とある魔術の留年生(仮)   作:ブッシュ

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つまらないものですが そのよん

「で、あんたこんなとこで何してんのよ?」

 

良い雰囲気を邪魔するのは野暮天だと魔神オティヌスに説かれ、しばらく様子を見守っていたがしびれをきらして至極当然の疑問を口にする御坂。

食蜂と同じやり取りしたときとは意味が違う。

 

「何ってそりゃ買い物に決まってるじゃないですか、御坂さん。他にここで何をすればいいって言うんだよ。まったく聡明なお前らしくもない質問じゃないですかね~」

「へえー、あんたがこのダイヤノイド下層階でお買い物ねえ。あのあんたが」

 

ダウトである。

なぜなら貧乏男子学生、ましてや特売価格の卵パックを買うのに一切の労を惜しまないあの上条当麻がブランド品を買うなんて不自然極まりない。

御坂は目当ての獲物の手負いを確認した肉食獣のように凶悪に笑い、口の中の氷をガリッと砕き質問を続ける。

 

「ああそうなんだ、そういうこともあるかもしれないわね。あんたが高級ブランド品に興味あるなんて知らなかったわ」

「そそそ、そうなんですよ御坂さん。こう見えてまだまだ謎が男なんでございますよ、上条さんは。一朝一夕で分かったように思われちゃ困るってもんですよ」

「ちょっと~御坂さんったらそんな突然尋問力発揮してどうしたっていうのよ?そんな怖い顔してたら渡せる指輪も渡せなくなっちゃうんだゾ?」

「ゆ、指輪?何の話だ」

「なんでもにゃい!なんでもにゃいから!こら食蜂!あんた話をかき混ぜるんじゃないわよ」

「はーい、怖い怖い。ねえ上条さん?あなたは今何が一番欲しいかしら?ほらほらとにかくこっちに座ってじっくり私に聞かせて欲しいんだゾ☆」

 

そういうと食蜂は店内で立ちっぱなしの上条の腕を取り、御坂と食蜂の座るテーブル。いや正しくは自分の隣の席に引っ張り込んだ。

自分の質問の調子を崩され、拍子抜けした顔を一瞬したかと思うと子供のように頬を膨らませる。

 

「あーはいはい、もういいわ。なんだか私が馬鹿みたいじゃない。食べかけで悪いけどもし良かったらポテトフライ食べる?この店は食蜂おススメで無農薬無除草剤の有機栽培野菜と天然塩使ってんだって?私には違いわかんないけど」

「御坂さんは添加物てんこ盛りのジャンクフード大好きですもんねえ。まあ何食べるかなんて所詮好みの問題だけどお。あ、上条さん良かったらこのアイスティーどうぞ。まだ口を付けてないから残念だけど間接キッスにはなったりしないわあ」

「ぶふっ!食蜂あんた何言ってんのよ!そ、そんなか、間接き、キスだなんて!あんたにはその羞恥心ってものが無いのかしら!」

「あらあらあら?御坂さんったらほんとお子ちゃまなんだゾ?間接キスくらいで照れちゃって」

 

お嬢様二人がきゃいきゃいと口論してる間に頂戴した品をありがたく食す上条とオティヌス。

一時期は生の豚肉を齧るような食生活だった上条家メンバーにとってハイクラスな喫茶店の軽食なんて滅多に食べれるものではないので、食べかけだろうとなんだろうと関係ないのだ。

 

「フム…やはり厳選されたフライドポテトは違うな。おい人間、店にモルトビネガーがないか聞いてくれないだろうか?」

「オティヌス、せっかくカリカリホクホクに揚げて貰ってる品にお酢をぶっかけるのはどうかと思うんだ…インデックスもお前もあの食い方大好きだけどさぁ…あ、このお茶も美味しい」

「いや別に好きって訳じゃないし物凄く美味しいわけじゃないんだ…なんというか落ち着くというか、かけないとそわそわするというか」

「別に美味しくはないのかよ…ケチャップでいいじゃん」

「ああ別に美味しいわけじゃない。米酢なんて目じゃないくらい強烈な酸味だ、ぶっちゃけ微妙な味もなにもあったもんじゃない。魚のフライなんかにもよく使うが南蛮漬みたいな感覚で食べたら痛い目を見るぞ」

