孤独な神は薄荷色の夢を見る   作:投稿参謀

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孤独な神は薄荷色の夢を見る

 遥かな未来。

 この星に六度流星が墜ち、六度欠け、六つの月が生まれた。

 

 やがてこの星に唯一残った脆弱な陸地に、生きた宝石たちが現れた。

 彼らは月より襲い来る謎の敵、月人と戦いながら寄り添って生きていた。

 

 その中にあって薄荷色(はっかいろ)の宝石、フォスフォフィライトは浮いた存在だった。

 

 まず、脆い。

 硬度は僅かに三半。ふとしたことで欠け、転べば砕ける。

 

 次に、不器用。

 とにかく取り柄らしい物がなく、その癖口先だけはいっちょ前。

 

 そしてなによりも……。

 

  *  *  *

 

(もしもーし、聞こえるー?)

(…………)

(お、つながった! も~う、クロってば出るの遅いよ~)

(…………)

 

 穏やかな風が吹く草原に寝転がって太陽の光を浴びながら、フォスフォフィライトは頭の中に聞こえる『声』と会話していた。

 何時の頃からだったろうか、物心ついた時には海の彼方にいるらしい何者かの存在を感じ取っていた。

 そして生まれてから何度目かの冬、長い眠りの中でそれの声を聴いた。その存在もまた、フォスフォフィライトことフォスの存在を感じ取り、思念を送ってきたらしい。

 言葉と言うよりは唸り声と咆哮の連続だったが、不思議とフォスには相手が何を言いたいのか理解できた。

 

 とりあえず、フォスはこの思念の主を『クロ』と呼ぶことにした。

 

 朧気に見えた相手の全体像が、真っ黒だったからだ。実に単純である。

 

 どうもクロはずーっと眠っていたらしく、こうして話が出来る相手が現れたことに酷く驚いていた。

 今もまだ厳密には眠っているらしく、フォスとのやり取りも夢うつつで行っているようだ。大層な寝坊助さんである。

 

「おーいフォス、いるんだろー!」

 

 と、声が聞こえた。

 頭の中ではなく、外からだ。

 フォスが身体を起こすと、薄紅色のキラキラと光る髪の少年とも少女とも付かぬ姿の黒衣の子供がこちらを見ていた。

 フォスの同族である宝石の一人、モルガナイトだ。

 

「お、いたいた。先生が呼んでるぞ」

「ああー、ありがとーモルガー。……なんだろ?」

「知らないよ」

 

 どこか呆れたようにモルガナイトは腰に手を当てた。

 その後ろでは彼の相棒で薄い灰色の短髪の宝石、ゴーシェナイトが困ったような顔をしている。

 

「まーた頭の中のお友達とお話してたのか? お前も飽きないな」

「ほっといてよー」

 

 クロの声が聞こえるようになった当初、フォスはそのことを周囲に伝えたのだが、頭がおかしい子として扱われる破目になった。畜生。

 ただし彼らの保護者と言うべき金剛先生だけは、フォスの言う事に何かを感じているようだった。

 

(みんなさー、クロのことまるで信じないんだもんなー)

 

 そんな風に言うと、クロは仕方がない、と返してから金剛先生への報告を促した。モルガとゴーシェだけでは月人(つきじん)相手は心許ないからと。

 

(あ、そうだね!)

 

 月人……空に現れる黒点を予兆にして現れ、宝石たちを攫っていく正体不明の存在。白い雲か煙の塊のような人型。

 

 クロですらも、その正体は分からないらしい。

 

(クロが分かんないんじゃあ、マジでお手上げだよね)

 

 この奇妙な話し相手はとてもとても長生きで、なんとこの星に六度の流星が落ちる前から生きているらしい。本当かな~?と疑うと、思念波のちょっとした応用で映像を見せてくれた。

 

 クロの記憶……遥かな昔、まだこの星に人間が満ちていたころの記憶だ。

 世界にはもっと多くの陸地があり、大地にも海にも空にも今より多くの生命が息づいていた。

 人間の住む場所は学校よりも大きな建物が並び、鉄の身体を持った獣が無数に駆け回る。

 その全てが、フォスを驚かせ、感動させた。

 

