凍てつくような風に銀白の髪をなびかせて、アンタークチサイトは立っていた。
「アンターク……!」
「相変わらず……とも言い難いが、無鉄砲さは変わらんな、お前」
懐かし気に相好を崩したアンタークはフォスに手を差し伸べる。
だがその手を取るべきか、フォスは悩んだ。すでにゴーストを巻き込んでしまったのに、アンタークまでも……。
「ん? ああ……なに、金剛先生の話も聞かず張り切って今冬の初仕事に出て見れば、なんと月人が大量で、どこかで見た三半が襲われている。だから助けることにした」
「いや、でも……」
「繰り返しになるが、
そんなはずがない。
先生を誰より尊敬するアンタークが、先生と話さずに仕事に出るなんてありえない。
つまり、それは単なるでっち上げ……『今回の件に関わらない』という取り引きを守るための方便、建前に過ぎないのだ。
下手をすれば、アンタークも学校にいられなくなる。
「…………」
「そんな顔をするな。……ああそうだ。今年は気温が高い割に流氷が多いからな。せっかくなので、
「みんな……!?」
ハッと上を見上げると、月人の雲の方にいくつもの輝きが見えた。
黄色、桃色に灰色、それに黒。他にも何色もの光が冬の太陽の光を反射して輝いていた。その一つ、黄色い光が氷上に降り立つや、稲妻のような速度でフォスの前まで走ってきた。
「よう、フォス! 苦戦してるみたいだな!」
「イエロー……どうして?」
「おいおい、どうしてはないだろう」
黄色い宝石はニッと笑みを浮かべた。
「兄弟を助けにくるのは当たり前さ」
「でも僕はゴジラで……」
「馬鹿言え。俺にとってお前は、やっぱり手のかかる末っ子だよ」
そう言い切ったイエローは、不意に声を低くする。
「……これまでたくさんの仲間を失ってきた。この上、誰かをワザと見捨てるなんてのは、ちょっと耐えられそうにない」
「イエロー……ありがとう」
「良いって良いって! お兄様に任せとけ!」
再び笑んだイエローはそのまま駆けだした。
稲妻にも例えられる俊足は、今のフォスの目を持ってしてもとらえきれない。向かう先にいるのは、巨体の月人シロだ。
以前のような人懐っこさが全く見られない所を見るに、月人によって何等かのコントロールを受けているのかもしれない。
「よう! シロ久し振り!」
その身体を掴もうと伸ばされる六本腕の間を潜り抜け、すれ違いざまに剣で腕を斬りつける。
下手に両断すればシロが分裂してくることは分かっている。だから浅く広く傷を付けて、動きを鈍らせていく。
「悪いけどフォスは今忙しくてな。今日は俺と遊んでくれ!」
強大な戦闘力を持ちボルツすら単独での勝利は無理だったシロと言えど、巨体故に小回りは効かず、翻弄されるばかりだった。
上空では雲から雲へと飛び移りながら、アレキサイドライトが剣を振るっていた。青緑から赤に変色した長い髪を翼のようにはためかせながらも、彼は酷く冷静だった。いつぞやのように正気を失ったりはしていない。
怒りが限界を超えてしまい、逆に冷めたのかもしれない。
「まあ、ホントならフォスを差し出して、知らんぷり決め込むのがクールな選択って奴なんでしょうね。宝石一人と残る全員の平和なら、後者を取るべきだわ」
早口に捲し立てながら、アレキは霧散する雲から飛び立つ。
宝石の命を脅かすゴジラがいなくなり、宝石をさらう月人が現れなくなる。万々歳だ。
「……願い下げよ!」
兄弟を見捨て、月人のお情けで平和を得る……そんな物は到底受け入れられない。なにより兄弟を守るために戦うのだと、インクルージョンに宿るラドンが咆えている。
今のアレキにとって兄弟がフォスを指すのか、クロことゴジラを指すのか……どちらでも同じことだった。
「そーれ! お返し!」
一方、氷上を走るダイヤは剣を振るい、月人の矢を跳ね返していた。返ってきた自らの矢の爆発で、月人が霧散していく。
ボルツには体にかかる負担が大きいから止めろと言われた技だが、敵の数が多すぎる今回限りで解禁された。
月人たちは埒が明かないとばかりに氷上に降り立つや、槍を手に向かってくる。
「あーもう、空も海も敵だらけじゃない!!」
これを問題なく斬り捨てていくダイヤだが、次か次へと湧いてくる敵に思わず叫ぶ。
なにより、今回の月人たちはいつもと様子が違った。顔に張り付けたような笑みはなく、必死の形相で迫ってくる。
それに気を取られた上、さらに慣れない氷上戦闘。ダイヤは足を滑らせ、氷の割れ目に落ちそうになる。
「しまっ……!」
海に落ちれば、流氷の間に挟まれて体を砕かれてしまう……だがダイヤの身体を、氷の割れ目からシュルシュルと伸びてきた黒い触手が押し戻した。
「え? え? なにこれ!?」
「やれやれ……」
氷の下から現れたのは、黒い長身痩躯の男性の姿をした生き物だった。背中から生えた無数の触手がユラユラと揺れている。
「え、誰ぇ!?」
「自己紹介は後で。とりあえず君たちの味方で、フォスフォフィライトの知人だ」
アクレアツスの姿を遠くに見止めたフォスは、驚きのあまり口を開けた。
「弟さん!?」
(フォス、聞こえとるか?)
