「このちびっこ教師!なんとか言いやがれ!」
「うううう上条ちゃん、朝っぱらからあまり大きな声でがならいでください。まだ昨日のお酒が残ってるんですから…先生はちゃんと聞こえてますよー」
マイクの性能を信用していないご老人の如く大声を張り上げ、携帯端末の向こう側の教師に抗議の意を表明する実質年齢9か月の高校2年生。
彼が足りない頭で何を考え何をそんなに怒っているのかというと、
「うっぷ、あー上条ちゃんの気持ちは分かりますけどですね…でもこれはもう決まった事なのですよー」
「うちの後輩たちを男子寮に住まわせるのは仕方ないんだろうさ!上の指示とやらで決められてそれを本人たちも納得づくだって言うんなら今さら俺なんかが嘴挟むような事じゃないんだってこともな!だけどな…」
携帯端末を握る手に力を籠め、それに併せて呼吸を大きく吸い込む。
「ねー!当麻先輩ちょっといいかな?僕の下着ここの棚に入れちゃってもいいのかな?ほら専用にわざわざタンス買うってのも不経済じゃない?ほらここちょっと見て欲しいんだけどさ」
八重桜はヒラヒラと自身の薄桜色の布きれを片手に上条を手招きする
「ウチの家にまで一人放り込むことないんじゃないですかねー!!」
◆
時をさかのぼること30分前、昨日の朝の出掛けに舞殿が破壊したアパート据え付けのおんぼろエレベータが早くも復旧してる事に驚嘆を覚えつつ、それでも閉じ込められるの御免と階段を上る最中、インデックスは舞殿たちに声をかける
「ねえねえほしみやらっこは何階の部屋になるのかな?」
「監視の関係上ひとまとめになっているとかで、5人とも7階の部屋を用意されていると聞いています」
上条の脳裏にある種の疑念がよぎる
(あれ?七階ってそんなに部屋空いてたか?まあその辺の手違いなんてあるわけないよな…きっと卒業生の退寮者が多かったんだろ…)
よぎった疑念は即座に霧散して消える。とはいえそれが現時点で分かったとしても上条に何が出来るというわけではないのだが
「わーそうなんだ!わたしもとうまも同じ七階なんだよ!じゃあ今度私やスフィンクスが遊びにいってもいいかな?」
「ええ構いませんよ、インデックスさんなら大歓迎ですよ」
「わわわ、私も暇なのでいつでも構いません。ああああの携帯の番号交換しませんか?」
「え、ホント!わーい!やったんだよ!スフィンクス!」
スフィンクスをグルグル振り回して喜びを表現するインデックスの無邪気な様を見て水を差すのは悪いとは思ったのだが、インデックスの保護者として上条は一応釘を刺しておく。
「これこれインデックスさんや舞殿たちは忙しいんだぞ、お前がホイホイ行ってたら迷惑になるだろ。こんなんじゃまだまだインデックスは京都に連れていけませんな」
「あ、とうま!そこはかとなく馬鹿にしてるね?私だってお茶漬けに釣られたりなんかしないんだよ!」
「いいやお前はお茶漬けが出てくるまで深夜まで粘るタイプどすー!」
そんなやり取りを眺めている舞殿は笑いながらちょっとだけ怒った真似をして
「もう先輩、わたくしが言ったのは社交辞令なんかじゃないんですからね…インデックスさん本当に気軽に訪ねてください。美味しいケーキでも用意してお待ちしていますよ」
「なんか悪いな舞殿も弓箭も…」
「「いえいえ、わたくしも何かとお世話になるかもしれませんしね」」
見事なハーモニーを見せる舞殿と弓箭。なんだかんだいってこの二人、仲が良いのかもしれない。
そうこうしているうちに七階まで登り切り、上条は自室の前で立ち止まった
「ここがうちの家だ。なにか分からないことがあったり足りないものとかがあれば気軽に訪ねてくれよ、じゃあまたな」
そう言うと上条は自室の鍵を鍵穴に差し込み開錠し、ドアノブをまわすと…ガチャン
