とある魔術の留年生(仮)   作:ブッシュ

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美味い話のネタばらし そのに

結局あのあと学生寮でのエレベータートラブルが思っていた以上に時間食ってこのままいくと普通に遅刻してしまう、初日から遅刻とかありえません。という舞殿の至極まっとうな判断により急遽徒歩による通学を断念し、理由は分からないが異様にバス登校を抵抗する上条をスクールバスに無理やり押し込んだ。

 

 

「いやしかし、この高校に入ってスクールバスなんて初めて乗ったぜ」

「学校がわざわざ運営してる交通機関を無視するほうがどうかしてるんですよ、先輩。というかさっきの学生寮からうちの高校まで結構な距離ありますよね?毎日歩いてるんですか?先輩ひょっとして阿闍梨とか目指してるんですか?」

「あらま、いやだわこのブルジョワ思考!ちょっとここ見てごらんなさいよこのバス料金の強気設定!こんなもん毎日乗ったらねーうちの食卓からオカズが丸ごと消えちゃうイリュージョンなんだってば!そりゃクロムウェルも革命起こすってもんよ!」

 

 

上条当麻の心に巣食う大阪のおばちゃんが召喚され舞殿に喰ってかかり!バス運賃の話からワークマンシャツのコスパの良さに話題は移り今は味と値段と食後の満足感の黄金比を備えるお肉は何かについて熱弁を振るっている。

そもそも運転手がいるのにバスの運賃ぼったくりじゃねーか!と騒ぐのってどうなのよ?と辟易した舞殿は話題を変えることにした。

 

 

「それでさきほどの話に戻りますが、よろしいですか?」

「だからね!今最高にホットなのは合挽きミンチになってくるじゃない!ハンバーグにするもよし!白米に混ぜて炒めるもよし!もう調理がめんどうならコンソメスープにブチこん・・・・」

「い・い・で・す・ね!!!」

「はい……」

 

 

おばちゃんには大阪天王寺にお帰りいただくことに成功した舞殿はコホンと咳払いし

上条の方に向き直り居住まいを正し語り出した。

 

「今日から1年特別クラスで先輩のクラスメイト兼後輩になります舞殿星見です。何卒よろしくお願いします」

「はあ?」

「それにしてもうちの高校っていまどき紺のセーラー服ですか…マニアックというかなんというか、どうですかね?似合いますかね?先輩……先輩?」

 

 

唐突に挨拶が終わったかと思うと舞殿星見は胸元の白いリボンを人差し指で弄り上条に感想を求めてくる。

先ほど会話の大脱線事故を引き起こした迷ドライバー上条当麻は、自分の事を棚に上げて会話の急速旋回を試みた。

 

 

「可愛いですよ!うん可愛い!可愛いけどもですよ!舞殿さん、ちゃんとやりましょうよ。お願いしますよ」

「ぶう!もうちょっとちゃんと褒めてくれても罰は当たらないと思いますよ。ほれほれ」

「上条さんはそんなどこぞのバカップルみたいな事はやりませんのことよ!」

「ふえっ!カップルだなんてまだそのゴニョゴニョ…」

 

 

みるみる間に小柄なおかっぱ少女は顔を紅潮させ、人差し指同士をコネコネさせだしたが、こういう時鈍感男はほんと強い。上条はそもそもの疑問を投げかける。

 

 

「お前って退院後は警備員(アンチスキル)に拘束されてその……」

「そうですね。逮捕されて略式裁判後に対能力収容施設にぶち込まれてました」

 

本人があまりにもあっけらかんと昨日の晩御飯の内容でも教えるように語るので、上条は呆気にとられるが気を取り直して質問を続ける。

 

 

「だとしたら何故ここにいるんだ?それもうちの制服を着て、つか舞殿星見って偽名だよな。なんて呼べばいいのよ?お前の事…」

「ああそうですよね。いやまずりましたねー。めんどくさい説明は他の誰かがやってると思って制服の感想を聞きだすシュミレーションしかしていない…」

「申し訳ないがめんどくさい部分も端折らず最初から教えてくれないか?」

「さっきも言いましたがだいぶ長くなりますし、私も実はすべてを知っているわけではないのでご期待に添えるかどうかは保証しかねます。それに面白い話じゃありませんよ?」

「それで構わない」

 

 

舞殿はフウと大きく溜め息をつき、もう一度居住まいを正して努めて明るく口を開いた。

 