頭の中に、彼の姉であるウェントリコススの声も聞こえた。
「お、王様!? どうして弟さんが! 今回は手を出さないって……!」
(さて、フォスとクロ殿を助けるな、とは言われたがその他の宝石については何も言われとらんからな。
悪戯っぽい声に、フォスはなんと返していいかわからなかった。
仲間を取り戻すのは、ウェントリコススたちにとって悲願のはずなのに……。
(ま、月人の言う事なんぞ元々信用できんしな)
「王様……」
「ボーっとするな、グズ!」
ジッとしているのを隙と見たのか、強面月人がフォスに襲い掛かろうとするが、その背後から黒い影が躍りかかった。ボルツだ。
「やはりゴーストの報告にあったとおり、前に戦った時よりも大きいな」
剣をチェーンソー大剣で防がれたボルツだが、すぐに飛び退いて次の攻撃に移る。
「ちょうどいい……以前のリベンジだ」
ただでさえ鋭い視線を剃刀のように鋭くし、黒い宝石は因縁の敵に挑んでいく。
「どうして……どうしてみんな……」
「どうして、だと? 今更それを言うのか」
力なく呟くフォスに、アンタークはフッと微笑む。
「他の連中はともかく、少なくとも私は、お前に助けられた借りがある。だからお前を助けるんだ」
堂々としたその言葉は、フォスに否応なしにパパラチアの言葉を思い起こさせた。
(いずれにせよ、これから先、世界は変わっていく。その世界では、きっとこれまで以上に繋がりが大切になる)
(『あいつを助けたい』『こいつにいなくなってほしくない』そんな思い、あるいは誰かや何かへの怒りや憎しみでさえも……執着と言い換えてもいい。そういったものに行動が伴った時、強い力を持つようになる。その力で助け、助けられの連鎖が、意味を持つようになる)
「はは、『みんな』の部分の答えになってないよ。相変わらず集団行動苦手そうっすね」
「ほっておけ。それよりも……」
力なく微笑むフォスに、アンタークは背負っていた何かを差し出した。
それは彼の身の丈に迫る大きな剣だった。だが波打つような形状はまさに目の前の宝石から借り受けたフォスの愛刀に他ならない。
「オブシディアンからだ。修繕ついでに改造したそうだ……まったく人の剣を」
受け取ったそれは、ズッシリと重い。
これぞフォスの剣を芯に、オブシディアンが己の持てる技、そして苦心して編み出した新技術……固まりきる前にハンマーで叩いて圧力を加えることで密度硬度を増し、さらにそれぞれ硬さと密度の違う薄い刃を何層にも重ね合わせた上で圧力をかけて癒着させることで、これまでにない強度と切れ味を実現した逸品だった。
故にかける手間と時間も凄いことになり、徹夜していたワケである。
「私は、お前の
「うん……助かるよ」
もう一度見上げれば、ボリュームのある緑の髪に桃色の花形模様があるウォーターメロン・トルマリンが己の特殊能力である電撃を放っていた。その相棒で明るい水色の髪のヘミモルファイトも、それを援護している。
ジルコンも、モルガとゴーシェも、アメシストたちも……フォスの仲間の宝石たちがみな、戦っていた。
