変身絶唱シンフォギア—悪意のAIと共に転生— 作:鏡花水月アッくん
新社会人として、まだまだ落ち着いて執筆作業に集中する事はできませんが、完結を目指していきますので、
皆さん!これからも宜しくお願い致します!!
激しい剣舞を繰り広げる蒼き歌姫と漆黒の守護者。
アタッシュショットガンとプロトショットライザーへのプログラムの改変を任されたスコーピオンことヒューマギア第一号である『滅』は、静かにアークゼロとシンフォギアの戦いを周囲を警戒ながら静観している。
自身がヒューマギアとして生まれてから、数ヶ月の間に滅は様々な事をラーニングしてきた。
自身を創り出したアークと石蔵悠星、そして、この2人に悪意をまるで当たり前の様にぶつける愚かな人類、地球という名の自然、動物、ハッキング、ノイズ、さまざまなジャンルの漫画やアニメ、映画などと関係ないと思えるモノを含めた数多くのことを滅はラーニングして来た。
その中でも、最も不可解な存在は、アークの器となる者———石蔵悠星。
彼はその身に人間の悪意に対する凄まじい憎しみの感情を抱いており、それと同等なまでにナニかに恐怖している。何に対して、彼が恐怖を抱いているのかは俺には理解できない。そして、俺が創り出されてから常に石蔵悠星を観察しているが、93.7%の確率で彼は悪夢に魘されている。
アークにラーニングさせられた記録によれば、石蔵悠星は敬愛する父と母を殺害された事で精神が摩耗していった。だが、立花響と小日向未来、石蔵悠星の養父である五条潤の尽力によって摩耗していた精神は、まだまだ不安定ではあるが、安定していた。
それでも、人間の『心の傷』と言う物は、そう簡単には癒える事はない。
時間が経過する毎に増加する
『仮面ライダーを悪意の捌け口』として、
利用し続けている人間達の醜さを目の当たりにし続けている事によって、石蔵悠星は心的外傷後ストレス障害——PTSDを患ってしまった。
この石蔵悠星が患ってしまったPTSDの発作は、激しい頭痛と目眩…そして、愚かな人間達への殺人衝動。この3つの発作を自身の手で抑え込む事はほぼ不可能に近い為、石蔵悠星は養父である五条潤の人脈を通じて、強力な精神安定剤を常に服用している。
自身が、そんな状態になっているにも関わらず、傷つきボロボロにながらも闘い続ける理由を俺は以前に聴いた。
『……誰かの助けになるって言う「約束」だから…』
その時の石蔵悠星の表情は、今も俺のメモリーの中に深く残されているが、
同時にある疑問が浮かんだ。
いったい誰がお前の助けになる?
理解者であった肉親を失い、
同胞である筈の人間から迫害を受け、
それでも傷つき闘うお前を誰が救うというのだ。
俺には…石蔵悠星が理解できない。
……人間でありながら不可解な存在。
『お前も……いずれはアークの様に心を持つよ。
すごく難しい事だけど、オマエなら出来るよ。
僕に……心の可能性と言う希望を見せてくれ、滅』
そして、この時の悠星の笑顔に何が隠されているのか、
俺には理解することができなかった。
しかし、必ず俺は、その意味を知らなければならない。
滅を含む周囲の者達は傍観に徹するしか無いほどに、アークゼロとなった悠星と激情に染まった翼の闘いは苛烈なものだった。
荒々しいまでの翼の剣戟は一撃一撃は、激しいの一言であったが、そのすべてが晒され、または弾かれていた。アークゼロが持つクロスライザーの刃と、アームドギアの刃が激しくぶつかり合い火花を散らす。
「はあぁぁぁぁ!!」
「……………」