 

「先輩がそうおっしゃるなら仕方ありませんね。まずは始まりの始まりから…先輩はオペレーション・手錠(ハンドカフス)はご存じですよね?今代統括理事長様が肝煎りで始めた最大の目玉公約です。」

「ああ…たしか学園都市内で超法規的活動をしていたあるいは許されていた組織、個人の拘束とそれらへの裁判のもとしかるべき処置を与えるってものだっけか?」

「ピンポーン!ご名答です、流石ですね先輩」

 

 

舞殿はクイズ番組の陽気な帽子のはてなマークみたいに人差し指を立てニカリと笑顔を作った。

 

 

「茶化すなってば……それがどうしたって言うんだ?学園都市のトップである一方通行自身が率先し拘束され刑に服することで周囲に範を示し、縁故や利権を取り払って犯罪組織を裁くって計画に、なにか問題でもあったっていうのよ?」

「いいえ何も。警備員(アンチスキル)必死の貢献もあり計画は滞りなく進捗……現在学園都市に存在しなんらかの犯罪行為を行った暗部組織のメンバー89%までもがめでたく檻の中です。めでたしめでたし」

「アハハハハまったく大したもんですよ。先代統括理事長アレイスターが50年掛けて出来なかったことをあの怪物は僅か3カ月で為してしまうなんて」

 

「舞殿…」

 

 

乾いた笑いとともに激しく両手を打ち合せ鳴らす舞殿は上条を無視しさらに語る

 

 

「おかしいと思いませんか先輩?そうですよ、アレイスターは暗部の解体を出来なかったんじゃない!敢えてやらなかった!そしてやはりそれはやるべきではなかった!……これを見てください」

 

 

舞殿が上条に渡したのは膨大な桁数の数字やグラフ、そして上条すら聞いたことがある学園都市内企業や研究施設の名が所狭しと記載された資料が綴じられたファイル

 

 

「収容所にいる馬鹿がどこでどうやって手に入れたのか分かりませんが持っていました。ここわずか数ヶ月、目に見えるレベルで企業は業績、研究所は特許所得率が下げています。理由は簡単です。もう私たちがいないから……」

「舞殿は暗部を必要悪だっていうのか……」

「そこまで自惚れちゃいませんよ。私や根丘は正真正銘のクズです。泣きわめく哀れな少女を殺しました。家族の為にお金が必要だからと言って研究成果を外に持って行こうとした研究員を殺しました。根丘の活動に敵対する何の罪もない人を沢山沢山殺しました。そして先輩も殺そうとしました!だから…だから」

 

 

上条は舞殿に掛けるべき言葉すら持たない自分を呪った。異能なんかじゃなく目の前の少女の悲しみを消して涙を止める力を持たない自分を憎んだ。

 

「それでもお前は変わろうとしたよ。罪を償って新しい自分になろうと努力したじゃないか…」

 

 

ようやく言葉を絞り出した言葉はあまりも寒々しくあまりに意味を持たなかった。

 

「そうですね。私もそうなれると信じていましたよ。でも……」

 

 

「学園統括理事会はその機会すら奪った!自分たちに不都合だから暗部を消し!今度は必要だから私たちへの救済だとばかりに甘言を弄し手錠を首輪に変えて光の下に放り出した!」

 

「知っていましたか?先輩。特別クラスのクラスメイトは恐らく拘束以前は私と同等かそれ以上の成果いや惨劇を起こした暗部メンバーです。そして先輩はその管理役…だって上条当麻…あなたはあの一方通行の切り札だから」

 

「あなたというヒーロー共に過ごす素晴らしい学校生活。きっとそれは輝かしくて美しいものに違いない!それを守るために私たちはきっと力を振るうことに違和感を覚えなくなる!その変遷のデータ・経験をもとに、統括理事会は捕らえた暗部メンバーの懐柔および再戦力化までの最適解を導きだします、今回の茶番劇はその雛型」

 

「計画名は首輪(リード)、プロジェクト・リード!首輪だって!ああおかしい」

 

もう語るべきものはないとバスは言うように終点であるとある高校の前にバスは到着し停まった。

 

「着きましたね…さあ行きましょう先輩、私たちの高校(檻)に」

「ああそういえば私の名前をまだ答えていませんでしたね…私の名前は暗部構成員・舞殿星見です。今後ともよろしくですよ、先輩」

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