そして……。
「フォース!!」
甲高い鳴き声と共に、銀色の影が月人の矢を掻い潜ってこちらに向かって飛んでくる。
大きな翼が太陽の光を反射して銀色に輝き、その背に赤く光る一輪の花を乗せていた。いや、それは赤い髪の宝石だった。
その姿を、その声を、その輝きを、フォスが間違えるはずがなかった。
「シンシャ……!」
* * *
時間は一度遡り、アンタークたちが出発しようという時のこと。
イエローダイヤモンドが、アレキサンドライトが、他の宝石たちが何かしか理由を付けて、フォスの救援に向かうアンタークを追おうとしていた。
金剛先生は、何故か少し嬉しそうだった。
「イエロー、すまない。私は行くことはできない。……私は今までフォスのことにも気づけなかったような無能だが、それでも仕事は果たしたい」
「ジェードは無能なんかじゃなないさ。みんなと先生のこと、頼む」
「ああ、任された」
頭が硬いと言われるジェードだが、こういう誠実さと責任感の強さを皆信頼していた。
「フォスのこと、お願いね……」
「さらわれるんじゃないですよ。どれだけバラバラになっても、地上にいる限り私が直しますから」
身体が脆く戦闘に参加できないユークと、替えの効かない医務担当のルチルも残って皆を見送る。
スフェンやペリドット、それにオブシディアンも残るようだ。そして……。
「ごめん僕は……僕はやっぱり、ゴジラが怖い……」
ベニトアイトの声は、消え入りそうだった。
誰に攻められずとも恥じ入る彼に、相棒のネプチュナイトは黙って寄り添っていた。
一方でダイヤモンドの兄弟たちもまた、当然のように戦場に向かおうとしていた。
だが最強を誇る黒い宝石は、毒液に塗れて項垂れたままのシンシャの横で止まった。
「お前はどうする。そこでそのまま、ジッとしているつもりか」
「ちょっとボルツ……」
「あのクズが、砕かれ、さらわれてもいいのか?」
厳しい物言いを咎めるダイヤだが、それでもボルツは聞いた。
「……あいつは俺を拒否した」
ボソリと呟くような返事に、ボルツは目を鋭くした。
「拒否? あのグズに誰かを切り捨てて他の誰かを選ぶような、そんな賢しい真似ができると思うのか」
そんなことは、言われなくても分かっていた。
恐ろしいゴジラを友と呼び、裏切ったアドミラビリスを赦し、何もかもを腐らせ毒す自分にすら手を伸ばした奴だ。
だが実際にフォスフォフィライトはゴジラの所に行ってしまった。自分を置いて。
「…………」
「まあいい」
ボルツの言葉も目つきも、剃刀のように鋭かった。
「それなら、そこでそうしていればいい。今まで通りに」
「ッ!」
今まで通りに。
夜に閉じこもり、自らの境遇を嘆き……誰かが手を引いてくれるのを待つ。
これからも、そうしていくのか。皆のことを羨みながら、ただ自分を哀れみながら。
そんな自分が嫌で、仕方なかったんじゃないのか。
「そんなの……」
アイツの傍にいると決めた。
アイツを一人にしないと言った。
なのに、このザマはなんだ?
