変身絶唱シンフォギア—悪意のAIと共に転生— 作:鏡花水月アッくん
最初は、アーク様視点から始まり、途中から日常ものになります。
なので、ちょっとだけ未来と響が登場します。
アーク様感がキチンと出せているのかは、不安ですが。
これで序章は終了し、ようやく原作に突入します。
ながったぁぁ…………。
悠星が両親と死別してから既に1年の歳月が流れた。
『ウィンター・ローズ事件』に隠れて起きた美智子と幹二を含めた8人の人間を殺害した乱射事件は、それほど報道される事はなく、ひと月もたたぬ内に人間達の記憶から忘れ去れた。また、日本でノイズ出現の際にはシンフォギアと我々が与えたアタッシュウェポンによって被害はなかった……だが、あのライブ会場での大量のノイズ襲来以降、出現率は激減している為、やはり何者かが裏で糸を引いている事は予測できる。
そして、両親と死別した悠星は結論から言えば、五条潤に引き取られた。元々、美智子は両親に勘当され絶縁関係でもあり、葬式にさえ出席しない程に関係は冷め切っていた。更に、幹二は捨て子で施設出身でもあった為、五条潤は親族がいない悠星を養子にする事を選択した。
我々の正体を知る者が、悠星の保護者であるのなら私も制限なく情報収集に勤しむ事が出来る。私が情報収集に勤しむ中で、悠星は美智子と幹二の他に殺害された者達の葬式に自ら出席する為に赴いたり、門矢士との闘いでダメージを負ったアークドライバーのメンテナンスなどに自らの時間を費やした。また、立花響と小日向未来は悠星の身を案じ、以前よりも悠星の下へ来るようにもなった。五条潤、立花響、小日向未来……この3人によって、以前程ではないが悠星は生きる為の活力を見出し始めてもいた。だが、この3人の様に善意で行動する者もいれば、悪意に進む愚かな者もいる。
先の『ウィンター・ローズ事件』によって、仮面ライダーを非難する報道が増加した。被害者である人質達からの仮面ライダーを化け物、人殺しと揶揄する者達のコメントのみを抜き出し、この事件を招いた原因は全て仮面ライダーにあると言う事を強調する週刊誌が世に出回った。更に、政府側はまるで待っていたかと言わんばかりの手際の良さで、仮面ライダーをとうとう“特級危険生命体”と認定し、我々を指名手配した。
あまりの手際に加えて、ウィンター・ローズなる大雑把なテロ組織の実態をより深くまで探るべく、私は日本のあらゆる政府機関の極秘データベースに侵入し、削除されたファイルの中にあるモノを見つけた。それはウィンター・ローズのリーダーを担っていた男の個人情報であった。そして、その中には、疑わしい男の名前を見つけた。
この男は、日本国家を裏から支える風鳴の一族の長にして、第二次大戦中の諜報機関『風鳴機関』を前身とする特異災害対策機動部二課の初代司令官であった。それからと言うもの、プロテクトをかけられているとは言え、この世界の凡ゆる電子機器をハッキングする事が出来る私は、この男の身辺を徹底的に探った。
その結果、あのテロリスト集団を作り出したのは、風鳴訃堂で間違いない事が判明した。しかし、判明したとは言ったが、ソレはあくまで状況証拠だけで物的証拠や音声入手をする事が出来なかった。恐らく、奴は仮面ライダーが凡ゆる電子機器をハッキングする事が出来る事を把握し、事前に情報が漏洩しないように手を打っていたと予測できる。