予想外れの金属音、上条は虚をつかれさらに…ガチャン。
今度は何もしていないのに扉の奥から金属音。
泥棒かはたまた魔術師の攻撃かと警戒した瞬間、
「あ、おはよ~おかえり~当麻先輩!ケガ大丈夫でした?あ、猟虎は当麻先輩にちゃんと謝ったの?親しき仲にも礼儀ありだよ、大体何がどうしたら入学初日で自分の先輩を拳銃で撃ったりするのさ」
オープンザセサミでアブラケタブラとばかりに上条の部屋の中からあら不思議!扉の名から眠たげな眼をこすりながらタンクトップに細身のジーンズを履いたモデル体型の美少女が、
「「や、や、や、八重 さささささ桜!ああああなたこんなとこで何を…」」
上条の疑問を代弁するかのように舞殿と弓箭がまた見事なハーモニーで口にする。
やはりこの二人仲が良いのかもしれない。
「いや、あの打ち上げの最中、当麻先輩の友人って人から『悪いけど部屋用意できなかったから、ルームシェアで勘弁して欲しいですたい』って連絡入ってさ…だから良いですよって返答したらこの部屋の鍵貰って部屋開けてみたら当麻先輩の部屋だったってわけ、いやー参ったよね。」
「おーけおーけー!ちょっと待ってろ八重。今すぐあのシスコン軍曹追い出してお前の部屋を勝ち取ってやるからな!おら土御門!今日は死ぬにはいい日だよな!今すぐ出てこいや!」
上条は玄関を回れ右して、すぐ隣に居を構える親友の家に押し入ろうとしたらドアに一枚の紙が
「しばらく英国に行ってくるんだにゃー」
上条は無言でその紙をむしり取ると右の拳でぐちゃぐちゃと自身の怨念をねじ込むように握りつぶした。
それでも手はないかと国際電話に掛けるが繋がらず、最終手段として恩師に泣きつき冒頭へ
「でもですよ、上条ちゃんは既にシスターちゃんとも同居してるんですし今さら女の子1人増えても気にならないんじゃないですかー。先生頭が痛くて全然いい解決案がでませんよ、それじゃおやすみですー」
「インデックスと八重じゃ全然違うでしょが!主に胸部装甲が!んなもんと同居生活とかこっちの身が持たんわけですよ!あれ聞いてます先生!あ、クソが切りやがったよあの不良教師」
「あれ、なぜかな?こっちに流れ弾が当たったんだよ…」
今のご時世、女性に聞かせたら一発で社会的地位を失ってしまうようなセクハラトークを美少女達の前で繰り広げる上条当麻。しかしご安心めされい!当の後輩たちはこの有様。
「不公平です…やってられません…不公平です…やってられません…」
「先輩と後輩が同居…なんだこの少女漫画世界…やっぱリア充違います…甘くて苦いマーマレイドです…」
上条家の床にへたり込んで呪詛をぶつぶつ唱える舞殿と弓箭
「ほらほらそういうの嫌われるよ二人とも。さっさと家の荷解きやってきなって。それが終わったら海月やフレンダも呼んで一緒にお蕎麦食べようよ」
男前の美少女はそんな腐りきった床敷きマット2枚を追いちらし、いまだに携帯端末に怒鳴ってる上条の手から端末を奪い取る。
「もう僕なら大丈夫ですから…当麻先輩もお疲れでしょうしそこに座って休んでてくださいよ。あ、コーヒーでも煎れましょうか?」
「大丈夫って…お前は嫌じゃないのかよ」
「何がですか?」
桜色の髪をした少女は大人っぽい雰囲気をどこえやら可愛く小首をかしげる
「いや何がって男と同居するのがだよ」
「ふふふ、いやー当麻先輩に襲う度胸はなさそうですし…それに胸が大きいって褒めてくれたしまあいいかなって。それより砂糖いくついれます?1つ?了解!あ、インデックスちゃんも手伝って!」
そう言いのこし彼女はさっさと台所に引っ込んでいく、そして残された童貞少年上条当麻
「オティヌス…俺が気にし過ぎなのか?それとも八重が変わってるのか?智慧の女神は答えてくれるか?」
「おい、人間。胸がデカい方が好みなのか」
駄目だこりゃであった