「そんなの……嫌だ!!」
床に拳を叩き付け、叫ぶ。
毒液は一瞬薄緑に発光し、それがシンシャの赤い髪を輝かせ、まるで光る花のように見えた。
彼と同期のダイヤモンドは、優しく微笑む。
「初めてだね。シンシャが『嫌だ』ってはっきり言うの」
「……これまでだって、似たようなことは言ったろう」
「うん。そうだけど、そうじゃないわ」
自分の体質を苦にしているのもあって、シンシャは周囲を気遣うあまり、とにかく自己主張をしない宝石だった。そんな彼が、はっきりと自分を変えようと叫べたのが、何故か嬉しかった。
立ち上がったシンシャも走り出そうとするが、その時気が付いた。
「ガルーダ?」
前の一件以来、繭になっていたガルーダの声が聞こえた気がした。
立ち止まったシンシャに、ダイヤは訝し気な顔を向ける。
「シンシャ、どうしたの?」
「悪い、先に行ってくれ……もう一人、どうしてもフォスを助けたいって奴がいた」
止める間もなく駆けていく赤い残光を見ながら、ダイヤは弟に笑いかけた。
「手は引かないけど、背中は推す、と」
「なんの話だ?」
「なーんでも! さ、僕らも行こう!」
* * *
「フォース!!」
氷の上に降り立ったそれは、大きな鳥のようにも見えた。
長い首と尻尾に、被膜の張った銀の翼。そして赤い目は、フォスのよく知る相手に相違なかった。
間違いない、ガルーダだ。
フォスの分身たる小翼竜は、己の無力を克服するために繭に籠って自らを急成長させた。そしてついに宝石を乗せて飛べるほどの大きさにまでなり、フォスを助けるべく馳せ参じたのだ。
「ガルーダ……こんなに大きくなって」
思わぬ再会に胸の内が暖かくなる。鼻先をこすりつけてくる翼竜の額に自分の額を当て、顎を撫でた。
喉から漏れる嬉しそうな声は、小さかった頃と何も違いがない。
そしてその背に乗るのは、シンシャ以外にあり得ない。
赤い宝石はフォスを見下ろし、バツが悪そうに顔を歪めていた。それはフォスも同じこと。決別する覚悟で飛び出したのが、ついさっきだ。
「シンシャ……」
「色々と言いたいことはある。お前だって同じだろう……でも、全部後だ」
シンシャは周囲の毒液球を揺らしながら、手を差し出した。
「乗れ。クロを助けに行くぞ!」
「……了解!」
その手を掴み、ガルーダの背、シンシャの前に跨る。
「さあ、ガルーダ。君の力を見せてくれ」
背中を撫でながらの主の声に、ガルーダは一際大きな声を上げ、翼を羽ばたかせて飛び上がった。
これに血相を変えたのが月人たちだ。空を飛べるなんて、想定外もいいとこだ。
撃ち落そうと矢を雨霰と放つ。だがガルーダは軽やかに空を舞い、弓矢の雨を掻い潜っていく。
強面月人はガルーダを追うべくボルツの相手を切り上げて雲に飛び乗ろうとする。だがこの黒い宝石がそれを許すはずもなく、体を横回転させ、長い五条の髪を刃物のように振り回して敵の身体を斬りつける。
「お前の相手は僕だ!」
チェーンソー大剣でそれを弾いた強面月人は、もはや苛立ちを隠そうともせずに凄まじい速さでボルツに斬りかかった。
この場でフォスを追うための最短の道は、全力で目の前の宝石を叩き潰すことだと考えたようだった。
それこそ、指揮官らしき相手を足止めするという、ボルツの術中だとしても。
ならばとばかりに、雲が三、四器ほど行く手を阻むようにして動く。
「ぴぎゅぁおおおおおんッッ!!」
だがそれも、紫の閃光によって消し飛ばされ、包囲網に穴ができた。
「行きなさい、フォス! 兄弟、を、助け……」
「アレキ!」
熱線を放ち、全身の力を使い果たし口から煙を上げて倒れるアレキをジルコンが支えた。
「ガルーダ!」
アレキが作ってくれた機を逃すワケにはいかない。
銀色の怪鳥は、再び集まってくる雲の合間をすり抜け、月人の包囲網を突破した。
月人の雲がその後を追うが、まるで追いつけない。
……だがその背中を、ピッタリと狙っている者がいた。
「! 傷ありか!!」
ジェット噴射で猛スピードでガルーダに追いつき、上を取ってフォスに襲い掛かる。
「悪いな、今はお前と戦ってる暇はないんだ!!」
だがフォスが万力を込めて振るった剣によって、いったん弾き飛ばされた。
(む?)
傷ありの月人が腕に目を落とせば、合成ダイヤモンドでコーティングされた手甲に傷が入っている。
奴の怪力もそうだが、新しい剣の威力もかなりの物だ。
ならば、と発射されたフィンガーミサイルは矢よりも遥かに速く正確にフォスたちに襲い掛った……が、突如として走った銀色の閃光によって防がれた。
それはシンシャの背中から伸びた毒液の帯だった。
いったいどれだけ密度を上げているのか、ミサイルの爆発でも散らず、まるで鞭のように振るわれている。その速さはまるで疾風、その動きはまさに正確無比。
それが何本も背中から伸びて、矢を弾き飛ばしている。
(やるな……!)