鍔迫り合いにより翼の表情が間近に見えるものの、仮面の下では表情1つ変えていない悠星は、クロスライザーの引き金を躊躇することなく引く。至近距離で、放たれた弾丸を何とか翼は避けるものの体勢を僅かに崩してしまう。致命的とも言える隙を見せた翼をアークゼロは、見逃す事はなく強烈な前蹴りを繰り出す。繰り出された前蹴りに翼は、ワンテンポ遅れるものの後ろに一歩下がる事が出来たおかげで、衝撃を軽減する事に成功するが、あまりの蹴りに数メートル程飛ばされる。
そして、吹き飛ばされた形とは言え、距離を取る事ができた翼は一度呼吸を整えてから、反撃に出る。翼の目にも止まらぬ反撃の刺突は、まさに刃が無数に増えたかの様に錯覚を覚える程の速さを持ち、アークゼロの眼前に迫って来ていていた。しかし、無数に見えていたとしても実態を持つモノは1つしかない。さらに、数年の月日によって戦士として完成されつつある悠星からすれば、激情に染まった相手の意図を読む事はそれ程難しい事ではない。これにより翼の刺突がアークゼロの強固な装甲に触れる前に、悠星は振り下ろしたクロスライザーの刃でアームドギアの刃を抑え込んだ。
「くぅっ!なぜ、私の攻撃が…」
「……
「貴様ぁぁぁ!!」
「……(分かり易すぎて、笑いも出ないな。ホント、お前を見ていると怒りが込み上げてくる。自分を見ている様でなぁ!!)」
アークゼロの言動に思うところがあるのか、翼は先程よりも身の内に巣食う激情に染まってしまう。その結果、彼女は悪手を打ってしまうこととなる。
「やあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
天ノ逆鱗
一旦、翼は蹴り上げをアークゼロへ繰り出すとその勢いに乗り、バックステップで距離を取ると、空中へ投擲したアームドギアを巨大化させ、それをアークゼロの頭上に向かって蹴り貫こうとする。
「的がデカくなった…」
【ファング】
【シャーク・アビリティ】
【バイティングクロス・スラッシュ】
対する悠星は、アークドライバーで生成させたバイティングシャークプログライズキーをクロスライザーのプログライズキー装填部にセットすると、トリガーを一度引く。すると、プログライズキーに保存されている戦闘データが抽出される。そして、クロスライザーに保存されているドードーゼツメライズキーの時とは、異なるバイティングシャークプログライズ用の必殺技を発動させる準備が完了すると、悠星は上段の構えを取り、クロスライザーのグリップを両手で握る。
上空から迫り来る巨大化したアームドギアに怯む事なく、悠星はクロスライザーの刀身からヒレ型のエネルギーで構成された長大な刀身を振り下ろす。振り下ろされた長大な刀身は、翼のアームドギアと衝突し、数秒の間拮抗するものの、やがてアークゼロの攻撃に耐え切る事が出来ず、巨大化していたアームドギアごと斬り捨てられる。
「ぐぅ…うぅぅあ、ぁ」
『所詮、歌はその程度の物だ。この愚かなゼロ以上に感情に左右される不完全なモノ』
「一言余計だ。だが、耳が痛い話だ……」
地に落ちた翼は、自身を見下ろすアークゼロを悔しげに睨み付ける。そんな翼の視線などどうでもいいかのように、アークはあるがままの事実を告げ、ゼロこと悠星はクロスライザーの出来を確認していた。そして、圧倒的なアークゼロの闘いをスコーピオンこと滅を除いた周囲の関係者は、唖然とし空いた口が塞がらなかった。
彼らは、何処かで思っていたのだ。
シンフォギアなら仮面ライダーに勝てるのではないか?