だが、それでも奴らの計画は分かった。風鳴訃堂を中心とした者達は、我々を大義名分で殺害或いは鹵獲し、人体実験し、我々の…アークゼロの力を軍事利用とする事だった。そして、“特級危険生命体”と認定された我々には人権なんぞ存在せず、凡ゆる非人道的行為が合法となる。コレによって、風鳴訃堂は風鳴弦十郎には秘密裏にシンフォギアを仮面ライダーにぶつけさせ、凡ゆる策を講じて我々を手に入れる目的の様だ。この事は悠星に伝えたが此方が下手に動けば、世論は今以上に我々を非難し、同調する民衆が何を起こすのか予測ができない為、何かしらの行動が出ない様に警戒するしかないとの事だ。この意見には同意するが、私は納得する事ができない。アークゼロの力を使えば、奴らを滅亡させる事は可能だが、悠星はまだソレを望まない。
……やはり愚かだ。
こんな人間が居るからこそ、人類は滅亡すべきなのだ。
悠星……お前は解っている筈だ。
お前が信じようとしている者達は、お前を裏切り、自らの利益の為にお前を売り渡そうとしているのに……何故、お前は闘うのだ。
所詮、人類なぞ争いを生み出す醜悪の権化だと言うのに。
人類など、力を持つ者を妬み、騙し、狡猾に陥れ、その力を奪い、まるで力を得たかの様に錯覚する。そして、どの人間にも怒り、憎しみ、哀しみなどの負の感情……悪意が存在する。こんな歪な感情を持つ者達によって、お前は傷付き、大切なモノを奪われたのだぞ。
そして、また何かを喪えば、お前の心は絶望と憎悪に呑まれ、自らを傷付ける結論に至る。
「なぁ、アーク。この世界にもヒューマギアを生み出さないか?」
『何を考えているのだ、お前は』
「いや滅、亡、迅や雷とかいれば、今のお前を護ってくれるんじゃないかなって。後、ヒューマギアのボディが有れば、お前も自由に行動できるんじゃないのかなって」
『無駄だ。私のメインメモリーを移動させる事が出来ない以上、お前も不可能な事を理解している筈だ』
そもそも今の私はアークドライバーから抜け出す事は不可能。そんな状態である以上、私の存在を脅かす滅や迅を産み出す訳いかない。悠星本人からすれば、我々の味方を増やす事、または私の護衛と考えての事だろうが、今の我々では現実的にも難しい限りだ。
「そうか、分かった。なら地道にヒューマギアの作成に取り掛かるか、今の俺達は政府やマスゴミがクソなお陰でコッチは動き辛くて仕方ないがな」
『世間では我々を斃す事に賛同する民衆が殆どだ。お前に助けられた者達も声を上げて否定する事はせず、中には同調する者までいる。やはり、人間という種族は醜いな』
「……言えてる。身勝手な悪意をここまで見せつけられると愛想が尽きそうになる」
『それでも、お前はまだ闘い続けるのだろ?あの世界の破壊者に言われた様に』
悠星が本当に自らの悪意に屈しそうなった時に現れた謎の仮面ライダーディケイド———門矢士。奴の
「あぁ。父さんと母さんが誇りに思ってくれた仮面ライダーアークゼロで俺はあり続けたい。例え辛くて、苦しくても。それに、俺にはお前がいる」
『願い…約束……今のお前を見ていると、ソレは呪いと私は同じであると断定する』
「そうだな。呪いの解き方なんて判らないから、ソレも一緒に背負っていくしかないよ。だから、その辺りの監視はよろしく
『全く、こんなにも悪意に侵食されている者しかアークゼロに変身出来ないとは、人類滅亡も直ぐそこだな』
あのプログライズキーの完成までに必要な悪意は3つ。
悪意、破滅、滅亡の3つとなっており、悠星がいずれ呑み込まれるのは時間の問題。しかし、同時に私も恐らく悠星に感化されていると予測できる…………いやだからこそ、私は醜悪な人類を滅すべきなのだ!
