「舞殿星見…どうしてここに…それにその恰好は?」
スクラップと化したエレベーターからなんとか這い出る上条、土御門の前には上条たちの通う高校の女子用制服を着たおかっぱ髪のどこにでもいそうな少女、かつて去年のクリスマスイブに上条たちと死闘を演じたレベル4念動能力者・舞殿星見が佇んでいた。
「それはこっちの台詞ですよ、先輩。ほんとはもっと劇的な再会を予定していたのに先輩が待てど暮らせど来ないから、滞空回線で探ってみたらこんなことになっているなんて」
「ちょっと待て!一方通行の奴はお前らに滞空回線の使用権限まで与えているのかにゃー?」
「まあ検索可能範囲はクラスメイトに関する情報のみですが…同じ学び舎に通う友同士を監視し合えっていうんですかね?本当に悪趣味極まりない。というか土御門先輩や貝積の懐刀、それに学校側からは先輩へ今回の件について何も知らせてはいないんですか?」
「詳しい事は学校側も知らないし、知らない方が新鮮な驚きがあると思って俺からもカミやん何も伝えてないぜい。雲川についてはこの計画に最後まで反対してたから恐らくどこぞでむくれでもしてんじゃないかにゃー」
最大の当事者であるはずの上条当麻は頭越しに会話されることに居心地悪さを感じ、多少無理やりにでも会話に割り込むことにした。
「舞殿、すまないんだがこっちは全く何も分からないんだ。そのあたりのことを全部端折らず俺に教えてくれないか?」
「あ、すいません先輩。でもこれ結構長くなるし時間もちょっとまずいんで歩きながら説明させて貰うって事じゃ駄目ですかね?」
舞殿は自身の左手に巻いた洒落っ気を一切廃し、おおよそ女子高生が好むとは思えないデザインのデジタル腕時計にわずかに視線を向け、上条達にそう促した
「カミやん。申し訳ないが俺は舞殿が派手にやらかしてくれた尻拭いをしなきゃならないから、今日は休むって小萌先生に伝えて置いてほしいんだにゃー」
「土御門先輩は私の尻よりもまず自分のくせー尻を拭きたいんじゃないですかね?」
「土御門……おまえ」
「いやいや高校生にもなってお漏らししちゃうなんかありえないんだぜい我慢できずにしたいからしちゃうってそれじゃ俺がまるで犬みたいじゃないですかそのあたりのことはカミやんや舞殿にはきちんと分かってもらわなきゃ困るっていうか誤った情報を安易に信じて欲しくないというか…」
「いいから早く行って来いよ!」
上条の言葉を聞き終わらぬうちに土御門元春は脱兎のごとくいずこかへ駈け出した。
事の真実は闇の中、なぜなら土御門元春は裏の世界を駆け回る情報戦のプロなのだから。
「はあ、せっかくの日になんか味噌付いちゃいました、最悪。それじゃあ行きましょうか先輩」
「年頃の女の子が下ネタとかやめなさいってば」
滞空回線も届かぬ統括理事クラスが愛用する高級マンションの一室。
現在統括理事会で最大派閥となった貝積継敏のブレインを務める天才少女、雲川芹亜が保有拠点の一つ。
そしてその部屋の主は高級ソファーの上で不貞寝していた。
「おい愚姉。毎日毎日そうやって寝転がってはジャンクフード食い散らかしていい身分だな」
「ああもう何もやる気が出ないわけだけど。」
「くそ!Gめ!そうやって胸部の凶器を見せびらかしてからに」
身に着けているメイド服はミニスカートに蛍光カラーのコルセット、そしてウサギの形をした名札をスカートに貼り付けた職業メイドが見たら泡吹いて失神しそうなイカれた逸品で身を装う少女、雲川鞠亜はいくら片づけても定期的に夢の島と化す姉の部屋と姉に備わる規格外のそれに苛立ちを隠せず悪態がこぼれるそれをよそに姉、雲川芹亜はまたごろりとソファーに身を沈め身を横になり、手直にあったスナック菓子の袋を壁に投げつけた。
「ああもう!統括理事会のミスをあの少年におっかぶせるなんてありえないわけだけど。暗部だのなんだのの処理は私たちの仕事なのにそれなのに……だいたいあの少年に年頃の少女たち任せたらどうなるかなんて分かりきってるだろうが!あの若白髪!」
「おいおい愚姉、怠けるだけならまだしもこれ以上この廃墟の環境悪化を促すだけなら余所に行ってくれないだろうか?」
当代きっての天才、心理分析のエキスパートたる少女といえども自身の恋の悩みはままならず…さりとて優秀すぎるその頭脳は今後の上条当麻の行く末を正確に予測していた