だが、その幻想は圧倒的な力の前に崩れ去った。
その力を持つ者は、聖人でも防人でもなければ、
ましてや人々が恐れる怪物でもない。
理不尽に怒り、愛する者との別れに哀しみ、
理想と現実の明確な壁に嘆く
「何故だ…何故、そんな強さが貴様にある!!その力があれば、あの時の私よりも多くの人の命だけではない。奏の命も救えたはずだ!!なのに、何故貴様は、あの時来なかったのだ!答えろ!!」
…… 目ノ前ノ俗物ヲ殺セ
…… ナニモカモ滅亡サセテシマエバイイ
…… 奴ラニオ前ノ苦シミヲ味ワセロ
「………ぐ…ぁっ…(クソっ!こんな時に、発作がっ!落ち着け!!落ち着け!呑まれる!考えるな考えるな考えるな考えるな)」
そんな事を知らない翼は、アークゼロの持つ“力”への激しい嫉妬を抱き、3年前のライブ会場の時と同じ様に言い放つ。その言葉によって、あの会場で起きた事だけでなく、ウィンターローズ事件の記憶が鮮明に悠星の脳裏に蘇る。その結果、悠星のPTSDの発作が静かに始まってしまった。激しいまでの頭痛と目眩、そして……人間への殺人的衝動が、今この場で悠星を襲う。
さらに、自身の心の奥底に溜め込んでいた人間への憎しみが、形を変えていく。
これにより悠星の悪意に満ちた人間への憎悪は、
自身を悪意の捌け口にし続ける者達への憎悪
と言う名のより強き悪意へと昇華してしまう。
少し立ち眩みをしたアークゼロに周囲の人間は、僅かに疑問に思った者はいたが激しい嫉妬に駆られている翼はさらに言葉を続けようとするが、ソレを遮る者が1人だけいた。
「お前は卑怯者だ!力を持つ強者としての責務を放棄し、戦場から逃げた卑怯m『黙れ!』っ?!」
「……アー…ク…?」
その者の正体は、悠星の
『強者としての責務だと、笑わせるな。この愚かな者が、どれだけの苦痛と絶望を味わいながら闘っていることもろくに知ろうともせず、場当たりの虚偽の情報を鵜呑みにし、自身の醜い感情の捌け口に利用している愚物どもが、口を開くな』
「な、なんだと…っ!」
『お前の言う強者の責務が弱者を守ることならば、弱者の責務とは自分達を守ってくれていた者への迫害と言う事だ。そんな事しか出来ないお前達を愚物以外に何と称する』
「貴様っ!」
「もういい、よせアーク。帰ろう、目的は達した」
アークのおかげで、少しだけ発作が緩和したとは言え、未だに殺人的衝動が収まらない悠星は一刻も早くこの場から離れるため踵を返そうとすると、
「ま、待ってください!仮面ライダーさん!」
「……?」
アークゼロと翼の闘いに巻き込まれない様に緒川に避難させられていた響であった。因みに、手錠は避難するのに邪魔なため外されている。
自身の衝動を抑える事に手一杯である筈だが、何を思ったのか仮面の下で苦痛に耐えながらも悠星は半身だけ振り返る。
「い、い色々な事があって、私はよく分かりませんでしたけど……今日…私達を、た、た助けてくれて、ありがとうございました!!」
「っ?!」
そして、僅かばかり恐怖で身体は震えつつも響は、感謝の言葉をアークゼロに贈った。突然の響の感謝の言葉に、周囲の人々は唖然とし、当本人にである悠星は戸惑いを隠せない程動揺していた。それその筈、いくらアークゼロが命の恩人とはいったものの、目の前で自身の常識を遥かに超える程の力を見せつけてられていた上に、憧れの人でもある翼を一方的に圧倒した相手に感謝の言葉を贈るのは、悠星の認識からすれば到底あり得ななかった。しかし、目の前の響は、そう言った事を置いて先程自身と幼い少女を助けてくれた相手に感謝を述べた。それを人は常識外れと称するのか、はたまた自身の心に正直なバカと称するのかは各々の認識次第であるが、少なくとも悠星は少し呆れつつも後者として受け止めるのであった。
「チャオ、バーカ」
「えぇっ?!いきなり罵倒!?」
それだけ言い残すとアークゼロは、飛び去って行ってしまった。続く様にプログラミングの改変を終えていた滅もまたマシンアークに乗ってその場を後にした。
「中々いいデータが取れたわね。さてと、そろそろ貴女の出番ね。頼んだわよ、クリス」
「あぁ、あたしがコイツをぶっ潰してやる」
影で動く者達は、自らの野望のために暗躍を続ける。
やがて、世界の理不尽に怒る赤き歌姫と黒き守護者は、闘い、そして、対話を経て、互いの心情を理解し、わかり合う。
だが、世界に蔓延る理不尽な悪意は、
2人の隙間に張り込み、
彼の心を悪意に染め上げる。
果たして、より強くなっていく彼の悪意を破壊するのは、
世界の破壊者か、
3人の歌姫か、
そして、その結末は彼にどの様な結果を齎すのか。
その答えが出ることとなるには、まだもう少しだけ時が流れなければならない。
早くクリスを登場させてあげたいです。結構悠星にデレさせる予定であります。お互いに似た者同士ですので。響と未来からすれば、アーク様並みに難敵ですけどwww。ガンバ!
因みに、改めて見直していると、悠星の憎悪と殺意が全く一緒だったので、進化させる形で少し変えました。