 だが人間たちは、フォスの目から見てもちょっと酷かった。

 フォスには理解できない原理で動く鉄と火、稲妻でクロと彼の父を虐めたからだ。

 

 しかしクロは、人間も生きるために必死だったのだからと、彼等のことを恨んではいなかった。この点は人間を苛烈なまでに憎んだ彼の父と違う点だった。

 

 その父の記憶も見せてもらった……が、まず父という概念について教えてもらった。

 もとより性別の概念を持たず、さらに物覚えの悪いフォスはそれを理解するのに結構な時間を費やしたが、クロは辛抱強く教えてくれた。

 

 父。

 幼く弱く無知だったころのクロを守ってくれた、大きく強い存在。

 あらゆる敵を打ち倒した最強の戦士にして、偉大なる王。

 

 それを見たフォスは、自分たちの形を整え色んなことを教えてくれる金剛先生に似ていると感じた。

 

 

 

 

 

「お前に背負わせる物は難しく、考えあぐねていたのだ。特異な体質に加え堅牢無比の不器用の地層……そして頭の中に響く声のせいで集中を欠きやすい気質」

 

 フォスから報告を受けた金剛先生は、颯爽と法衣を風になびかせ草原を歩いていた。

 坊主頭の彼は、宝石たちと違い明確に男性だと分かる姿と声をしている。

 

「何をやらせても相応しい役割を見つけることは出来なかった」

 

 淡々とした言葉に、後を走るフォスはがっくりとしてしまう。

 宝石たちは皆、一つか二つは得意な分野がありそれを仕事とすることで寄り添って生きている。

 言い換えればそれは、仕事が出来なければ仲間の一員として認められないということでもある……とフォスは解釈していた。

 だから仕事がしたい。なにか得意なことを見つけたい。自らの価値を証明したい。皆に認めてほしい。

 

 クロは気にしない方がいい、こうして話かけてくれるだけでも自分にとっては何にも代え難い価値がある、と言うがやはり悔しかった。

 

(いっそ、月人と戦うとか……)

 

 そんな思考は、止めておけ、といういつもより強めの思念波に遮られた。

 

 その後、金剛先生は案の定モルガとゴーシェを砕いて回収しようとしていた月人を、手を翳しただけで霧散させ、ついでに二人を叱り飛ばし、その余波でフォスを砕いた。

 

(……! ……!)

(まあまあそんなに怒んないでよ、酷いけどワザとじゃないし、いつもことだし)

 

 自分を回収がてら『博物誌を編む』という仕事を与えてきた金剛に対し怒るクロを宥めながら、その仕事に思いを馳せていた。

 地味だけど、悪くないかもしれない。少なくともクロとなら。

 

 

 

 

 

「おーい、シンシャー!」

「……なんだ、三半か」

 

 夜半過ぎ、フォスは発光するクラゲの入った桶を抱えて岬を訪れた。

 岬の端には、鮮やかな真紅の髪と切れ長の目の宝石が立っていた。

 その周辺には鈍い銀色の液体の塊がいくつか宙に浮き、ゆらゆらと揺れている。

 

 彼はシンシャ。

 本来、インクルージョンとして内包している微小生物が日の光をエネルギー源とするが故に光のない所では活動できなくなり目も利かない宝石の一員でありながら、フォス以上の……と周囲が思っている……特異体質により、それを可能としている宝石だ。

 

「もう、つれないなシンシャはー」

「何の用だ……おい、あんまり近づくな!」

 

 けんもほろろなシンシャに、フォスは遠慮なく近づこうして怒鳴られた。

 

 シンシャの周囲を漂う銀色の液体は、彼の身体から湧き出している。

 この毒液を操り採光することによって夜間の活動を可能にしているが、同時にそれは周囲の土や水、空気を汚染し生き物を殺す強力な毒液だった。

 

 さらにこの液体に宝石が触れると、その部分が光を通さなくなり削り落とすしかなくなる。

 宝石にとってそれは、身体の一部と同時にインクルージョンを失うということだ。

 インクルージョンによって宝石は生命体として成り立っており、それが失われれば記憶も無くす。

 