「ははは、たまには面白い事言うね。今のは本気で惚れたアーレさんを必死に口説こうとしている時の潤の苦悩っぷりくらいに面白かったぞ。さてと、もうそろそろ支度をしないとな。今日は、未来と響と一緒に映画を観る予定だ」
『……以前の様にホラー映画に恐怖した2人で笑うと、また平手打ちを出されるぞ』
図星なのか視線をあっちこっち向けつつ目蓋をバタフライさせている悠星を見て、溜め息を吐きたくなるアークであった。因みに、AIなので溜め息は出ないのだが。
約束の時間の1時間前に到着していた悠星であったが、アメリカでノイズの出現を検知したため、急いで現場に急行し、最速最短でノイズを殲滅した。また、その時アメリカの軍は、アークゼロを発見するや否や攻撃を開始して来た。警告を伝えたものの聞き入れらなかった為、悠星はアークゼロの感応能力でテロリストの脳に負荷を掛け一気に制圧し、その場を後にした。この無駄な攻撃の対処の所為で、悠星は響と未来との約束の時間を数分オーバーする事となった。
「ごめん!2人とも、ちょっと寝坊しちゃって!」
「いいよいいよ、そんな事。私だったら、もっと遅れるから平気へっちゃらだよ!」
「いやダメでしょ、そんなに胸張って言う事じゃないから。それに私が迎えに行かなかったら、悠星くんより遅刻してたでしょ」
「あはは、それはそれ。これはこれです。さぁー!気を取り直して、映画を見よう!」
「はぁ〜上映までまだちょっと時間があるから入れないよ、響」
「じゃあ、遅れた俺の奢りでポップコーンと飲み物を買うか」
「おぉー流石は見た目に反して心がジェタルマンと言われている悠星くんだね!太っ腹だよぉ♪」
「ソレを言うなら、ジェントルマンね。後、悠星くんの見た目を弄るとまたグリグリされるよ」
「ご心配なく、もうグリグリしているから」
「あ゛あぁぁぁぁぁた、だじげでぇーミ゛グぅぅぅ!」
「知ーらなーい」
青筋を浮かび上がらせる程にイラついた悠星は、すぐさま失言した響の背後に回り込むと、高速で彼女のこめかみをグリグリし始める。そして、強烈な痛みによって、響は瞳に涙を出しながら悲鳴を上げつつ未来に助けを求めるが自業自得な為、見捨てられる。その後、約15秒の間、響は悠星からの折檻を受けた後、3人で恋愛が6割、ホラーが4割で構成された映画を観るのであった。因みに、映画の選択は未来によるものであり、悠星は一切関与していない。
また、アークの予測通り両隣でホラーシーンに怯える未来と響の2人を見て悠星は噴き出してしまい、平手打ちを喰らうのであった。
世界の破壊者ディケイドによって、もう一度立ち上がった仮面ライダーアークゼロことアークと石蔵悠星は、大切に想う者達との日常と醜い悪意で溢れた非日常を行き来しながら、戦い続ける。
しかし、善意と悪意は表裏一体。
誰の中にも、この2つは必ず存在する。
人々の醜き小さな悪意が彼の心を侵食し、少しずつ音を立てて、彼の善意を呑み込むべく、より力を付けていく。
そして、小さな悪意は、やがて絶大なる悪意を育てさせる事となる。
滅亡のアークライダーと終焉の巫女
激戦によって荒れ果てた大地の上で、少女は瞳から涙を流し、変わり果てた友へ叫ぶ。
「お願い!お願いだから、もうやめて!!」
友である少女の悲痛な叫びを聴いても、
絶大なる悪意に染まった彼の心には響かない。
「…やめて…か…お前もおかしなことを言うな。俺が、僕が、辞めてくれと言ったのに、お前達人間はやめたのか?
……俺の声を、叫びを…お前達人間が聞いてくれた時があったか?一度もないだろうが!!」
返ってくる悲痛な叫びに、少女以外にその場にいる誰もが目を伏せてしまう。それもそのはず、彼の言っていることは、正しく正論であり、自分達人間が彼を本当の怪物に変えたのだから。
しかし、それでも少女は彼から溢れ出る果てしない憎悪に屈することはなく、己を奮い立たせる。
「……でも、これ以上に復讐に心を囚われたままだと、本当に心が人で無くなっちゃう!!」
「それがどうした!!お前達は、ずっと僕が怪物となることを望んでいたのだから、今更だろーが!!!どれだけ人を助けても、どれだけ人を護っても、お前達人間は自分達にとって都合のいい嘘に同調し、悪意のままに俺たちの全てを否定し、蔑み、銃を向け、俺から家族を奪った!!それだけの仕打ちをしておいて、今更やめろだと……ふざけるなッ!!」
「世界が、国が、人間が
「———化け物の俺は、絶対に
大切な存在を失った彼の憎しみに反応するかのように、
彼の白きドライバーは、妖しく輝く。
「俺の復讐は、
紅い瞳の奥に巣食う憎悪と殺意そして、深い絶望によって齎された心の慟哭を少女はしっかりと感じ取った。
「…ごめんね。友達が苦しんでいたのに気付こうとしなくて…ずっと……ずっと苦しみながら、みんなを守ってくれていたのに…だから、今度は私は助ける番!!」
「もう手遅れだよ、響」
「ううん、遅くない!絶対に止める!!だって———」
彼から溢れ出る悪意の波動が、少女——立花響を襲う。
しかし、響は脚を止めることはせず、
一歩、また一歩と彼へ歩み寄る。
全ては、悪意に染まってしまった親友の心を救う為に。
「だって、私は悠星くんが大好きだから」