とある魔術の留年生(仮)   作:ブッシュ

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ガールズミーツガールズ

「痛たたた…僕が何したって言うんだい?そりゃちょっと人前で大胆だったかもしれないけど、なにもゲンコツすることないと思うんだ?」

 

名前の通り桜色の少女は大人びた容姿には似つかわしくもなく、親から手痛い躾を見舞われた幼子のように目尻に雫を溜め、すらりとのびた両の手で形のいい頭を天頂を撫でさすっていた。

 

「八重、お前は馬鹿ですか?人前だからとか人前じゃないからとかそういう問題じゃねーから!何をトチ狂ってやがるんですかね?お父さん、君はそういう子じゃないと思ってましたよ?」

 

両の腕を組み、体重をかければその分沈み込んでしまいそうなクッション素材のイスにふんぞり返って怒り心頭の上条パパ。

外見年齢13~14歳のシスターと美少女フィギュアと同棲生活してる奴が倫理観を語る滑稽さは横に置いて、絶賛お説教中である。

 

「ジョークじゃないですか、ジョーク!だいたいこんなの海外じゃ当たり前ですよ?」

「嘘つくんじゃございません!上条さんは去年一年でいろんな国どころか宇宙空間まで行ったことあるけど、そんな嬉し恥ずかしな慣習の文化圏見た事ねーぞ?」

「なんだい当麻先輩、嬉しかったんならもう一回してあげようか?」

「反省してねーならもう一発いっとくか?」

「嘘!ごめんなさいです!僕が悪かったよ」

 

いたずらっぽい八重桜の返答に右の拳を振り上げ応答すると、藪蛇と思ったのか平身低頭する八重。

怒られているときにおふざけはよろしくない。

 

「で、あんたそいつはいったい誰なのよ?」

「そうねえ、お説教の前に紹介が先じゃないかしら」

 

喫茶店を出ようとした矢先のトラブルで元の席にUターンする羽目になった事に少々、というかだいぶ頭にキてるであろうお嬢様が二人。

二人とも自覚は無いのであろうがトントンと机を人差し指で指で小突いて、時間を経るごとそれがワルツからロッキンへとテンポを加速させていた。

 

「ああええと、この子はだな…」

「年上に自己紹介して欲しかったら自分からが礼儀じゃないのかな?レベル5のお嬢様方」

 

上条の言葉を遮ると、先刻まで柔和で人懐こかった八重の表情と声色がまるで剃刀のように鋭く冷たいモノへと変貌する。

いやこれこそが暗部で今日この時まで生きてきた八重桜の真の顔なのかもしれない。

 

「ご高名な超電磁砲と心理掌握、勿論僕みたいな世間知らずですら君ら二人の事はかねがね伺ってはいるけどそれはそれ。もしかして常盤台はそんな当たり前の礼節も教えていないのかい?それとも非常識なのはあんたたちだけ?」

「おい、ちょっと八重さん?いきなりお前どうしちまったんですかねえ!」

 

怜悧な美貌とある意味マッチした相手を火傷させてしまうほど冷え切った態度に常盤台の電撃姫と女王は一つ小さく息を吐き出すと

 

「悪かったわね…ってそうじゃなくて…ごめんなさい。前も似たような事で年上に怒られたことあったっけ。執着してないつもりだったけどやっぱりどこかでレベル5ってブランドに奢ってる気持ちがあったのかもしれませんね。私の名前は御坂、御坂美琴」

「うーん私は上条さん以外の人間に敬意なんて払うつもりはないけどお~でもわざわざ相手に不快力を与えるのも本意ではないしい。そうねえ降参ってことで許してもらえるかしらあ?私は食蜂操祈。あなたが私と上条さんにとって有害な人間になったりしない事を祈るわあ」

 

伏し目がちに自分の内に存在するかもしれない慢心への戒めと謝罪を口にし頭を下げる御坂と両手を軽く上げ自分の非礼を認めつつも傲岸な態度を堅持する食蜂。

両者のスタンスに違いはあるものの謝罪と自己紹介済ませた。

 

「で、八重?この二人は謝ったわけなんだが…」

「そうですねえ色々言いたいことはありますが今日のところはこの辺で許してやるとしますか」

 

そう言うと勝者の威厳を見せてやると言わんばかりに形の良い胸をこれでもかとのけぞらせる桜色の少女。

上条は湾曲しきった少女の頭を軽くはたくと少女は態勢を後ろへ崩し、見麗しい女子高生が世間様にお見せしてはいけないような格好になってしまう。

 