 故にシンシャは、他の宝石から離れ一人で生活し、他の宝石たちもシンシャのことを持て余し、遠ざけていた。

 

 だがしかし、フォスは躊躇うことなくシンシャに笑いかける。

 

「いいじゃーん。僕とシンシャの仲だしー」

「どんな仲だよ」

「深い仲? マブダチ?」

 

 フォスがシンシャに絡むようになったのは、その寂しい境遇にクロを重ねたからだった。

 

 クロは、ずっと独りぼっちだった。

 父は炎に融け、母も土に還った。

 以来、彼に同族、同種、同胞と呼べる相手はいなかった。

 

 この星に唯一人、万年の孤独、億年の孤独。

 

 それがいかなる物なのか、同族に囲まれ、生まれてからまだ300年あまりのフォスには想像もつかなかった。

 でも寂しさと悲しさは伝わってきた。だから、同族の中に孤独な者がいるのが嫌だったのかもしれない。

 シンシャがふと漏らした『月でなら自分を必要としてくれるかもしれない。だから月人が自分を攫いに来るのを待っている』という言葉には、激しい怒りすら覚えた。

 

「勝手に友達にするな! ……で、何の用なんだ」

「あーそうそう。実は僕、ついに仕事を貰ったんだ。博物誌編纂! 手伝ってよー!」

 

 以来フォスは、こうやってシンシャと話すようにしている。

 月人のこない夜に並んで歩く二人を見かけて、シンシャと同時期に生まれた宝石のダイヤモンドが元々キラキラしている目をさらにキラキラさせていたのは別の話だ。

 

「いいでしょー、シンシャ物知りだしー! きっと楽しいよー!」

「……俺じゃなくて、ゴーストの奴に頼んだらどうだ」

「もう頼んだ! でも実地ならシンシャの方が詳しいからって!」

 

 ゴーストことゴーストクォーツとは、図書室を管理している宝石だ。

 フォスは一時期、クロにこの島のことを教えるために……という名目で実際には彼の方がフォスに知識を付けさせるために……図書室に入り浸っていたことがあり、その時に仲良くなった。

 そのゴースト自身、『頭の中に自分ではない誰かの声が聞こえる』というフォスに親近感を抱いているのだが、それは別の話だ。

 

 シンシャは少し悩んだあと、小さな声で答えた。

 

「………………夜の見張りの間だけなら」

「やっりい! ふふふ、これでシンシャは僕の助手なのだ。これからは先生と呼びなさい!」

「誰が呼ぶか、調子に乗るな……ダイヤには言うなよ」

「ごめん、それ無理! ここに来る前にシンシャをスカウトに行くってダイヤに話してきたから!」

「な!? お、お前ぇ!!」

 

 シンシャ自身、ほんの少しだけフォスに心を許しているようだった。

 

 だがシンシャ自身はやはり、クロのことはフォスの妄想だと思ってた。

 そう断じるのはフォスの話の通りなら、クロは金剛先生よりも強く学校よりも大きいというにも関わらず、それでいてフォスと親しくしながら、一向に姿を現さないからだ。

 何人もの宝石が月に攫われ、そのことにフォスが悲しんでいるのにだ。

 

 

 ……もちろん、シンシャのその考えは正しい。

 

 そうしない理由は、彼が恐れているからだ。

 自分の覚醒により、世界が荒れるのを。かつてと同じように、多くの者を傷つけ滅ぼしてしまうことを。

 それを危惧するに足るだけの力が、彼にはあった。

 それを危惧してしまう優しさが、彼にはあった。

 

 

 

 

 

「フォスよ、赦せ……」

 

 ある日月人が学校に落としたと思ったら自分を飲み込み、言葉が通じるようになった奇妙なウミウシ。

 

 本人に曰く、骨と肉と魂に分れた人間の、その肉を由来とする種族アドミラビリス族の王を自称する、ウェントリコスス。

 

