とある魔術の留年生(仮)   作:ブッシュ

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時にはラブコメでも転がして 

舞殿星見を第三視聴覚室まで送り届け、ポケットの携帯端末で時間を確認するとHR開始の15分前。

上条は足早に二年生のフロアまで駆け降り、事前に確認しておいた学校以外ではなかなかお目にかかれないが2-7と書かれた名札板を吊るした教室の扉を開けた。

それと同時に教室にいた大勢のクラスメイトの目が一瞬全てこちらを向いたことで、ちょっとした恐怖を覚えつつも知り合いに挨拶しながら自分の席を探す。

 

 

「こっちこっち!遅いわよ上条、いったいどこで貴様は油を売っていたというのかしら!」

 

 

マジメという枠に頑固とエッセンスに巨乳を溶かし込んで生まれたような少女、吹寄制理が大きく手招きをしてこちらに呼びかける。

 

「おはよう、吹寄。」

「『おはよう。吹寄。』じゃないわよ。新学期早々に遅刻寸前って貴様まだ去年のこと懲りてないのかしら?それとも頭が定期的に色んな事忘れちゃうのかしら?」

「それは本当に耳とか心に痛いから!あれ?上条さんのトラウマの扱いがどんどん軽くなっていくとかおかしくない?ねえおかしくない?」

「なーにイライラしているのよ。カルシウムとビタミンC足りてないんじゃないの?」

 

言うが早いか吹寄はいそいそとポケットや鞄の中からサプリメントの入った瓶やらケースやらを机の上に並べだした。

上条はなんだかこいつ色々バステにかかってやたら血圧パラの高いジジイみたいだな。って思いながら黙ってその様を眺めていると

 

「ぐわっ!テアニンのサプリが切れてる!上条お茶葉とか持ってない?まあ今日はありもので済ますか。ほら上条いいものあげるから口空けなさい!」

「いやいやいいって栄養足りてるし、だいたいお前恥ずかしくないのかよ!むぐっ」

 

 

問答無用!沈黙は金と言わんばかりに片手いっぱいの錠剤を吹寄の手づから口に放り込まれた。

バリボリゴリとディスポーザーのように口内いっぱいのものを磨り潰し、噛み砕く上条当麻の様を見て

「やっぱちょっと恥ずかしかったかも…」

などと乙女チックな事をぬかしやがる吹寄。

1人は咀嚼マシーン、1人は少女漫画空間この地獄のようなワンシーンに割り込む猛者が一人

 

 

「おはよう!お久しぶり!また一年よろしくね!んでんで朝からお熱いよね、よっ熟年夫婦!」

 

 

今時こんなベタベタな事言う奴いるんだろうか?いやこれがいるんです。

1年の頃からのクラスメイトで、ショートウルフにツンツン髪、ちょっと太めの赤いフレーム眼鏡が印象的な少女・吉野葛(よしの かずら)であった

 

 

「な、何を馬鹿な事言ってるのかしら…葛。はっ!上条の馬鹿が罹患した?」

「ふっきー…ツンデレ路線でいくのはやめた方がいいと思うよ?結局それ自分が苦労するだけだよ?んでんでカミやん、見たよ見たよ!今朝の廊下の事!」

 

 

吉野葛は傷ついた獲物に詰め寄る肉食獣のように爛々と目を輝かせ上条当麻ににじり寄った。

 

 

「モガモゴバリモガモガモガ!(今朝の事って何言ってんだ?)」

「うーんごめんごめん。何言ってるか分かんない…」

「今朝の事って何のことだ?ってさ。上条、口いっぱいに頬張りながら喋るんじゃない!ほれ水」

 

吹寄から差し出された水を喉を鳴らして口に流し込み、それとともに口内の錠剤たちのなれの果てを胃の腑にようやく落とし込んだ。これ逆に体に悪いんじゃないか?と思う上条当麻の感想は恐らく間違っていない。そして一息つくと上条は

 

「ひょっとしてあれか?舞殿のことか?それとも小萌先生の事か?」

「えとえとカミやんってどんだけフラグ体質なのかな…じゃなくて小さい子と手を繋いで!ああそれも駄目だ駄目だ小萌ちゃん先生も小さいわ」

 

吉野葛が頭を振り回して言葉に困っていると、上条の背後から強烈で鋭くて鉄を断たんとばかりの熱量を帯びた視線が向けられていた

 

 

「ほう。小さい女の子と。手を繋いで。仲良く遅刻間際までいちゃついていたと。私の心配をよそに。」

「いやいやふっきー?私は言ってないよ。そこまで言ってない言ってない」

「上条!」

「ヒッ!」

 

人は死の恐怖を強く感じると目線をそらし、頭部を腕で隠し身体全体を丸くしてしまうもので

御多分に漏れず上条当麻もお饅頭になって来たるべき衝撃に備え…備え…来ない?

 

 

「貴様の事だから、困ってる女の子を助けてたんでしょ?分かってるわよそんなこと。大体それを私が起こる義理でもないし・でもそれでもちょっとは私の気持ちゴニョゴニョ」

「ふっきー、だからさ、ツンデレはいばらの道だからさ…」

 

 

言葉の音量がみるみる間に右肩に下がっていく吹寄、それはもはや上条には聞き取れず、吉野の言動だけが謎が謎を呼ぶ

振り上げた腕もとい丸まった背の置き所を失った上条はどこか恰好がつかず

 

 

「気持ち悪い!これは気持ち悪いなんてもんじゃないですよ!吹寄さん!ほらどうしたパンチでも頭突きでもあなたの要望をなんでもお答えします!安心と信頼の上条産業ですの事よ」

「あーこれはこっちも相当アカンやつだったわ…戻ろ」

 

来いよ来いよ!と往年のプロレスラーみたいに騒ぐ上条に呆れてこの場を離れようとする賢者・吉野

しかし歩き出したその先には大仰な動きをする上条当麻が

 

ドン!バタン

 

吉野が上条に当たり、それに上条がよろめいて吹寄に覆いかぶさるようにぶつかり、バランスを崩した三人はピタゴラスイッチ

 

「カミやんって結構結構身体がっしりしてんだねー凄い凄い」

「これこれこれですよやっぱり、上条さん絶対あると思ってました」

「上条貴様という奴は…」

 

はぁーとため息をつき仕方ないな。といい顔した上条当麻が一言、

「不幸だ――――!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガラッ

「おはようなのですよー!お嬢様!おはようなのですよー、野郎ども!ってうわ上条ちゃん誰にやられたのですか?この酷い傷は!暗部なのですか暗部なのですね!よっしゃー滾ってきたのですよ先生は!」

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