その動きに、傷ありの月人は素直に感心した。
無暗に毒液をばら撒くのではなく、密度を上げて威力を増し、精密かつ素早く動かす……。なるほど、あれならばこの鎧ですら傷つけられるかもしれない。
まったくフォスフォフィライトと仲間たちはいつもこちらの意表を突く。
(そうこなくては……!)
不謹慎ではあるが、胸のすく思いがする。
DNAコンピューターの塩基配列をフォスフォフィライトではない、
対し、他の月人たちはこの状況に少なからず混乱しているようだ。
フォスフォフィライトを助けに宝石が現れることは、想定していた。
だがそれはあくまで、シンシャやゴースト・クオーツら少数であるはずだった。だが現実には多くの宝石たちが駆け付け、さらにはアドミラビリスまでも向こうに与している。
何故、なんのために? それが彼らには理解できないようだった。
(我らと同じに決まっているだろうに)
宝石も、アドミラビリスも、そしてゴジラも、仲間を傷つけられて怒り、悲しみ、そして仲間を守るために、危険を承知で戦っている。
(なるほど、この場において我ら三族は対等、というワケだ)
誰も彼も、負けられぬ理由があり、仲間や友のために力を尽くし、避けられないリスクを負っている。
永い歴史の中で、三族は初めて同じ地平で戦っているのだ。
その事実に我知らずニヤリと笑み、湧き上がる闘志のままにフォスフォフィライトを追おうとするが、目の前に現れた大鎌を防ぐ。
思わぬ邪魔にいら立つが、しかし雲に飛び乗り、大鎌を構えたあの二重構造の宝石、ゴースト・クオーツを相手に手を抜く気は微塵もない。
フィンガーミサイルを華麗にかわし、メーサーを蛾の鱗粉で偏光させて防ぐこいつは油断ならない相手だった。
なにより……。
「やっぱり……!」
その目には、驚きとも期待とも付かない、妙な色があった。
「そこにいるの? ……ラピス」
もはや空はガルーダの独壇場だった。
矢は躱され、弾かれ、そもそも届かない。
地上を走る宝石たちが決して追いつけぬ月人の雲は、今や自分たちが銀翼竜に追いつくことができずにいた。
宇宙空間ではいざ知らず、大気圏内ではガルーダの方が遥かに速く、鋭く、軽く飛ぶことができるのだ。
(馬鹿な! 馬鹿な! 宝石が空を飛ぶなどと!!)
もはや月人たちに出来るのは、いみじくも宝石が自分たちにそうしたように、飛び去る銀翼に途方に暮れることだけだった。
そして時間はついにゴジラとデストロイアの決戦の場へと戻る。
海の彼方にクロの巨体が見えた。多くの仲間の助けを得て、月人の猛攻撃を潜り抜け、やっとここまで辿り着いたのだ。
だが見えた彼は傷ついていた。外皮は切り裂かれ、焼け爛れて、口から血を吐いている。
それと対峙したクロをも上回る巨体の怪物が、背中から生えた触手でクロを突き刺していた。
赤い甲殻に包まれ、額には一本角。黄色い目を光らせるその姿は、今のフォスをして体の奥底から恐怖を沸き起こらせた。
それでも……。
「クローーーーッ!!」
それでもフォスは叫ぶ。
大切な友の名を、何度も助けてくれた友の名を。
「クロ! 今助けに行く!!」
詰め込み過ぎは否めない。
それでもちゃっちゃとクロwithフォスと仲間たちVSデストロイヤに話しを戻すべく、こうした次第。
キャラ紹介
ガルーダ
全長:7m
翼長:14m
体重:650㎏
異名:銀翼竜、宝石怪鳥
フォスの眷属にして人類の叡智の名を継ぐ銀翼竜。
繭の中で力を溜め、急成長することで、ついに成体へと至った。
月人の雲ですら比較にならない飛行能力を持ち、宝石を背中に乗せることも可能。
そしてその存在は、宝石たちが一足飛びに航空戦力を得たということでもある。
本来ならもっとゆっくり成長するはずだったが、フォスの危機を予感し自ら急成長した。