 彼女に宝石に近い姿の生き物を見たことがあると誘われ、クロに相談しようにも何か念波が通じにくくなっており、みんなに黙って海までホイホイついてきれみれば、この始末。

 月人の弓で射られて足を砕かれ、捕えられた。

 

「次を連れてこいだと! 約束が違うではないか!」

 

 月人の乗り物である薄気味悪い色の雲の上で、ピンク色の女性の姿になった王が月人に咆えていた。

 アドミラビリス族は美しい殻を目当てに根こそぎ月人に捕らえられ、月の甘い水と土で肥え太らされ、正気を失わされているという。

 彼女は、月人と『この場所に宝石を誘い込めば代わりに弟のアクレアツスを返してもらう』という取引をしていたのだ。

 

 この時、フォスも月人も王も、雲の下に広がる海が風もないのに波立っていることに気づかなかった。

 

(そっか、王は、その同胞……弟のこと愛してるんだね……)

 

 五色の糸で手足を縛られ、口も塞がれたフォスは思った。

 愛。家族のために命すらかけさせる概念。

 

 クロの母が……人間の女性だった母が、血が繋がらずともクロに与えてくれた物。

 クロの父が戦うことで、その背中で示した物。

 クロがフォスに与えてくれる物。

 

(なら仕方ないか……)

 

 だからフォスは彼女を恨む気にはならなかった。

 同族のためなら、例えそれ以外のためでも、何だってしてみせるという愛をクロの記憶から知ったから。

 

 でも。

 

「フォスを餌にするなら、そうだな……孤立していて察しのいい、シンシャなら……」

(ああ、それは駄目だ)

 

 シンシャでなくとも駄目だ。

 役立たず扱いされても、不気味に思われても、それでも宝石たちのことが大好きだった。いなくなってほしくない。

 

 でも硬度三半の自分には、剣も振るえず頭もよくない自分には、何も出来ない。

 悔しい、悲しい、苦しい、怖い。

 

(助けて……)

 

 声も出せず、願う。

 

 大型の月人の持つ盆に乗せられたフォスを見上げ、一体の月人はいつものように無機質な笑みを浮かべていた。

 

 果たして、この宝石を連れていけば、今度こそあの壊れた機械、金剛は祈ってくれるだろうか?

 自分たちはこの倦怠と停滞から解放され、苦しみのない無へと還れるだろうか。

 

 それが月人の悲願。

 宝石やアドミラビリス族と同じ、人間の残骸。死してなお未だ無に還れぬ魂の変異体たちの。

 

 そこで、はて?とその月人は首を傾げた。

 

 なぜ、この薄荷色の宝石の目は()()()()()()()()()()()

 

(助け……て、クロ……!)

 

 

 

 

 

 その時、光が走った。

 青い色の光の柱とでもいうべきエネルギーの奔流が、海面から立ち上がり、遥か空の彼方まで伸び、やがて消えた。

 

 月人がそれを見た。ウェントリコススも見た。島でフォスを探していた宝石たちからも水平線の彼方から立ち昇る一筋の光が見えた。

 

 海が割れ、黒い影が飛沫と共に立ち上がる。

 

 宝石たちの学校より遥かに大きい。まるで天を衝くようだ。

 

 黒いゴツゴツとした岩のような皮膚に覆われ、背中には剣を連ねたような三列の背びれがあった。

 

 口には鋭い牙が並び、腕の先の指には爪が生え、長い尻尾が海面を叩く。

 

 閉じていた眼を開くとそれは激しい怒りに燃えていた。

 

 愕然とする月人とウェントリコススの前で、それは咆哮を上げた。

 

 海が震えた。

 空が震えた。

 星が震えた。

 

 月人たちは恐怖にかられた。

 死ぬことがなく、むしろ消滅を望んでいるはずの彼らが、武器を取り落とし尻餅を突いた。

 

「こ、これがフォスの言っていた……!?」

 

 ウェントリコススは恐怖にかられた。

 フォスと話せるようになって以降、ずっと恐ろしい気配を感じていた。

 自らの罪悪感と緊張によるものだと思っていたが、そんなことはなかったのだ。

 

「あ、あ、あ……」

「な、なんなのこれ!?」

「怖い……怖いよ……」

 

