消毒液と洗い立てのシーツ、そしてどこか死のニオイを感じさせる一室
コインパーキングでの一戦の後、意識を失った上条当麻は真夜中の病院のベッドの上で目を開くこととなった。
「またここにお世話になっちまったのかよ参ったなぁ……て、痛って!すんごいこれ!」
病院に運び込まれるのが慣れっこになってしまったわが身の境遇に、わずかながら呆れを覚えながらも、現状の把握をしようと身を起こすために右腕に体重を預けた瞬間、猛烈な痛みが上条の全身を駆け巡りジタバタと悶絶していると枕の影から一人の妖精さんが…
「ようやくお目覚めかよ?人間。ったく、全くお前ってやつはいつでもどこでも騒がしいんだな…少しはおとなしくしてろ」
「オティヌス、お前いたのか…」
「馬鹿かお前は?私の居場所はいつだってお前の傍にしかない。それはお前が一番分かっていることだろ?そんなことよりほら、神の裁定を受けたくはないだろう?さっさと横になれ」
黄金製のつまようじ。いやいやかつてこの隻眼の少女が奮った力の象徴…主神の槍そっくりのミニチュアを片手に獰猛に笑うオティヌス。
その笑みや言葉の荒々しさに反しその目は上条当麻の容態を心配し、気遣ってるように感じられ、上条は小さな家族の言葉に従い再び体重をベッドに預け、床に臥せたまま当初の目的だった現状の把握に努めようとする。
「悪いオティヌス、今何時だ?」
「午前5時前。もう一時間も経てば夜のとばりも上がるだろうな」
「俺の身体の状態は?」
「例のごとくあのカエル顔の医者が看たが全く問題ないそうだよ。頬の擦過傷はともかくとしてもだ…右肩を貫いた銃創はいうにおよばず脚をかすめた銃弾が血管や神経をかみ砕きその脚で走り回った結果、病院移送まで死に至るだけの血を失っていたにも関わらずのこの診断。まったく相も変わらず丈夫な身体をお持ちなことで…ああこれは褒めてはいないからな」
「インデックスや舞殿たちは…」
上条が頭をのせている枕に腰掛け理解者の質問に答えていたオティヌスがその問いに対し、親指を横にし左右に揺らすというハンドシグナルで答える。
指の先にはそこにはパイプ椅子に腰かけ、疲れ果てた顔で舟をこいでる二人の美少女と一匹…三毛猫を抱える銀髪の魔導書図書館、インデックス。インデックスと同じ程度の小柄な体格とおかっぱ髪の少女、舞殿星見であった
「禁書目録もそこの小娘もつい20分前までは起きていたんだ。貴様が意識を取り戻すまでは起きて付いてるんだ。と聞かなくてな」
「ありがたいというか…申し訳ないというか…はぁ」
「ふむ、その辺を反省できるようになっただけ成長したというものだろうか?伊達に二年生に進級したわけじゃないんだな」
「落第点にゲタ履かせてもらっただけのお情けだけどな…しかも執行猶予付き」
「お情けをかけてもらえるだけの事をしてきたのは素直に喜ぶべきことだぞ、理解者。」
軽口を叩き合うだけの元気が戻ってきたのかそれとも理解者に愚痴を聞いてもらいたいぐらい弱っていたのか自分のことが自分で分からない上条当麻をオティヌスがさらに困惑させるようなことを言い出した。
「その、なんだ、済まなかったな」
「突然どうしたオティヌス、自尊心の塊みたいなお前が謝るなんて明日が世界の終りかな?」
「ふ、世界の黄昏はまだまだ先のはずだよ…じゃなくてだな……実は私はお前とあの弓箭とかいう女が戦ってる時、お前の服のポケットの中にいたんだよ…出てきてアドバイスをしなくちゃとも思ったんだが、なんというかここはお前が頑張らなきゃって思って…その…すまない。いややっぱりらしくないなすまない忘れてくれ」
早口で言葉を濁す魔術を極めた神様は格好がつかなくて、どんな顔していいのか分からなくて上条当麻から顔を背けた。
そんならしくない神様が愛おしくて上条当麻はそっと隻眼の少女の頭をなでる
「気を遣ってくれたのかよ、ありがとなオティヌス」
「気安いぞ…馬鹿者」
照れ隠しなのか形が崩れた尖がり帽子を必死に直そうとするオティヌス
この神様はきっと帽子なんかよりも自分の乱れた鼓動を整えるのにきっと必死になっているに違いない
一通りラブコメをやったところで、さっきから気になって仕方ない案件に声をかけることにした上条当麻。
「おい、弓箭…さっきからお前のツインテールがドア越しに見え隠れしてて気になって仕方ないから中に入ってくれないか?」
病室のドアをがらりと開けるとそこには左頬を腫らせた茶髪ツインテールの少女、つい数時間前に上条当麻と命のやり取りをした弓箭猟虎が所在なさげに立っていた。
「あああ、えええと、そのお元気ですかね?いいいいいやいやすみません、自分で殺しかけといてなんだそれって話ですよね。すみません、すみませんやっぱりわたくし帰ります!すみません」
「オティヌス、ちょっと出てくるわ…インデックス達を頼む」
「私の身体だと肩は貸せないぞ?立てるのか?」
「ああ、大分血も体に戻って来たみたいだ…いてて、ほら弓箭ここじゃなんだし屋上で話をしようぜ」
「っはわ!ちょちょちょちょっと待ってくださいよ」
動揺する弓箭を無視して彼女の手を取り病室をあとにする二人
「全く殺されかけた相手にあそこまで気を遣うかね…まあそれで私も救われたんではあるのだが」
それを見送り頬をちょっとだけ膨らませるオティヌスであった