 

西・北欧諸国で食される普遍的な食文化を一通り腐したら、上条は隣でしなだれかかるキラキラ中学生の質問が急に気になってくる。それ以上に腕に擦り付けられる双丘の柔らかさが気になって仕方ない。

 

「お、お壌せう?あなた様の主張強めの御胸がわたくしめの腕にですね…」

「あらあ?上条さんも御坂さんと同じで初心なんだからあ。わたしたちはキスした仲なんだしおっぱいぐらい気にしなくたっていいんだゾ?」

「あ゛あ゛あ゛あ゛?いまんなんつった、食蜂?その返答次第ではあんたの身体が電流イライラ棒と化すから慎重に言葉を選びなさい」

「え?嘘だろおい!過去の自分何やってんだよ!あーくそ今日ほど記憶失ったことを悔しく思ったのは初めてだぞ!上条さんは初めてのチューの記憶すら手に入れられないって言うんですかね??あー不幸だー!」

 

食蜂が超ド級の爆弾が投下すると同時に放たれた紫電が小洒落たインテリアで彩られた店内をクモの巣のように駆け回り、鬼神のような形相で食蜂に事の正否を問いただす御坂。

当事者の一人である上条は上条で自分の初チューの体験の記憶のロストに頭を抱えている。

 

「さーて嘘かしら?本当かしら?どちらにしたって私の心理掌握があれば事の正否なんて無関係に捻じ曲げることが出来るんだゾ?……なんちゃってねえ」

「しょ、食蜂。ほーら私はもう怒ってないから本当の事を言うのよ?いやいや私全然怒ってないし起こる理由もないしそもそもアンタとあの馬鹿がきききき、キスしようが私には全然全くこれっぽちも関わり合いがないことじゃない?だから安心して欲しいの?ほら恥ずかしがらずに真実を言ってごらんなさい!私にだけでも」

「御坂さん…あれだけ盛大に電撃飛ばしておいてその言い訳は苦しいと思うわあ?」

「そう思うならさっさと本当のこと言いなさいよ!あああもう羨ましいったらありゃしない‼ごほごほっ!…うー喉痛い」

 

電撃の次は店内中に響き渡りそうな大ボリュームの魂の叫び。

しかし精神に身体が耐え切れなかったのだろうか?電撃姫の喉は絞り出した魂によって嗄れてしまい、渇いた咳を誘発させるばかり。

それに見かねた上条当麻は御坂に

 

「御坂おまえいくらなんでもはしゃぎすぎだぞ?ほらちょっとこれ飲んで落ち着け?」

「ううう、ありがとう。うーん美味しいアイスティーね、私もこの茶葉使ってみようかしら…って、うにゃにゃ!?あんたこのアイスティーどっから取り出したの?食蜂の?」

「食蜂が誰かはよく分からないがそこのキラキラ中学生が俺に飲んでいいって渡してくれたアイスティーだけど?」

「あーやっぱり駄目みたいなのねえ。御坂さん、そのアイスティー上条さんの飲みかけよ?」

「ふぇ?ああああああああああああああああああああああああ」

「おい御坂?御坂?大丈夫か?おい御坂?」

「放っておきなさあい、どうせちょっとしたら正気を取り戻すから」

 

食蜂の言葉が耳を通り脳が認識するまでの数瞬の空白の後に、ゆでだこのように肌を紅潮させた御坂美琴は奇声の後にぶっ壊れた。

 

 

 

 

それから数分後、うわごとのように同じ言葉を繰り返す茶髪の短髪少女

新しく頼んだコーヒーに砂糖もミルクも入れてないのにさっきからスプーンで機械的にかき混ぜている様は一種の迫力すら醸し出していた。

 

「間接キス…間接キス…間接キス…うへへへ」

「薄気味悪いわあ、ほら御坂さんしっかりするんだゾ?今のあなた、とんでもなく乙女力の低い顔してるわよお?」

「おい御坂、本当に大丈夫なのか?知り合いの医者に見せた方が…」

「そんなことしたら本当にこの子立ち直れなくなっちゃうからやめてあげて欲しいんだゾ?」

 