「いつつ…当麻先輩!叩くなら叩くって言ってくれなきゃ困るよ。殴られる方にも準備ってものが…」

「あのなあ八重、年上だって理由で相手の襟を正させたんならお前だって年上としての懐を見せてやってもいいんじゃないか?御坂たちだってちゃんとお前に頭下げただろ?」

「嫌です」

 

八重は大人びた容姿に似つかわしくもなく拗ねた子供のように口をとがらせ、顔をあさっての方向に向け注文したアイスコーヒーを一気に飲み干す

 

 

「おい八重!」

「嫌だったら嫌です!」

「無駄ですよ~上条さん」

 

蜂蜜色の少女は掲げていた両手をゆるりとおろし、薔薇のつぼみのような唇で閉じられた口を半月に裂いた。

 

「うーんそうよねえ。私だって怒っちゃうかもしれないわあ。自分の事ならともかく上条さんに『あんた』なんていうような失礼力、というより親近力強めの娘がいたら」

「ブフゥゥゥゥゥゥゥ!げほっげほっ!いやそれ、その違っ!」

 

八重桜は飲んでいたアイスコーヒーを盛大に吹き出し、コーヒーやらなんやら色んな液体が顔から出て、言葉が言葉になっていない。なんかもう台無しであった。

そう八重桜は何も自己紹介の順序や長幼の序の礼節なんて事に怒っているわけではない。そんなことはどうでもいい。いや、そもそも怒ってすらいなかった。

つまりはもっと単純で原始的な感情、嫉妬である。

 

「図星って事で良かったみたいねえ」

「食蜂、あんたまた能力で?人の心を」

「何を言ってるのかしらあ…こんなこと心理掌握に頼るような事じゃないわ。私にとっては身近過ぎて推察するまでもない事よ」

「…どういうことよ?」

 

御坂の言葉をさらりと躱してちょっとだけ悲しそうな顔をしたかと思うと、食蜂は品の良いレースのハンカチをいまだに咳の止まらない八重に差し出す。

 

「ほらあ、これを使いなさい。エスコートするレディーの顔がそんなだと恥をかくのは上条さんなんだゾ?それと御坂さんは別に上条さんとはまだ何でもないわ、保証する。そうよ何かあって溜まるもんですか!このバーバリアンが口調が荒っぽいのはただの性分だっての」

「そんな僕は別にその…」

「ハイハイ、こっちはもうツンデレにはお腹いっぱいなんだからあ」

 

赤面しながら否定の言葉を口にしても全く説得力がないのだと、何故ツンデレという生き物は理解しないのだろうか?半ばあきれた心境で新しい同じ穴のムジナいや恋敵をぼんやりと観察する。

 

「なあ御坂、結局これはどういう事なんですかね?」

「あ、あんたはそんなの知らなくていいんだから!それよりも八重さん?だっけ?あんたがさっさと紹介してくれないから悪いのよ!ていうか食蜂!バーバリアンってあたしのことよね…やっぱ一回殺すわ!あんただけは!」

 

こっちはこっちで本当にこいつらはもう…。

食蜂は自分に心理掌握を掛けてしまいたくなる欲望を抑え込み頭を抱えているとやっと落ち着いた八重が

 

「うん、もう大丈夫ありがとう食蜂さん。ハンカチは洗って返すね」

「良いわよ、別に。それにあなたが年上なんだから呼び捨てで構わないわ」

「そう?操祈ありがとね」

「ちょっと!そっちの名前で呼んでいいなんて言ってないわよお!」

「僕は八重桜。高校一年生で当麻先輩の下宿先に居候してるんだ。操祈も今度良かったら遊びにおいでよ…あれどうしちゃったの?ねえ?」

 

手元にリモコンが無かったのは幸いだった、反射的に心理掌握を使ってしまっていたかもしれない。

食蜂の胡乱な意識と薄れゆく思考力は八重桜の言葉をリフレインさせていた。

強すぎる衝撃はいつだって待ったなしで自分へやってくる。

 

「ご、ゴールド…ゆ、友人として言わせて貰いますけど上条先輩はそんなサバ缶食べないと思いますよ」

「弓箭も上条も結局分かってないって訳よ!サバ缶の可能性をもっと信じる訳よ!だから嫌っていうほどというか蕁麻疹が出るまで上条に食べさせる!」

「せンぱイに迷惑かけンなよ、この青魚女。サバ缶シチューとか作ったらせっかく買った紅茶の臭イが台無しになる」

「まさか弓箭との胸部装甲戦力差がこんなにもあるなんて…一緒に服選びなんてするんじゃなかったです…先輩はやっぱり貧乳はお嫌いなのでしょうか?」

 

しかも群れでやってくる。

 

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