 宝石たちは恐怖にかられた。

 姿は見えずとも海の彼方から聞こえる声だけで、勇敢な者も冷静な者も、等しく今まで感じたことのない感覚に震えた。

 

 これらは当然のことだ。

 かつて人間が三つに分かれ、骨は宝石に、肉はアドミラビリスに、そして魂は月人になったと言われている。

 

 だが人間の骨にも肉にも魂にも、それに対する根源的な恐怖が刻み込まれているのだ。

 

「フォス……」

 

 皆から離れてフォスを探していたシンシャは、何故だかその光と咆哮に薄荷色の宝石のことが頭に浮かんだ。

 

「まさか……」

 

 金剛は、眼を見開き愕然として呟いた。

 彼はそれを知識として知っていた。

 だがあり得ない。

 あれが生きていたのは自分が生まれるよりも前のはず。

 六度の隕石衝突に耐え、その後の永遠にも等しい年月で朽ちぬ生命などあるはずがない。

 それとも、そんな摂理すら、あれには通用しないのか。

 

 人が犯した罪の化身。

 忌まわしき炎によって生まれた者。

 人智の及ばぬ獣、すなわち怪獣の王。

 破壊神。

 

呉爾羅(ゴジラ)……!」

 

 だがこの状況にあって唯一人、恐れも畏れも感じていない者がいた。

 盆から転げ落ちたフォスフォフィライトだ。

 黒い巨影を見上げる顔には安堵が広がり、嬉しそうですらあった。

 

「ああ、来てくれたんだね。クロ……」

 

 ずっと話し続けていた親友のクロ……かつて人間がゴジラジュニアと呼んだ彼はウェントリコススに飲み込まれたことでフォスの念波が途絶えたためにその危機を察知し、ついに完全覚醒し彼のもとへとやってきてくれたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 宝石たちは、かつてこの星に住んでいた人間が途方もない時間をかけて変化した微小生物が、これまた途方もない年月をかけて累積して生まれてくるとされる。

 

 ……この過程で後にフォスフォフィライトに内包されることになる微小生物に人間由来でない、別の生き物の細胞が紛れ込んだ。

 

 遠い遠い昔、その生き物は恐ろしい薬で骨も残さず溶かし尽くされたはずだった。しかし僅かに一欠片の骨が残っていたのだ。

 それが化石になってなお細胞は死なず、偶然にも接触したインクルージョンを浸蝕し同化した。

 

 だから、フォスフォフィライトはゴジラの同族なのだ。

 永い時の果てに巡り合えた、この星で唯一無二の同族。

 父は同じ細胞を持った相手と殺し合ったが、彼はこの同族を愛していた。

 

 そして同族を傷つけられたことで迷いを振り切り、ゴジラは目覚めた。

 破壊神たる彼の覚醒は、停滞していた世界に否応なしに変化を齎す。

 

 月人の悲願は叶うだろう。

 ゴジラの同族に手を出した時点で、その末路は確定している。

 倦怠を懐かしく思うほどの苦痛と絶望の中で、月人は消え去るだろう。

 

 アドミラビリスは海に戻ってくるだろう。

 フォスが頼み込めば、ゴジラは怒りを収めその願いを聞き入れるはずだ。

 ウェントリリコスとその弟アクレアツスは、新しい王国を築くだろう。

 

 宝石たちは変わっていくだろう。

 自分たちに完全なる消滅を齎せる破壊神という恐怖は、本人たちの意思に関わらず変化を強要する。

 その先がどうなるかは、まだ分からない。

 

 なんにせよ……。

 

「やっと逢えたね。……思ってたより、かっこいいや」

 

 なんにせよ、破壊神は夢にみた薄荷色の同族と、ようやく対面できたのだった。

 




原作におけるフォスのなんやかんやが可哀そう過ぎるのと、ここ半年以上も何も書けない状態が続いていたのでリハビリとか兼ねつつ、執筆しました。
何でゴジラかと言われると、宝石の国の詰んでる状況を力技でぶっ壊せる存在だから。あとVSデストロイアのあと、本当に地球で最後の生き残りになってしまったゴジラに孤独を埋めてほしかったから。
続きは多分ないです。