いくらなんでも鈍感すぎないか?このツンツン頭と想い人の鈍さを再度噛みしめると共に学友にして天敵を揺さぶってピンク空間から回帰させようとするキラキラ中学生。

そんな彼女に上条は唐突に

 

「手帳」

「なになに?突然どうしたのかしらあ?」

「いやさっきお前聞いたじゃないか、今何が欲しいかって…その答え」

「あらあ?この科学の街で随分とクラシックなものを。良ければ理由を聞かせてもらってもいいかしらあ?」

 

PCや携帯端末でスケジュール管理が出来る現在では手帳の需要は著しく下がっている。

ましてやあの上条当麻が敢えて欲しい物に上げるとは食蜂も全く想定していなかった。

 

「ほら、いつか言ったと思うんだけど俺って記憶ないじゃないか?俺にはもうわからないけどそれで迷惑かけた人や悲しませちゃった人がたくさんいると思うんだ。それに医者からも言われたんだけど今後良くなるのかのかそれとも悪くなるのか分からないって…だから毎日自分で書き留めておきたいんだよ。家族のこと友達の事、御坂やお前の事。それさえあったら今度忘れちゃっても思い出せるだろ?お前らとの大事な思い出を…」

 

この少年はいつもこうなのだ。

自分の事より他人のため。自分の不幸より他人の悲劇に涙を流して、その悲劇に抗う為に血を流す。

なんて損な生き方なのだろうか…その生き方はとても尊いのかもしれないが、あまりにも悲しすぎる。

だからといって彼はこの生き方を曲げることは決してないのだろう。

だから食蜂はこの少年の生き方を否定させない為に寄り添う、力を貸すと決めている。彼にだってそれくらいの幸福はあっていいはずなのだ。

だから彼女は彼にこう伝える。何度忘れられても。

 

「馬鹿ねえ…そんなことがあってもきっと私が思い出させてあげるわよ…絶対の絶対よ?」

「そっか、ありがとな…」

 

不幸な少年はそのちょっとした幸福に微笑んだ。

 

「上条さん、この後暇かしら?折角会えたんだし私と御坂さんとちょっとこの後ショッピングでもどう?その時にとびっきりの手帳を選びましょうよ、私からの進級お祝いのプレゼントにさせて欲しい?ほら御坂さんいい加減呆けてないでしっかりするのよ!」

 

いい加減にしろとばかりに御坂の頭をはたいて意識を覚醒さる食蜂

心理掌握にしてはなんとも原始的な気付け方法だったが効果は抜群だったようで御坂は現実世界にカムバックしてきた。

 

「ふえ?アレ?ここどこかしら?黒子や佐天さんや初春と買い物で」

「ほらほら、今から上条さんの進級お祝い買いに行くわよ?」

「いや流石に年下の女の子からそんなお祝いなんて貰えねえよ、上条さんのプライドがですねえ」

「そんなくだらないプライドは今日はそのへんに置いていきなさい。さあ行くわよ」

 

その時であった。喫茶店の扉から桜色の髪に白いニットとデニムのパンツを履いたモデル体型の少女が入ってきて店内をくまなく見渡している。何かを探しているようであった。

そして何かに気付いたのか上条たちのテーブルに歩み寄る。

 

「当麻先輩、こんなとこにいたんですね?あいつらの買い物ももうすぐ終わりそうなんで迎えに来ました。やっぱり女の子の買い物に付き合うのは退屈でしたよね?あれ当麻先輩口元にケチャップが」

 

突然現れて上条当麻と親しげに話しかける長身の少女に御坂は

 

「あんた一体何者かしら?」

「御坂、それについては俺はあとでじっくり詳しく話そうと思うからこの場はですね…」

「あーあ、もうだらしないんだから。ほら、じっとしておいてください」

 

八重桜は上条の口元にゆっくり顔を近づけて、ケチャップを舐めとる

 

「「ふぇ?ああああああああああああああああああああああああ」」

「これで良し!あれ、そこのお二人は泡吹いて突然どうしたんですか?」

 

今度は御坂と食蜂が揃ってぶっ倒れた。

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