、友人同士ならどこにでも転がってる喧嘩だよ…」

 

舞殿星見はまだなんやかやと言っていたようだが、そこまで伝えて上条当麻の視界は暗転した。

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