以下、キャラ紹介

フォスフォフィライト
硬度:三半
靭性:最下位
仕事:博物誌編纂
愛称:フォス

何をやらせても上手くいかない薄荷色の宝石。
無邪気でやや自分本位。明るいが内心では皆に認めてもらいたいと思っている。
体内のインクルージョンがG細胞と融合した云わばGインクルージョンであるため、ゴジラとテレパシーによって会話ができ、彼からは同族と認識されている。
このせいで宝石の中で孤立気味だが、ゴジラのおかげで孤独感はなく気に病んでいない。また人格的にもゴジラの影響を強く受けており、原作よりやや視野が広く、仲間を想う気持ちはより強い。
Gインクルージョンは今のところ活動が抑制されており通常のインクルージョンと同程度にまで()()()()()()()()

原作で何から何までまで酷過ぎる子。とりあえず原作と同じ流れにはならない。
将来的にフォスゴジラ(仮)になるかもしれない。



ゴジラ
全高  :100m
全長  :220m
体重  :6万t
特殊能力:同族間でのテレパシー(かつて関わりのあった三枝未希の影響があると思われる)
愛称  :クロ

怪獣王。
VSデストロイアのラストで蘇生したゴジラジュニアの、その後。
人間と己の安寧のため深海の底で眠りについたが、仮死状態のまま六度の流星落下とそれに伴う環境激変も、長いの年月すらも乗り越えてしまった。
しかしある時、自分と同質の細胞を持つフォスの気配を感じ取り、半覚醒状態に。
眠りの中で発現したテレパシーを用い、それに応えたフォスを同族と認識し、深い愛情(同族愛、親子愛)を注いでいる。だがフォスが調子に乗れば窘めるし、危険なことをすると叱る。
宝石たちのことも、フォスの仲間(あくまで『フォスの』仲間)として認識している。
しかし、仮にフォス以外がその思念を受け取れたとしても、意思疎通することは不可能。

とりあえずこの後は、宝石たちを怖がらせないようにというフォスの意を汲み、彼をウェントリコススに任せ、遠洋に戻った。



シンシャ
硬度:二
靭性:不明
仕事:夜の見回り、博物誌編纂補佐

孤独な赤い宝石。
素直になれないが仲間意識は強い。
強力な毒液を自分の意志に関わらず生み出してしまう。毒液自体はある程度操れるが、精製そのものを止めることはできない。このため自ら他者を遠ざけ、周囲も彼と距離を置いている。
だがズケズケと近づいてくるフォスに対しては迷惑そうにしつつも若干ながら心を開いている。

原作通りこの後帰ってきたフォスを拾うが、彼とゴジラの関係にいち早く気付き、みんなにはクロ=ゴジラであることを黙っているように言い含めた(フォスが孤立するのが目に見えているので)



金剛先生
硬度:不明
靭性:不明

宝石たちの指導者。
仏教の僧侶に似た、明確に男性と分かる体格と人格、声を持つ。
フォスとゴジラのことに薄々勘付いているが、だからってどうしようもないので悩んでいる。

多分、プロトタイプ(兄弟機ではなく)はジェットジャガー。



ウェントリコスス
性別:女
愛称:王

肉の者ことアドミラビリス族の王。
ピンクのウミウシ。本来の姿はクラゲに似た女性。
原作と同様の経緯でフォスと言葉が通じるようになった。その影響でほんの僅かにだがゴジラの思念を感じ取れるようになったが、やはり意思の疎通はできない。

フォスを飲みこんで溶かし、騙くらかし、利用しようとした、とゴジラの地雷を悉く踏み抜いたたが、当のフォスの執り成しもあって奇跡的に何とか許してもらえた。



アクレアツス
性別:男

ウェントリリコスの弟。黒い巨大メンダコ。本来の姿は触手を備えた男性。いた。
正気に戻ったら家の近くで姉上もいて超ラッキー、とか思ったらゴジラが目の前にいて死ぬかと思った。



月人
もう死んでるのに死亡フラグが立ってる。
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